落第騎士の英雄譚 破軍剣客浪漫譚「本編完結」   作:どこかのシャルロッ党

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今年の投稿はこれで終わりです!次回は来年の1月中に投稿致します!それでは良いお年を!


第二十七幕「綾と絢―旋律の刃―」

 

 

傷を負った翔真とシャルロット。二人はなんとか破軍学園へ帰って来た。

辺りはすっかり暗くなり、時刻は夜の19時を回っていた。シャルロットは

スリ傷程度だが、翔真は腕や脚から出血していた。帰りはなんとかタオルで

血を止めていたが学園前で力尽きた。シャルロットは翔真の端末を取り出し

一輝に連絡を取る。翔真は秘密裏に一輝とアリスの手により治療室へ運ばれる。

治療を終え、なんとか回復した翔真は怪我をした経緯を一輝とアリスに話した。

 

 

「姿が見えないと思ったら綾辻先輩の道場に向かっていたなんて」

 

「それで、謎の伐刀者に怪我を負わされたって訳ね」

 

「まあな。シャルロット、他に痛い所とかないか?」

 

「うん。翔真が守ってくれたお陰でなんともない。

でも・・・そのせいでショウマが・・・・・・」

 

「気にすんな。女の子を守る為ならこのくらい!・・・いたた」

 

心配するシャルロットをよそに、翔真は体に走る痛みに表情を歪める。

加宮 翼の与えた一撃は明確なものであった。翼に対して翔真が繰り出し、

放った技は『九頭龍閃』。だが、翼にダメージがあるかはわからない。

 

「(危うく殺られそうになった・・・加宮 翼。過去に出会った

どんな奴等よりも・・・・・・厄介かもな)」

 

脳裏に過る不気味な笑顔。ひたすら迫り来る刃の連鎖。

あの戦いの最中、翔真は翼の強さを実感した。沈黙に静まる

治療室。すると一輝がある事を思い出す。

 

 

「そう言えば、今日の昼なんだけど・・・」

 

 

一輝は昼に、ステラや絢瀬達と街に買い物へ出掛けてファミレスで

食事をしていた。その途中で貪狼学園の『倉敷蔵人』や数名の

生徒に絡まれたのだ。絢瀬は何か因縁があるようであやうく

戦いに発展しそうだったと一輝は語る。更に、次の試合相手が

絢瀬になった事を一輝は告げる。

 

「よりにもよって倉敷かよ・・・はぁ」

 

「知ってるのかい?」

 

「まあな。アイツとは一度戦った事がある。半日を費やしても

俺が倒せなかった奴だ。貪狼学園のエースにして昨年の七星剣武祭

ベスト8のCランク騎士・・・まさかアイツとまた会うとはな」

 

 

過去に一度だけ戦った相手。それは今でも昨日の事のように覚えている。

再び静まり返る治療室・・・・・・だが、一輝の端末からメールを知らせる

着信が鳴る。差出人は絢瀬からだった。メールの内容は今すぐ屋上に

来て欲しいというもの。

 

「これは・・・」

 

「・・・一輝、お前は行くな。変わりに俺が行く」

 

「ちょっと待って!?そんな怪我なのにどうするつもりなの!?」

 

 

止めようとするシャルロット。翔真はそれに構わずベッドから降りる。

制服の上着だけを肩に掛け、部屋を出る。血をポタポタと脚や手から

流しながら彼女の元へ向かう。

 

 

「(こんな事なら・・・普段からビタミンAを多く取っておけば良かったぜ)」

 

 

 

―――――――――――

 

 

 

 

「全く・・・手間のかかる先輩だ」

 

揺らぐ意識の中、やっとの思いで屋上へやって来た翔真。腕に巻かれた

包帯には赤い染みがじわじわと広がっていた。出血が止まらない証拠だ。

息も荒くなり、視界が揺らぐ中―――驚いた様子でこちらを見る絢瀬を

翔真は視界に捉えた。

 

「なんで・・・綾崎君が・・・」

 

「ハァ・・・ハァ・・・何を考えているかは知りませんが

馬鹿な真似はやめてくれないか先輩・・・」

 

「・・・・・」

 

その言葉に絢瀬は真剣な眼差しとなり、翔真を見据える。

 

「ボクは黒鉄君を呼んだはずだけど?」

 

「悪いが、俺で我慢してくれよ先輩。それとも

一輝が相手じゃないと、何か都合が悪いのか?」

 

「・・・・・・」

 

「アンタの事情はなんとなく分かったよ。自分の大切な

場所を奪われた・・・そして、全てを奪った倉敷蔵人が憎いんだろ?」

 

 

黙る絢瀬に対して言葉を投げ掛ける。すると絢瀬は静かに笑い、

手元に自身の固有霊装『緋爪』を呼び出す。翔真もそれに応じて

天鎖斬月を呼び出した。

 

 

「綾崎君。君の事を甘く見ていたよ。まさかここまで勘が鋭いなんて」

 

「たまたま当たっただけですよ・・・先輩」

 

満月の光りが射し込む屋上。風が吹き始めた直後・・・二人は動いた。

緋爪と天鎖斬月の刃が幾度となくぶつかる。翔真は神速を活かして、

『龍槌閃』を繰り出す。しかし絢瀬は紙一重で交わし緋爪で傷を付ける。

 

「ッ!・・・クッ!」

 

「あれー?綾崎君・・・なんでそんな怪我をしてるんだい?」

 

緋爪の付けた傷は更に致命傷となる。ダメージが酷くなり倒れる寸前、

なんとか持ちこたえる翔真。足元には血溜まりが出来ていた。笑う絢瀬に

警戒しながら再び動く。彼女の瞳には殺意にも似た何かが宿っている。

 

「(綾辻絢瀬・・・アンタは何を考えている!)」

 

「(ボクは勝たなくちゃならない・・・だから!)」

 

 

緋爪を縦に一閃。天鎖斬月を振って絢瀬の一撃を交わす。

下に屈み刃の峰に手を添える。そして一気に飛び上がる。

 

「飛天御剣流!・・・龍・翔・閃ッ!!」

 

「なに!?」

 

迫る刃。緋爪の刃に当たり、その衝撃で絢瀬は吹き飛ばされる。

だが、すぐに着地。抜刀の構えを見せて翔真を睨み付ける。次第に

満月は雲に隠れ、明かりが消えてゆく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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