落第騎士の英雄譚 破軍剣客浪漫譚「本編完結」   作:どこかのシャルロッ党

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第十八幕「もう一度、兄妹としてやり直せるなら」

 

 

愛理は負けた。そう、自分はFランクだと

見下していた兄に負けた。あの戦いで学んだのは

自分の考えが間違っていた事だった。

 

「・・・・・・」

 

治療室で安静にしている愛理は窓の景色に

視線を移していた。負けた・・・だが悔しいという

気持ちは沸かなかった。

 

「(私の考えは・・・間違っていたの?

兄さんは弱い・・・そう思ってたのに)」

 

「少しは分かりましたか?これが現実です」

 

「珠雫・・・さん」

 

治療室の入り口から珠雫が現れる。後ろには

真剣な表情でこちらを見る、麻衣の姿があった。

 

「翔真さんとの試合はどうでしたか?」

 

「嫌味ですか?」

 

「いいえ。ただ・・・貴女が弱いと見下していた

翔真さんの力を実際に感じてどうだったのか

聞きたいのです、私は」

 

珠雫の瞳に迷いはない。愛理はそこから

自分が思った事を口にする。

 

「確かに・・・私は兄さんを見下してた。

でも、実際に戦って・・・兄さんが強い事を

実感・・・しました」

 

「・・・・・」

 

「お姉ちゃん・・・」

 

「愛理。この際ハッキリ言いますが人を

見下してるようでは、貴女は成長しません」

 

「・・・私は間違っていたのですね・・・」

 

愛理は真摯に言葉を受け止め、愛理は麻衣と

珠雫を見る。

 

「全ては家の為に、私の誇りの為に・・・戦った。

でも・・・兄さんは強かった。私なんかより・・・」

 

 

背負うものと覚悟の違いを目の当たりにして

あの試合で愛理は何も出来なかった。

 

「お姉ちゃん・・・ッ!」

 

麻衣は愛理を見て何かを決意する。

 

「まだ間に合う・・・お姉ちゃんお願い!

兄さんと仲直りしようッ!もう一度・・・

もう一度やり直そうよ!」

 

「それは・・・・・・出来ない」

 

「え・・・・」

 

麻衣の言葉に愛理は無理だと否定する。

 

「今更どうしろっていうの麻衣?あれだけ

突き放しておいて、仲良くだなんて・・・私は

出来ない・・・それに兄さんにはもう・・・」

 

 

絶対に妹と思われていない。小さい頃に

自分は散々酷い言葉を掛けてきた。なのに

今更仲直りなど出来るはずもなかった。

 

「私は最低だ・・・・・・人を見下して、挙げ句の

果てには兄さんに大口を叩いて負けて・・・」

 

「・・・少しは分かりましたか。なら、

あとは貴方の出番ですよ・・・翔真さん」

 

「・・・ッ!」

 

「え・・・」

 

「よ、よう・・・愛理、麻衣」

 

直後に翔真が姿を現した。額や頬には

絆創膏が貼られている。

 

「珠雫ありがとうな」

 

「いいえ、お気になさらず。ただ、

今度の機会に何か奢ってもらいますから」

 

「へいへい」

 

珠雫は部屋を去り、部屋にいるのは

翔真、愛理、麻衣の三人。久々の三人だ。

 

「兄さん・・・」

 

「麻衣。たく、お前は変わってねーな」

 

やれやれと表情を浮かべ、麻衣の頭を撫でる。

 

「はぅ・・・」

 

「兄さん・・・」

 

「愛理・・・俺がここに来たのは・・

『言わないでください』・・・ッ!」

 

言葉を遮るように愛理は声を出す。

 

「私の事は・・・放っておいてくださいッ!!

私は貴方に・・・合わせる顔がありません!」

 

「・・・・」

 

愛理は涙ながらに語る。

 

「最低で・・・見下す事しか出来ない私にッ!

これ以上・・・『愛理』」

 

次を続けようとしたが、翔真は強く抱き締めた。

 

「え・・・」

 

「よく頑張ったな。一人で、よく耐えたな」

 

優しく頭を撫でる。まるで泣く子をあやす

母親のように翔真は微笑みながら愛理を

宥める。

 

「なんで・・・私に、優しくする・・・のですか」

 

「なんでって・・・決まってるじゃん。

お前は俺の妹だからさ」

 

「ッ!・・・兄さん・・・うわあああああん!!」

 

「たく。よしよし」

 

 

いくら見下されても、突き放しても大切な

妹に変わりはないのだ。泣きじゃくる愛理を

強く抱き締める。その光景を麻衣は嬉しそうに

見守っていた。

 

「仲直り・・・出来そうかな」

 

 

――

 

場所は変わり破軍学園の正門前。艶のある

黒髪のポニーテールが風に揺れる中、

ポニーテールの少女は校舎を見上げていた。

 

「ここに翔真君がいますのね・・待っててくださいな」

 

ポニーテールの少女――『姫島朱乃』は

たゆんと有り余る2つのメロン(意味深)を

揺らして校舎へと入る。

 

 

またまた波乱が起きそうな予感だ。

 

 

 

 





~おまけコーナー(本編とは一切関係ない)~

拒絶ルート・愛理


「愛理・・・俺がここに来たのは・・・
お前に別れを告げる為に来たんだ」

「え・・・兄さんどういう事?」

静まり返る治療室。愛理は唖然とし
麻衣は混乱寸前だった。

「あれから色々考えてな・・・見下す事しか
出来ないお前はもう・・・・・・俺の妹じゃない」

「ッ!!」

「さようなら・・・愛理」

「ちょ、ちょっと待ってください!兄さん!」

暗い表情のままそう告げる翔真に麻衣は
制止しようとしたが聞く耳を持たなかった。

「精々、綾崎家の為に頑張れよ。
身を滅ぼすまでな」

「(兄さん・・・私は・・・)」

完全な拒絶。それはもう縁を切ったと同じで
他人でいようという意味。愛理の表情は
血の気がさーと引き、青くなっていた。

―――

それから数日後。愛理は一人薄暗い
渡り廊下を歩いていた。心を入れ換え
兄である翔真に散々アピールしようと
したが、全て他人のようにあしらわれ
拒絶されていた。


そして追い討ちをかけるように、翔真との
試合で負けた事が綾崎家に知れ渡り、愛理は
綾崎家から『Fランクに負けるような娘は
うちの娘ではない』という理由で追放され
ようとしていた。

「・・・・・」


何もかも失いかけて、絶望する愛理は
ただひたすら歩いていた。

「あれ?君一人?」

彼女の目の前にチャラチャラした男子生徒が
現れる。

「見てわかりませんか・・・私は急ぎますので」

「まぁまぁちょい待ち。今からさ
仲間とパーティーするんだけど君も来ない?」

突然の誘い。だが愛理は断ろうとしたが
男子生徒は続ける。

「騙されたと思って来てみなよ。ね?」

「・・・・・・少しだけなら」

普段なら断るのだが、現在まともに思考が
働いていない愛理は軽い気持ちで返答する。

「(クククッ・・・いい雌が手に入ったぜ。
俺達の新しい玩具・・・たっぷり可愛がってやるよ)」

ゲスい笑みを浮かべた男子生徒は愛理と
共に薄暗い廊下から姿を消した。そして
この日を境に、愛理の姿は完全に消えたのだった。





BAD ENDルート・完

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