ザンク出現から2週間。
「なかなか見つからないな」
現在クレーエは宮殿内の執務室で帝都の裏路地を見ていた。
使い魔として使役している鴉と視界を同調してザンクを探しているが、裏路地にすら姿を現していない。
にもかかわらず被害者は増えていく一方。警備隊からも被害が出てきている。
「やっぱセリューが離反した穴は大きいな。早々に
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「は~あ。忙しいなあ」
ウェーブのかかった長い金髪に黒いビジネススーツを着込んだ女性がため息を吐き出す。スーツの胸元には赤い鴉のバッチが付いている。
ここは帝国のはるか南に存在する革命軍本部。彼女は革命軍の密偵隊のメンバーの一人だ。いつも真面目で正義感の強い女性で通っていることで有名である。
―――――――足元に、革命軍の重役の死体が無ければ。
「仕事は仕事だからいいけど、バレたら殺されるし、チェルシーみたいに帝具持ってないから逃げ切れる自信ないし・・・・・・ん?」
頭を抱えながらうろうろしていると、窓の外から鴉が飛んできた。よく見ると、鴉は手紙を銜えており、それが彼女宛であることが伺える。
「はーあ。この忙しいときに」
ま、あのカラス君だから仕方ないか。とつぶやきながら手紙を受け取った。
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夜。夜間の外出禁止令の布かれた街は人気が一切無く、不気味な静けさを漂わせていた。
「奪え、望むままに」
魔術行使のスイッチを入れ、ザンクへ憎悪を抱く人間の霊を呼び出し、手のひらサイズの人形に憑依させる。
(30機位動かしてるから1機位あたりを引いても・・・・・・)
そのとき、ガキン!という金属音を聞いた。
「・・・・・・!」
音のしたほうへ、走る。
そこでは、一人の少年と、奇妙な目の形をした装飾品を付けた大男が戦っていた。
「おやおや?とんだ珍客が来たものだ」
「貴様がザンクか?」
こちらに気付いたザンクが振り向くと、黒い奇妙な仮面をつけた男が立っていた。
「我が名はゼロ。貴様を倒しに来た」
そう言って、剣を構える。
「ふはははは!これはこれは、愉快な男だ!」
ザンクも駆け出し、剣を振り下ろす。それをゼロは避け、反撃と言わんばかりに、横に薙ぐ。
ザンクはそれを後ろに下がって避ける。
「それが帝具の能力か?」
一気に踏み込み、突きを放つ。が、剣をで防御される。
「・・・・・・!」
「どうやら、仮面越しでは洞視は出来ないようだな」
「だがまだ未来視がある!」
斜め上からの斬り下ろし、膝蹴り、拳打、刺突を繰り出す。が、まるでそこに攻撃が来ることが分かっているかのように回避される。
「ちっ。やはりあと一手足りないか」
「何手繰り出そうが無駄だ!そのまま首を切り落として、仮面を剥いでやろう!」
そう言いながら首に当たるように振るわれる剣。
石畳から急に刃が生えて来なければ、剣はゼロの首を斬り落としていただろう。
「やはり未来視にも限界があるようだな。条件はクリアされた、後は貴様を狩るのみだ!」