思い付きのネタ集   作:とちおとめ

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サブタイトルに初めて男が出ましたね(笑)

なろうの小説を読んでいると、やっぱり寝取られっていうジャンルがあるんですがそれに関して一つ分からないのがあります。

主人公が恋をする女性、或いはそこそこ仲良くて気になっている女の子が別の男と付き合う或いは結婚するだけで取られはNGとか感想欄で言って、その女性とお相手の男を執拗に叩く人が居るんですけど。
別にこれは寝取られではなく、お相手の男の人はその女の子を射止めたわけで……これは寝取られではなく単純な“恋愛”ですよね。

まあそんな感想欄を見るのも好きなんですけどね(笑)



佐山君の受難

 青年、佐山和弘にとって妻である恵梨香と娘である恵令奈は何にも代えがたい大切な存在だ。恵梨香とは学生時代色々とあった。それはもう波乱万丈という言葉が相応しく、並みの高校生では絶対に経験することがないような濃厚な学生生活だった。そんな濃いに濃すぎる学生生活を経て恵梨香と結ばれ、そして愛の結晶でもある恵令奈が生まれてから和弘は本当に幸せな日々を送っていた。

 妻や娘だけでなく、隣に住む朝岡夫婦とも良い関係を築き続けとても充実していた。

 相変わらず妻の性欲の強さには苦労させられることも多いが、そんな妻を満足させられるのは自分だけしか居ない。かつて多くの男を喰っていた妻がもう和弘でしか満足できず、そういう行為をするのは和弘以外考えられないと言うのだから頑張る他ない。……まあ和弘にとって恵梨香を満足させるというのはプレッシャーではあるのだが、別に恵梨香が和弘に求めているのは体の関係だけでないのは当然のこと。和弘から向けられる愛、それさえあれば恵梨香にとって満足なのだから。

 さて、そのように妻とイチャイチャしながら段々と大きくなる娘を見守る日々を送る和弘。今日も今日とて休日ということもあり恵梨香とベッドで絡み合った和弘の姿は風呂場にあった。自分の汗と恵梨香の汗、その他諸々の液体でベトベトになった体を洗い……ではなく、洗ってもらっている和弘。

 

「どうカズ君、気持ちいい?」

「あぁすっごくいいよ」

「ふふ、カズ君がそう言ってくれるなら嬉しいな」

 

 豊満な体を惜しげもなく晒しながら愛する旦那の背中を流す恵梨香。そんな彼女の表情はとても幸せそうで、こうしてお風呂に一緒に入るのは数えきれない程なのに、まるで新婚のような甘い雰囲気である。

 

「はい。背中はお終いだね。カズ君こっち向いて」

「う~い」

 

 特に何も思うことなく和弘は体の向きを恵梨香へと変えた……のだが、恵梨香の顔を見た瞬間和弘はあっと心の中で呟いた。何故なら恵梨香がニヤッと色っぽく笑みを浮かべていたからだ。今までの経験上、こういう表情を恵梨香が浮かべた場合まず間違いなく発情している……故に。

 

「……よいしょっと」

 

 恵梨香は泡を自分の胸、そのたわわに実った胸に塗りたくってそのまま和弘に抱き着くように肌を引っ付けた。

 

「ちょっと!?」

「ふふ、体を洗いますよ~?」

 

 慌てる和弘とは正反対に、恵梨香の声音は落ち着いたものだ。まあ彼女の浮かべる表情は完全に雌のそれではあるが。しかしあれである。この恵梨香の行為だが背中から、というのはよく小説とかエロゲ―とかでも見る光景ではあるかと思う。だが今の恵梨香のように前から、というのは中々にレアな光景ではないだろうか。

 

「……はぁ……うぅん♪」

 

 胸で和弘の体を擦るたびにビクビクと震える恵梨香から悩まし気な声が漏れて出る。恵梨香の狙いとしては自分と同じように和弘も臨戦態勢にさせて風呂場で一発、というのが最終目標だが……如何せん男というのは単純なもので、どんなに我慢したとしてもこんなことをされて耐えれる男がいるわけがない。もちろん和弘もそんな男たちと何ら変わりはなく――。

 

「……ふふ、大きくなってきたね♪」

 

 恵梨香が言葉にしたように、情けなく和弘の息子は臨戦態勢になっていた。和弘としては仕方ないだろと言う気持ちを抱く中、恵梨香に至っては既に目はとろんとハートマークを浮かべており最早止まれそうもなさそうだった。体を綺麗にするためにお風呂に入ったのにまた汚れることになるのかと複雑な心境の和弘だが、それでも恵梨香に応えるあたり彼の愛も相当なものである。

 恵梨香に応えるため、和弘がいざ行動を起こそうとしたその時――ふと浴室の扉が若干開いていることに気が付いた。おかしいなと思い目を凝らす和弘、その瞬間彼は大きな声を上げた。

 

「な……な……何してんの恵令奈!?」

 

 開いた扉、そこからジッと娘の恵令奈が見つめていたからだ。

 恵梨香に似て綺麗な顔立ちをした恵令奈、和弘にとって目に入れても痛くないほどに溺愛する娘だが……流石に夫婦のこんなやり取りを見られてしまうのは御免被りたい。とはいえ既に恵令奈は目をバッチリ開いて目撃しているため隠すことは最早できそうもない。

 どうやって誤魔化すか、和弘がどうにか打開策を打ち出そうとしたその時――恵令奈が口を開いた。

 

「……お父さん……素敵」

 

 頬を赤く染めながらも決して和弘の下半身からは目を離さない。更にその呟かれた一言にはまるで魔力が備わっているのではないかと言わんばかりに色っぽく和弘には聞こえた……聞こえてしまった。血の繋がった実の娘に劣情を抱くなど親失格、和弘は何とか頭を振って恵令奈に抱きかけた感情を追い出そうとする。しかし、そんな和弘を見た恵梨香は何かを閃いたのか手をポンと叩き、恵令奈に向かってこう声を掛けたのだ。

 

「おいで恵令奈。一緒にカズ君に可愛がってもらおっか。二人でご奉仕して気持ちよくなりましょう」

 

 和弘、顎が外れそうになるほどの間抜けな表情で恵梨香に振り向いた。こんな時に一体この嫁さんは何を言っているんだと、和弘は恵梨香に抗議の視線を向けたが恵梨香には気にした様子も無く、それどころか――。

 

「?? どうしたのカズ君。ほら、恵令奈も私と同じように……ね?」

 

 こんなことを言いだす始末だ。そして何が『ね?』だと、可愛いなコンチクショーと心の中で絶叫した和弘だった。さて、和弘の状態がある意味で四面楚歌と言ってもいい具合だが、そんな風に慌てふためく和弘を時は待ってくれない。恵梨香にそんなことを言われた恵令奈は目を輝かせてバッと扉を開いた。

 神速のような動きで服を脱ぎ、下着を脱いで浴室に突入した恵令奈……そんな彼女の股をヌルっとした何かが流れたのを和弘は決して見てはいない。見ていないと言ったら見ていないのだ。

 

「……お母さん、私」

「大丈夫よ恵令奈。そうね……お母さんがお手本を見せるから、しっかり見ていてね?」

「はい! しっかり観察させていただきます!!」

 

 不安そうでありながら期待に胸を躍らせる恵令奈、そしてそんな娘を愛おしそうに見つめる恵梨香。非常に素晴らしい親子の絆、この会話が風呂場で和弘の裸体を凝視するようにして呟かれた言葉でなければ心底幸せな瞬間に浸れただろう。

 

「……えっと……恵梨香?」

「うん? なあに?」

 

 和弘に向けた表情は本当に幸せそうで、恵梨香にとってこのような時間は本当に大切なようだ。思わず和弘は言うべきことを忘れて流されそうになったがすぐに言葉を続けた。

 

「お手本って……一体何をするつもりなのかな?」

「何って……ナニでしょう? 恵令奈もカズ君を愛してるんだし……ふふ、親子丼とか素敵じゃない?」

「……………」

 

 想像していないわけじゃなかった、こんな流れでそうなるだろうなと思えないほどに和弘は鈍感ではない。恵令奈から見つめられる熱っぽい視線、それに対して気づかないように逃げ続けたのは和弘だ。隣に住む親友の新と心春からは大変そうなモノを見る目で見られたことに対する納得が今ようやく出来た。

 しかし、どんなに愛されたとしても一線を越えることは出来ないのだ。それほどの常識は当たり前だが和弘には備わっている。恵梨香? 彼女はもうダメかもしれない

 

「……俺は」

 

 ここは一発、一家の大黒柱として間違いは正さねばならない。よしっと、気合を入れた和弘が口を開こうとしたよりも、恵令奈が口を開く方が速かった。

 

「お父さん……私、精一杯ご奉仕するから……私のココ、お父さんでいっぱいにして?」

 

 和弘は脇目も振らず、着替えを手に家を飛び出した。

 

 

 

 

「……んで、来るべき時が来てしまったと……そういうことだな?」

 

 場所は近所の喫茶店、呆れたような目で和弘を見つめそう言ったのは朝岡新――和弘の友人である。そんな新の隣には妻の心春も居り、彼女の膝の上にはこの夫婦の愛の結晶でもある春香の姿もあった。

 

「……恵梨香、ついにやってしまったのね」

「やってしまったんだねー!!」

「まだやってないから!! 未遂だから! というか春香ちゃん絶対分かってないよね!?」

「うん!!」

「……あぁ純粋だ。子供ってこうだよなぁ普通は」

 

 誰に似たのか思考が既に大人の領域に入ろうとしている恵令奈と違い、純粋に笑顔を浮かべ身振り手振りでリアクションをする春香の何と微笑ましいことか。生まれた瞬間こそ違えど生まれた病院は同じ、更に多くの時間を隣人ということで過ごして来たのに一体何が違ったのか……和弘にとってこればかりは本当に永遠の謎である。

 和弘は手元に置かれたコーヒーを飲んで一服、しかしやっぱり溜息しか出てこない。

 

「……はぁ」

 

 正直新や心春からしたら是非家族の間で解決してくれと投げ出しそうになるが、流石にここまで和弘が悩んでいるのに放り出すというのも気が引ける。新と心春は見つめ合って小さく頷き、新が先陣を切るように口を開くのだった。

 

「……まあ隣人だし高校からの付き合いだしな。今から少しお前の家に行ってみるか」

「ほ、本当か!?」

 

 和弘の言葉に新は頷き、次いで心春も続く。

 

「このまま帰して明日になって既成事実を作られたからどうしようって泣きつかれたらめんどくさいからね」

「……めんどくさいって……心春ちゃん辛辣」

「辛辣だなんてひどいなぁ和弘君。別にあっくんと春香との家族の時間を邪魔されたとか思って邪険にしているわけじゃないんだよ? 公園のベンチで可愛い寝顔の春香を抱きしめてて、あっくんが顔を寄せてきてもう少しでキスできるって時に呼び出されたことを決して恨んでいるわけじゃないからね?」

「……ハイ、ゴメンナサイ」

 

 ニコニコと、けれでも背後でゴゴゴと焔が見えたのは気のせいだろうか。きっと気のせいだとして、和弘は冷や汗を垂らしながら素直に謝罪を口にした。

 

「今から恵令奈ちゃんの家に行くの!?」

「そうだよ。春香は恵令奈ちゃんに会いたいかい?」

「うん! 恵令奈ちゃんは大好きなお友達だもん!!」

 

 どんな話題を話し合ってても、温かな気持ちにさせてくれるのはいつだって子供の笑顔だろう。落ち込んでいた和弘でさえも、若干機嫌の悪そうだった心春も春香の笑顔に思わず笑みが零れる。新はそうかと笑いながら心春の膝から春香を持ち上げ、そのまま優しく抱きしめる。

 

「春香が友達思いの子で嬉しいよ」

「えへへ~。恵令奈ちゃんだけじゃないよ? パパとママも大好き!」

「あぁ。俺も春香が大好きだ」

「春香もパパが好きぃ~! 将来はパパと結婚するの!」

 

 春香の言葉を聞いて新の顔がこれでもかとダラシナイ物になってしまっている。隣で心春はクスクスと幸せそうに笑っており、こんな普通の親子の光景が少しだけ和弘には眩しく映った。……まあ親馬鹿な点で言えば和弘も相当なものだが。

 愛らしい春香を思いっきり抱きしめた新、そしてついに行動を起こすのだった。

 

「さて、行くとするか」

「……やれやれ、一度恵梨香とお話しないといけないかなぁ」

「恵令奈ちゃん家にゴーゴー!!」

 

 喫茶店を出て向かう先は佐山家、今だけは何故か朝岡一家が和弘には救世主に見えたとか。

 

「娘は父親と結婚できないのも春香に教えておかないとね」

「あ、やっぱり気にしてたのね」

 

 

 

 

 いざ来たれり、場所は佐山家玄関。

 

「……行くぞ。頼む新、心春ちゃん」

「おう」

「うん」

「?? おう!」

 

 ガチャと、和弘は思いっきりドアノブを回して扉を開けた――そして入り込んできた光景、それは。

 

「カズ君おかえりなさい」

「お父さんおかえりなさい」

 

 裸エプロンに身を包んだ恵梨香と恵令奈だった。

 

『……………』

 

 思わぬ出迎えに一行を支配したのは痛い沈黙だった。

 

「あれ? 恵令奈ちゃんどうしたのその恰好」

「あ、春香ちゃんどうして……」

「朝岡君に心春も一体どうしたの?」

 

 どうしたと聞きたいのはこっちだと新と心春は思った。

 

「とりあえず恵梨香と恵令奈ちゃん……服を着ようか」

 

 とりあえずの締めとして、心春のその一言にその場の全員が頷くのだった。

 それからは心春を主導として色々な話し合いが行われたらしいが、結局どうなったのかは分からない。ただ恵梨香が言うには心春の鬼気迫るような表情は相当な迫力だったと和弘に語ったそうだ。

 


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