落第騎士の英雄譚 破軍剣客浪漫譚「本編完結」   作:どこかのシャルロッ党

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今回は貪狼側の話。前回の話でミスがあり、まゆっちの固有霊装は飛梅です。
間違って氷輪丸にしてました。すいません


第二十九幕「狂戦士誕生」

「なんだよなんだよ。それぽっちかよ」

 

「はいツーくん。お疲れ様」

 

「ありがとう小猫ちゃん」

 

『綾瀬一刀流道場』。今では貪狼学園の生徒達の溜まり場になっている。

倉敷蔵人を慕う複数の生徒達が床に倒れていた。周りには血が飛び散り

この惨状を作ったのは加宮翼だ。稽古という斬り合いを終えた翼は愛しの

小猫からタオルを受け取る。小猫は心配な表情を浮かべる。

 

「ツーくんどうしたの?あの人と会ってから変」

 

「そうかな?」

 

「変なのは前からだろ。放っておいてやれ」

 

「倉敷先輩には話してないのですが」

 

 

二人を見ながら倉敷蔵人はそう言った。小猫は翼との時間を邪魔されて

ムスッとした表情となる。翼はそれに構わず自身の固有霊装 氷輪丸を納めて

蔵人の方へ向く。同時に蔵人はゆっくりと立ち上がる。

 

「やだなァ。そんな言い方しなくてもいいじゃないですか」

 

「笑みを浮かべながら言う辺り、狂ってんだよお前は」

 

「小猫ちゃん・・・・・危ないから下がって」

 

「うん。気を付けてね」

 

蔵人は手元に固有霊装『大蛇丸』を召喚する。翼は彼女を下がらせて

再び氷輪丸を召喚して手に持つ。蔵人はニヤリと口元を歪めると速攻に

動く。翼はそれに応じてバク転して距離を離し、抜刀の構えをしたまま

走り出す。刃と刃が交差し鋭い鉄の音が鳴り響く。

 

 

「(やっぱりだ。蔵人さんでも満足出来ない・・・やっぱりあの人か)」

 

脳裏に浮かぶのは前に戦った翔真の姿。蔵人以外の誰すらも自分にダメージを

与えることが出来ない伐刀者達はいた。だが唯一自分に打撃を与えた翔真は

翼にとって新たな出来事だったのだ。

 

「(早く・・・僕を探しに来てくださいよ・・・そしてまた・・・)」

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

他者より強く、他者より上へ。伐刀者の世界はいつだてそうだ。けれど

魔力値というチケットに価値がなければ意味はない。魔力値が低くければ

差別される・・・それは当たり前だ。僕の家は高ランクの伐刀者を輩出してきた。

でも僕は魔力値がEだったから両親に捨てられた。真冬の中家から追い出された

ことは今でも昨日のことのように覚えてる。唯一僕の味方だったばあちゃんから

教わった伐刀者の力で僕は生きて来た。

 

ストリートチルドレンとして生きる。生きる為ならなんだってした。

人を殺して、金を貰って、他人を見捨てて血を浴び続けた。そうしている内に

僕は喜怒哀楽の楽以外全てが欠落していった。その時に悟った。ああ・・・僕は

もう人じゃないんだ。喜んだり、泣いたり、怒ったりすることが出来ない人間は

本当に人間なのか。そんな考えは大きくなるに連れて徐々に無くなっていた。

 

この数年間、剣を振るい続けた。僕には剣しかない。だからその剣で沢山の人を

殺した。その最中、僕は更に強さを求めて貪狼学園へ殴り込みに行った。

沢山の生徒を薙ぎ倒し、全てを倒したと思った・・・・・・

 

「騒がしいと来たらなんだよこれは?テメーか・・・」

 

「うっさいな。次はアンタが相手なの?だったら僕を満足させろよ」

 

「・・・ガッカリさせんなよ」

 

蔵人さんは大蛇丸を召喚し構える。僕も負けじと氷輪丸を振るう。しかし

勝負は圧倒的に蔵人さんの勝ちだった。僕はボロボロにされた。この時

初めて敗北というものを味わい打ちのめされ、このまま終わるかと思った。

 

「ほら」

 

「・・・どういうつもりかな・・・」

 

「勘違いすんじゃね。訳ありみてーだしな」

 

蔵人さんは僕に手を差し伸べてくれた。面倒くさそうな顔をしながらも

その手は凄く暖かった。蔵人さんの計らいで僕は貪狼学園に入った。

側に置いてもらい、僕は倉敷蔵人の強さを目の当たりにしてきた。

圧倒的な強さを確かに間近で見た。僕は何時しかこの人のように

強く、輝きたい。そして・・・・・・蔵人さんを超えたい。だから強い相手と

殺り合わないといけない。だから・・・だから早く僕を探せよ・・・綾崎翔真。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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