落第騎士の英雄譚 破軍剣客浪漫譚「本編完結」   作:どこかのシャルロッ党

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第三幕「一輝の秘密 前編」

 

試合が終わり、勝利を納めたのは一輝だった。ステラはあのまま倒れて、

黒乃により寮の部屋へ運び込まれていた。

 

「んっ・・・・・ここは・・・・」

 

ゆっくりと上半身を起き上がらせ、ステラは周りを見渡し

ここが寮の自室であると気が付く。

 

「どうやら目が覚めたらしたな、ヴァーミリオン」

 

「理事長先生・・・・・」

 

部屋の壁に体を預けるようにもたれながら黒乃はステラの体調を伺う。

 

「問題はありません・・・・でも久しぶりだわ。

負けるってこういう気分なのね」

 

 

ステラが今一番思っている事。それは勝負に負けて悔しいという事だった。

久しぶりに敗北という気分を味わったステラにとって今のところ元気ではない。

 

「ぷはー・・・・・黒鉄はハンデ戦とはいえこの私にも勝っている男だからな」

 

「元世界ランキング3位の理事長先生にも勝ってるって・・・・

何よそれ・・・・・そう言えば!」

 

ステラはある事を思い出した。それは一輝の事だった。

焦るステラに黒乃は上を見ろと言った。すると、上のベッドで

ぐったりと眠っている一輝の姿があった。

 

「お前よりずっと重症だが命に別状はない。一刀修羅・・・・

生存本能(リミッター)までも無視して、全力を出す

1日1回という限定の黒鉄の伐刀絶技だ」

 

「・・・・」

 

「使えば一分後には衰弱するのが一刀修羅のデメリットだ。

ま、自分で部屋に戻ってくるぐらいの余力は残していたようだがな」

 

黒乃は淡々と説明を終えて、再び一服する。だが、

ステラにはどうも納得出来ない事があった。

 

「理事長先生。この男は一体なんなんですか?」

 

「何・・・・とは?」

 

「とぼけないで!伐刃者としての能力値が足りなくてランクが

Fなのは理解出来ます!でも、あんなにも人間離れした生徒が

留年なんて納得出来ません!」

 

一輝の技量と実力を間近で見ていたステラは何故一輝が留年しているのか

気掛かりだった。ステラはその疑問を黒乃にぶつける。

 

「アタシは国家にとって強い、魔導騎士の存在がどれだけ大切なのか

理解しています!その育成を委任している学園が、単位が足りないなんて

理由で留年させるはずがない!」

 

「・・・・・ヴァーミリオン。お前にだけ教えてやろう。

黒鉄が何故留年しているのかを」

 

一服を終えると、黒乃は再び口を開く。

 

「ヴァーミリオン、黒鉄という苗字に覚えはないか?」

 

「そんなの知りません・・・・」

 

ステラにとって日本人の名前などある人物しか覚えがなかった。

 

 

「第二次世界大戦で日本を戦勝国に導いた英雄、サムライ・リョーマしか私は・・・・」

 

「サムライ・リョーマの苗字は分かるか?」

 

「黒鉄龍馬・・・・・まさか!」

 

ステラは何かに気付く。それを察して黒乃は答えを出す。

 

「黒鉄の曾祖父にあたる。黒鉄家は代々優秀な伐刀者を彼の他にも輩出している。

騎士の世界で名を知らぬ者はいないと言われる程有名だ」

 

「・・・・」

 

「だが、黒鉄一輝だけは才能が低くかったが故に本家からは存在しない者として

扱われていた。そして、黒鉄が本校に入学したと知ると・・・・・本家は学園側に

圧力をかけた。家を出奔した出来損ないのはぐれ者黒鉄一輝を卒業させるなと」

 

 

「・・・・ッ!」

 

 

 

 

 


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