落第騎士の英雄譚 破軍剣客浪漫譚「本編完結」   作:どこかのシャルロッ党

38 / 49
やるやるとか言いながら、更新遅れてすいません。うちの一輝君はこれも使えます。


第三十六幕「一撃必殺―牙突―」

 

―――一輝、お前に技を1つ伝授してやろう

 

――技?

 

―――"牙突"・・・相手を一撃で仕留める必殺技だ。魔力が低い分、剣術でカバーだ――

 

 

かつて翔真から教えてもらった技・・・それは"牙突"。翔真が使いこなせなかった牙突を一輝は極限まで極め、技を更に磨いた。そして一輝は今その牙突をやろうとしていた。蔵人の乱撃を交わし隙を突くために攻撃を受け止める。

 

「さすがと言うべきだがなァ!そんなんじゃ勝てねーぜ・・・」

 

「・・・・・・」

 

「うらァァ!!!」

 

 

一輝は小太刀術で蔵人の蛇骨丸の乱撃を防ぐ。速さは更に進化を見せ、乱撃は衰えを知らない。

 

「がっ!?」

 

「イッキ!/黒鉄君!?」

 

「大丈夫・・・まだやれる!」

 

「・・・!けどそんな怪我で!これ以上はもう無理だよ!」

 

「今止めたら道場は返って来ないわよ?先輩」

 

「そんなのはいい!黒鉄君は・・・!」

 

「けど・・・止めることはしないわ」

 

「なんで!?」

 

「分からないの?だって・・・イッキがあんなに楽しそうなんだもの」

 

 

絢瀬は目を見開いた。状況は不利なはずなのに一輝は笑っていた・・・それは恐怖から来るものではなくただ単に戦いを楽しんでいた。そんな彼を見て混乱する絢瀬に翔真が声を掛ける。

 

 

「なあ先輩よ、俺はアンタの話を聞いて納得できねーことがある。あんたの親父さんは本当に無念の中へ沈んだのか?」

 

「・・・何を言ってるの綾崎君・・・そんなの当然じゃないか!」

 

「・・・・・・」

 

「アイツさえ!アイツさえ現れなければボク達はずっと幸せのままでいられたんだ!アイツのせいで・・・父さんが意識不明になることも、門下生が傷付いて道場が無くなることもなかった!アイツがボク達の幸せを壊したんだ!!!!」

 

「でもそれって、センパイの主観でしかないわよ」

 

 

翔真に代わり、ステラが口を開く。

 

 

「かつては剣の世界で栄冠欲しいままにして、ラストサムライとまで称される程の向上心を持つ剣客が剣も持てずにただ朽ちていくだけの毎日を送るなんて本当に満ち足りた幸せなの?」

 

 

蔵人の取った行動には問題はある。だがそこまでして朽ちてゆくしかなかったラストサムライ 綾辻海斗にとって自分に挑んできた人間がいたというのはある意味幸せだったのかもしれない・・・ステラはそう続け、その言葉に絢瀬は気付く。

 

 

「(なんで・・・気が付かなかったんだ・・・あの時父さんの表情にはもっと単純で純粋な感情があった)」

 

 

「ラストサムライにとっては・・・きっと、蔵人でも嬉しかっただろうよ。おっと・・・そろそろ決着が着きそうだな。朱乃さん、救急箱の用意お願いしますね」

 

「うふふ。了解ですわ」

 

 

翔真達の視線の先―――――息切れを起こしている一輝と蔵人。やがて一輝は呼吸を整えて腰を深く落とすと陰鉄の切っ先を水平に構えて峰に右手を添える。そうそれは、一輝が翔真に託され、教えられた"牙突"の構え。

 

「この野郎・・・しぶといにも限度ってもんがあるぞ」

 

「あいにく負けず嫌いなもんでね・・・ここまで剣戟で圧倒されたのは久しぶりだから楽しくてね・・・それはお互い様だと思うけど?」

 

「楽しいか・・・てめえも大概イカれてやがる・・・まあいいさ。次で仕留めやるよ・・・」

 

「・・・僕もそのつもりだ・・・最後に1つ聞いていいかい?」

 

 

先程目が覚めた翼は小猫に付き添われ、翔真達と一緒に戦いを見守る―――――――

 

 

「僕達が憧れたあの偉大な剣客は、今の僕らのように笑えていたかい?」

 

「はっ、くだらねぇこと聞くな・・・こんな熱い"死合い"を楽しめねぇヘタレが、ラストサムライなんて呼ばれる訳ねぇだろうがァァ!!!」

 

「そうかい・・・なら・・・!」

 

 

 

 

 

 

一輝は"一刀修羅"を発動し、牙突を蔵人に喰らわせた―――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。