落第騎士の英雄譚 破軍剣客浪漫譚「本編完結」   作:どこかのシャルロッ党

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第三十二幕「天剣対二刀流飛天使い 前編」

 

―――数年前

 

月の光りが差し込んだ部屋。室内には沢山のぬいぐるみが転がり

ダブルベッドには二人の男女。男女という割には若すぎる二人・・・

それもそのはず、二人はまだ世間で言う中学生だ。だがこの二人には

ある事情がカランでいる。二人が所属する組織が用意した隠れ家なのだ。

 

『ねぇ・・・・・・組織をやめるって本当なの?』

 

『・・・ああ』

 

『どうして・・・?』

 

『疲れたんだよ。最初は解放軍をぶっつぶせば何時かは自分の正義を

貫けると思った・・・けどさ、平和や自由を守る為に戦って来たけど

人を殺め続けて、何の意味があるんだ・・・?』

 

少年の瞳に悲しみが宿る。金髪の少女は翔真の言った言葉に黙ってしまう。

好意を抱くまでに信頼している翔真の悲しみに満ちた表情にどうしていいか

分からない。少女は翔真の胸板に飛び込む。

 

『それでも・・・嫌よ・・・翔真。私は・・・私は・・・』

 

『《ラステ》さん・・・俺は自分の為・・・あんたを守る為に力を振るった。

でも、それはもう出来ないんだ・・・ごめん。そして・・・愛してるよ』

 

『ッ!?』

 

《ラステ》と呼ばれた少女は顔を赤くしながらも、頬には涙が流れていた。

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

絢瀬に道場を取り返すと約束した一輝。数日後一輝はステラ、絢瀬

翔真、朱乃、明日菜、シャルロットを連れて道場へ向かっていた。

場所は変わり道場。貪狼の生徒が占拠しているのはいつものこと。

蔵人と翼は、退屈した表情で世間話に花を咲かせる仲間を見ていた。

 

「よくもまぁ、毎日同じような話をして飽きねぇな」

 

「別にあの人達が楽しければいいんじゃないですか?」

 

「聞いてていいもんじゃねぇだろ。女を寝取ったとか、男を

ぼこぼこにした・・・それを笑いながら言うところに理解に苦しむ」

 

「・・・蔵人さん、そろそろここに居ても意味がないと思いますよ」

 

「それもそうか・・・これ以上ここにいても・・・『な、なんだ!?』」

 

蔵人の言葉を遮ったのは仲間の1人。蔵人と翼が立ち上がると同時に

外にいた数人の仲間がボロボロになった状態で二人の前に差し出された。

目を疑う蔵人と翼・・・二人の目の前に数人の影。

 

「たく、明日菜やステラをナンパした報いだ。はぁ・・・・・・

相変わらずだな・・・倉敷蔵人・・・・・まさか、俺を忘れたか?」

 

「・・・ハハハ・・・ハハハッ!誰かと思えばテメーか綾崎ッ!

あの時以来か?ちょうど退屈してたところだ・・・・・・」

 

「僕のことも忘れないで欲しいかな」

 

「テメーは」

 

翔真と一輝。二人の背後には強者の風格が滲み出ている。そして

蔵人の隣にいた翼はニヤリと笑った瞬間、翔真に襲い掛かる。

 

「翔真ッ!」

 

「翔真君ッ!」

 

「・・・大丈夫ですわ二人共」

 

彼の名を呼ぶ明日菜とシャルロット。だが朱乃は二人に大丈夫と促す。

翔真は一瞬で天鎖斬月を展開して、翼の攻撃を受け止めていた。

 

「待っていましたよ先輩・・・さあ初めましょうか?・・・僕らの死合を」

 

「まあ慌てるなよ後輩。制限時間はあるが・・・ッ!」

 

僅かな魔力を左手に込める。するともう1つの天鎖斬月が現れる。

翔真は二刀流で翼を押し退け、蹴りをお見舞いした。吹き飛ばされる

翼はそのまま壁に激突。周りにいた蔵人の仲間の表情が青ざめる。

 

「お前が速さに特化しているのは分かった。だがな、何も対策を

考えずに俺が来たと思うか?・・・二刀流で防御を高める。それが

俺や明日菜達が考えた戦術。加宮・・・もう終わりか?」

 

「蔵人さん・・・あの人は僕がやります。だから手を出さないでください」

 

翼はそれを告げると翔真に襲い掛かる。翔真は二刀流の構えで防御。

それに構わず一輝は蔵人に木刀を向ける。

 

「ハッ!誰かと思えばファミレスにいた奴か。お前・・・

なかなかの有名人らしいな・・・それで何しに来た?」

 

 

蔵人は仲間の情報で一輝のことを知っていた。

 

 

「助太刀さ。綾辻さんに代わってこの道場を取り返しに来た」

 

「ハハッ!何を言うかと思えばくだらねェ!この道場は正式な決闘で得た

制式な戦利品だ。剣客ならこの意味がわかんだろ?なあ・・・」

 

「もちろんただで返せなんて言わない。倉敷君・・・君に決闘を申し込む。

倉敷君と同じ道場破りだ。まさか逃げたりしたいよね?」

 

「・・・・・・ほう、挑発してくるか。いいじゃねぇか・・・」

 

 

 

「「始めよう・・・俺/僕達の戦いを」」

 

 

 

翔真と一輝の言葉が重なる。翔真は二つの天鎖斬月を構えて翼に向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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