復讐の劣等生   作:ミスト2世

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生徒会

 翌日。

 竜也とリーナは、その日も一緒に登校していた。

 そして、正門に差し掛かった時である。

「竜也く~ん!」

 と、叫びながらやって来るのは、生徒会長の七草真由美である。

(竜也くん……?)

 二人は、弱冠の違和感を感じながらも、挨拶を返す。

「そちらはアンジェリーナ=クドウ=シールズさんね。おはよう。お二人にお話があるんだけど、今日のお昼、生徒会室に来ていただけるかしら?」

「…………」

 二人は互いに顔を見合わせる。が、真由美の笑顔に押される形で同意するしかなかった。

 

 昼。

 二人は生徒会室にやって来ていた。

 早速、生徒会メンバーの自己紹介が行なわれる。

 会計の市原鈴音、風紀委員長の渡辺摩利、書記の中条あずさ、そして……

(深雪……)

 と、自分の妹である司波深雪がこの場にいることに、初めて気づいた。

 リーナも、深雪を見つめる。

 自己紹介が終わり、真由美は二人に席につくように勧める。

「それで、俺とリーナを呼んだ理由はなんでしょうか?」

「貴方たちに、生徒会に入っていただくことを希望します」

「は?」

 二人は驚く。そして竜也が、

「理由は?」

 と尋ねると、

「貴方たちの成績です。聞くところによると、総合成績では2人とも深雪さんに次ぐ次席だとか」

「…………」

 二人が顔を見合わせる。

 実はこの二人、その気になれば総合成績で1位をとることも不可能ではなかった。だが、首席になれば何かとうるさくなる可能性を考慮して、少し手を抜いていたのである。

(……もう少し、手を抜いておくべきだったかもしれないな……)

 そう心の中で思う二人。

 その間も、真由美の言葉は続けられる。

「特に竜也くん。貴方は入試の成績はトップだったそうですね」

「所詮はペーパーテストの成績。魔法科高校で必要な実技ではありませんが」

 竜也は平然と言うが、

「それでも、7教科平均96点、中でも魔法理論と魔法工学は小論文含めて満点という結果は、私では絶対に無理でしょうね……」

「…………」

 竜也は言い返せない。

 代わってリーナが言う。

「会長。我々に何をしろというのですか?」

「貴方たちには、風紀委員をしてもらいます」

「風紀委員……?」

 二人は、再び顔を見合わせる。

 中条あずさが、風紀委員は魔法使用の校則違反者の摘発と、魔法を使用した争乱行為の取締りであると説明する。

(つまり、戦闘力がものをいう仕事……ってわけか……)

 竜也は、リーナを見つめる。

(面白いじゃない。事務的な仕事なら私には向いてないけど、身体を動かす仕事なら得意だしね)

 リーナが頷く。そして、

「わかりました……その仕事、お受け……」

 その時だった。

「私は反対です」

 と、生徒会室の入口からやって来た少年がいた。

 竜也とリーナには見覚えがある。

(こいつは確か、昨日、七草真由美の隣にいた男だったな……)

「理由を言ってもらおうか? 何だ、服部刑部少丞範蔵副会長」

 渡辺の言葉に、服部は慌てて、

「フルネームで呼ばないで下さい!」

「じゃあ服部範蔵副会長」

「服部刑部です!」

「そりゃ名前じゃなくて官職だろ。お前の家の」

「今は官職なんか……ってそれより!」

 と言いながら、服部が竜也をキッと睨みつける。

「その一年生を風紀委員に任命するのは反対です」

「だから何故だ?」

「風紀委員には学内の風紀を正す目的があります。今年の次席であろうと、内面に問題があれば勤まるとは思えません」

「問題とは?」

「その竜也という少年、聞くところによると一科生であるにも関わらず、二科生と仲良くしているとか。しかも入学式ではウィードが座る席にいたと確認もとれています」

 すると、竜也の隣にいたリーナが顔色を変えた。それに対して竜也は面白そうな顔で服部を見つめる。

「ゆえに、私は副会長として大黒竜也、並びにアンジェリーナ=クドウ=シールズさんの風紀委員就任に反対します」

 すると、リーナが席から立ち上がった。が、竜也がそれを制する。

「服部副会長、俺と模擬戦をしませんか?」

「なに……?」

「別に風紀委員になりたいわけではありませんが、俺の実力を過小評価されるのも気に入りませんし、リーナのほうは切れる寸前みたいですからね」

「……俺に……勝てるとでも思うのか?」

「さあ……それはやってみないと何とも……」

 すると、

「待って竜也。その試合、私に譲って」

「リーナ?」

 これには、竜也も驚く。

「私は一科とか二科とか、差別するのは気に入らないわ。二科でもエリカや美月みたいに能力に秀でている魔法師はたくさんいる。それなのに、仲良くしただけでそこまで言うなんて、私には我慢ができないわ」

「…………」

 竜也はリーナの直情的な性格に困り果てた。

 服部のほうも、あくまで竜也に言っているつもりだったから、リーナの態度には驚いている。しかも、実を言うと服部が気に入らないのは、前日は「大黒くん」と呼んでいた竜也を、翌日には「竜也くん」と呼んでいたのが気に入らない私情差し挟みが大きな理由で竜也の風紀委員入りを阻止して生徒会から遠ざけようというのを目的にしていたから、リーナがここまで怒るとは考えていなかっただけに、慌てていた。

「どうします? 服部副会長。リーナはあなたとの模擬戦を希望しているみたいですけど?」

「……女性に手を出せるわけがないだろう……」

 すると、

「あら? 副会長は男女差別までなさるのかしら? 私自らが副会長との模擬戦を望んでいるのです。遠慮はいりませんわよ」

「…………」

 服部は渡辺を見つめる。そして渡辺は竜也に視線を向ける。

 竜也はその視線に頷き、そして渡辺は真由美に視線を移し、真由美が頷く。

「では、生徒会長の権限により、この模擬戦を正式な試合として認めます」

 渡辺が続ける。

「時間はこれより30分後。場所は第3演習室、試合は非公開とし、双方にCADの使用を認める」

 すると、

「場所の変更を希望します」

 と、リーナが言い出した。

「変更だと?」

「ええ。運動場にしてほしいのですけど」

「理由は?」

「広い方が戦いやすい。それだけです」

「服部……お前はどうだ?」

「異存はありません」

「わかった。アンジェリーナ=クドウ=シールズさんの希望を了承する。ならば場所は運動場だ」

 そして両者共に、試合の用意をするために動き出した。

 

 運動場は、既に多くのギャラリーが押しかけていた。

 それはそうである。入学したばかりの金髪の美少女・リーナと生徒会副会長である服部が試合をするというこの面白い状況を見逃せるわけがないのだ。

「どっちが勝つと思う?」

「そりゃ服部副会長だろ。副会長は当校でも5指に入る実力者だぜ」

「あの金髪少女……かわいそうにな……」

「まあ、副会長が手加減して勝つだろうさ」

 そんなギャラリーの噂話を聞きながら、竜也はただ一人思っていた。

(かわいそうにな……あの副会長……)

 そこに、エリカと美月、それに友人になったばかりの西条レオンハルト、そして同じ1年B組のクラスメイトである十三束鋼、明智英美がやって来た。

「どういうことなの? 竜也くん。これって?」

 エリカがこのメンバーを代表して尋ね、それに答える竜也。

 美月が心配そうに言う。

「服部先輩は当校でも実力者と聞いています。止めた方がいいのでは……」

 すると、

「心配ない。リーナなら負けないよ」

 と、平然とした口調で言う竜也。その態度に、レオが驚く。

「なんで、そんなことが言えるんだよ」

「場数が違いすぎるのさ」

 

 リーナと服部。両者の準備が整った。

「では両者。位置について!」

 審判は渡辺が務めている。

「ではルールを説明する。相手を死に至らしめる術式ならびに回復不能な障害を負わせる術式は禁止。直接攻撃は相手に捻挫以上の負傷を与えない範囲であること。武器の使用は禁止。素手による攻撃は許可する。勝敗は一方が負けを認めるか、審判が続行不能と判断した場合に決する。ルール違反は私が力ずくで処理する。以上」

 説明が終わる。そして、

「始めッ!」

 と、試合開始の火蓋が切って落とされた。




駄文ばかりで申し訳ありません。

次回は、「リーナと服部と」を予定しています。

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