捻くれた俺の彼女は超絶美少女   作:狼々

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どうも、狼々です!

すまぬ、いつもの半分の長さだ(´・ω・`)
デート内容を考えると、このくらいかと思って区切ったのねん。
あんまり甘くないから、この話まるまる飛ばしても構わぬかもしれないです。

では、本編どうぞ!


第36話 違和感

 予定の三十分と少し前に、家のドアを開く。

 ほぅ、と白く曇った息を吐いた。

 厚手のコートを隔てても、寒さを十分感じる今日この日。

 デートの日が。恋人との関係では、初めてのデートの日が、訪れた。

 

「あっ、柊君おはよう。それとも、もうこんにちはかな?」

「えっ……な、何でこんな時間にいるんだよ」

 

 確かに腕時計を確認しても、三十分は前だ。

 針は僅かに動き続けているので、止まっているわけでもない。

 

 スマホと照らし合わせても同じ時刻を示している。

 指す時間がズレているわけでもない。

 

「気分だよ、気分。……恋人を待ち焦がれる女の子、っていうのをやってみたかったんだ」

 

 満足げにそう言う彼女は、とても魅力的だった。

 静かに微笑む小鳥遊。その荘厳さは、笑顔という点では類を見ない。

 

「やっぱりと言うべきか、似合うね」

 

 白のニットカーディガンに、ネイビー色のロングスカート。

 落ち着いた冬のコーディネーションも、彼女に似合っている。

 活発な色もきっと似合いそうだが、個人的には白色が一番だと思う。

 

「あはっ、ありがと。じゃあ、ちょっと早いけど行こっか」

「あ、あぁ、そうだな」

 

 俺はこの会話から、何かしらの違和感を感じていた。

 

 

 

 今回も、電車での移動。駅のホームから、止まっている電車の中へ。

 学生の結構な距離の移動ともなると、電車が丁度良い。というよりも、他の移動手段が思い当たらない。

 

 空いた車両を、彼女に手を引かれながら歩く。

 とてもではないが、クリスマスとは思えない程の静かさだ。

 カップルのイチャイチャタイムは、やはり夜から始まるものなのだろうか。

 

 腕を引かれながら、半ば連れて行かれるようにして席に座る。

 

「えっと、この電車を終点まででいいんだよね?」

「あぁ、そうだが……」

 

 言うと、彼女は何の前触れもなく、指まで丁寧に絡め、手を繋いだ。

 暫くの間が経った今でも、違和感は収まらない。

 

「こうしていると、暖かいね」

「まぁ、そうだな」

 

 腕に頬を擦り付けて満足そうに微笑む様子は、まるで猫のそれだ。

 受け身となる俺としても、頭を撫でてやりたい。

 思った通りに撫でると、本当に気持ちが良さそうになるのだから、可愛いものだ。

 

 と、突然に撫でていた腕を引かれる。

 

「お、おい」

「ん? 嫌かな?」

 

 今度は俺が、小鳥遊にもたれる形になった。

 そのまま彼女は、俺の頭をゆっくりと撫で始める。完全に、全く逆の状態だ。

 

 ともあれ、意外と恥ずかしいものだ。

 男から甘えているようで、何だか弱々しいというか。

 

「別に嫌ってわけじゃないが……ほら、人とかさ」

「大丈夫、この時間だし、少なくともこの車両には私達以外に一人もいないよ」

 

 そう言って、頭を沿ってなぞる手の動きを止めようとはない。

 こう慣れないことをされると、少しそわそわしてしまう。

 

「どうしたの? まさか、恥ずかしい?」

「そりゃあ……そうだろ」

「ふふっ、可愛い可愛い。甘えられているみたいで、ちょっと嬉しいな」

 

 年頃とはいえ、母性がくすぐられる、という感覚はあるのだろうか。

 まず、俺が一女子の母性を刺激できるとも思わないが。

 彼女にとっては、俺でもその対象になるらしい。

 

「……何だ? こうやって甘えるのも、案外悪くないのかもしれん」

「こうやって甘えられるのも、案外悪くないのだよ、柊君。いつでもぎゅってするからね?」

 

 恋情とは、注ぎ注がれ、というものらしい。

 片方が注ぎっぱなし、もう片方が注がれっぱなし、というのも味気ない。

 早くも、今日発見した恋愛指南だった。

 

 しかしながら、俺が彼女に感じる違和感は、掴みづらい。

 何か不自然な感覚を目の当たりにしながら、その正体を知ることはできなかった。

 

 

 

「お~、着いたね。行こっ!」

「わ、わかったから、わかったよ」

 

 昼少し前に終点に着いてから、彼女は再び俺の手を引いて、電車のドアの前へ。

 炭酸が抜けるような音を合図にして、小鳥遊はそのまま先導し始める。

 

「おい、今日はどうしたんだよ!」

「……どうした、って?」

「何か、変じゃないか」

 

 自分でも、「何か」としか形容できない。

 最早、形容と呼べるのかすら怪しいところだ。

 

 だが、見逃し難い違和感に苛まれ続けている。

 玄関で顔を合わせたとき、電車の中での交流、そして今。

 今日に限って、今までとは何かが違っていた。

 

「変って、どういうこと?」

「そうだな……活発的というか、反応が違うというか」

 

 唯一思い当たるのは、その二点だった。

 いつもは、腕を引き続けて誘導するような、アクティブさは見せない。

 反応だって、普段は若干受け身寄りだが、今日は全くの逆。

 

 反転した姿に、慣れなかったのだろう。

 

「そ、そうかな? そんなことはないと思うけど」

「さあ、正直にどうぞ。意識して変わっているよな?」

「……はい」

 

 案外、あっさりと口を割った彼女。

 ともあれ、何を理由にそんなことをしていたのだろうか。

 

「で、どうしてなんだ?」

「い、いや、特に大きい理由はないの。ただ……クリスマスくらい、余裕がある感じを見せたかった、というか……」

 

 余裕、ねぇ。

 ただこの日に限った余裕、ねぇ。

 

「いつも通りでいいだろ。見栄張ると、こうやってバレる」

「そ、そうなの?」

「そうだろ」

 

 人と違う偶像というものは、他と(なぞら)えると存外わかりやすいものだ。

 それが相当な馴染みの相手ともなれば、尚更だ。

 

「いつも通り、好き勝手やればいいさ」

「その言い方だと、いつも好き勝手しているみたいだね」

「いや、そうじゃなくて」

「ふふっ、わかっているよ。じゃあ、リードよろしくね」

 

 それだけ投げかけて、「いつも通り」の笑顔で腕に抱きつく。

 結局、こうなってしまうらしい。

 

 俺からも微笑んで、駅を去る。

 吹き付ける風が陽の下に顔を出すが、冷徹な刺激は留まることを知らない。

 

 ――厚手のコートを隔てても、寒さを十分感じる今日この日。

 デートの日が。恋人との関係では、初めてのデートの日が、訪れた。

 




ありがとうございました!

最近、この小説が書きにくくなってきました。
あと数話、長くても十話いかないくらいで、この作品の投稿を終えると思われます。

で、それにあたって、書きたい展開がありまして。
先に言うと、クラスマッチと夏祭り、この二つをやりたいと思います。
クラスマッチは怪しいところですが、夏祭りはあるかと。

恐らく、夏祭りを最終話にすることになります。
もう暫くの間、よろしくお願いします。
前書きに重なりますが、この話が短くなってしまい、申し訳ありません。

ではでは!

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