ちょっと序章をある程度まとめてからあげたかったので、書き溜めていました。反省です。
ので、明日か、明後日(どっちか)も更新しますね。
さて今回はマシュさんの宝具解放イベント関連です。ちょっと長めです。
主人公視点でいきます。
――主人公side――
この後、キャスターさんに軽く自己紹介をしつつ、作戦を練っていった。作戦と言っても敵戦力の概要とか、簡単なものだけだ。
その中の話の流れでマシュさんがポツリとこぼす。
「私はこのままで大丈夫でしょうか?――宝具を使いこなせないサーヴァントでは皆さんの足を引っ張ってしまわないか心配です」
その不安そうな声に私は分かる分かるよと頷きたくなるのをぐっと我慢する。私も宝具名不明なこの状況が少々不安なのだ。
マシュさんの声にキャスターさんが怪訝そうに眉をしかめた。
「あ?その立派な盾、それが宝具なんじゃねぇのか?」
「――それはそうなのですが、私はデミサーヴァントで力を託して下さった英霊の真名も、この盾の名前も分からないのです。なので、宝具の真価とも言える力を展開する事も出来ません」
俯くマシュさんにキャスターさんはああと納得したように声を上げる。
「あー、なるほどなぁ。お嬢ちゃん、そりゃあ考え過ぎだ。英霊と宝具は同じ存在なんだよ。ある程度戦えるって事は宝具も使えるってこった。――が、言われてなんとか出来るんじゃあ世話ねぇか」
キャスターさんは顎に片手を添えて思案する。にやりと口元に笑みを浮べる。
「まあこれも何かの縁だ。――今のオレはキャスターなんでね。まあ治療と行きますか。という訳でマスター、アンタらも今から寄り道してもいいだろう?」
「寄り道って?」
「ハハッ、何大したことないさ。ただ魔力の目詰まりをしてるみてぇだから、オレが治療してやろうってだけで」
「ああ、いいけど……」
にっかりと笑うキャスターさんに藤丸さんは押され気味に許可を出す。マシュさんはそれに迷惑をかけてしまうと申し訳なさそうな顔をしていた。オルガマリーさんに至っては不機嫌そうにするだけで何も言わない。多分了承という意味だろう。
なんか嫌な予感がする。と私の中の第六感が告げていた。
「もしかしてバカなんですかー!?」
ぎゃあああと叫びながらの藤丸さんのキャスターさんへのお言葉がこちらです。結構悲痛な悲鳴で私の涙腺が緩んでしまいそうだ。
ここまでの経緯は至極簡単だ。マシュさんの宝具を解放する為に、とキャスターさんがした事は、なんとオルガマリーさんの上着に厄寄せのルーンを刻み、エネミーを招きよせた。死なせたくないなら頑張りな、と意地悪な笑みを浮かべたキャスターさんは最高に輝いていた。
私は非戦闘員のオルガマリーさんや藤丸さんを庇いながら最低限の立ち回りで敵を倒す。これは確かマシュさんの仮宝具解放イベントだったような気がするからだ。
勿論、ぼんやりしたうろ覚え知識だけど遠くはない筈だ。なので私はその妨げにならない程度に大剣を振りまわしていた。正直手加減って難しいんだなと再確認した心地だ。
倒しても倒してもキリがない骸骨人間に藤丸さんだけじゃなく、私やマシュさんも疲労が溜まってきている。
「限界、です。――これ以上の連続戦闘は――。キャスター、さん。根性論ではなく、きちんと理屈にそった教授、を」
「分かってねえな、こりゃ見込み違いかねぇ」
息絶え絶えな様子でマシュさんはキャスターさんに懇願する。マシュさんは盾を杖代わりにしてようやく立っていられるくらいに消耗していた。
キャスターさんはそれに冷めた瞳で見下ろした。いや、冷めたというよりは鋭い視線だった。あれは猛禽類のような獲物を狩るものの瞳だ。
「言っただろう。――それは英霊の本能さ。お嬢ちゃん、アンタがなんでその盾を握っているか、ソイツをよく刻みな」
「何故、私がこの盾を」
キャスターさんの言葉にマシュさんがごくりと唾をのみ込む。
「そうさ。結局のところ、アンタがそれを分かってなきゃ意味がない。――って訳で構えな、オレが相手してやるからよ」
「――ッ!!」
杖を構え、キャスターさんはマシュさんの了承を聞かずに襲い掛かる。杖から放たれる火球はマシュさんの盾で防がれるが、その衝撃でマシュさんが後ろに倒れそうになる。
「マシュッ!!」
倒れそうになるマシュさんの身体を藤丸さんが咄嗟に支えた。キャスターさんはそれに特に反応を示さずただ淡々と準備をする。地面にルーン文字が浮かびあがる。
魔力がキャスターさんの杖に集中する。集まる魔力の輝き、あれは間違いなく宝具の解放だ。
「“我が魔術は炎の檻、茨の如き緑の巨人。因果応報、人事の厄を清める杜――”」
声は厳かに、けれど力強い詠唱で紡がれる。地面に浮かぶルーンからぼこぼこと蔓、いや木が生えてきて巨人を築き上げた。私はこれはこっちまで被害がくるな、と咄嗟に近くにいたオルガマリーさんを背後に庇う。マシュさんや藤丸さんまでは距離が遠い。とても庇えないというより信じるより他にないと思った。
「“倒壊するはウィッカー・マン!オラ、善悪問わず土に還りな――!”」
カッと光と共に木製の巨人に火が噴き出す。ゴォゴォと燃え立てるそれはさながら炎の巨人だ。マシュさん達は、と私は視線を巡らせる。マシュさん達に倒れ込むように近づく炎の巨人。
「あああぁあああぁあああ!!」
カッと眩く光るマシュさんと盾。藤丸さんを背後に庇い、一歩も引かないその姿はさながら騎士の如く。けれど、声が、マシュさんの必死の叫びが等身大の彼女を思わせる。
マシュさんは英霊なんて立派なものになろうというのでなく、たった一人の為に立ち上がっているのだと。
それはかつての私のようでいて、違う。
それよりも真っ直ぐで強い姿だった。
マシュさんの叫びに呼応するかのように顕現した。それは城塞、堅牢なる白亜の城壁の一部。決して破れる事のないそれは持ち主とその主を見事守り抜いた。
宝具と宝具とのぶつかり合いは衝撃波となり、周囲に粉塵をまき散らす。
私はオルガマリーさんに被害が及ばないように大剣を盾にする事しか出来なかった。
キャスターさんとマシュさんの宝具が消え失せると周囲の瓦礫が吹き飛ばされている以外は変わりない様子だった。他には多少マシュさんと藤丸さんにかすり傷があるくらいだろうか。
「あ、せ、先輩私――」
「ああ、マシュ。凄いね、ちゃんと宝具解放出来たね」
「ッ!はいっ」
宝具を解放出来た事実に呆然とするマシュさんに藤丸さんは涙を少し浮かべて微笑んだ。マシュさんはくしゃりと顔を歪め数拍後に笑みで崩れた。
感激するマシュさんに藤丸さんはそっとその頭を撫でている。ほんのりとマシュさんの頬が染まりなんとも初々しい感じだ。
見守っている私もにこにこである。とそこで私の頭にずしっと重みがかかる。
「こりゃ驚いたな。生き残れるとは思っていたが、まさかかすり傷とはね。しかも宝具での負傷じゃないときたもんだ」
この重みはキャスターさんが肘をのせたせいか、と私は上からの声に悟る。この調子じゃあ反省していなさそうだ。というかいつの間に私の背後まで移動したのか。全然私は気づかなかった。
どいてくれ、と抗議するようにキャスターさんの横腹を肘でつく。
「はは、まあいいじゃないか。アンタ、こうマスコットつーか。そんな感じがすんだよな。――まあ冗談は置いておいてだ。やったな、盾のお嬢ちゃん。ちゃんとやれたじゃないか」
「は、はい。これもキャスターさんの特訓のおかげですね」
「いや、オレのおかげって訳でもないだろ。ただお嬢ちゃんが強かった。それだけさ」
《これは驚いたな。マシュの精神面はそれ程強いって訳でもなかったのに……》
ドクターさんの思わず零した声にキャスターさんは肩を竦める。
「そりゃ、捉え方の問題さ。お嬢ちゃんはアレだ。どちらかというと守る側の人間なんだよ。攻撃にゃ向かないが、守る為に退かないで居られる人間なのさ」
キャスターさんはそこで私の頭から肘を退かす。ようやく退いたとため息つく私に、アンタなら分かるだろと声をかけた。
「空を飛ぶ鳥に水に潜る方法を教えてもなんにもならないように、な。なんつったって、鳥は大空を羽ばたく方法を教えてやらなきゃな」
『ああ、なる程。人には向き不向きがありますからね』
「そういうこった」
《そっか……。そうだね、君たちの言うとおりだね》
ドクターさんはこちらの言葉に少し思う所があったのだろうか。少しだけ苦く笑ったように見えた。
「あーあ。とんだ美談じゃない」
空気を壊すようにオルガマリーさんの大仰な呆れを含んだ声が割り込んだ。
「キリエライト、その宝具名は分かったのかしら?」
「い、いえまだそれは分かりません。宝具名も、英霊の真名さえ私には――。ただ、あの時は先輩やこのままここで倒れる訳にはいかないという思いで一杯だったので……」
「そう。それは困りますね」
マシュさんの俯いた顔を呆れたようにオルガマリーさんは見つめる。藤丸さんはその様子を唇を噛んで口出しするべきか迷っているようだった。
「あの、所長。そんなにマシュを――」
「お黙りなさい、藤丸。それに私は責めている訳ではないのです。――それじゃ不便だろうと思っただけで……」
「えっ?」
オルガマリーさんの後半の言葉は呟き程度の小ささで藤丸さんには届かなかったようだ。案の定藤丸さんに首を傾げられてオルガマリーさんは顔を赤くして慌てている。藤丸さんの他にマシュさんも不思議そうな顔をしていたからかもしれない。
「な、なんでもありませんッ!それよりもキリエライトの事です。そのままじゃあ宝具展開するのに困るでしょう?疑似展開にしろ、名は大切ですからね。――ですから今度からカルデアの名を使いなさい」
「!いいのですか?」
「ええ、カルデアはアナタにとっても馴染み深いものでしょう。――そうね、スペルは……
「はいっ。とても、とてもいいお名前だと思います。――ありがとうございます、所長」
「所長……!」
感極まったマシュさんと藤丸さんにオルガマリーさんは照れたように顔を赤くしてあわあわしていた。べ、別にアナタの為じゃないんだからね!とかテンプレの台詞が聞こえたような……。
《いやぁ、若いっていいねぇ》
それには同意しますけれど、そろそろ黙らないとまたオルガマリーさんの逆鱗に触れますよドクターと私は心の中でツッコミを入れた。
消耗してしまった体力を回復するため、と怪我をしてしまったマシュさんの治療をするべく休憩を少し取ろうという話になった。
これは私の出番だなと私は手に持っている大剣に祈りを込める。癒しよ、我が祈りにより皆の傷を治せ、なんちゃって。と私はスキルを発動させる。
『祈りましょう』
スキル、“治癒の奇跡”発動。
ぶわりと大剣から淡い光が放たれ、皆の擦り傷とかを何事もなかったかのように治癒した。皆目を見開いていたけれどどうかしたかな?
「わ、すごいね」
『そうですか?――他に痛いところとか大丈夫ですか?全部治りました?』
「問題ありません、ライダーさん。ありがとうございます。こちらの負傷は全て治癒しました。先輩も大丈夫ですよね?」
「うん、それは大丈夫。ありがとう、ライダー」
『いえいえ、治ったなら良かった』
マシュさんと藤丸さんとのやり取りに私はほのぼのした。うんうん、素直にお礼を言えるのはいい事だよと頷く。
「おお、こりゃ驚いたな。アンタもキャスターのクラス適正持ってそうだな」
『も、という事は貴方も複数の適性を?』
「おうともよ。元来オレは槍持つ方が
「しかないとか言っておきながら、あの威力とか……。凄いなキャスターは」
キャスターさんの言葉に藤丸さんは顔を引き攣らせながら称賛を述べる。キャスターさんはそれにニッと笑みを浮かべた。生来の明るさが前面に出ているような笑みだった。
「おうおう、嬉しいこと言ってくれるじゃねーか。サーヴァントとして称賛されるのはいいもんだねえ。ただ、ランサーのオレの時に褒めて欲しいもんだ」
「ランサーの?」
「そうさ。まあアンタはこの先長そうだし、ランサーのオレを召喚する時もあるだろうさ」
「そうなのかな」
「そうなんだよ、まあめぐり合わせっつーのもあるけどな。そんときゃ盾のお嬢ちゃんもよろしくな」
「こ、こちらこそよろしくお願いします」
キャスターさんは藤丸さんとマシュさんと和気藹々と話している。おお、凄い。先程の殺伐としたやり取りが嘘のような変わりようだ。こういう切り替えが英霊として聖杯戦争を戦い抜いたサーヴァントたらしめるのだろうか。私は少し考えてしまった。
とそこで私はオルガマリーさんの姿が見えないのに気付いた。周囲を見渡せば少し離れた距離にオルガマリーさんはしゃがんでいた。
藤丸さん達三人に少し断ってからオルガマリーさんの所へと歩み寄る。
『何やっているんですか?』
「ひゃわッ!?」
オルガマリーさんの背後から覗き込み私は声をかけた。途端ビクリとオルガマリーさんの肩がはねる。そして上がる奇声いや悲鳴に私はちょっと生温かな視線をオルガマリーさんに向けた。
「な、何かしら!?」
『いえ、何をやっているのかなぁと気になったので』
「そ、そう。何ってあれよ。一応事前準備という奴です。こういう場所なので、出来る事は限られてますけれどね」
『おお、凄い。ちゃんと魔術が組み込まれてますね』
私はオルガマリーさんの手元を見ながら感心した。そこには小石に刻まれたルーンに近い魔術。とは言っても私は魔術に関してはド素人も当然なので効果までは分からない。
「わ、分かるの?」
『いいえ。でもオルガマリーさんの努力と言うか、事前に準備をするその心意気は分かりました。貴方は最善を尽くせる人なのですね』
「ッ!! ――当然です、私を誰だと思っているのかしら。アニムスフィア家の当主よ、これくらい出来て当たり前なのです」
『ふふふ、そうですか』
私の言葉にオルガマリーさんは一瞬息をのみ、すぐに顔がそっぽを向いた。けれどその赤くなった耳までは隠せていない。早口になった言葉がオルガマリーさんの照れを含んでいた。
私はそれが微笑ましく思えて思わず、くすくすと笑ってしまう。
オルガマリーさんはこちらをキッと睨んできたけれど、顔が赤いままじゃ迫力に欠けるというものだ。
『あ、そうです。それ、私に一つもらえませんか?』
「え?ええ、こんなものでいいのなら、良いわよ?」
『ありがとうございます』
「――どういたしまして……」
オルガマリーさんの魔力のこもった小石を私が一つ望めば快くくれた。思わずほころぶ心のまま笑顔で私が礼を言えば、オルガマリーさんはそっと手渡してくれた。伏せられた金色の瞳が迷うように彷徨っていたので、私は手渡された小石ごとオルガマリーさんの手を握る。
「!? な、なによ」
『ふふ、おまじないです』
ぎゅっぎゅとオルガマリーさんの傷のない白い手を握手しながら私は笑う。照れながらも手を振り払わないオルガマリーさんはやっぱり優しいなと思う。
どうか、この優しい彼女が傷つかない未来がきますように。私は祈らずにはいられなかった。
オルガマリーさんから貰った魔力のこもった小石はほんのりと温かいような気がした。
《うっう……。よかったねぇ、マリー、んんっじゃなかった所長にこんな友達が出来たなんて……!ボク、ちょっと感動しちゃったなぁ》
「え、ドクター居たの?」
《居たとも!ちょっと疎外感があり過ぎて膝を抱えてたなんてそんな事ないぞぉ》
「仕事をしてください、ドクター」
「フォウフォウ!」
「ほら、フォウさんもそう言ってます」
《うっ、マシュが反抗期だ……!》
「反抗期って、アンタなぁ」
キャスターさんの盛大なため息がこちらまで聞こえてきた。おっと、ばっちりこちらのやり取りを見守ってた系だ、これと私は頭を抱えたくなった。オルガマリーさんの精神にも結構来るものがあったらしい。握手してた手がふるふると震え始める。私はそっとオルガマリーさんの手を解放する。
「ロマニ、ステイ」
《アッハイ》
地を這うような低い声のオルガマリーさんにドクターさんはこくこくと首を縦に振った。ちょっと黙れやオラァ、とオルガマリーさんの副音声まで聞こえてきたのは気のせいだろうか。
「ごほん、ちょっと真面目な話をしましょう」
「所長、今更取り繕っても駄目ですって。ね、マシュ」
「はい、先輩。そういう所長も大変微笑ましく、むしろ親近感が湧いていいと思います」
《そうそう、その方が結束感が出ていいんじゃないかな?》
オルガマリーさんに悪気なく助言する藤丸さんにマシュさんとドクターさんが加勢する。オルガマリーさんはそれにギロッと鋭い視線を投げる。
「ロマニ」
《うん?》
「減給だけじゃ足らないかしら?」
《至急、バックアップ体制に戻らせてもらいます》
オルガマリーさんの淡々とした声に敬礼をしたドクターさんはサッと手元に視線を戻し、カタカタと機械操作に集中するようだった。
オルガマリーさんは何事もないように視線を藤丸さん達に戻す。藤丸さん達はそれに苦笑した。
「話を戻すわよ。それでキャスター、アナタ、セイバーについてそれなりに詳しいと思うのですけどどうかしら?」
「ほぉ、やっぱり気づくか。――そうさなぁ、出し惜しみする必要なんざないし、言っちまうか」
オルガマリーさんの問いにキャスターさんは顎を手で擦り、言う。
「あのセイバーの宝具をくらえば誰だってその正体に気づく」
キャスターさんの静かな声にこの場にいた誰もが息をのんだ。
「――この時代でも一番の知名度を誇る聖剣の担い手。それが奴さ。星の聖剣、エクスカリバー。ここまで言えばもう分かるだろ?」
《そ、そんな。それじゃあ――》
「そう、かの有名なアーサー王。それがセイバーの正体さ」
静かに絶望の名が紡がれた。魔術の知識が足らなくとも、圧倒的な力量差が推測される。知名度は力になるんだっけか。
空気が重くなるのをキャスターさんはふぅとため息を一つ吐いた。
「そんな心配しなさんな。そう憂鬱になる事はねえよ。オレの見た所、お嬢ちゃんの宝具の盾はあの聖剣に抜群に相性が良いしな」
「相性、ですか?」
「ああ、上手くすれば無傷で済むかもしれねえし」
キャスターさんの明るさを保った声にマシュさんは少し肩の力を抜く。けれど、その直後しょんぼりと肩を落とした。
「私にそれが出来るでしょうか……」
「大丈夫だよ、マシュ」
「先輩……」
『そうですよ、マシュさん。一人じゃないんですから、そう気負う必要はないかと。それに、マシュさんにはもう決めている事があるのでしょう?』
何が守りたいか、一番大切な事はマシュさんには見えている筈だ。はっきりと見えなくとも、だいたい分かっていればそれで大丈夫だろう。
だってそれがあればここ一番の時に踏みとどまれる。私は経験上、それを知っているのである。
私はにっこりとマシュさんに笑いかけた。マシュさんの強張った肩の力は少し抜けたようだ。
「さあ、これからそのアーサー王のところに行こうか」
藤丸さんの声に皆頷いた。休憩はとったことだし、準備も万端だ。
――後は私の戦車に皆乗せて件のアーサー王の居る地下工房、洞窟のあるところまでとばすまでである。定員オーバー?大丈夫大丈夫、ちょこっと詰めてもらえれば乗れるって。え?戦車の見た目?それは――うん、諦めてもらうしかないかな。
という訳でマシュさん宝具解放イベント及び原作組との交流編です。
わちゃわちゃとしすぎましたか、とても心配です。
とここでカルナさんの出番は?というお声が聞こえてきそうなので。
基本的に番外編で糖分の高い話を更新したいと思います。あと二、三話で序章編が終わるので、その後番外編を集中更新したいなと。