思い付きのネタ集   作:とちおとめ

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基本原作主人公とヒロインはいちゃらぶしてます。

原作だと主人公可哀そうだし是非もないよね!

というか色んな作品を焦点に当ててとにかく主人公万歳、ヒロイン万歳って書きたいけど……よくよく考えたらあまり寝取られ物の作品って知らないことに気付きました。

とにかく主人公に救いがない作品とか書きたいですね(笑)


陽ノ下心春の場合2

 心春が新の家に住むことが決まってから1日が経ち、今日は土曜日である。

 義父の源蔵に心春を紹介し、そして晩御飯の前に帰ってきた兄の朝岡勝にも心春を紹介したがその後は特に何も起きなかった。新としてはとにかく心春のことが心配で気を張ってはいたものの、肩透かしを食らってしまうほどに何も起きなかったのだ。

 とはいえ、である。

 新はベッドの上、隣で寝ている心春を横目で見る。

 その姿は正に生まれたままの姿、服は着ておらず胸も下半身も全く隠されてなどいない。そんな心春の姿を見て新は照れたりすることはなく、今に限ってはどうしようもない罪悪感でいっぱいだった。

 昨日の夜、新は心春を抱いた。

 恋人として付き合っているのだからそういう行為をすること自体は珍しいことではない。ではどうして新は罪悪感を感じているのか、それは自分の不安を払拭したいがために少しだけ乱暴に心春を抱いてしまったのだ。

 

「……心春」

 

 ゆっくりと手を伸ばして心春の頭を撫でる。

 決して傷つけない、そうずっと思っていたはずなのにやってしまった。心春自身は嫌な顔せず、新のことを受け止めてくれたがそれでも新の心は暗く沈む。家庭環境の悪さもそうだが新が不安定だったこと、それは決して仕方ないことだがそれを理由に心春を傷つけていいわけがない。

 起きたら謝らないと……そう考えていた新の手を温かいものが包んだ。

 

「……心春?」

「うん。おはようあっくん」

 

 いつも見せてくれる優しい表情で心春は囁いた。

 まだ少し眠いのか目元をこすりながらも、しっかりと新をその目に写してゆっくり起き上がる。前述したが何も服を身に着けていないことで心春の裸体が更に露となってしまうが、心春自身にはそれを気にした様子もない。

 相変わらず綺麗でいて男の情欲をそそる体だなと思ってしまうがすぐにその考えは捨て、新は心春に対し謝罪の言葉を口にするのだった。

 

「心春、昨日はごめん!」

「ふぇ?」

 

 突然の新の謝罪に心春は目をパチクリとさせながら呆気に取られた。

 新としては乱暴な抱き方をしてしまったことに対する謝罪のつもりだったが、心春は何のことに対しての謝罪か本当に分からないようで首を傾げている。少しだけそんな様子の心春に和んだ新だったが、すぐに謝罪に関する説明をするのだった。

 説明をする中、心春に嫌われてしまうかもしれないと思った新だったがその心配も杞憂に終わる。何に対する謝罪なのかそれを把握した心春は「あ~」と呟き、そして可愛らしく声を上げながら新の胸に飛び込んでくるのだった。

 

「えい!」

「うおっ!?」

 

 いきなり心春が胸に飛び込んできたことで新はそのまま背中からベッドに沈む。

 直接肌と肌が触れ合うことで心春の体温が直に感じられ、更に柔らかい物が押し付けられてしまうことにより下半身に大変よろしくない。新は一体どうしたのかと聞こうとした時、それよりも早く心春が口を開いた。

 

「ねえあっくん。私ね、自分の体に魅力がないのかなって思ってたの」

「……え」

 

 突然の心春の言葉に新は目を点にした。

 魅力がない? そんなことあるはずがないと新は思う。心春は恋人としての贔屓目で見てもとても魅力的な女の子だ。まだ少しだけ幼く見える顔立ちは心春のおっとりとした性格と合って愛らしいと思うし、逆に体つきに関しては凶悪の一言で大きな胸が特に印象的である。

 性格の面においても体つきの面においても、心春はとても多くの魅力も持った女の子……これが新の心春に対する認識だった。それを思わず勢いに任せて伝えると、心春は一瞬驚いたがすぐに笑顔になって更に新の体に自分の体を押し付けてきた。甘えるように、はたまた自分の匂いを擦り付けるように、心春は新の物なのだと強調するかのように。

 

「昨日はいつものあっくんと違ったから驚いたけど……でも私を求めてくれたことには変わらないよね? だから嬉しかったの。あっくんはあんなに激しく私を愛してくれてるんだなって実感できたから」

 

 確かに愛している。けれども昨日に関しては不安の方が大きかった……それを伝えても心春の表情は変わらず穏やかなままだ。

 

「あっくんが何を抱えているかは分からないよ? でも一つだけ確かなことがある」

「確かなこと?」

 

 聞き返す、そして続けられた言葉はこうだった。

 

「何があっても、私はあっくんの隣にいるよ。これから高校を卒業するまで一緒にお勉強を頑張って、大学にも行ってまた新しい環境の中であっくんと一緒にいたいな。そして社会人の仲間入りをしたらあっくんと結婚する」

 

 まだ高校生活の中間を過ぎた辺りだが結婚とはまた何とも気の早いことである。しかし心春の様子から絶対にそうするのだという意思の強さを感じさせ、どれだけ新のことを想っているのかが窺える。それは新自身にもしっかりと伝わり、知らず知らず新は目頭が熱くなるのを感じた。

 

「あっくん、私はあっくんが大好きだよ。誰よりも大好き、あっくんが傍にいないなんて考えられない」

「心春……」

 

 もう我慢できなかった、新は力いっぱい心春を抱きしめた。

 

「あ……ふふ、あっくん♪」

 

 心春も同じように抱きしめ返してくる。

 ほんのりと広がる更なる温もり、そして安心感は新に穏やかな時間を齎した。同時に新は心春をずっと守り抜こうという覚悟と、傍に居続けるという誓いを込めるように心春に言葉を返すのだった。

 

「俺も心春が大好きだ。ずっと心春を守り、傍に居るよ」

「うん!」

 

 その笑顔は今まで見たどんな笑顔よりも綺麗だったと新は脳に刻み込んだ。

 互いに見つめ合い、暫くすると距離はゼロになった。

 

「……ん……ちゅ……」

 

 お互いの存在を求めるように、舌を絡め合いながらのキス。

 少しの間一心不乱に楽しんだ後、顔が離れると二人を繋ぐように唾液の糸が引く。まだまだ時間は朝早い、それなのに自分たちは何をしているのだと新と心春は苦笑を零した。

 何かに気付いたのか心春が一瞬新の下半身に目を向け、そして呟く。

 

「元気になっちゃったね」

「……あはは、面目ない」

 

 頭を掻きながら新は苦笑する。

 心春も小さく微笑んで立ち上がり、新にマウントするようにポジションを取った。

 

「昨日はあっくんが頑張ったから、今度は私が頑張るね」

 

 意気込むように拳を握りしめ、心春はそのままストンと腰を下ろすのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 心春にとって新は光だ。

 心春にとって新は生きがいだ。

 心春にとって新は……新は……新は……新は……!

 

(あっくん……あっくん……あっくん……あっくん……っ!)

 

 体に襲い掛かる快感の波が強すぎて声が上手く出せない、だから心春は心の中で新の名を叫び続ける。心春にとって普段新と何気ない日常を過ごすのも好きだが、このように情事に耽ることも同じくらい好きだった。なぜならこの瞬間はいつもよりお互い触れ合うことができるから、いつもより本当の意味で繋がることができるから。

 心春にとって、新の謝罪した昨日の出来事……正直あれに関して嫌なことなど一つもなかった。

 新と繋がることは何にも勝る幸せであり、その空間は間違いなく新と二人きりだけ、その内容がどんなものでも心春にとって嫌なことなど何もない。新が望むならなんだってできる、新が命令するならどんなに恥ずかしい注文も完璧にこなしてみせよう……心春の心を占めるのは何時だって新だけだ。

 

(……ごめんね、お母さんにお父さん……もうどうでもよくなっちゃった)

 

 自分を育ててくれた父と母の死去にその時だけは“少し”悲しくなったが、もう心春の心に両親に対する悲しみなど露ほどもなかった。それどころか今は感謝すらしてしまっている。

 

(でもお礼は言わせてね。お母さんたちがいなくなったから……私はあっくんと一緒に暮らせてるの!)

 

 新への行き過ぎた愛は両親の死すらも心春にとって良いものだったと認識させてしまっていた。もちろんこの感情が世間一般では間違えているものであり、天国にいるであろう両親が聞けば間違いなく悲しむだろうことは心春にも良く分かっている。

 心春は自分でしっかりと認識できていた――自分が既におかしくなっていることに。

 

(でもしょうがないの。だってあっくんのことしか考えられないんだから!)

 

 大好きな新のことを四六時中考えていると言っても過言ではない。伝えてしまえば引かれるかもしれない、それほどに心春の脳内を占めるのは新のことだけ。

 今日は何をして過ごそうか、明日は何をして過ごそうか、明後日は? 明々後日は? どんなことをすれば喜んでくれる? どうやって新と二人きりになろう? どうやって邪魔な奴を処理しよう? どうやって新に絶望を教えた屑を消そうか? どうやってどうやってどうやってどうやってどうやって……。

 

(本当はあっくんを閉じ込めたい、私だけがあっくんの傍に居ればいいの。でも……そんなことしてしまったらあっくんに嫌われちゃう。あれだ……俗にいうヤンデレ? メンヘラってやつ? まあ私はそんな痛い女にはならないけどね)

 

 どの口が言うのかと聞こえてきそうだが心春は気にしない。

 

(大好きな人のことだけを考えて行動する私……うん、いい女!)

 

 大人しそうな外見からは決して考えられない歪みを持つ心春の想い、けれどもそれは絶対に間違った方向で新に向かうことはない。どんなにおかしくなっても新のことを考えればある程度の自制はできるし、何より新に悲しみの表情など絶対にさせない。

 

(あっくんが不安になるなら私が支えてあげればいい、優しく抱きしめてあげればいい。私にできるのはそれだけ、あっくんのために生きることが私の生きる意味)

 

 新は気付かないだろう、今の心春の目がどんよりと黒く染まっていることには。

 一心不乱に体を動かし快感に震えるように天井に視線を向けている心春の体勢だからこそ、新は心春の表情を見ることはできない。

 

(……でも私ったらいきなり結婚だなんてそんな……流石に気が早かったよね)

 

 ……どうやら同時に乙女街道も真っ直ぐに爆走中の心春だった。

 

(子供は何人くらいがいいかな……あっ、来るっ)

 

「心春!」

 

 一切の思考を中断させる大きな波が心春に襲い掛かった。

 でもこの感覚は嫌いではない、本当に癖になる感覚だった。心春はこれから何をすべきか、どういった用意をしていくべきか、考えることは多くあるけれど今だけはこの時間を精一杯楽しむことに心春は決めた。

 

「これぇ……だいしゅきぃ……」

 

 まだまだこの時間は終わりそうにない。

 新と心春が二人の時間を楽しむ中、隣の部屋からガタンと苛立ちをぶつけるような大きな音が聞こえたが、それに気づいたのは心春だけだった。

 

(苛立ってるなぁ、物に当たるとか最悪。本当にあっくんとは大違い……決めた)

 

 

 

 

 

 

 

――先にいなくなってもらうのはこっちにしよう――


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