思い付きのネタ集   作:とちおとめ

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まさかの連日投稿できるとは思わず、これも奈央の可愛さなのかと戦慄しています。


今回、ようやく間男が出てきます。
原作の序盤が始まります。


悠木奈央の場合 2

 優太と奈央が一線を越えた記念日から数ヶ月が経過した。

 あれからも時間があれば……まあなければ作るの精神のような感じで二人はよく体を交えた。回数を重ねれば重ねるほどお互いのことをよく知ることになる。どこが弱いのか、どうするともっと気持ちよくなってくれるのか等、それほどに優太と奈央は深い繋がりを得た。

 異性に愛されると女性は美しさに磨きが掛かるとは誰の言葉だったか、その言葉が示すように奈央は一段と美しく可憐になっていった。大学のキャンパス内で多くの男がすれ違いざまに振り向くほど、奈央は注目されるようになった。それは彼氏である優太にとって誇らしいことではあるのだが同時に不安の種にもなるのは当然だった。しかし奈央はというととにかく優太の傍に居た。優太の傍は自分のもの、自分という存在は優太だけのもの、それを周りに知らしめるかのように奈央は優太の傍を離れなかった。多くの男はそんな光景を見せられては諦めざるを得ず、優太と奈央のカップルにちょっかいを掛けるような男は現れなかった……一握りを除いては。

 

「……それで、用はなんでしょうか?」

「あはは、そうだね。単刀直入に言おうか」

 

 場所は屋上、そこに居るのは奈央と名前も知らぬ男だ。光景と雰囲気からして告白現場なのは想像に難くない。そう、彼氏が居るにも関わらずこうして呼び出して無謀にも告白する男が先ほど言った一握りだ。奈央としてもこんなめんどくさいイベントは早く終わらせたいものなのだが、延々と付き纏われるのも嫌だったためこうして呼び出しに応じたわけである。一応ここに来る前に優太を含め友人たちには話をしていた。そのせいもあってか、男は気づいていないみたいだが、屋上のドアの向こうでは皆が目を光らせて男の動向を気にしている。中には箒を持って鋭い眼光をしている女友達の姿もあり、良い友人たちに恵まれたなと男の存在そっちのけで奈央は胸が温かくなった。もちろん彼女たちだけじゃなく優太の存在もある。何かあればすぐに駆け付けてくれることだろう。

 

(……早く終わってくれないかな。放課後に優太君とデートする予定なのに。その後は……私の家で……きゃっ♡)

 

 男の存在眼中になし、全く持って男が哀れである。

 心の中でさえ全く相手にされていないことを知る由もない男は、気合を入れるかのように拳を握りしめる。そして成功することのない告白の言葉を奈央に放つのだった。

 

「悠木さん、貴女が好きです。僕と付き合ってください!」

「ごめんなさい」

 

 奈央は切り捨てるように謝罪の言葉を口にし、申し訳程度に頭を下げてその場を去ろうとしたのだが……この男は諦めが悪かった。

 

「待ってくれ! 断る理由として、君に今彼氏が居ることは分かってる! それでも好きなんだ!!」

「……………」

 

 めんどくさい質の悪いタイプだと奈央の中で男の存在が害虫へと変化した瞬間だった。そして大凡この後に続く言葉も予想できた奈央は自分を自制するように心を落ち着ける。弾みでこの男に手が出てしまわないように。

 

「あんな平凡な男より僕の方が君を幸せにしてあげられる! だからどうか僕と――」

「……すぅ……はぁ……」

 

 熱くなった頭を冷やすようにゆっくりと深呼吸をする。すると真紅に染まりかけた視界が通常の色彩を取り戻していった。視界に入っていた手で持てる大きさのブロック片から目を外し、男へと視線を戻した奈央は小さく口を開いた。

 

「……僕の方が幸せにできるですか。一体どんな気持ちでそんな言葉を口にしたんですか?」

「え、それは……」

 

 抑揚のない冷たい声に男はタジタジになるが奈央の言葉は止まらない。

 

「聞きたいんですけど、優太君と一緒に居る私は幸せそうに見えませんでしたか?」

「……それは……そんなことは……」

 

 幸せそうに見えなかった、なんて言えるわけもない。

 優太の傍で花の咲いた笑顔を浮かべる奈央はとても綺麗で幸せそうだった。男にとって気になる女性が自分とは違う男にそんな笑顔を浮かべているのが我慢できなくて、今回告白をすることに踏み切ったのだ。

 

「優太君の傍に居た私はつまらなそうな顔をしていましたか? 優太君と一緒に居ることを嫌そうにしていましたか? そんなことないですよね?」

「……………」

 

 いつの間にか奈央のペースに持ち込まれた男は上手く話すことが出来なかった。奈央はそんな男の顔を見たくないと言わんばかりに視線を外して空を見上げる。奈央の黒く染まった心とは正反対に快晴の青空が広がっていた。

 

「自分の方が幸せにしてやれるって考え、自分が傲慢なだけであって相手のことは何一つ考えていないじゃないですか。勝手に私の幸せを決めつけないでください。私の幸せは私が決める。優太君の傍こそが私にとって全てであり幸せだから、私は優太君の傍に居るんですよ」

 

 もう話すことはないと、奈央は二度と男を見ることなく歩き出した。

 

「……待ってくれ!! 僕は本当に――」

 

 それでも口を開いてくる男に対し、奈央は振り向くことはなかったが言葉で反応だけはした。これが最後だと、二度と口を利いてくるなという想いを込めるように。

 

「男女の付き合いって、お互いが好き合っているから成立するものだと思うんです」

「?」

「それなら無理ですね。たった今……正確には呼び出された時から私は貴方が嫌いです――さようなら」

 

 もう男から話しかけられることはなかった。

 奈央はようやく終わったと息を吐いて屋上の扉に向かうと、一番初めに出迎えたのは優太だった。条件反射のように優太に抱き着き、彼から伝わる匂いと体温をこれでもかと摂取する。それだけで先ほどまで感じていた不快感は嘘のように消えて行った。

 

「お疲れ様」

「うん、ありがとう優太君」

 

 そのままポジションを優太の胸から腕へと移動した奈央は友人たちも連れて階段を下りて教室へと戻った。荷物を持って校舎から出ようとするそんな中、友人の一人にこんなことを奈央は聞かれるのだった。

 

「いやぁ気持ちいいくらいバッサリ言ったね奈央」

「あはは……めんどくさかったからね」

「それもそっか。ちなみになんだけど……彼の名前分かる?」

「名前って害虫……コホン、えっと……知らないかなぁ」

「アンタ今普通に害虫って言ったわね……」

 

 少しだけ男のことを不憫に思った友人だった。

 それから優太と奈央は友人たちと別れ、放課後デートを満喫した。デートが終わるころには奈央の頭の中からは告白のことは完全に忘れ去られ、目の前で自分に微笑む優太のことでいっぱいになっていた。夕食を済ませ、優太は一度実家の方に顔を出してから奈央の家に来るということで暫くのお別れになる。

 

「優太君」

「どうした? 奈央……!?」

「ぅん……ちゅ……」

 

 優しく触れるだけのキス、そうかと思えば優太は奈央を優しく抱きしめて少しだけ唇に舌を触れさせた。すると奈央は待ってましたと言わんばかりに同じように舌を突き出し、触れるだけのキスはいつの間にか激しく深いキスへと変化した。とはいえ流石に今いる場所が人の目がある場所であり、これ以上続けると我慢できなくなることも分かったため、お互いに苦笑しながら別れることとなった。もちろん、後で家に来た際には思いっきりエッチをする約束もしてだ。

 去っていく優太の背中を眺めながら、また今日もエッチするのが待ち遠しくなる奈央。一体どれだけ好きにさせてしまうのか、どれだけ夢中にさせてくれるのかと優太を想いながらいやんいやんと体を揺らせる奈央の姿は少しばかり異様な光景でもあるが、幸いなことに見ている人はおらず奈央の奇行は目撃されることはなかった。

 優太が来る前に少しだけ部屋のお掃除をしようかと考え部屋に戻る奈央――そんな彼女を見つめる一つの影があった。

 

「……いい女じゃねえか。乳もデカいし美人で言うことはねえ。しばらくあの女に厄介になるとするか」

 

 奈央を見つめ舌なめずりをする怪しい男、その男は奈央の後を付けるようにマンションへと足を踏み入れるのだった。

 

 

 

「……フフ」

 

 

 

 

 

 

 待っている奈央の為、急いで実家に向かおうと足早に歩を進める優太はその途中、大柄な男とすれ違った。軽薄そうな印象を抱かせるその雰囲気に関わりたくはないという印象を抱いた優太は目を合わせることなくすれ違おうとしたのだが、その際に男からこんな言葉を聞いた。

 

「へへ、しっかり味わわせてもらうぜ彼氏さんよ」

 

 ごにょごにょと小さい声だったので聞き取れたわけではない。故に優太は変な奴だなと思うだけでそのまま男から離れてしまった。暫く歩を進めた優太だったが、どこか胸騒ぎを感じたため足を止め奈央が住んでいるマンションの方角へと目を向けた。その瞬間先ほどの比ではない胸騒ぎがした。冷たく嫌な予感が胸を吹き抜け、このまま立ち去れば絶対に後悔するぞと頭の中で何かが叫ぶ。

 これは一体何なのか、考える間もなく優太は走り出した――奈央が居るマンションへと。

 

「……っ!! 奈央!!」

 

 今だけは、この得体の知れない何かを信じて奈央の元へと向かう。もしかしたら心配のしすぎだろと友人たちは聞けば笑うかもしれない。奈央だって同じように笑いながら心配してくれてありがとうと言うのかもしれない。だが今だけはこの直感に従おうと思った。

 普段あまり運動をするタイプではないため、それなりの距離を全力で走れば息は切れて足が重くなる。それでも不思議と優太の足は動き続けた。奈央のマンションはそこそこ家賃が高くセキュリティもバッチリだ。それでも優太は走り続けた。エレベーターに乗り、まだかまだかと奈央が住む階層に着くのを待つ。

 エレベーターが止まり、ドアが開いた瞬間優太は勢いよく飛び出した。遠くからでも見えたものだが、奈央の部屋の扉が不自然に開いている。その瞬間最大級の警報のようなものが優太の中で鳴り響いた。

 

「……奈央おおおおおおおおおっ!!」

 

 開いたままの扉から中に駆け込み、部屋に向かうと奈央と……そして、先ほどすれ違った男の姿があった。

 

「……優太……君?」

 

 視点の合ってないその瞳を見て何かされたのかと嫌な汗が流れた。しかし服の乱れはなく性的暴行を受けたような痕跡が無いのはまず安心してもいいかもしれない。奈央の前に立ち、男を睨みつけるように優太は口を開く。

 

「アンタ、奈央に一体何をした!!!」

 

 それは外に響くほどの大きな声で、同じ階層の住民も何事かと近づいてくる気配を感じる。事と次第によってはぶん殴ってやると、強く拳を握った優太。……しかし、男から齎された反応は優太の想像したものとは違った。

 

「……やめ……やめてくれ!! うああああああああああっっ!!」

 

 男は錯乱したように頭をグワングワンと振り回しながら、何かに恐れるように部屋の出口へと向かう。優太は突然の発狂を見て呆然としたがすぐに警備員が来たのもあったし、奈央が男が勝手に部屋に入ってきたという証言もして男は逮捕された。

 

「……えっと?」

 

 何が起きたのか分からないまま事件は終わり、頭の上にクエスチョンマークを浮かべながら優太はへたりとその場に座った。すぐに傍に来た奈央に胸騒ぎがしたこと、心配になっていてもたってもいられずに走って戻ってきたことを伝えると、奈央はひどく感動したように優太に抱き着いてきた。

 力の抜けた体では耐えることもできず、優太はそのまま奈央に押し倒される形になった。

 

「嬉しい……」

「……はえ?」

「嬉しい嬉しい嬉しいウレシイウレシイウレシイ」

 

 呪詛のように続く言葉に優太は不審がるが、押し倒す勢いを殺さずにそのままキスをされることで考えを中断させられた。

 

「優太君はやっぱり私が好きになった人だ。ずっと繋がってたんだよきっと……私たちは巡り合う運命だったの。絶対に交わる運命だったんだよ!」

 

 興奮している様子の奈央に少し呆気に取られるが、シュルシュルと音を立てて奈央は服を脱いだ。形のいい大きな胸がプルンと揺れて現れ、普段であれば隠れている陥没したソレも既に準備を終えましたと言わんばかりにぷっくりと姿を見せている。

 

「な、奈央……その今からするの?」

 

 そう聞くと奈央はうんと強く頷いた。

 

「でも俺さ、走って汗搔いてるから臭いし」

「すぐに汗搔くから一緒だよ♡」

「……さよですか」

「ウフフ。それに優太君も……ほら」

 

 そう言って奈央が見つめる先には優太の愚息が既に臨戦態勢になっていた。こんな状況なのに体が正直だなと優太は恥ずかしくなったが、こうなった奈央が止まらないのも既に分かっている。仕方ないか、そう諦めた優太は優しく奈央を抱き寄せ深いキスを行う。

 色々あったがこうしてまた、二人の熱い夜は幕を開けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 余談だが、奈央の部屋に押し入った男は野間辰雄という名前で、なんでも金銭トラブルで暴力団に追われていたそうだ。更に聞くところによると女癖も悪いことから、彼には性奴隷と呼ばれる女が多くいたらしい。そんな男がどうして奈央の部屋であのように恐怖に慄いていたのかは永遠の謎である。警察としてもそこを不思議がったのだが、優太と共に話をしてくれた奈央は誰が見ても大人しそうな女の子である。そんな女の子が辰雄に何かしらの恐怖を植え付ける等あり得ないとして、結局あれは何だったのかずっと分からないままらしい。




みなさんすいません。
間男成敗のため原作は終わりました。

次回は本編で決して訪れなかった夏休み編を書いて悠木奈央のお話は終わります。

悠木奈央というキャラなんですけど(原作基準)

1、控えめで大人しい
2、相手を立てる
3、優しさの塊
4、彼氏である優太のことが大好き
5、大きな胸と陥没乳首がコンプレックス
6、自慰の経験があまりないため自分の体の反応の良さに気づけていない

控えめに言って最強なのでは(遠い目

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