落第騎士の英雄譚 破軍剣客浪漫譚「本編完結」 作:どこかのシャルロッ党
愛理と麻衣が綾崎家追放との知らせを目の当たりにした翔真。だがそんな一方で綾崎家では一人の男がFランクである翔真に対する処罰を決断しようとしていていた・・・名を綾崎時雨。綾崎家当主にして翔真・愛理・麻衣の父親だ。
「本当に宜しいのですか?自分の息子ではないのですか?」
「・・・・・・」
「迷惑なのだよ。Fランクである出来損ないが娘を倒した・・・それは綾崎家にとって最大の汚点なのだ・・・処分は任せるぞヒルデ、ヨルダ、グレイフィア」
「お任せを」
「ふーん・・・まあこの女と一緒とか嫌だけど・・・当主様の願いなら」
「・・・・・・」
綾崎時雨に支える優秀なメイド"ヒルデ・ガルダ"とその妹"ヨルデ・ガルダ"は綾崎家が誇る優秀な殺戮メイドである・・・そしてメイド長である銀髪の美女"グレイフィア・ルキフグス"もまた翔真の処分に行くよう命じられた。だが・・・グレイフィアの表情は何処か暗かった。
「(翔真様・・・待っていてください・・・必ず貴方様をお守り致します)」
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「そんなことがあったのですね」
「ああ。すまねぇな朱乃さん・・・愛理の面倒見てもらって」
「いいのですわ。それよりも・・・どうするのですか?」
「恐らく、アイツ等はあちらから出向いて来るだろうさ」
愛理を看病する朱乃は翔真に尋ねる―――――色々あって疲れて寝ている麻衣の頭を撫でながら翔真は警戒していた。恐らく次は綾崎家の出来損ないである自分を消す為に動くはずだと翔真は確信していた・・・
「翔真君・・・」
「朱乃さん。しばらくの間愛理達を頼みます」
「!・・・翔真君はどうしますの?」
「逃げて来たけど、どうやら正面で殺り合わないといけないみたいだ・・・」
「ダメよ!そんなことしたら!『翔真ァ!』黒鉄君?」
朱乃が翔真を止めようとした時―――――一輝が部屋に入って来た。
「か、加々美さんが!」
一輝によれば校舎の渡り廊下で血だまりの上で横たわっていた加々美が何者かによって襲撃された。今は治療を受けており命に別状はないということだが、翔真はこの時嫌なことが脳裏に過った。
「まさか・・・!」
「翔真!何処に!」
「黒鉄君、翔真君をお願いします・・・」
「・・・分かりました!」
廊下を走る翔真を必死に追いかける一輝・・・やがて校舎のグランドへと出る。
「アンタ、一体何者?」
「学園の関係者じゃありませんね」
「――――邪魔だ」
「(アイツは!?)」
グランドへ出るとステラと由紀江が一人の女性に固有霊装の切っ先を向けていた。黒いゴスロリ服に身を包んだ金髪の女性が佇んでいる・・・・・・その女性は翔真がよく知っていた。かつて綾崎家で過ごしていた時、父の傍らにいたメイド・・・ヒルデ・ガルダから教育という名の制裁を受けた過去が蘇がえる。
「・・・探しましたよ、翔真」
「久しぶりだな・・・ヒルダ」
「その名で呼んでいいのは・・・当主様だけだ」
ヒルデ・・・またの名をヒルダは固有霊装"クラレント"を展開する。そしてステラと由紀江の間をすり抜け、翔真にクラレントを振り下ろす。
「速い!?」
「見切れなかった・・・!」
「当主様に代わり、私が天誅を下す」
「天鎖斬月・・・!」
翔真は一輝を退かし、ヒルダのクラレントを受け止める。