思い付きのネタ集   作:とちおとめ

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寝取られものではないけど、単純に作画が好きだったので(笑)

どれだけセックスをしても咎められることのない水龍敬ランド、現実に在ったら性病のオンパレードなんだろうなと身震いします。




おいでよ!水龍敬ランド

 一人の女性がベッドの上で寝転がりながらスマホを片手に寛いでいた。時折足が凝らないようにと、はたまたお腹周りのお肉が減ってくれればいいなと一抹の希望を抱いてストレッチもしている。

 

「うん……うん。へぇ、流石ユキって感じ。絶好調じゃん」

『もう最高ね! だからさぁ、マイもどう? また一緒に行かない?』

 

 また一緒に行かないか、それは彼女たちにとっての特別な場所へ向かうための誘い文句だ。マイは電話の相手であるユキの言葉を聞いて苦笑する。

 

「お誘いありがと。でもごめんね。もうあそこには行かないことにしたの」

 

 ユキのお誘いを本当に申し訳なさそうにマイは断った。優柔不断で自分を出すことが苦手なマイを色んな所に連れ出してくれたユキは大切な存在だ。そんな彼女の誘いを断るのは気が引けるが、誘われた場所が場所なだけにマイは断った。以前までのマイならこの誘いを断ることはなかった。それは絶対と言ってもいい。

 

『……そっか、変わったねマイ。やっぱりユウタ君のおかげ?』

 

 ドクンと、その名前を聞いてマイの心臓が高鳴った。

 マイにとってユキが口にしたユウタという名前は特別だ。今のマイの彼氏であり、近々結婚を考えている何よりも大切な愛する男性の名前。

 

「うん。ユウタ君のおかげ……こんな私を好きになってくれた大好きな人」

 

 思っていることを表すようにマイの声音はとても穏やかだ。電話先に居るユキもそんなマイの様子に笑みが零れたようにも感じる。

 

『……ちょっと羨ましいかな。アンタとユウタ君が出会ったのは“あそこ”なのに、今じゃあ見てるこっちが恥ずかしくなるほどのラブラブっぷりだものね』

「……そうだね。私もまさか、ユウタ君と恋人同士になるなんて思わなかったよ」

 

 思い返せば思い返すほど信じられない気持ちが強くなる。けれどもどれだけ信じられないと考えても、今の現実ではマイとユウタは恋人同士、間違いなく幸せを掴んでいる。

 

『ま、アンタがそれならアタシも安心したよ。幸せにね』

「うん。ありがとうユキ。……えっと、こういうのもおかしいかもしれないけど、楽しんできてね?」

『あはは! うんそうだね。若い今だからこそ楽しめるんだもの。私は自分の欲求に従って楽しんでくるわ!』

 

 そんな言葉を最後にユキとの通話は終わった。

 スマホを枕元に置き、ユウタとデートに行った時に買ってもらった大きなぬいぐるみをギュッと抱きしめる。まるで今はここに居ない愛おしい恋人を抱きしめるように、感じるように強く抱きしめた。

 

「……水龍敬ランドか。まさかあの場所が私とユウタ君を繋いでくれるなんて夢にも思わないでしょ」

 

 思わずクスクスと笑みが零れてしまう。

 今日は仕事が終わったらユウタが家に来てくれることになっている。正直いついかなる時でも傍に居たい、ずっとイチャイチャしていたいほどに大好きなのだが仕事があるのだから仕方がない。ユウタはまだかな、後どれくらい掛かるのかな、そんなことを考えながらジッと天井を見つめるマイ。

 

「……すぅ……すぅ……」

 

 暫くすると穏やかな寝息が聞こえてきた。

 ユウタからプレゼントされたぬいぐるみを幸せそうに抱きしめながら、マイは夢の世界へと旅立っていた。

 

 眠るマイ、彼女は一つの夢を見る。

 それはユウタと出会うことになるきっかけ、友人であるユキたちに連れられて出掛けた場所――水龍敬ランドでの出会いを。

 

 

 

 

 

 水龍敬ランド、そこはある種のテーマパークだ。

 生き物本来に立ち返り、本能のまま安全で自由なセックスをすることが出来る夢の楽園のことである。そこでは色んな男性と女性が集まり、日が暮れてもセックスを楽しんでいる。

 そんなテーマパークにマイは友人たちと訪れた。

 引っ込み思案で大人しいマイはその実とてもスケベな女の子である。周りで繰り広げられる過激な性行為に緊張して一歩を踏み出せなかったが、この水龍敬ランドに訪れるくらいにはスケベな女の子だったのだ。路上などでセックスをするその場限りのカップルの痴態に顔を赤くして恥じらう姿はこの場では新鮮だが、やはり彼女自身のエッチな雰囲気が周りの男を惹き付ける。たわわに実った胸やむっちりとしたお尻、そして何より優れたルックスは性に溺れる雄を惑わせる。

 ……とはいえ、例え男が寄ってきたとしても簡単に体を預けられるかどうかは別だった。マイは一旦心を落ち着けるためとして人目のない場所へと向かった――そこで出会ったのだ彼女は。ユウタという名前の男性と。

 そこからは流れるように時間が進んだ。

 友人に連れられて来たという点で親近感を感じたマイはユウタと暫く一緒に居た。そして――。

 

「よ、よろしくお願いします」

「うん……えっと、頑張ります」

 

 お互いが初めての相手となった。

 初めてのセックスは分からないことだらけで恥ずかしかった。それはユウタも同じようで手探りのような交わりだったのは言うまでもない。初めての痛みを乗り越え、徐々に快感が現れてきた時には夢中だった。色々な体位を試し体にセックスという行為を教え込む。

 ユウタは優しかったどこまでも。相手を思いやり決して自分本位にならないそれはマイを色んな意味で安心させてくれた。初めての相手がユウタで良かったと思うほどに。

 

「じゃあ相手を変えてやってみようぜ」

「賛成! それじゃあユウタ君、よろしくね♪」

 

 いつの間に傍に居たのか、ユウタの友人とユキの提案により相手を変えてセックスした。その時のユウタの友人とのセックスはとても激しかった。優しいユウタと違い荒々しく強いそれはマイに比べ物にならないほどの快楽を叩き込んだ。終わった後、暫く動けないほどにドロドロにマイは溶かされてしまった。

 荒く呼吸をするマイの傍にユウタは寄り添い、マイの呼吸が整うまでずっと傍に居てくれた。そんな心遣いがマイにユウタと存在を意識させるきっかけとなる。まあ初めてを終えた時から少しばかり意識していたのだから、本格的に意識したというのが正しいのかもしれない。

 それから夜になり、ユウタの友人とユキはパレードに行ってくると言って離れ、その場に残ったのはマイとユウタの二人だけ。

 

「貴方は行かないの?」

「……うん、君の傍に居たいから」

 

 ドクンと、大きく心臓が脈打った。

 

「それは……どうして?」

「……好きになったから。君のことが」

 

 もっと大きく脈打った。

 頬が熱くなり、正常に物事を考えられないほどに。

 

「……その気持ちは駄目ですよ。だって、ここに集まる人はヤリチンかヤリマンだけです……私だって興味があってここに来るような変態ですよ?」

「……それを言うなら俺も興味があったのは嘘じゃないから同じだよ」

 

 何を言っても、ユウタはマイの全てを肯定してくれた。

 ここに集まる人間はセックスすることだけを考えている。それなのに恋なんてしてしまったら悲しむことになるのは明白だ。事実この水龍敬ランドでは表向き恋をすることは推奨されていない。

 

「……私、四六時中エッチなこと考えてますよ? 嫉妬深いですよ? 我儘ですよ?」

「うん」

 

 ここでの恋は駄目だと分かっているから、こんな自分を否定させるための言葉が溢れ出す。それなのにユウタは決して嫌と言わなかった。

 

「……えっと……えっと……それから……」

 

 言葉が出てこないのはこんな自分を受け入れてくれるかもしれないユウタに惹かれているから。もし彼に後一歩踏み込まれたら堕ちてしまいそうだから。ずっと彼の傍に居たいと思ってしまうから。

 純粋な彼の傍にこんな自分が居てもいいのか、そんな想いだけが行ったり来たりを繰り返す。混乱する頭で必死に考えるマイ、そんな彼女の防波堤を突き崩した一手を繰り出したのはやっぱりユウタだった。

 

「引っ込み思案な部分も、凄くエッチな所も……全部全部好きです。一目惚れです。俺と……付き合ってくれませんか?」

 

 痴態すら見られた相手にここまで言える愛、それを真正面から受けたマイはもう駄目だった。そのままユウタに押し倒され深いキスをする。そのキスはさっきした時よりも気持ちよかった。

 出会い、惹かれ合い、セックスをしたマイとユウタ。けれどもまだ一つだけ、大事なことをしていなかったことに気づく。

 

「……あ、そう言えば私たち……まだお互いの名前を知りませんでしたね?」

「……あ! ほんとだ」

 

 このようにして、二人の時間は始まったのだった。

 

 

 

 

「……マイ? マイ!」

「……っ!」

 

 肩を揺すられて目を開けると、目の前に広がっていたのはユウタの姿だった。どうやら眠っていたようで、マイは必死に頭を覚醒させて現状を把握する。

 

「ユウタ君、お仕事終わったの?」

「うん。返事なかったからびっくりしたけど、寝てたみたいで安心したかな」

「……うわ、私結構寝ちゃってたんだ」

 

 時計を見ればユキと話していた時間からかなり経っていた。上半身を起こして伸びをすると、ユウタがすっと視線を逸らす。

 下着を付けていないためどうやら胸のとある部分が気になったようだ。いつまでも少しだけ初々しさを見せてくれるユウタの様子にクスッと笑みを零し、すぐに襲い掛かりたい欲求を押さえつけてまずすべきことに取り掛かる。

 

「急いでご飯作らないと。ユウタ君、手伝ってくれる?」

 

 すべきこと、それは夜ご飯を作ること。

 ユウタと付き合うようになって必死に練習した日課の一つで、今ではユウタの胃袋を完全に掴むほどに上達した。ユウタに出来る色々なこと、それをマイはしてあげたい。ご飯を作ることも、彼の帰る居場所となることも、そして……。

 

「ご飯食べて、お風呂に入って……その後、沢山セックスしようね。ユウタ君♪」

 

 ユウタの為だけに更に磨いた自慢の身体、しっかりとユウタにご奉仕することも忘れずに。

 出会った場所は普通ではありえない、でも逆にそんな場所で出会ったからこそ二人は結ばれたと言えるのかもしれない。

 

 

 夢の楽園、水龍敬ランド

 

 

 今も日本のどこかで、多くの男女が訪れては賑わっていることだろう。


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