雑種フレンズ   作:華範

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どうも、初めての方は初めまして。
久しぶりの方はお久しぶりです。華範と申します。けものフレンズが楽しくて、就活中にもかかわらず書いてしまったのであげます。
他の連載小説もほっぽりだしてる手前、今回も続くかわかりませんがどうぞよろしくお願いします。


第1話 起きたらなんか二足歩行しとったで

 檻の中で生み出され、檻の中で滅び・・・

 

 

 サバンナの地平線に、太陽が現れる。暗闇に冷やされた大地に火が灯り、次第に光と熱が世界を覆い始める。太陽の光は、昨日遠くの火山から吹き上げられた虹色の粉塵に乱反射し、美しいプリズムの芸術を早朝の空に描いた。太陽が登る頃には、虹の粉塵は次第に沈静化し、いつもの青空が頭上に広がっていた。

「・・・うっ・・・ふあぁ・・・よう寝たわ・・・」

 眩しい光と、キラキラと降り注ぐ星の砂の音によって少女は目を覚ました。少女は身体にまとわりつく眠気を飛ばすため体を伸ばしながら大きなあくびをし、周囲を確認するために『2本足』で立ち上がった。

「へ?」

 なんとなく立ち上がった後、自分の行動に違和感を覚えて慌ててしゃがみこむ。地面に両手をついて四つん這いになり、暫くペタペタ地面に手をついた後、改めてゆっくりと立つ。

「・・・ウチ、何で二本足で立ってるんや?」

 お留守になっている二本の『前脚』を見ながら少女は呟く。地面を蹴り出すための分厚く、鋭い爪の生えていたはずの手は、5本の細い指を持つものに変わっていた。恐る恐る指を動かすと信じられない程にフレキシブルな動きをする。腕も背中に回すことが出来るくらいに可動域が広い。

「背中痒なっても困らんな」

 少女はそんな事を言いながら、腕が動くならばと身体のあちこちに触れてみる。頭の天辺を触ると耳が見つかった。頭部の毛は非常に多くかつての威厳もそのまま。しかし、顔は毛一つ覆われてない上に側頭部に何故か耳がもう1対あった。

「うーん、こっちも聞こえてるみたいやけど・・・」

 次に首元を確かめる。首はもふもふとした立派な鬣が覆っていた。

「ちゃんとあるな、よかった。これこれ、これがあってこそや」

 身体に手を回す。細身だが力強い自慢の体躯は胴と手先、足先はしっかり毛皮で覆われていたが、爪を引っ掛けてみると剥がれてしまう。慌てて手を離した。痛みはない。不思議なことに、この皮はいくら引っ張ったり、二本の指でつまんだり(彼女はつまむという概念すら知らないのだが)しても痛くはない。どうやらこの毛は地肌から生えているわけではないらしい。

「この毛皮、なんなんやろ・・・柄はそのまんまやけど肌にひっついてないし。ところどころ肌が出てて落ち着かんわ」

 自分の体に劇的な変化が起きていることにただただ驚く。そのうち尻尾から脚まで調べ上げた。

「まるでアイツらそっくりやな。そういやここにはおらんな。いっつもどこにいても現れてたのに・・・」

 自身の変化を調べ終えて、少女は辺りを見渡す。そこは低い枯れ草に覆われ、まばらに岩や木が見えるだけの壮大な大地が広がってた。少女は見たこともない遠い地平に目を丸くした。

「うーん。めっちゃ広そうやな。ま、歩いたら壁に着くやろ」

 少女はそう言って未知の大地へと足を踏み入れた。草を踏みしめ、かき分け、涸れ谷を通り、何も考えずまっすぐに歩き続けた。しかし、歩き始めたときには真上にあった太陽が傾く頃には、それが徒労であることが解ってきた。

「ホンマどないなってるんやろ・・・壁もアイツラもおらん。腹も減ったし喉もカラカラや」

 サバンナの最も暑い時間帯を延々と歩き続けたことは、彼女の身体にとって大きな負担となった。どっと疲労感を感じた彼女は、とりあえず木陰に避難する。木の幹にはよくわからない蔦でくくりつけられた木の板が貼りついていたが、彼女にその意味はわからなかった。根本には柔らかい塊があったので、その上に寝転がってみると地面よりはいくぶんか気持ちがいい。このまま夜まで暑さを凌ぎたいが、その前に自分が干物になる予感がしてならず、嫌でも目が冴えてしまう。

「うーん。この檻、どんだけ広いんやろ・・・」

 前は端から端まで50歩もかからないような狭い場所に住んでいた。これだけ真っすぐ歩いたことは彼女にはまったくない経験だった。もしかすると自分は行くべき方角を間違えているかもしれないという考えも頭に浮かぶ。

「このままがむしゃらに歩いても埒が明かんわ。そうなると・・・」

 少女に欠けているのは今いる場所の情報である。それを得るには兎にも角にも視界を確保しなければ始まらない。もっと遠くを見るには・・・

「・・・久々にやってみるか」

 木の上に目を向ける。少女は小さな獣であった頃は木登りも出来た。体が大きくなると出来なくなったのだが、今の彼女は力があり、身体も軽く、昔のように木登りも出来るかもしれない。

「よっと」

 木に指を引っ掛けて上る。思った通り、いや、それ以上にスルスルと登れた。木の上からは果てしなく続く草原と、その向こうに虹色の煙を吹き出す山が見える。しかし、水の有りそうな場所はおろか雲ひとつ見つからない。

「こりゃあかんわ・・・ほんまどないしよう」

 少女は途方に暮れて考え込んだが、腹の虫はそれすら許さないほど水と食べ物を求めた。しかし、同時に木の上からみた広大な大地は、彼女の魂の奥に眠る何かに響くものがあった。

「でも、ほんまエラいところやな。ほんま・・・キレイや」

 本能が感じる懐かしさ。彼女にとってはこの場所は見たこともない土地だ。しかし、それよりも遥か昔、彼女が生まれるまでにその血が辿ったであろう記憶の根源をこの大地に感じ取ったのである。

「・・・とりあえず、あの丘までがんばろっか」

 少女は木から少し離れたところにある丘を見た。奇跡的に生きるにしても、このまま死ぬにしても、この母なる大地がよく見える場所に行きたい。少女は木を素早く木を下りると、その足で目指す丘を登り始めた。

 




主人公ちゃんは正体不明フレンズです。アプリに登場しなかったフレンズでなおかつかつて実在した動物なので、それぞれ予想しながらお楽しみください。

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