アーサー王を味方につけることに成功した俺はそのまま大空洞へと向かい、その奥へと進んだ。
案の定中はゴーストだらけだったけど、まあ頼もしいことこの上ないね。アーサー王もそうだが他の3人もいい働きを見せてくれている。…何かこの言い方だとどっかの王とか皇帝みたいな言い方してる気がする。
ダヴィンチちゃんによるとサーヴァント反応は奥のみという事もあり割と大空洞内での雰囲気は軽いものだ。
相手がゴーストという事もありジャックは解体できなくて不満そうにしてるけどね。
「君はサーヴァントに好かれているね」
「え?」
突然のアーサー王からの言葉。正直アーサー王イケメンすぎて眩しいんだよなぁ…苦手ではないし尊敬もしているんだけど…畏れ多い。
そんなアーサー王から好かれている発言。まあ、前にも言った通りこの3人からは異常なまでに好かれているのは流石に自覚しているけど…そんなにわかりやすいものだろうか?アーサー王の前ではそんな素振りは見せていないような?分別出来てる子達だし。
「君が私の前に出た時、すぐに君の前に立って構えていたし、今も君の事を気にしながら戦っている」
「それってサーヴァントとして普通なんじゃ?」
「確かにそうかもしれないが…でも雰囲気が違うんだ」
「雰囲気?」
「そう。サーヴァントだって感情はあるし感性だってある。従いたくないサーヴァントだっている。そんなサーヴァントはそのマスターを殺し単独行動をしたりするが、それが出来ないサーヴァントは嫌々という感じでそのマスターに従うことがあると聞く。君たちにはそれが無くて心の底から君を信頼し慕っている事が分かるよ」
「ちなみにそう思う根拠は?」
「さっきも言った雰囲気と勘かな」
流石直感スキルA…
「こふっ…」
突然沖田さんが血を吐いて倒れた。流石病弱スキルA…なんて言ってる場合か!
「沖田さーん!?」
ほんと大事な時にこのスキルは…
俺は速攻沖田さんに駆け寄って抱き抱える形になって口と手で抑えた時についた血を拭いとった。
「大丈夫ですか?沖田さん」
「え、ええ…まだまだ行けますよ?」
「嘘つかないで下さい。今は安静にしてて下さい」
「うぅ…はい」
俺はよいしょ、と言って沖田さんを抱き上げた。まあ、言ってしまえばお姫様抱っこと言った方が伝わりやすいだろう。もう慣れた。
「大丈夫か?」
この大丈夫は沖田さんに向かって言っているのか、俺に対して言っているのかよく分からないなぁ…難しい。
「お互い慣れてるんですよ」
なんという無難回答。ちなみに俺は本当に慣れてしまって沖田さんを抱っこしてるとか特別な感じはもう薄れているから淡々としているよ。沖田さんは未だに嬉しそうだけど。
ちなみに言っておくけど抱っこにしているのは腰というか背中がちょっとやばいからだ。おんぶだったら腰とか背中とか曲がって痛いから抱っこしてる。
「マスター、重くないですか?」
「もう慣れたよ」
「それって答えになってないですよ」
「沖田さんで重かったら世の女性全てを敵に回しますよ」
「マスターはひねくれてますね」
なんてやり取りもいつも通り。
その光景を見てアーサー王はえっちゃんとジャックに話しかける。
「君たちはあの光景を見て思うところとかはないのか?」
「マスターさんですから大丈夫です」
「お母さんだから大丈夫」
ちょっと?目頭が熱くなるからやめてくれない?色んな意味で。
とにかく今回は沖田さんは不参加だ。が、その代わりにアーサー王がいる。むしろアーサー王1人でも良いんじゃないかと思ってるけどね…
そのまま奥へ奥へと進んでいくうちにまた何かを察知した。ここはスキル不足なのかほとんどよく分からない。ただ何かを察知したって事しかわからない。 この中途半端なのが怨めしい…
そして、最奥に着き最初に目に飛び込んだのは崖の上に立っているジャンヌ・オルタだった。
…ジャンヌ・オルタ?!来る場所間違ってません?なぜ故にここ?
「ようやく来ましたか。随分と遅かったですね」
「いえいえ、そんなこと言わないで下さいな。すいません、一つ聞きたいんですが…」
「何か?」
「来る所間違ってません?」
「間違ってないわよ!」
「いやだって…どうしてここへ?オルレアンでなく」
「私が聞きたいわよ!!」
やべぇ…何か面白い。崖の上下でのやり取りなのがシュール…
「それで…実際なぜここへ?目的は?」
「ふん。誰があなたなんかの指図を受けるものですか。聞きたかったら力づくで聞いてくださいな?サーヴァントが3人、そのうち1人は戦闘不能状態なんて…」
「では推理します」
「は?」
「当たっていたらそれなりの反応をお願いしますね。代わりに間違っていたら俺を火刑に処しても構いません」
「…ええ、良いでしょう」
そこで心配になったのであろう、アーサー王が俺に声をかけてくる。
「鈴桜」
「心配しないで下さいよアーサー王」
「しかし」
「今はまだ俺の計画通りに進んでいます」
そして俺は沖田さんをえっちゃんに預ける。
「沖田さんを宜しくね。えっちゃん」
「お任せ下さいマスターさん、信じています」
おぉ…めちゃくちゃ信じられてるよ俺。
「ちなみに失敗したらオルトライトニングの刑です」
「あ、私は無明三段突きの刑です」
信じてなくね?…
「おいそこの宇宙人、全然信じてねぇだろ。おいそこの人斬り、宝具を使うな」
なんて、軽口を叩いてからジャンヌ・オルタの方に向き直った。ちなみに言っておくけど冗談だってのは百も承知ですからね?
「さて…ではまず呼び出されたものからですが、それは言うまでもなくあなたの後ろにある真っ白い聖杯のようなもの…ですね?」
「…まあ、疑いようがないわね」
「では次は…その聖杯のようなものについて紐解いていきます」
「は?それと何の関係が…」
「推理に順序は付き物ですよ。この聖杯のようなものは出現した土地、ここでは冬木市ですが、そこに縁のあるサーヴァントに縁のあるサーヴァントが呼び出されるのではと仮定づけています。それを裏付けるのは俺達が会ってきた静謐のハサン、セイバーオルタ、そして、あなたです」
「そして、私が最初に出会ったフェルグス・マックロイというサーヴァントもいたよ」
「つまり、静謐のハサンは呪腕のハサン、ないしは百貌のハサン。セイバーオルタはセイバーオルタ自身もあるとは思いますが、ここではアルトリア・ペンドラゴン。フェルグス・マックロイはケルト神話においてクー・フーリンの友にして養父であるとされている。彼が呼ばれたのはそのためだろう。そして、あなたはセイバーオルタだ。同じオルタとして呼ばれたのだろうと俺は思う」
「ふーん…」
「そして、聖杯とは願いを叶える願望器。しかし、この聖杯は願いを叶える…いや、願いを聞き届ける事は無かった。あなたの願いは…」
「……」
「……まず前提としてオルレアンにて出現した、ジル・ド・レェが聖杯への願望として作られたジャンヌ・オルタ。あなたの記憶はあの時、そしてそれを阻止されたという事。故にあなたの願いは『自身を否定したフランスを否定する』という願いではなく、『カルデアのマスターに復讐する』という願いへと変わった。そして、この聖杯の不完全な所はその時に阻止した藤丸さんではなく俺がここに来たという事です」
「はぁ…」
ジャンヌ・オルタは一つだけため息のように息を吐いた。
…頭が痛い、脳を使いすぎた。知恵熱…
「最後になりますが、あなたがこのあなたとはほとんど接点のない冬木市に呼ばれたのは特に理由は無いとは思います。ただ、オルレアンではない場所への召喚が目的だと思いますよ俺は。この聖杯は気まぐれで遊び心に富んだものなのでしょうね…胸糞悪いですが…」
最後の一言は本当に消え入りそうなほど小さな声だった。1度目を伏せてからジャンヌ・オルタを見た。その表情は変わらず見下した目を変えることなくこちらを見ていた。
「…それで?それを言ったことで何があると言うのです?」
「俺の推理の感想は?どうです?」
「そうね…会ってるわよ。で?」
「俺の仕事は終わりです。それでは終わらせますよ、この特異点を」
「ふん、ようやくね。随分と待たせられたものだわ」
そう言って持っている旗を構えた。
するとジャンヌ・オルタの周りに霧が立ち込める。
「な、何よこれ…!」
「…チェックメイトというやつですよ。時間稼ぎをありがとうございます」
「あなたは最初から俺の罠にかかっていたのですよ。そう、最初から、俺達がここに入ってくる時からね」
「そんな…何を」
その霧の影響か、少し苦しそうだ。
「あなたは最初サーヴァントは俺が抱えてた沖田さんを含め3人と言った。今までの俺のパーティーなら何も問題ありませんが、今はアーサー王がいます。つまり、実際には4人必要なのですよ。その意味、分かりますか?」
「…まさか!?」
そのまさかですよ。ジャンヌ・オルタは咄嗟に後ろを振り向いた。しかし、霧によって視界が遮られ半径1m程の視界しかない。その中で声が響く。誰のって?決まっている。
「此よりは地獄。わたしたちは炎、雨、力。殺戮をここに……!」
「なっ!?くっ…これは…ジャック・ザ・リッパー!!」
すいません、竜の魔女…このような事をしてしまう事をお許しください。しかし、俺は出来る限りあなたとは戦いたくなかったのです。あなたが憎悪する事は痛いほど分かります。俺も…あなたほどではないが自らを否定された人間ですから…
「解体聖母!」
俺はその、霧に背を向けた。これで彼女の憎悪が俺に向けられるのなら…それはそれで構わない。
もうアレですかね、戦闘させない話としてタグ付けれそうですね…
もうほんと…邪ンヌ好きの方々本当に申し訳ありませんでした。
言っておきますが、別に私は邪ンヌ嫌いじゃありません。新宿の時とか可愛かったですし