落第騎士の英雄譚 破軍剣客浪漫譚「本編完結」 作:どこかのシャルロッ党
「へぇ・・・・まだいたんですね兄さん。てっきり
挫折して辞めたと思ってました」
「お兄ちゃん・・・・」
「てめーら・・・・」
漂わぬ雰囲気が流れる渡り廊下。翔真は怒りの表情を少し露にしていた。
翔真の妹で綾崎家の長女、綾崎愛理は見下したような眼差しを向けており
後ろではびくびくしながら翔真を見つめる次女綾崎麻衣がいる。
「(まさか・・・・愛理ちゃんや麻衣ちゃんまでこの破軍学園に・・・・)」
「愛理・・・・相変わらず上からしか物を言えませんか」
「さりげなく抱き付いてんじゃないわよッ!!」
一輝が冷静にする側で、妹の珠雫は一輝の腕に抱き付き、
ステラは懸命に離そうとしていた。
――――遡る事、数分前―――――
翔真、一輝、ステラは同じクラスだった。三人は席に着く。
そして数分後にクラスの担任である折木有里が入って来た。
「新入生のみなさーん!入学おめでとーっ!一年一組担任の折木有里です!
よろしくね~!私の事はユリちゃんって呼んでね!」
一人だけテンションの高い有里に翔真達を含む生徒達は呆然とする。
「なんか疲れる先生ね」
当然ステラも例外ではない。去年からいる一輝や翔真は
相変わらずといった表情で苦笑いを浮かべていた。
「僕や翔真は去年からお世話になってるけどいい人だよ有里先生は」
「まあ、一人だけテンションが高いのは多めに見てやってくれよ。
だけど大丈夫かな有里先生・・・・」
「?・・・・なにが大丈夫なのよ?」
ステラは翔真の言葉に疑問を持つが、翔真はまあ見ておけと返す。
「今日はまず、最初に七星剣武祭について連絡しまーす!本校では
今年から能力値による選手選抜は廃止して全校生徒参加の実戦選抜を
行って成績上位六名を選手として―――」
有里はテキパキと説明して、生徒達に電子端末の生徒手帳の
使い方などを説明する。これに始まり次に試合について
有里は話し続ける。
「これからは大変だと思うけど、みんな!
これから1年全力でがんばろー!!えいえいお・・・・ブフファァァァ!!」
『ユリちゃァァァァァァん!?』
突然の吐血。生徒達は驚き声を上げた。
「ちょ!吐血したわよ!?」
「病弱なんだよ・・・・一輝、先生を保健室に。俺は血だまりを拭く」
「分かった」
「アタシも手伝うわ」
一輝とステラは席から立ち上がり保健室へと連れてゆき、
翔真は血だまりを拭くのであった。
――――
有里の病欠によりHRを終えたクラス。翔真、一輝、ステラの
三人は渡り廊下を歩いていた。
「はぁ~、アタシ達の担任・・・・大丈夫なの?」
「あはは・・・・それはどうかな。先生も生まれつき病弱だって言ってたし」
「大丈夫大丈夫。ユリちゃんはああ見えて生きてるんだ。なんとかなる」
三人は話ながら寮へ向かおうとしていた。
「お三方~!少しお待ちを~!」
「「「・・・・?」」」
背後から三人を呼び止める声が聞こえる。翔真達は足を止めた。
「捕まえた~!」
「な!?」
「なんと!」
眼鏡を掛けた少女が突然一輝に抱き付く。
「ちょ、ちょっと君!?」
「な、なにやってんのよ一輝!!??」
「ちくしょう!一輝羨ましいぞォォ!!」
抱き付いた光景を目の当たりにしたステラはあたふたしながらも怒り、
隣では涙を流しながら羨む翔真がいる。
「君は一体!?」
「あ!私は日下部加々美でーす!実は新聞部を作ろうと思って、
黒鉄先輩に新聞部の新聞第一号の表紙にしたいと思いまして~」
「(む、胸が・・・・当たってる)」
腕に伝わる2つのマシュマロの感触に一輝は顔を赤くする。
「良かったじゃない!新学期モテモテで・・・・取材受けてあげれば?
・・・・・・せ・ん・ぱ・い?」
「あーあ、嫁が怒ってんぞ一輝」
「だ、誰が嫁よ!?」
「誤解だからッ!」
翔真の発言。二人は真っ先に否定する。そんな中、一人の少女が近づいていた。
「やっと見つけました・・・・お兄様」
「「・・・・?」」
「珠雫・・・・?」