落第騎士の英雄譚 破軍剣客浪漫譚「本編完結」   作:どこかのシャルロッ党

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お待たせしましたァ!


第二十三幕「マダオ―まるで・ダメな・お姉さん―2」

 

 

―――数年前

 

夕暮れの光りが射し込む道場の中。少女は心配の

表情で相手の男性を見る。対等する男性は優しい

笑みを浮かべ、少女を見据える。

 

『本気で来いって・・・・・・父さん最近体が・・・』

 

『いいから来い。俺は伐刀者じゃない。

俺が出来る事は、剣で力になるしか出来ない』

 

男性は竹刀を構えた。そして―――

 

『この奥義は俺が剣客としての人生を全てをかけて

生み出したモノ・・・誰にも見せんとっておきだ。

これを娘である、お前に託したい・・・・・だから

受け取ってくれ・・・絢瀬』

 

『ッ・・・ずるいよ・・・父さん』

 

少女――綾辻絢瀬は自身の固有霊装『緋爪』を

呼び出す。絢瀬は走りだし男性に向かう。

 

男性・・・綾辻海斗は竹刀を振るった。

 

 

―――――

 

 

 

 

場所は変わり医務室。先程のストーカーの一人は

手当てを受けていた。『黛 由紀江』は額に

怪我をして後からやって来た朱乃により治療を

施されていた。

 

「はい。これで終わりですわ」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

「うふふ。お気になさらず」

 

「ふーん。一輝のストーカーがまさかこんな

美人二人とは・・・世も末だな。あと朱乃さん、

俺も治療をお願いします」

 

「カッコつけたわりには、傷だらけですね」

 

翔真は一輝とステラ、珠雫から経緯を聞いていた。

カッコいい決め台詞を言っている翔真だが顔には

切り傷、制服はあちこちボロボロだった。

 

「あはは・・・まず、その姿はどうしたの翔真」

 

「言わなくても分かるだろ。いたた・・・」

 

「相変わらずですわね。うふふ」

 

シャルロットや明日菜から技の連撃を食らい

この通りボロボロなのだ。朱乃が翔真に治療を

施そうとした時、ベッドで寝かされていた黒髪の

少女――『綾辻絢瀬』が目を覚ました。

 

「あれ・・・ここは・・・」

 

「あ、起きましたか。お兄様~、さっきの人が

目を覚ましましたよ」

 

「目が覚めて良かった。頭の痛みはどう?」

 

一輝は彼女の体調を伺う。

 

「う、うん!大丈夫・・・運んでくれてありがとう」

 

「なら良かった。それでちょっと聞きたいことが

あるんだけど・・・・・まずは名前を聞いてもいい?

そこにいる人もね」

 

由紀江は一輝と視線が合うとビクリと体を震わせる。

絢瀬も掛け布団で顔を隠す。

 

「わわわわ私は!黛 由紀江と申します!あの・・・

私の事・・・覚えて・・・いますか?」

 

チラっと上目遣いで問う由紀江。一輝は彼女の

顔を見て、桐原との試合の直前にぶつかった事を

思い出した。

 

「黛さんだったんだね。あの時は急いでて・・・

怪我とかしてない?」

 

「は、はい!だ、大丈夫であります!」

 

「(むっちゃ緊張してるな)」

 

「(なるほど。そういう事ですか)」

 

朱乃から治療を施されている翔真は由紀江の

表情を見て緊張していると気付く。朱乃もまた

ある理由で彼女が顔を赤くしているのだと気付く。

 

「ぼ、ボクは綾辻絢瀬・・・三年生だよ」

 

「先輩だったんですね。あの・・・なんで僕を

見てくれないんですか?」

 

一輝は話しているのだが、絢瀬は布団で顔を

隠しながら喋っている。

 

「だ、だって恥ずかしいから・・・し、知らない男の子

と目を合わせて会話するなんて・・・恥ずかしいよ」

 

人見知りという性格。しかも異性とは父やその他

以外関わった事がない為、絢瀬は顔を隠しながら

話すしかないのだ。それを見ていたステラと珠雫と

共に彼女の元へ。

 

「だったら、女のアタシ達なら」

 

「いいでしょう」

 

「う・・・うん」

 

一輝に変わって、ここからはステラと珠雫が

彼女と話す事となった。

 

「先輩とマユズミさんは、どうしてイッキを

着け回していたの?なんの目的?」

 

「理由なんて決まっています。どうせお兄様を

いやらしい目線で見つめていたんでしょう?

更には、二人でお兄様をレ◯プしようと・・・」

 

「んなわけあるかァ!」

 

ステラはいいとして、珠雫の発言には問題があり

翔真は勢いよく突っ込んだ。

 

「「さあ!白状しなさいッ!」」」

 

「「はぅ!/ひぅ!」」

 

迫る彼女と妹。そして絢瀬と由紀江は仕方なく

白状した。理由として二人は、一輝に剣術を

教えてもらいたいというものだった。由紀江は

同級生の周りで一輝の噂を聞いた為、気になり

付けていた。絢瀬もまた同様の理由だった。

 

「・・・・・・なあ少しいいか先輩」

 

今まで黙っていた翔真が口を開く。

 

「えと・・・貴方は綾崎君だよね」

 

「俺の事もご存知なんですか?」

 

「うん。『変態紳士』とか・・・色々聞いて」

 

「(うん・・・なんかショック)」

 

一輝とは違い、どうやら翔真は変態紳士として

同級生や上級生に広まっていたのかと落ち込む。

気を取り直し、翔真は続ける。

 

「先輩のお父さんって・・・あの綾辻海斗さんですか?」

 

その質問に絢瀬は―――

 

「う、うん」

 

普通に答えた。

 

 

 

 

 

 


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