捻くれた俺の彼女は超絶美少女   作:狼々

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どうも、狼々です!

今回はデートがスタートまで、デートの中身は次回に回そうと思います。

そして、今回はネタの要素が前半に多いです。
特にパロディネタが。

では、本編どうぞ!


第8話 古今東西、人間は愛に飢えている

 それから、時は目まぐるしく過ぎ去っていった。降旗・愛原は相変わらず音沙汰ないままでいてくれて、黒宮も落ち着けている。吹雪はいつもと変わらず飄々と、小鳥遊は責められることはなくなった。……今は。後からどうなるかは知らんが、その時は、俺もそれなりの対処をさせてもらう。やられっぱなしなど、俺の美学に反する。

 

 ちなみに、俺の美学は『やられた以上でやり返す』だ。それはもう納豆やオクラ以上にねちねちねばねばと。もう相手が攻撃しようと思わなくなるくらいにまで痛ぶり、完全に叩きのめす。勿論、後ろから。正面から戦うなんて、そんな馬鹿な真似はしない。不意打ちで倒し、痛め続ける。最低だな、おい。美しさはどこいったよ。

 

 それはいいとして、今日は金曜。あの約束の日から二日、当日の前日である今日。色々と大変だった。慣れないショッピングに、デートスポットの調査、するべき行動等など。ぼっちで非モテの俺には、どれだけ難しい難易度だったろうか。スーパーハードとかエクストラハードとかのレベルじゃない。

 

 アルティメットクエストならわからん。同等かもしれん。あ、あれも同等だな。『ふっふっふ、何用かね?』の次には、『素晴らしく運がないな、君は』、のあいつだ。あの言葉をどれだけ聞いたことだろうか。さらには、『ふむ、失敗じゃないかな?』、とまで。あいつには大量のグラインダーとメセタをぼったくられた。許すまじ。

 

 で、このミッション難易度がわかったことだろう。今は昼休みで昼食を食べ終えて、二人でゆっくりしているところだ。いや、ゆっくりしているのは小鳥遊だけで、俺はずっとどうしようか考えている。何をするべきなのかが、本当にわからん。デートは初めてなんだよ。向こうはそうじゃないだろうが、俺はそうなんだ。緊張感が半端ない。

 

 こんなに可愛い美少女のデート相手が、恋愛面で弱すぎる俺。小鳥遊は楽しみだと言っているが、果たして本当に楽しくできるだろうか。俺が? できると思う? 到底無理だ。そうだとわかっている以上、少しでもマシな域に持っていかなければならない。できるところまでやってみたいが。素直に、俺も小鳥遊と楽しみたいし。二度とないだろうし。いいじゃない。

 

「デート、どこ行こっか?」

「あ、あぁ……どこか希望はあるか?」

「ん~……任せるよ。どこでも楽しく過ごせそうだし」

 

 彼女の笑顔が、今は俺にとってプレッシャーでしかない。この笑顔が、当日に引き出せるとも限らない。むしろ、高確率で引き出せないだろう。全くの逆方向に自信が向いている。というか、小鳥遊の口から『デート』なんて言葉が発せられると、こちらとしても意識してしまう。改めて、どうしてこうなったし。

 

「了解。……なぁ、ホントに俺でいいのか? 俺以外にも、良い奴が沢山――」

「いいの。柊君とは楽しそうだし」

 

 前からこの一点張り。楽しそう。俺はそんなにおちゃらけて見えるのだろうか。心外だな。俺よりも、一番最後にヤバイこと言ってた誰かさんの方がよっぽどおちゃらけている。その内おちゃらけで済まないことをやらないか、俺でさえも心配になる。将来のことも考えて、今の内に警察に突き出した方がいいかとも思われる。

 

「……そうかい。具体的な時間は、どのくらいが都合がいい?」

「ん~……私はいつでもいいかな?」

「わかった。10時くらいに出発して、行き先で昼食を取ろう」

「オッケ~。待ちきれないくらい楽しみだよ!」

 

 彼女は満面の笑みでそう言っているが、俺はそうじゃない。楽しみじゃないわけじゃない。むしろすごく楽しみ。いや、いいじゃん。こんな機会はないだろうから。けれども、それ以上のプレッシャーがあるのだ。

 

 緊張感に苛まれていた時、丁度良くチャイムが鳴る。昼休み終了、清掃の予鈴。二人で掃除場所へ。もう周りも完全に気付いてしまっているみたいで、「あぁ、また柊か」のような視線を送ってくる。前と比べると、随分と進歩したと思われる。俺の心もあまり傷つかなくなってきた。……慣れただけじゃね?

 

 

 

 学校を終えて、それぞれの家へと下校する放課後。金曜日ということもあり、皆は少々騒がしい。この栄巻高校は、一年生のみ土曜日は休みになっている。今時珍しいが、二年生からはきっちりと土曜日も登校することになっている。土曜日がデートの選択肢に入っていたのも、そのためだ。

 

 しかし、これは重圧となりかねない。一日休日ということは、一日がデートに回せる、ということだ。まだ半日なら何とかならない気もしないが、一日となると、ハードルが高くなる。どれくらいハードルが高いかと言うと、某漫画のゲームで、ポタラで悟空とベジータが合体したベジットを相手に、自分がミスターサタンで戦うみたいな感じだ。

 

 何というハードルの高さ。ここまでくると、もう絶望しかない。舞空術が使えないんだよね。ビーデル使えるのに。そう考えると、地球人とサイヤ人の差って大きいよな。サイヤ人が人かどうか疑うレベル。マサラ人も耐久性なら張り合えるだろう。

 

 あ、あれも絶望だったよね、フリーザの戦闘力の開示。曰く、五十三万らしいからね。第二形態でも百万超えてるらしいし。ラディッツに銃で立ち向かった農夫の戦闘力が五だから、おじさん二十万人分以上。怖すぎだろ。色々な意味で。そんな集合体、見たくもねぇよ。

 

 と、そんなおぞましい想像をしながら小鳥遊を待っている俺。

 

「お待たせ。帰ろっか」

「おう」

 

 この笑顔には、引き込まれるものがある。可愛い。俺の方が身長が高いので、この覗き込まれる感じがまたたまらない。写真に撮りたいくらいだ。盗撮じゃなく。そう考えて教室を出る。

 

 さて、俺が気付いていないとでも思ったかね、降旗と愛原? その目線、向けたことを近いうちに後悔させてやるよ、ああ? 俺は陰湿だからな。陰湿な相手になら容赦もする必要はない。大体、小鳥遊を泣かせた時点でお前の負けは決まってんだよ。

 

 

 

 他愛もない話を小鳥遊としつつ、俺はデートのことで頭がいっぱいだった。何か恋愛に必死みたいだが、そうじゃない。相手が相手なのだ。別に必死なわけではなく。あ~どうしよ。プランはもう考えてあるけど、もう一回確認しとくか。かなり心配性みたいになってしまっている。

 

 気付いた時にはマンションの八階。そして、この声と笑顔。

 

「じゃあね、柊君。明日、楽しもうね♪」

 

 もうこれだけで惚れてしまうまである。けれど、相手が俺でなければの話だ。並の人間ならば耐えられなかったろう。けれど、俺は大丈夫だ。ぼっち生活で鍛えられた鋼の捻くれた精神は、どこから見ても隙はない。と言っている割には、こうやって部屋に戻ってから悶々(もんもん)とすることもないだろうに。

 

 そうだ、こういう時こそ冷静になれ、俺。いつもの捻くれ具合を見せるんだ。

 

 

 恋愛とは、集団と同じような効果を持つために行われるのである。最も、全てがそうであるかと言われれば、そうではない。けれど、ほぼ全てがそうであると言えるだろう。何故恋愛をするのか? それは、『自分が愛されるため』、だ。

 

 古今東西、人間は愛に飢えているのだ。別に恋でなくともいい。友愛、家族愛、敬愛。この世の中には様々な『愛』が溢れている。その一つが恋愛。

 

 自分が愛されるという目的に準ずるならば、別に恋愛じゃなくとも構わないのだ。ただ、自分が愛されているという認識が強く起こりやすいのが、この恋愛。自分が愛されていることを明確に認識するために、自分の存在価値があることを再認識するために、恋愛は行われるのである。例によって、全員がそうではない。

 

 けれど、実際そうなのだ。集団は友愛を求め、家族は家族愛を求め、恋人同士は恋愛を求める。全て自分が他人に愛されることを求めているのだ。ここで、俺は疑問に思う点があるのだ。何故恋愛を積極的に進めたがるのか、と。

 

 それは俺にはわからない。恋愛経験豊富な人に聞いても同じだろう。だってそれは、『なんとなく』なのだから。愛されたい。じゃあ家族でいいじゃん。いや、恋愛がいい。何で? 『なんとなく』。ほら、通じる。結局は個人の執着なのだ。無意識の執着がなんとなくを呼び起こす。

 

 俺はそんな、自分の意識さえもコントロールできない人間にはなりたくない。自分の行動に意味が無い、なんてことになりたくない。よって、俺は恋愛をしない。これは至極正しいことであり、間違いなどでは全くもってない。恋愛をしていない、非リアと呼ばれる人種に、恋愛をしているリア充と呼ばれる人種が蔑みや哀れみ、同情や励ましをするなど、馬鹿げている。

 

 本来は逆なのだ。意識をコントロールできないリア充に対して、非リアが同情や哀れみを送る。「あぁ、自分自身を持っていないんだ。頑張れよ」といった感じに。だって、おかしいだろう? 考えてもみろ。まだ意識がコントロールできない赤ちゃんが、その両親を逆に教育するのか? どう考えても違うだろう、逆だろう。

 

 そんなおかしい状況で、さも当然かのように振る舞う。根本的に崩れてしまっているのだ、その理論が。土台さえ作れていない者に、その上に物を乗せられることはない。つまり、リア充よりも、非リアが優れている。けれど、それを非リアは公言しないで静かにいる。

 

 さらに、非リアぼっちとなると、それが極められる。やっぱり、ぼっちは鷹なのだ。孔子で、鷹で、親なのだ。何という崇高さだろう。かっこよすぎる……!

 

 

 と、非リアはリア充より上でした、っと。証明終わり。いつものようにキレッキレだったな。俺の右に出る者も、足元にいる者もいない。いつもの俺。

 

 ……夕食作るか。

 

 

 

 

 夕食を食べ終わって、俺は必死に考えていた。ちなみに、夕食はパエリアだった。美味しかった。自分でも思うが、俺は結構料理は上手い方なんじゃないか? っと、またズレそうになった。俺の悪いところだ。すぐに話がすり替わっていく。いい技術でもあると思うのだが。

 

 で、考えていた内容は、やっぱり明日のこと。不安でたまらない。服装も大丈夫、電車の時間も調べた。今回のデート場所は、電車で行くのが丁度いいくらいなのだ。近くてよかった。お金は……まぁ心配ないだろう。小鳥遊にも電車のことは言ってあるし。昼食場所も確認済み。……大丈夫、だよね?

 

 明日に備えて早めにベッドに入る。眠れない。でも頑張って目を瞑る。けど、やはり眠れない。

 

 

 ……その原因は、明日のデートのことだけか?

 

 自分の心の中で自問自答して間もなく、俺の意識は――。

 

 

 

 ……白。白一色となると、案外鮮やかさの欠片もないものだ。目の前には、やはりあの少女。昨日見た夢の最後は、黒髪が一瞬見えたが、それもない。傍から見ると白髪。周りも白。変わらない、変わらない。でも。

 

「わたし、おおきくなったら、ひいらぎくんとけっこんする!」

「あぁ、――。けっこんしような」

 

 …………。

 

 驚いた。許嫁もいたものなんだな。しかし、俺はこの少女の名前も知らない。いや、知っているけれど、思い出せない。それは、この夢でも昨日の夢でも同じ。しかし、この二人の会話は、独り歩きを続けている。

 

 と、また風景がジャンプした。そして、またもや見た光景が。それは、彼女の泣いている顔。昨日の夢と全く同じ光景。

 

 

 

 ――まるで、()()()()()()()()()()ようで。まるで、()()()()()()()()()()()()ようで。

 

 少々の不気味さも感じてしまう。けれど、ソレ以上に。

 

 

 

 ――懐かしさと悲しみが、同時に俺を襲った。

 

 

 

 

 

 瞼は閉じているけれど、若干の光が差し込む朝の部屋。瞼を開いて、時刻を確認。今は六時。よし、取り敢えず遅刻はなくなったからよしとしよう。初デートで遅刻はさすがにまずい。俺でもわかる。せめて、遅れるとわかったら連絡の一つくらいは取りたいものだ。

 

 一時間ほどかけて、準備や確認やらを済ませる。八階のところで待ち合わせるので、三秒ほどで待ち合わせ場所には着く。楽なものだ。もうこの段階で緊張し始めている俺、悲しくなってくる。い、いや、昨日非リアの素晴らしさを証明したから、大丈夫なはずだ。いつもの調子でいればいい。

 

 今思った。起きるの早すぎた。七時とかでよかったんじゃないか? 仕方がない、何か暇つぶしでもするか。

 

 

 

 ……暇つぶしにも限界がありましたとさ。今は九時半。集合の三十分前。三秒で着くけれど。

 

「……出るか」

 

 俺はすっかり浮かれてしまっている。三十分も前に行くとか、早すぎるだろうに。

 

 その前に、身だしなみチェックだ。白のTシャツに、黒のリネンシャツ。長めの黒のパンツ。良いのかどうかもわからん。白黒で統一していいのか悪いのか、全く。他も大丈夫そうなので、外へ。

 

 玄関の施錠を確認して、俺のスマホにメールが入る。吹雪から。というか、メールアドレスを教えてる人が少なすぎるから、もう見なくても特定できる。さて、内容は――

 

『今日、デートなんでしょ? 頑張ってね☆』

 

 それはそれはご丁寧に、最後に☆のマークまで付けて。なんだ、応援メールか。ありがた――

 

 すぐさま電話。勿論吹雪に。一回目のコール音で吹雪が出た。早すぎだろ。

 

「もしもし。どしたの誠?」

「どしたのじゃねぇよ。何でデートを知ってんだよ」

 

 俺は吹雪にデートのことについては一切知らせていない。相談しようとも思ったが、言いふらす可能性が少しどころじゃなくあったため、相談しようにもできなかったのだ。

 

「ま、俺の情報網さ。他人には言わないから、頑張ってね。素直に応援してるよ」

「あ、ちょっと――」

 

 そこで電話が一方的に切られ、ツー、ツーという音だけが残る。なんだったんだ……。

 

「誰からだったの?」

「あぁ、吹雪からだよ。なんでかデートのことを知ってて――え?」

 

 そこには、何食わぬ顔で立っていた小鳥遊の姿。え、まだ三十分あるよ? まだ早いよ? 自分で言うのもどうかと思うが。

 

「は、早いな。まだ時間あるぞ?」

「うん。私もそう思ったけど、先に待ってようと思ったの。そしたら、柊君がいるんだもん」

 

 爽やかな笑顔。そして、彼女の服装に目を奪われる。

 

 白のシャツに水色のカーディガンとスカート。いかにも夏の服装といった感じ。涼しげな水系と白の組み合わせが、彼女の魅力と相まってさらに可愛さを引き立てる。アクセサリー類は付けてないが、逆に付けてない方が魅力があるだろう。かえって邪魔になる。

 

「……どうしたの?」

 

 ……つい見惚れてしまった。

 

「あ、あぁ……いや、その服、可愛いよ。似合ってる」

「ぁ……あ、うん。ありがとう! 少し早いけど、行こっか」

 

 彼女の笑顔は、俺をどれだけ見惚れさせれば気が済むのだろうか。可愛いんだよ、全く。

 

 さて、行こうか――水族館へ。




ありがとうございました!

最近、マウスを買い換えました。
トラックボールのやつです。
慣れたらとても使いやすいですね。腕を動かさなくていいのが大きい。

デート場所は水族館!
私はデートとかファッションがわかりませんので、
服装や場所、行動の不自然な点は見逃してください。
ここにきて恋愛経験ゼロであることが悔やまれる。

合宿編で何らかのぶつかりは起こそうとは思ってます。
物理的な意味じゃなく、諍いとかの方の意味で。

重要(?)なお知らせです!
魂恋録は、第49話を投稿した後、第50話の連続投稿になります。
そのため、この作品の投稿が一日遅れることになります。

具体的な日付を挙げると、19日の第9話投稿が、20日にズレることになります。

ご了承ください。

ではでは!

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