落第騎士の英雄譚 破軍剣客浪漫譚「本編完結」   作:どこかのシャルロッ党

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第七幕「強さと好み」

 

―――綾崎家。優秀な執事・メイドを数多く輩出して来た名門である。

執事やメイドであっても魔力値Aが多数存在する。しかし悲しい事に

夫婦の間に生まれた6番目の子供は魔力値がFだった。その名は綾崎翔真。

魔力がFであるが故に最初から居ない存在として扱われた。

 

何故自分が・・・・自分の魔力のせいか・・・・少年は泣きそうになり、

くじけそうになった。だが、そんな幼少期にある人物からもらった

言葉を胸に翔真は今を生きる。

 

 

 

 

 

―魔力がなくてもいい・・・・貴方は貴方らしく生きればいいのです―

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―愛理・麻衣の部屋―

 

 

二人は部屋に戻っていた。麻衣は翔真に対して見下した態度を

取った愛理と言い合いをしていた。

 

「なんであんな態度取るの!?姉さんが・・・・姉さんがそんな態度だから

兄さんは私達を拒否しようとするんだよ!?」

 

「分かりませんか麻衣?綾崎家の恥である兄さんには

生きる価値なんてないです。大体綾崎の名を語っている時点で許せませんが」

 

「そんな態度だから・・・・そんな態度だから私はお姉ちゃんが嫌いなんだよッ!!」

 

「ッ!」

 

「いつもいつも・・・・綾崎家の恥?そんなに家が大事なの!?

兄さんは・・・・兄さんが生きてたのに・・・・大丈夫の一言も言えないの!?」

 

「・・・・」

 

麻衣はこの数年間、愛理をずっと見ていた。兄を心配するどころか、

家の為、家の為と翔真の事すら心配しない愛理に心底失望していた。

 

「私は兄さんが好き。弱いって言われても・・・・恥と言われても・・・・

それでも強く生きる兄さんが私は好きッ!」

 

麻衣はそう告げると、部屋から急いで出る。あんな姉とは居たくない。

その想いから麻衣は走り出す―――ただひたすらに。

 

「(兄さんには今、拒否されるかもしれない。でも・・・・)」

 

 

――――――

 

 

 

 

場所は変わり翔真の部屋。泣きじゃくる明日菜の頭を撫でながら、

彼女を落ち着かせていた。

 

「たく、泣く事はねぇだろ?」

 

「だって・・・・ぐす」

 

「俺は大丈夫だ。メンタルは強い方だから気にすんなよ・・・・だから

もう泣き止めよ明日菜。可愛い顔が台無しだぜ?」

 

翔真を見下し、バカにされた事に泣きながら反論した

明日菜は、翔真の胸板に顔を埋めて泣いている。

 

「(それに・・・・離れてくれないと色々ヤバい)」

 

明日菜が自分の体に密着している事で二つの柔らかい感触が

翔真の理性というダムを崩壊へと招こうとしていた。

女子特有の匂い。ほのかに香るシャンプーの匂い。

それがまた甘い香りを生み出し、鼻を刺激する。

 

「翔真君・・・・さっきからドキドキしてる」

 

当たり前だと言いたいが、言えない。女の子に抱きつかれ

ドキドキしない男子などいない。もしいるのならば、敢えて言おう・・・・

カスであると。胸の鼓動を静かに聞くように明日菜は耳を傾け静かに聞く。

 

「明日菜・・・・そろそろ離れてくれると

嬉しいんだが・・・・色々さ・・・・」

 

「翔真君は迷惑?・・・・私が抱き付いたら」

 

「ぐっ!」

 

上目遣いで何かを訴える明日菜。

 

「いや・・・・俺だって男だしさ、その・・・・明日菜を襲ったらヤバいし」

 

「私はいいよ」

 

「ファ!?」

 

顔を赤くする明日菜はそっと離れ、翔真を自分の方へ引き寄せる。

顔には明日菜のはち切れんばかりの胸が当たっている。

 

「(ぱ、パイオツの感触がァァァァ!)」

 

「翔真君に襲われるなら・・・・覚悟は出来てる。

望むなら私の初めてあげる。私を翔真君色に染め上げてね?」

 

「ぶっ!」

 

まるでギャルゲーで出そうな台詞に思わずビクッとなる。

だが、この流れのまま身を任せて彼女を襲えば――そう考えると

混乱していたのが嘘のように、冷静さを取り戻す。

 

「それは出来ない」

 

「どうして・・・・なの?」

 

「そりゃ俺だって・・・・明日菜と・・・・まあなんつうか、

まだそんな事はしちゃいけない気がする・・・・」

 

理性と戦いながら明日菜を説得する翔真。

 

「・・・・私は翔真君が好きなのに・・・・」

 

「?・・・・なんか言ったか?」

 

「なんでもないよ!」

 

 

 

明日菜の言った言葉を翔真は聞き取れなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 




Q.オリ主は何時になったら活躍するの?

A.あともう少し。


次回ショッピングモール編。

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