「さて、俺も俺で準備をするか」
そう言いながらコートを脱ぎ、作業用の机の上に乗せる。
ここはクレーエの自宅内にある工房。現在はナイトレイドの標的となっている組織へ攻め込むための装備を考えていた。
(もしナイトレイドと遭遇したとしても、なるべくは殺したくない)
理由としては、ナイトレイドの拠点や他の構成員の情報吐かせるためだ。
「まずは雷芯とレッドスケイルは必須だな」
雷芯と呼ばれた針状の道具をコートの袖の中に6本程仕込む。この礼装は直接戦闘時に剣としても使用可能なスタンガンのようなものだ。但し、人間がすぐに気絶するレベルの電流が流れるため、扱いには注意が必要である。
次いで持っていくレッドスケイルは、クレーエ専用のブルーブラスター系の魔弾銃である。クレーエは銃等を手で持って使用することを好まない為、ガントレットに付けて使っている。
「殺傷能力が落ちるな」
そう言いながら薄い、炭素製の刃のが付いたナイフを持っていく。
電磁硬化式
その次にコートに仕込んだのは鉄並みの硬度を持つ糸の束だ。これはカラリパヤットと呼ばれる武術を使う異民族の技と共に盗んだ、ウルミンという武器を模した礼装だ。束ねて槍や盾、剣としても運用可能だ。
「さて、行きますか」
~~~
「将軍、包囲完了しました」
「よし、ナイトレイドも来てないみたいだし。包囲しつつ突撃!虫一匹逃がすべからず!」
「「「了解!!」」」
帝都警備隊とは別に、鎧姿の兵士たちが槍や剣を構えながら突撃する。
彼らはロランの率いている戦闘部隊、騎士団である。
「西の王国を出て、仕事を続ける気分はどうよ?」
クレーエは自分の隣で騎士団の指揮を執る老齢の男に尋ねる。
「楽しいですとも。こういった虫を潰すのは」
「毎日水みたいな麦粥食べてるだろ。芋を食え、芋を」
ちょうど制圧し終わったのか、投降した護衛として雇われていた傭兵を縛り上げていく。
「よし、拠点にあった物のリストを作って、明日提出するように。解散!」
「「「了解!!お疲れ様でした!」」」
敬礼し、拠点の中に入る騎士団。彼らはクレーエ軍の中でもクレーエと帝国への忠誠心の高い者のみで構成されている。
(まだ始まったばかりだからいいとして、この先もこうだと少しまずいな)
この作戦も全て、ナイトレイドを捕まえるためのものだ。
「この先も来ますかね、ナイトレイドとやらは」
「来てもらわねば困る」