復讐の劣等生   作:ミスト2世

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深雪と周公瑾 その2

 そこに、美少女と美青年が対面していた。

 美少女は司波深雪、美青年は周公瑾である。

 深雪の後ろには護衛として桜井水波もいる。水波も美少女に入る容姿の持ち主であるが、この二人と比較すると残念ながら一段階は見劣りする。

 それはさておき。

「お手紙は拝見しました……それで、お話とは?」

「ええ……周公瑾さん……私と、手を組みませんか?」

「…………」

 周公瑾は、目の前にいる少女を凝視する。

 まだ15歳の小娘なのに、醸し出している雰囲気は並ではない。何か、大人を感じさせる何かがあるように感じる。

「手を結ぶ……つまり、私と貴女が協力関係になると言われたいのですか?」

「ええ……もっと言えば、貴方の主人であるジード・ヘイグさんとね」

「!」

 周がその瞬間、さすがに目を見開いた。

 この少女は自分のことをかなり詳細に調べ上げている。調べ上げた上で自分と会見している。ただの小娘だと侮れない。周はそう思った。

「なるほど……。ですがそうなると、私個人の判断では了承しかねますがね……」

「そうですか? 貴方はジード・ヘイグさんにそれなりに信任されているんでしょう? 貴方が口説けばあの御仁は私の申し出を受け入れるのではないですか?」

「…………」

 周は改めて深雪を見つめる。

 今の自分は20代前半であるが、それでも10近い歳の差がある。実際には祖父と孫娘くらいの差があるのだが、目の前にいる女性はそれを思わせないものを持っていると思った。

 周が言う。

「仮に、我々と貴女が手を結んだとしましょう……」

「ええ」

「その場合、我々には何の利益がありますか?」

「……共に力を合わせること、敵対することが無くなります。これでも十分な利益だと思いますが……」

「それだけでは残念ながら我が主を口説く自信が私にはありません。何しろ我々は、反魔法国際政治団体ですからね」

「…………」

「そして貴女は、我々が忌み嫌うアンタッチャブル、四葉家の御当主さまだ。これだけでも我々と貴女には手を結ぶことが難しいことはご理解いただけていると思いますが」

「そうでしょうか? 貴方は先ほど、反魔法国際政治団体とおっしゃいました。ならば、その活動を我々に向けるよりも、今物凄い勢いで実力をつけている魔法師やその団体に向けるのが筋ではないですか?」

「……何のことを仰っておられる?」

「スターズ……USNAが誇る世界最強の魔法師実行部隊のことですよ……まずはこれを潰すのが優先事項ではないですか?」

「…………」

 ここで、深雪はお茶を飲んで一服する。

 その間に、背後にいる水波が紙媒体の書類を取り出して周の前に広げた。

「……これは……?」

 その紙媒体には、ある人物の写真と経歴が載せられていた。

「スターズ総隊長・大黒竜也……それに副隊長のアンジェリーナ・クドウ・シールズですよ」

「……見ればわかる……それで?」

「横浜の戦いのとき、大亜軍の呂剛虎がやられたのはご存知ですよね?」

「ああ……」

「彼を殺ったのは大黒竜也ですよ」

「!」

 周が驚く。乱戦の混乱とその後の逃亡のため、その情報はまだ周には届けられてなかったのだ。

「ついでに言うなら大黒とアンジェリーナ、この二人は戦略級魔法師です」

「!」

「大黒のほうは公表されていませんが、アンジェリーナのほうは十三使徒の一人、アンジー・シリウスですよ」

「…………」

「我が四葉家も、この二人にはたびたび痛い目にあわされていましてね……そこで、頼もしいパートナーがほしいと思っていたんですよ」

「……我々が、そのパートナーだと?」

「ええ」

「…………」

「いいですか周公瑾さん。私はまず、協力してスターズを倒そうと言っているんです。もし、貴方もしくは貴方のご主人がスターズを倒した後、我が四葉を倒したいと言われるなら、それでもよし。しかし今、我々が手を結ばなければ、我が四葉も、貴方がたもいずれスターズの餌食にされてしまいます。そうなる前に、手を結ぼうと言っているのです」

「…………」

 周が目を閉じた。

 静寂の時間が過ぎてゆく。それが10分ほどしてから、周が答えた。

「いいでしょう。主を口説いてみましょう」

「ありがとうございます」

 深雪が頭を下げた。

「だが、ひとつだけ答えていただきたい」

「なんでしょうか?」

「貴方は日本の国防軍と手を結んでいるはずだ。その関係はどうするおつもりで?」

「ああ……そのことなら、気にする必要はありません。もう、国防軍との協力関係は白紙に戻そうと思いますから」

「…………」

「もともと、貴方を追えという命令も、私が四葉の当主になったことで、私を試そうとする国防軍のくだらない思惑によるものです。私は貴方の実力を買っています。役に立たない国防軍と手を結んでいるより、貴方がたと手を結んでいたほうが、まだ役に立ちそうですからね」

「では、私を追跡する任務は?」

「それはかなわなかったと言っておきます」

「しかしそう答えれば、貴方と国防軍の関係が険悪になるのでは?」

「険悪になっても、奴らにできることなんてたかが知れています。私は、貴方がたの力を頼りにしています。まずは共通の敵・スターズと共に戦いましょう」

「…………」

 そして、会見が終わった。

 

 この数日後、四葉とブランシュ総帥・ジード・ヘイグの間で正式に協力関係が結ばれることになった。

 こうして両者は、強敵・大黒竜也こと司波達也に共にあたることになったのである。




次回は「リーナ脱走」です。

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