復讐の劣等生   作:ミスト2世

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復讐への序曲

2085年。4月。

この日、日本のとある場所で、のちの運命を決める出来事が起ころうとしていた。

…………。

「真夜ッ!」

「何かしら、姉さん?」

二人の姉妹が、そこに対峙していた。

姉は司波深夜、妹は四葉真夜である。

「達也を処分する命令を出したというのは、本当なのッ?」

「ええ。あんな魔法の才能が無い落ちこぼれは一族の恥。今まではお父様の情けで生かせてきましたが、最早不要です。あの出来損ないには、消えてもらいます」

「ッ!」

姉が妹を睨む。

「あの子は、私がこの腹を痛めて産んだ私の子よッ」

「だから?」

「だから……?」

「達也は一般的な才能がない落ちこぼれ。我が一族の恥でしかありません。これは一族の総意です」

凛とした妹の声に、最早何を言っても無駄と悟る。

深夜が魔法を発動させようとした。

その瞬間、真夜が片手を上げる。

すると、ハイパワーライフルを持った使用人が数名、現れて銃口を深夜に向けた。

「姉さん。悪いけど、しばらく拘束させてもらいます」

そして、CADを奪われ、使用人に両腕を拘束されて深夜が連れていかれる。そんな姉が、

「ッ。許さない、許さないわよ、真夜ァッ!」

と、恨みの声を上げるのを、真夜は平然と受け流していた。

 

司波達也はその頃、四葉屋敷の母親の部屋にいた。

一族から出来損ないと蔑まれ、落ちこぼれと罵られる少年にとって、心が休まるのは母親とのひとときだけである。

母親は自分が笑えば笑ってくれる。その愛情で自分を包み込んでくれる。だから、この幼さで戦闘訓練を受けても理性が保てるのである。

だが、この日。いつも自分を笑顔で迎えてくれる母が自室にいない。

「どこに行ったのかな?」

その時である。

いきなり、部屋のドアが蹴破られて、数人のハイパワーライフルを構えた武装兵が侵入してきた。

「ッ!」

達也が驚く。そんな彼に無慈悲に、

「撃てッ!」

と、無慈悲に武装兵の中央にいた男が命じる。

達也は咄嗟に、別の窓を体で叩き割り、外に出た。

「逃がすなッ」

と、背後から武装兵の声がした。

 

達也は懸命に逃げた。

彼は、自分が追われる理由がわからない。

ひたすら逃げた。

そこへ、

「達也さまッ」

と叫びながら現れたのは、母のガーディアンである桜井穂波である。

「穂波さんッ」

「良かった。ご無事ですね」

「穂波さん、母さんは?」

すると、苦虫を噛み潰したような表情で穂波が言う。

「深夜さまは…………拘束されました…………四葉に」

「ッ!」

「そして、真夜さまにより、達也さま貴方に対する殺害命令が下されました」

「殺害…………なんで、なんでだよッ。なんで僕をッ」

少年が泣き叫ぶ。そこへ、

「言うまでもないでしょう。貴方のような不良品は四葉には不要ということですよ。達也さま」

そして、ハイパワーライフルの一斉射撃。

呆然とする達也の前に、穂波がわが身をもって庇う。

武装兵の一人が、ヘルメットを外した。

「ッ? あ、あなたは⁉︎」

そこにいたのは、叔母の側近のひとりである青木だった。

「青木さんッ。何でこんな真似をッ」

「申すまでもないでしょう。貴方のような出来損ないは四葉には不要ということです。恨むなら、自分の力の無さをお恨み下さい」

そして、再び発砲。

だが、穂波が傷つきながらも庇う。

「ほ、穂波さん……」

「た、達也さま、お逃げください…………」

穂波が苦しそうな息の中から言葉を紡ぐ。

「逃げるんです。逃げて、生きて、生きて、生き延びて…………」

穂波が吐血する。

「生き延びて、希望をつかんで下さい」

それを見た青木が叫ぶ。

「逃がすなッ。二匹とも始末しろッ!」

再び、ハイパワーライフルの一斉射撃。

穂波はそれを受けながら、最後の突撃。

それを涙を流しながら逃げる少年がいた。

 

達也は涙を流しながら逃げていた。

だが、彼の前に、川が現れた。数日前からの大雨で増水し、濁流になっている川が。

達也は迷った。戻ることはできない。

橋を見つけるしかないか、と思った。

だが、

「いたぞ、あそこだッ!」

青木が、数名の武装兵と共に現れた。

最早逃げ回るのも無理である。

達也は、濁流を見つめた。

そして、意を決した。

なんと、彼は濁流に身を投げたのである。

そして、水音と共に姿が見えなくなった。

 

「くそ、ガキが川に飛びこんだぞッ」

青木が叫ぶ。

青木と配下の武装兵が、水面にハイパワーライフルを撃ちまくる。

反応がない。

武装兵のひとりが言う。

「数日前からの大雨で、この川は増水しています。あのガキにこの川を泳げるわけがありません。溺れ死ぬのは確実です」

だが、

「ダメだ! すぐに捜索隊を編成し、あのガキの遺体を捜せッ!」

「しかし…………」

「いいから捜せ。遺体を見つけなければ、真夜さまも納得はされないはずだッ」

そして、捜索隊がどんなに捜索しても、四葉の総力を挙げた捜索でも。

達也は見つからなかった。

 

この日から、運命が大きく揺れ動くことになるのである。




初投稿です。至らない部分もたくさんありますが、よろしくお願いします。

原作と違い、母親、深夜は達也想いです。

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