捻くれた俺の彼女は超絶美少女   作:狼々

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どうも、狼々です!

コメディ要素をもうちょっと増やしたいとは思っています。
中々上手くいきませんが。

心を徐々に開かせて、そこから恋愛に発展させたいと思います。

では、本編どうぞ!


第5話 ぼっちが劣っている、という認識は間違っている

 あの茶髪ちゃん(笑)とオレンジちゃん(笑)とリア充な黒宮と一緒に合宿の班を組むことが決定した。降旗と愛原……だったよな? もうついさっき聞いたことですら記憶が危うい。頭が本能的にあいつら二人を拒んでいるようだ。黒宮は知らん。

 

 今は、帰りのSHRが終わり、皆が帰りの準備をして、早い者はもう下校を始めている。俺はいつも、周りに感づかれないようにと、タイミングをズラして後で会って帰る、という方式を採用している。だが、屋上の一件と同じく、これもまた気付かれかけている。いや、気付いてはいるのだろうが、決定的な目撃がないのだろう。つまり、どうしようもない。

 

 吹雪とは、家の方角が全くの逆方向なので、残念ながら一緒に登下校ができない。寂しいような寂しくないような。

 

 俺が準備を済ませて、先に帰路について待とうかと考えていた時。そう考えると、俺って中々優しいんじゃないか? わざわざ待つ俺、超優しい。やっぱり小鳥遊の言葉は本当だったんだな。

 

「ね、ねえ」

 

 小鳥遊の声。この声の口調と声の高さは、小鳥遊だ。見なくてもわかる。俺に女子の友達とか小鳥遊しかいないし。自分で言ってて、悲しくもなんともない。なんともないのかよ。それよか、小鳥遊を友達と呼べるのかどうかもわからん。俺の中の世界の人口は少ないなぁ。一人っ子政策など、介入する余地もない。

 

「ん? どうした?」

 

 このやり取りだけで、周りの注目が集まる。この視線は、「また柊かよ……」というタイプだ。マイナス方面に限定すれば、俺もエスパー以上の存在になれるだろうな。そしてこういう時は大抵、小鳥遊がどんな言葉を発しても、俺が良く思われることはない。最初からそうなのだが。どんだけ俺は憎まれてんだよ。

 

「あの、ね……一緒に、帰ろ?」

 

 わぁ、可愛いなぁ。この首をかしげる純粋で小動物的な仕草と顔に癒され――

 

「「「ちぃっ!」」」

 

 ――そうになるが、間もなく邪魔される。もう隠す気など、毛頭ないようだ。せめて隠してよ、ねえ! ……これ、俺が調子に乗ったらどうなるのだろうか。親衛隊にヤられるのだろうか間違えた。殺られるのだろうか。ともかく、命はなさそうだな。

 

「おう、帰るか。待っとくぞ」

「うん! ありがとう!」

 

 準備がまだ終わっていない小鳥遊を待つと言うと、とびきりの笑顔を見せてくれる。わ~かわ――

 

「「「ちぃぃいっ!」」」

 

 ――いいと思う隙さえも与えてくれない。今のところは、敬語を使わないで話すのは、俺一人のみ。何故かはわからんが。まぁともかく、小鳥遊も笑顔になってよかった。……あれえ? 俺の思考が洗脳されかけてない? 小鳥遊の可愛さに逃げるほど、俺も追い詰められているようだ。皆、俺はいじめないでね?

 

「お待たせ。……それじゃ、行こっか」

「あぁ、そうだな」

 

 小鳥遊が俺の隣について歩く。そうして、追い打ちをかけんと言わんばかりに。

 

「「「ちぃぃぃいいっ!」」」

 

 ……もう、帰りたい。

 

 

 

 学校を出て、しばらく歩いて。あと五分くらいでマンションが見えてくるだろうかというところで。

 

「……ねぇ、柊君。どうして、あの時に二人を笑ったの?」

 

 あの時、ねぇ……あぁ、班決めの。この寂しそうな顔を見る限り、笑われて嫌だった、というわけじゃないんだろう。そもそもあの二人が小鳥遊の友達とも思えんが。友達の目の前で悪態をつくものなのか? ニンゲン、オソロシイ。

 

「あぁ、あれか。……ちょっと、頭に来たんだよ」

「何で?」

 

 多分、というか絶対に、彼女自身が毛嫌いされたことに気付いている。気付いた上での、この質問だとするならば。

 

「小鳥遊が嫌がられたからだよ。そこまでされて、同じ班になろうとも思わないし、なっても上手く機能しないのは明白だ」

「……私のことで、怒ったの?」

「あぁ、小鳥遊のことで。俺は優しい人間だからなぁ?」

 

 俺は、多少皮肉の意味を込めて、意地悪な笑みを浮かべて言う。全く、思ってもいないことを口にするのだけは得意だな、俺は。例えば、「一緒に遊ぶ?」と露骨に嫌そうな表情で言われて、ホントは遊びたいけど、遠慮して「いいよ」という俺。俺、マジ謙虚。

 

 きっと声をかけたそいつも、俺の謙虚さに感服して、「あぁ、このお方と遊ぶのは、私では足りない」と思って俺を抜いて遊んだのだろう。そうじゃないの? ですよね違いますよねわかってましたはい。

 

「柊君は優しいのは知ってる。けど……私のこと()()()いいのに」

 

 おっと、出ましたね。こういうちょっとした言葉を見逃さない俺。揚げ足を取ることには誰よりも得意な俺にとって、矛盾ある言葉を見つけることに関しては、右に出る者も、足元に及ぶ者もいない。なんて捻くれた特技だろうか。学級裁判とか超できそう。コトダマがいくつあっても大丈夫な気がする。その前に真っ先に殺されそうだが。

 

 俺は自慢顔で、少し優越感のようなものに浸りながら、こう言う。

 

「じゃあ、その『なんか』って言うの、やめないか? もっと自分を大切にしようぜ?」

「ぁ……ふふ、これは一本取られたね」

 

 穏やかに、どこか儚くも見える彼女の笑顔は、やはり人を引きつける魅力がある。

 

 俺はその魅力に簡単に気持ちが左右される程、やわな精神をしてないが……まぁ、その、何だ?

 

「……心配なんだよ。何でそうなったのかは知らないけどさ」

「うん……ありがとう。私は、嬉しい。柊君がいてくれて、嬉しいよ」

 

 夕焼けを受けた彼女の笑顔は……頬は、赤くなっていた。

 

 

 

 

 マンションに着いて小鳥遊と別れた俺は、部屋で一人考えていた。

 

 俺がいてくれて嬉しい、か……。そんなことは、今まで一度も言われたことがなかった。男子なら、吹雪に「お前の発想は人と大きく違ってて、見てて楽しい」と言われたことがある。おい、褒めてねぇだろ。まさか、小鳥遊に言われるとは思わなんだ。周りに誰かがいたら死んでたな、俺。死ぬまでが一セット。

 

 ―*―*―*―*―*―*―

 

「あ~あ、何で私が小鳥遊さんと柊が一緒の班なの……?」

 

 私は家のベッドに寝転がって、独り言。

 

「せっかく優流君と舞衣ちゃんと一緒なのになあ~!」

 

 少し強めに、誰かに投げかけるように言う。そして、一つの言葉が漏れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「邪魔だなぁ……!」

 

 ―*―*―*―*―*―*―

 

 次の日の昼前。俺は、安定の捻くれた考えを巡らせていた。

 

 人とは、こと周りに流されるに関しては、逸品級を誇っている生き物だ。それはもう、流しそうめん並につるつると。しかし、人は夏だけでなく、年がら年中流されているし、美味しくもなんともない。悲しいことに。

 

 流される、と言うと、少しばかり抽象的だろうか。もっとはっきりと、直接的に言うと、影響されやすいのだ。周りがこれをやってるから、私もこれをやる、というやつだ。

 

 例を出そう。問題Aがあったとして、その問の答えが、ア、イ、ウの内のアだったとする。自分は答えがアだとわかっているが、周りがイ、またはウが正解だと言い張って、答えだと信じていたアが、答えではないと思い込み始める。

 

 しかし、これには明確な正解となる根拠がわかっておらず、付和雷同となっているだけ。じゃあ、何故アが正解じゃないと思い始めたのか? それは、『周りがそうだと言ったから』、だ。これは、学生を通った誰もが経験したことのある事例だろう。つまり、正解どうこうよりも、周りが全てなのだ。

 

 じゃあ、これをぼっちに置き換えてみよう。ぼっちが主流、ぼっちが至高の世界だったとして。周りがぼっちであるのに、ある一部だけが集団(笑)でいる。そうしたら、そいつらのことをどう思うだろうか? 答えは簡単だ。「うわっ、何でぼっちじゃないの……?」だ。

 

 周りを判断基準としている以上は、正解不正解が鮮明になることなど、絶対にない。そうなると、おかしいのだ。周りが集団で、少数派にぼっちがいた時。周りはぼっちを『異物』として扱い始める。逆だったらまた逆のことをするのに?

 

 そう、これが『人間の流されやすさ』……集団心理だ。周囲から外れた者をさらに隔離することの助長。全く、なんて手のひら返しだろうか。自分がその対象になってみろ。狂うぞ。俺は特殊な訓練を受けているので効果がないが、普通の人間は耐えられない。集団を是とする人間共は。

 

 不思議なものだ。集団心理はぼっちに効くのに、同情の効果を持つ、アンダードッグ効果はぼっちには適用されない。理不尽以外のなにものでもない。

 

 つまりは、「赤信号 みんなで渡れば 怖くない」なのだ。じゃあ集団でそれやって轢かれとけばいい。何故やらないのだろうか。俺は、それが不思議でならない。やるくらいなら、貫き通してほしいものだ。

 

 かなり長くなったが、結論を述べよう。ぼっちが劣等した存在という認識は、根本的に間違っているのだ。

 

 

 だから、こんな周りの言葉も、意味がないのだ。

 

「ほら、今日もまた柊なんかが小鳥遊さんと……」

「ホントだよ……羨ましいもとい憎たらしい」

「ホントだよ……俺だって小鳥遊様をハアハアしたいのに」

 

 柊『なんか』ってなんだよ、おい。まるで俺がぼっちで劣等した存在みたいじゃないだろうか。今考えていたぼっちの論文を突きつけてやりたい。そして、言ってやるのだ。「ほら、赤信号だぞ。渡れよ」と。もう最後のにはツッコまんぞ。ツッコまない、ツッコまない……

 

「小鳥遊様をハアハアしてペロペロしたいのに。隣にいて匂いをスーハースーハーしていたいのに」

 

 ツッコまない、ツッコまないぞ……ツッコんだら負けなんだ……!

 

「小鳥遊様の使っているベッドとか枕とか服とかもスーハーしたい。何なら全身をハアハアしたいのに」

 

 もうだめだ。俺の限界も、お前の変態っぷりも。ストーカーなの? ねえねえ、ストーカー? 後を付けてなくてもストーカーなレベル。その発言は危ないよ? とてもとても危なすぎる。このままだと、警察に突き出されても、文句は言えない。もう少し気を付けろよ、全く……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……あ、お巡りさん、こいつです、こいつが不審者です、はい。ハアハアしたいとか言ってましたよ、ええ。

 

 そんなことを考えていると、聞こえてきた。

 

「……どうする? 小鳥遊さんと柊」

「もう仕方ないよ。諦めよう?」

 

 その声が聞こえたのは、えっと……降旗と、愛原の口からだった。彼女らを一瞥。どうやら向こうも俺の視線に気付いたようで、例の鋭い視線を向けたと思ったら、すぐに逸らされた。俺のこと好きで恥ずかしいの? ツンデレ? どう考えても違いますよね、はい。俺の方からも願い下げなのだが。

 

 にしても、『諦めよう』とか言われてまで、やはり一緒の班になりたいとは思わない。お互い不幸になって、何が楽しいのだろうか。自分達の立場は(わきま)えた方がいいぞ? そういう空気読むのとかは、いつもやってっから得意だろが。

 

 そして、ちらっと小鳥遊の方を見る。すると、小鳥遊は他の女子と喋っていた。うん、友達できてなにより。俺が言えたことじゃないが。最近、仲がいい友達ができたとは聞いていたが、多分その子のことだろう。

 

「なぁ、吹雪。小鳥遊と話してんの、誰?」

「気になるの? ってか、そろそろ名前くらい覚えない? ……久那沢(くなさわ) (あかね)ちゃん。見ての通り、元気・活発な子だ」

 

 性格まで教えてくれるあたり、ありがたい。ショートヘアーで文字通り赤色の髪。シトリンのように輝き、透明感のある黄色の瞳。小鳥遊と同じ可愛い系だが、身長が155cm前後くらいの小さな体躯で、無邪気で幼い感じが見受けられる。

 

 ちなみに、小鳥遊が160cmくらい、俺が170cmないくらい、吹雪が俺と同じくらいだ。なので、この四人の中では一番背が低いことになる。

 

 見る限りでは、お互い楽しそうに会話している。ま、これなら合宿も大丈夫そうかな。班別の行動じゃなかったら、基本はクラスごとで行動だ。むしろ、我が三組全体で、という形式の方が多い気もする。さすがに自由行動はそうにもいかないが。

 

 ……ん? 久那沢がこっちに気付いて、何かを小鳥遊と話してる。あ、こっちに来た。

 

「君が音葉ちゃんとお友達の、柊君?」

「あぁ、そうだよ、久那沢」

「もう私の名前も知ってるんだ。改めて、久那沢 茜です。よろしくね!」

「……よろしく。俺も改めて、柊 誠だ」

 

 言えない、さっきまで名前知らなかったんだ、とか。

 

「私のお友達、茜ちゃんだよ。最近仲良くしてくれてるんだ」

 

 小鳥遊が追いついて、俺と吹雪に話す。というか、もうお互いを名前で呼び合う仲なのか。なら、心配することもなさそうだ。吹雪も改めて自己紹介を済ませて、次の授業の予鈴が鳴る。

 

 ……俺は、見逃していない。

 

 降旗と愛原が、こちらを最後に見たことを。




ありがとうございました!

前回に三人、今回に一人と連続して新キャラ投入すみません。
もうしばらくは新キャラは投入しないとは思うので。

第10話前後くらいに、数話に分けて合宿編を書こうと思います。
いつ関係を接近させようか。

ではでは!

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