雑種フレンズ   作:華範

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11話だからってセルリアンは出てきませんよ?


第11話 アイツ、死んだ魚の眼しながらノリノリで歌っとるで・・・

 操縦席を運び込み、バスは無事完成した。しかし、バスを動かすのには電池の充電を行わなければならなかった。ボスに探索ルートを案内してもらったが、山までロープが伸びているだけだった。途方にくれていた所でトキが現れた。出会い頭に酷い歌を聞かされ大変な目に遭ったが、かばんとボスを連れて行ってくれることになり、たてがみとサーバルもそれを追って崖を登ることにした。

「じゃあ、山頂で。しっかり頼むで、トキ」

「えぇ。任せて・・・それと」

「ん?」

「あなた、私と同じ目をしているのね」

 そう言うトキの目はひどく悲しげであったが、たてがみにはそれが何を意味するのかはわからなかった。

 たてがみはサーバルと崖を登る。先程はトキの散々な歌を聞かされたが、おかげで昔よく聞いた歌を思い出した。

「ろっこうおろしにーさっそうとー」

「ん?どうしたの」

「いや、アイツラがよう歌っとった事を思い出して」

「あんまり上手くないね」

「トキほどでもないやろ」

「ははははは!」

 2人は大笑いする。

「しかし、ずいぶん高い場所まで来たな」

「昔たてがみちゃんが住んでたのって、どんなところだったの?」

「うーん。ウチが住んでたんは檻っちゅう狭い部屋の中で、外から毎日沢山のアイツラがウチのこと見とったな。騒がしゅうて昼寝出来へんこともあったわ。寒い時はそれほどでもなかったけど、夕方頃から周りがエラい盛り上がっとった。ウチはずっと檻の中やったから何やっとるんかわからんかったけど・・・あぁそれと」

 たてがみはサンドスターの山の麓を指差す。その先には車輪状の巨大な物体があった。

「あれみたいなのがあった気がするんやけど」

「なんだろうね?あれ」

 サーバルとたてがみは休憩を入れながら崖を登り続けた。険しい道だが、サーバルとたてがみは協力し合って登っていく。サーバルはたてがみが登れない急な崖ではたてがみを引っ張り、たてがみもサーバルの足場になるなどして息の合った動きで難所を乗り越えていく。

「たてがみちゃん、さっきはありがとうね。たてがみちゃんの言うとおり、バスを捨てなかったせいでたてがみちゃんが溺れそうになって」

「えぇって。サーバルのことやから、どんなことがあってもバスを捨てへんなて思ったし。サーバルはおっちょこちょいやから、ウチが見とらんと危のうて仕方ないわ」

「そんなことないよって、わぁあああ」

 調子に乗って枯れ木に掴まり、滑落しかけたサーバルをたてがみが捕まえた。サーバルを引き上げると狭い足場で寄り添うように向かい合う。

「えへへ、今のはたてがみちゃんが居ないと危なかったね」

「でも、ウチもサーバルがおらへんとここまで登ってこれへんかった」

「私達、2人で一つだね」

 思わず笑みが溢れる。ついさっき危険な目に遭ったことよりも、たてがみに助けてもらったこと、助け合えることがサーバルにとって何よりも嬉しかった。

「そろそろ行こか」

「うん、かばんちゃんをあんまり待たせたら悪いもんね」

 

 

 サーバルとたてがみが山を登りきると、かばん達が草刈りをしていた。

「あ、サーバルちゃん。たてがみさんも。大丈夫?」

「たてがみちゃんが一緒だったから、全然平気だったよ」

 サーバルは元気に答えた。

「あぁ!ようこそぉ!あともうちょっとで充電終わるから。そしたら紅茶出してあげるから待っててねぇ」

 アルパカと名乗る妙にテンションの高いフレンズもたてがみ達を迎え入れる。

「それで、何してるん?」

「充電に時間がかかるそうなので、このお店のことを皆に知ってもらえるお手伝いができればと考えて・・・」

 草刈りは線を描く形で行われており、何か意味があるのだろう。

「手伝おうか?」

「はい、お疲れでなければお願いします」

 たてがみ達も加わって草刈りはあっという間に終わった。

「それで、結局何を作っとったん?」

「それは、高いところから見たらわかりますよ」

 かばんはトキにアルパカを持ち上げさせた。アルパカは非常に楽しそうだ。

「何何?何が見えるの?」

「僕たちは屋根の上から見ましょう。電池を取りに行かなければならないし」

 カフェの上に登ってみると、かばんの意図が漸く理解できた。刈り取られた草がカップの模様を描いていたのだ。

「すっごーい!」

「ほんま、ウチらには思いもつかんことをやってくれるわ」

「たてがみさん達が手伝ってくれたおかげです。早く電池を回収しましょう。充電している間はお湯が沸かせないみたいなので」

 電池を回収し、ジャパリカフェのテラスで紅茶を待つ。アルパカのお茶は絶品で、一息つくには最高だった。驚くことべき事に聞くに堪えないトキの歌もいくぶんかマシになっていた。

「おう、大分エエ感じになったやん。じゃあ、ウチも一曲」

 たてがみも歌ってみるが、こちらは歌い方を何とかしなければ改善しそうにない。

「そういえば、ろっこーおろしって何?」

「ウチもようわからん」

 その質問に答えたのは意外にもアルパカとトキだった。

「あぁ、颪ってのは、寒い季節に山から吹き下ろす冷たい風のことだよ」

「山脈を飛んでると、たまに気流が乱れて危ない時があるわ」

「へぇ、そうなんだ」

 山颪の知識を得たたてがみ達は帰路につくこととなった。ボスがロープウェイに足こぎカーゴを付けてくれたので、安全に帰ることができそうだ。

「じゃあ気をつけてね。バス?が動くようになるといいね」

「はい、ありがとうございました」

「私の歌が聞きたくなったら、いつでも呼んで」

「次に会うまでに上達しとくんやぞ。あと・・・その、あんさんと同じ目をしてるっちゅうのはどういう意味なん?」

 たてがみは気になっていたことをトキに尋ねた。

「それは・・・いえ、いいわ。姿形なんて気にしなくても、あなたはきっと大丈夫だろうから」

「そっか・・・トキも元気でな」

 たてがみがペダルを漕ぎ出してカーゴは発進、一行は高山ちほーを後にした。離れていく一行に手を振るトキの表情は寂しそうだ。

「私もあんなふうになれたらなぁ」

 トキは小さく呟く。彼女が求めるのは、ルーツを同じくする「仲間」であるが、たてがみとサーバルの間に感じた「友情」に、心が揺らいだのだ。

「寂しいんなら、お見送りに行ってもいいよ。私はお湯沸かして待ってるから」

 アルパカは気を遣ってくれる。それも悪くはない。だがそれに気を取られることは、仲間を探していた自分のあり方を変えてしまうかもしれないという不安があった。

「大丈夫、戻ってもう一杯飲みましょう」

「そーだね」

 トキは心に刺さる痛みを抑えようとカフェへ歩き出す。そのとき、空からフレンズが現れた。

「ここで何やってるの?上から変なもの見つけたんですけど?あと何か歌も聞こえたんですけど?」

「あぁ、トキちゃん!」

「ウソ・・・」

 自分によく似たフレンズにトキの心臓が踊る。アルパカも客を迎える為に急いで店に戻ろうとした。すると、カフェの扉の前にもう一人フレンズが居た。黄色と黒の縞模様が特徴的な大型のネコ科フレンズである。

「さっき歌が聞こえたんだ。私の歌だと思うんだがあれは誰が歌ってた・・・」

「ふああああ!ようこそジャパリカフェへ!とにかく中入って!お茶準備するから!トキちゃんも手伝って!」

「え?私・・・」

「ちょっと!お茶って何?すっごく気になるんですけど?」

「お茶はいいから私の歌について詳しく教えてくれ!」

 笑顔と賑わいの絶えないカフェ、ジャパリカフェが本格的に動き始めた瞬間であった。

 




あんまりアルパカさんとの絡み作れなかったです。ごめんね!
どうしてもたてがみちゃんとサーバルのイチャイチャが書きたかったんだ。

最後にやってきたもう一人はガイドブックの表紙を飾ったあのお方です。多分たてがみより強くて、縄張り意識がものすごく強い方です。物語には関わらないと思いますが・・・

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