思い付きのネタ集   作:とちおとめ

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アフター書くって言いましたけど一つ挟みます。

原作:妻が綺麗になったワケ

寝取られ性癖を持った夫、それだけは同じで後は違います。
もう流れは完全なギャグになりました。


塚本美沙子の受難

 その日、最愛の旦那と生活していた塚本美沙子に衝撃が走った。お風呂上り、結婚して月日が流れてなお男の情欲を誘う肉付きの良い体をバスタオルで包み、健康の為にと牛乳を飲んでいたその時だった。

 

「……実は」

「うん?」

 

 ふとリビングの影に居た美沙子は夫である倫太郎の声を聞いた。倫太郎は何か神妙な様子で電話先の人間と会話しているらしく、妻としてはそんな様子の倫太郎のことが気になるのは当然だった。

 

(……太郎さん、何か悩みでもあるのかしら)

 

 悩みでもあるのだろうか、まさか浮気? そんなことを考えたが美沙子はないないと苦笑した。倫太郎が誠実な男性だということは結婚する前から知っていることだ。それこそ浮気なんて以ての外、倫太郎が美沙子以外の女性に現を抜かすことなどあり得ないと、倫太郎からの想いから分かり切っていることだ。もちろん反対に美沙子自身も倫太郎以外の男に気を許すことなどない。学生時代は倫太郎ではない別の男と付き合いをしたこともあったが、結局エッチなどはする前に離れたため、美沙子の初めてを奪ったのは夫である倫太郎だったりする。

 リビングの影から美沙子は牛乳をチビチビと飲みながら、倫太郎の動向を観察した。相変わらずカッコいいなぁとか、今日もたくさんエッチしてくれるかなぁとか、どんなご奉仕をしてあげようかなぁとか桃色ハッピー全開な頭になってしまうが、そうじゃない今はそれよりも倫太郎のことだと妄想を頭の外へ弾き飛ばす。

 人間集中すればどんな小さな音でも拾ってしまうことは間違いではないらしく、結構な距離があるはずなのに倫太郎の言葉がやけに鮮明に美沙子の耳に届いた。

 

「……実は……私は……私は」

「……ごくり」

 

 深刻なことを告白しようかしまいか、そんなジレンマに突き動かされているような倫太郎の様子に美沙子も流石にまさかという気持ちが溢れてきそうになった。倫太郎が別の女に奪われるなど考えたくない、もしそうなったら相手方の女に何をするか分かったもんじゃない。どす黒い嫉妬と独占欲が心を満たそうとしたその時、ついに倫太郎が事の真相を話し出すのだった。

 

「……最近おかしいんだ。妻が……妻が私ではない別の男に抱かれることを想像すると……いつもより息子が元気になってしまうんだ。どうやら私は……寝取られ属性なるモノを持っているらしい」

「ぶーーーーーーっ!!」

 

 倫太郎の言葉が届いた瞬間、美沙子は口に含んでいた牛乳を吹き出した。それはもう盛大に、見方によっては小さな虹が出来るのではないかと言わんばかりに。

 結構大きな音が響いたが、倫太郎は電話に夢中になっているらしく美沙子に気づいてはいない。美沙子は慌てて零れた牛乳を雑巾で拭く。だが当然のことながら彼女の心は台風が直撃したかの如く荒れ狂っていた。

 

(……寝取られ属性って何……私が太郎さん以外の男に抱かれるのを想像すると太郎さんの太郎さんがいつも以上に元気になる!?)

 

 目がグルグルと回り正常な思考ができない。まさか愛する夫がこんな属性を開花させるなど誰が想像できようものか、いやできない。混乱の極致、彼氏彼女の長い時間を過ごし、やっとの思いで射止めた彼との夫婦生活、これからもずっと今まで通りの平穏な生活が続くかと思われた矢先のこれだ。

 混乱だ、それはもう混乱以外の言葉が見当たらないほどだ。でも一つだけ、美沙子の思考は今の状況に対する尤もな言葉を導き出した。

 

「……これは……由々しき事態だわ」

 

 ……そうだね、由々しき事態だね。

 

 

 

 時は変わって数日後、美沙子は近場の喫茶店に知り合いを呼び出した。その相手は美沙子が呼び出してきたことに珍しいなという顔をしていたが、美沙子の浮かべる表情を見て回れ右をして帰ろうとしたものの、ガシっと肩を掴まれたことで仕方なく着席した。

 美沙子が不安そうな何とも言えない顔をしている……こういう時は基本何か厄介なことがあったのだと知っているから帰りたくなったのだ。美沙子は手元に置かれていたコーヒーを飲んで心を落ち着け、そして神妙な顔つきとなって口を開くのだった。

 

「……どうしよう黒田君、太郎さんが……寝取られ性癖を開花しちゃったみたい……っ!」

「……はい?」

 

 呼ばれたお相手、名前を黒田大(クロダヒロシ)という男性は目を点にするのだった。今回美沙子が呼んだ黒田だが、実は彼は学生時代の美沙子の彼氏だったりする。別れた後も級友ということで繋がりは残っており、度々相談事をすることも少なくはない。黒田の見た目はどこかチャラそうなイメージを感じるが、彼は既に所帯を持っており生まれたばかりの子供も居て気持ち悪いくらいに可愛がっているほどの親馬鹿だ。

 そんな風に素晴らしい妻と愛する子供に囲まれ幸せ絶頂の黒田にとって、美沙子からの言葉はやはり厄介ごとだったと溜息が漏れて出た。普段は凛々しくお堅いイメージの美人な美沙子だが、倫太郎のことになるとオロオロと周りが見えなくなるのは相変わらずのようで、帰りたいと思った黒田だが級友の誼で美沙子の話を聞くことにしたのだった。

 美沙子から倫太郎が電話していた内容を聞いた黒田はただ一言――。

 

「……ご愁傷様だな」

「うぅ~。なんでこんな迷惑な属性持っちゃったの太郎さん!!」

 

 ついに涙を流しながら泣き出してしまった美沙子に、黒田はやれやれと肩を竦めた。

 

「時々居るらしいんだよな。そういう罪深い性癖を持った人間ってのは」

 

 そうだとしたら世の中クソだな、言葉には出さなかったが心で呟いた美沙子だった。

 

「試しにやってみたらどうだ? 別の男とヤッてそれを――」

「死にたいのかしら黒田君」

「何も言ってません!」

 

 修羅のように変わった美沙子の雰囲気に圧倒され、思わず敬語になってしまう黒田。それほどに美沙子が怖かったのだろうことが窺える。それからも美沙子は黒田と色々意見を交わしたのだが、当然倫太郎に対する有効打が出てこない。まあそれも仕方ないのかもしれない、果たして旦那の寝取られ性癖を改善したいという悩みに悩む妻が世界に何人居るのだろうか。ネットの知恵袋に書いても早々答えは返ってこないんじゃないかなたぶん。

 結局美沙子の悩みを解決できることはなく時は過ぎ、店を出る時間が近づいた段階で美沙子は宣言した。

 

「決めたわ」

「何を」

「太郎さんを私の色に染め上げる」

「お、おう」

 

 握りこぶしを作った美沙子の様子に、また禄でもないことを考えたんじゃないかと不安になった黒田だった。

 

「太郎さんの寝取られ性癖を上書きしてしまうほどに、太郎さんを私から離れられなくしてしまえばいいのよ! 口も胸もピーもピーも全部使って太郎さんを私だけに夢中にさせてみせる!!」

「意気込むのは良いけどまだ店の中なの忘れてない!? 俺まで変な目で見られるからやめろおおおおお!!」

 

 

 

 

 今宵は戦だ。

 女が男を攻略するための、大きな戦いだ。

 

「太郎さん」

「……今日はいきなりだね美沙子」

 

 ベッドの上で太郎を押し倒し、美沙子は無数のキスの雨を降らした。惜しむことなく体を押し付けながら、倫太郎の体に己の証を刻み続ける美沙子。今日の美沙子はいつもと違う、そんな雰囲気を感じたが妻との愛の営みとなれば余計なことを考えるような無粋なことを倫太郎はしない。

 舌と舌を絡ませるような濃密なキスをしながら、体に押し付けられる豊満な胸を揉みしだく。

 

「んっ!?」

 

 胸の先を触れられ、体を甘美な電流が走り抜けた。倫太郎に弄られるこの感覚が美沙子は好きで、ついつい流されてしまいそうになるが今日はそれは許されない。己の体、倫太郎の為に培った性技の全てを使って彼を今まで以上にメロメロにすると、寝取られ性癖を消し去ってやろうと心に決めたのだ――美沙子は既に倫太郎の倫太郎が臨戦態勢になっているのを確認し、上体を起こしてその上に跨る体勢になる。

 

「太郎さん、覚悟してね。あんな会話を聞かせた貴方への罰よ」

「罰? 美沙子、一体何の話を」

「問答無用! いざ……んんッ!!」

 

 一気に腰を落とした。

 さあ、ここからが私のターンだ。そんな風に美沙子の作戦が発動するのだった。

 

 

 しかし数分後。

 

「いやああああ! ダメよこんなのぉ!! 深いのぉッッ!!」

 

 思いっきり敗北を喫した美沙子が居た。元々この二人の体の相性は素晴らしいほど良く、倫太郎に組み敷かれてしまった美沙子はいつも負けていた。倫太郎は普段は好青年な見た目なのだが、夜はそのイメージに反して結構激しい。別にSになるとかではなく、ただ単純に激しいのだ。夜の営みの時だけ、普段の凛々しさが鳴りを潜めMッ気が出てくる美沙子にとってはもうこうなってしまうと抗えない。

 

(気持ち良すぎて頭変になっちゃう!! 太郎さん好き……好き好き大好きなのぉ!!)

 

 もう彼女の頭の中に今宵の目的は綺麗さっぱり消えてしまっていた。倫太郎から流れてくる愛をただその一身に浴び、同時に彼を愛するだけの雌となり果てた美沙子だが……その表情はどこまで行っても幸せそうだった。

 

 

 

「……はっ!?」

 

 情事を終え、目を覚ました美沙子は全てを思い出した。倫太郎を今以上にメロメロにすることはおろか、逆にいつも通り完堕ちしてダラシナイ表情をしてしまっていたことに悔しさが募る。

 隣を見ればトイレにでも行ったのだろうか、倫太郎の姿は見えない。まさか、やっぱり妻との情事より寝取られプレイの方がいいとか報告に行ったのでは……そう考え美沙子はすぐに部屋を出た。

 

「……うん……うん、そうだな」

 

 やはり倫太郎は誰かと電話していた。

 前と同じようにリビングの影に隠れ、美沙子は事の成り行きを見守る。そしてついに、その時は訪れた。

 

「やっぱり美沙子が誰か別の男と……なんて想像するのは間違いだったな。今日の彼女は凄く激しくて、私だけを想ってくれる気持ちが伝わってきたんだ。あんなにも愛おしい妻は絶対に誰にも渡さない……改めてそう思えたよ」

 

 一瞬聞き間違いかと思った、でもこれは間違いなく現実だ。美沙子は倫太郎が電話しているというのに構うことなく、駆け足で倫太郎に飛びつくのだった。

 

「太郎さん!!」

「うわっ!? ど、どうしたんだ美沙子」

「何でもないの。ふふ……良かったわ太郎さん!!」

 

 あまりに嬉しくて、美沙子はその勢いのまま倫太郎との情事に再び及ぶのだった。当然、また思いっきり気持ちよくされて完全敗北するのだが、もう美沙子に不安は何も残っていなかった。

 夫が寝取られ性癖に目覚める、ある意味それは間男や浮気以上に恐ろしいモノだと後に美沙子は語るのだった。

 




倫太郎
原作、寝取られ性癖持ち
今作、寝取られ性癖持ち、後に改善。

美沙子
原作、最初から完全に堕ちちゃってる雌豚
今作、太郎限定で原作同様堕ちる雌豚

黒田
原作、美沙子に快楽を植え付けた間男
今作、完全常識人、ある意味苦労人

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