落第騎士の英雄譚 破軍剣客浪漫譚「本編完結」   作:どこかのシャルロッ党

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第八幕「烈火の修羅 前編」

 

 

 

「恵・・・・ちゃん」

 

「もしかして翔真君・・・・?」

 

まさか、こんな場所で再会するとは思わなかった。

人質の中から姿を現すのは一人の少女だ。

 

白いベレー帽に、黒髪のボブカットが似合う

彼女――そして、翔真のファースト幼なじみ

『加藤 恵』はゆっくりと立ち上がる。

 

「久しぶりだね。翔真君」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―遡る事数時間前―

 

泣きじゃくる明日菜を宥めた次の日。一輝から

休みの日に出掛けようと提案された翔真。

メンバーは一輝、ステラ、珠雫、明日菜。

さらには珠雫のルームメイトも来るのだと

一輝は説明した。

 

行く場所はショッピングモール。翔真は予定も

ないので明日菜も来るという理由で付いて

行く事にした。

 

 

―翌日―

 

 

「全く・・・・少し遅すぎじゃない?」

 

「まあまあ」

 

「あともう少ししたら来るって珠雫から

連絡があったんだけど・・・・」

 

「女の子は色々と時間が掛かるんだろう?

ヴァーミリオンもちょっとは分かってやれよ」

 

「う、うっさいわね!た、確かに時間が

掛かる事だってあるものですしね」

 

ステラは顔を赤くさせてそう告げた。ちなみに

四人は今待ち合わせ場所である学園の門の前で

待っている。

 

一輝は中にシャツを着込み、上にデニムジャケット

を着用、下は黒色のチノパンとスニーカーで

決めている。翔真は青を基調としたカジュアル

シャツに、下は黒いジーンズとハイカット

スニーカーで決めており、まさしくイケイケの

メンズファッションだ。

 

ステラは明日菜にコーディネートしてもらい

ファッションに気合いが入っていた。

ピンクを基調としたブラウスに黒いミニスカート、

ハイヒールを履いてお嬢様感を出している。

明日菜は白を基調としたシャツワンピースで、

黒いブーツを履いて、少し大人な雰囲気に

仕上がっていた。

 

 

「・・・・」

 

「?・・・・どうしたの一輝」

 

「いや。ステラ、今日の格好似合ってるよ」

 

「~~ッ!」

 

褒めてくれた一輝に、更に顔を赤くするステラ。

 

「(もう出来上がってんのか?)」

 

「ねぇ翔真君・・・・」

 

「どうした明日菜」

 

一輝とステラにカップル疑惑の視線を送る

翔真に明日菜が声を掛けた。

 

「今日はいっぱい!楽しもうね」

 

「そうだな」

 

明日菜の笑顔に、見惚れ我を忘れていた時

こちらに向かって来る人影があった。

 

「お兄様~!」

 

「うわ!?し、珠雫!?」

 

「会いたかった、会いたかったですお兄様」

 

「(何処のフラッグファイターだよ)」

 

ゴスロリの衣装に身を包んだ珠雫が一輝に

抱き付いた。

 

「ちょっとシズクッ!離れなさいよ!」

 

「変ですね?・・・・何処からか声が・・・・」

 

「私の存在を消すなァァ!」

 

またもやステラと珠雫が言い合いを始める。

苦笑いを浮かべながら、明日菜が仲裁に入る中

一人の青年?が走って来た。

 

「もう~、珠雫ったら早すぎよ」

 

「「(・・・・誰?)」」

 

明らかに今、翔真と一輝の考えが一つとなる。

少し声が高めの青年が息を切らしている。

そこまでは普通だ――だが。

 

「あらあら、そちらの二人が珠雫の言ってた

黒鉄一輝クンと綾崎翔真クンね」

 

「えと・・・・君は?」

 

一輝が尋ねると、青年はくるっと回り

再び二人に視線を合わせた。

 

「初めまして。珠雫のルームメイトの

有栖院 凪よ。アリスって呼んでくれると

嬉しいわ。ニッコニコニ~!なんちゃって」

 

「そうなんだ!私は白雪明日菜です、

宜しくねアリスちゃん!」

 

「宜しく~!」

 

「「「(な、なんだこの人)」」」

 

アリスを目の当たりにした一輝、ステラ、翔真は

今まで出くわした事のないアリスに戸惑う。

明日菜は早速アリスと仲良くなっている。

 

「(えと男でいいのよね?)」

 

「(僕に聞かれても困るよ!)」

 

「・・・・な、なあ・・・・アリスだっけ?」

 

「なにかしらお兄さん?」

 

翔真は真剣な眼差しでアリスに問う。

 

「アリスってさ・・・・その・・・・世間で言う

オカマちゃんなのか?」

 

「「(超ドストレート!?)」」

 

ストレートな質問に一輝とステラは内心驚く。

ここは少し、オブラートに包み真意を問う所

なのだが翔真はキッパリとストレートに聞く。

 

「違うわね。見た目は男だけど、中身は

女の子よ。そこはちゃんと覚えておいてね」

 

アリスは笑みを絶やさずそう告げる。翔真は

そっと一輝とステラの側に近寄る。

 

「(なあ・・・・何が違うんだ?)」

 

「「(僕/私に聞かれても困るよ/わよ)」」

 

 

そんなこんなで一輝達によるお出かけが始まった。

 

 

 

 

 

 


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