すまぬ、いつもの半分の長さだ(´・ω・`)
デート内容を考えると、このくらいかと思って区切ったのねん。
あんまり甘くないから、この話まるまる飛ばしても構わぬかもしれないです。
では、本編どうぞ!
予定の三十分と少し前に、家のドアを開く。
ほぅ、と白く曇った息を吐いた。
厚手のコートを隔てても、寒さを十分感じる今日この日。
デートの日が。恋人との関係では、初めてのデートの日が、訪れた。
「あっ、柊君おはよう。それとも、もうこんにちはかな?」
「えっ……な、何でこんな時間にいるんだよ」
確かに腕時計を確認しても、三十分は前だ。
針は僅かに動き続けているので、止まっているわけでもない。
スマホと照らし合わせても同じ時刻を示している。
指す時間がズレているわけでもない。
「気分だよ、気分。……恋人を待ち焦がれる女の子、っていうのをやってみたかったんだ」
満足げにそう言う彼女は、とても魅力的だった。
静かに微笑む小鳥遊。その荘厳さは、笑顔という点では類を見ない。
「やっぱりと言うべきか、似合うね」
白のニットカーディガンに、ネイビー色のロングスカート。
落ち着いた冬のコーディネーションも、彼女に似合っている。
活発な色もきっと似合いそうだが、個人的には白色が一番だと思う。
「あはっ、ありがと。じゃあ、ちょっと早いけど行こっか」
「あ、あぁ、そうだな」
俺はこの会話から、何かしらの違和感を感じていた。
今回も、電車での移動。駅のホームから、止まっている電車の中へ。
学生の結構な距離の移動ともなると、電車が丁度良い。というよりも、他の移動手段が思い当たらない。
空いた車両を、彼女に手を引かれながら歩く。
とてもではないが、クリスマスとは思えない程の静かさだ。
カップルのイチャイチャタイムは、やはり夜から始まるものなのだろうか。
腕を引かれながら、半ば連れて行かれるようにして席に座る。
「えっと、この電車を終点まででいいんだよね?」
「あぁ、そうだが……」
言うと、彼女は何の前触れもなく、指まで丁寧に絡め、手を繋いだ。
暫くの間が経った今でも、違和感は収まらない。
「こうしていると、暖かいね」
「まぁ、そうだな」
腕に頬を擦り付けて満足そうに微笑む様子は、まるで猫のそれだ。
受け身となる俺としても、頭を撫でてやりたい。
思った通りに撫でると、本当に気持ちが良さそうになるのだから、可愛いものだ。
と、突然に撫でていた腕を引かれる。
「お、おい」
「ん? 嫌かな?」
今度は俺が、小鳥遊にもたれる形になった。
そのまま彼女は、俺の頭をゆっくりと撫で始める。完全に、全く逆の状態だ。
ともあれ、意外と恥ずかしいものだ。
男から甘えているようで、何だか弱々しいというか。
「別に嫌ってわけじゃないが……ほら、人とかさ」
「大丈夫、この時間だし、少なくともこの車両には私達以外に一人もいないよ」
そう言って、頭を沿ってなぞる手の動きを止めようとはない。
こう慣れないことをされると、少しそわそわしてしまう。
「どうしたの? まさか、恥ずかしい?」
「そりゃあ……そうだろ」
「ふふっ、可愛い可愛い。甘えられているみたいで、ちょっと嬉しいな」
年頃とはいえ、母性がくすぐられる、という感覚はあるのだろうか。
まず、俺が一女子の母性を刺激できるとも思わないが。
彼女にとっては、俺でもその対象になるらしい。
「……何だ? こうやって甘えるのも、案外悪くないのかもしれん」
「こうやって甘えられるのも、案外悪くないのだよ、柊君。いつでもぎゅってするからね?」
恋情とは、注ぎ注がれ、というものらしい。
片方が注ぎっぱなし、もう片方が注がれっぱなし、というのも味気ない。
早くも、今日発見した恋愛指南だった。
しかしながら、俺が彼女に感じる違和感は、掴みづらい。
何か不自然な感覚を目の当たりにしながら、その正体を知ることはできなかった。
「お~、着いたね。行こっ!」
「わ、わかったから、わかったよ」
昼少し前に終点に着いてから、彼女は再び俺の手を引いて、電車のドアの前へ。
炭酸が抜けるような音を合図にして、小鳥遊はそのまま先導し始める。
「おい、今日はどうしたんだよ!」
「……どうした、って?」
「何か、変じゃないか」
自分でも、「何か」としか形容できない。
最早、形容と呼べるのかすら怪しいところだ。
だが、見逃し難い違和感に苛まれ続けている。
玄関で顔を合わせたとき、電車の中での交流、そして今。
今日に限って、今までとは何かが違っていた。
「変って、どういうこと?」
「そうだな……活発的というか、反応が違うというか」
唯一思い当たるのは、その二点だった。
いつもは、腕を引き続けて誘導するような、アクティブさは見せない。
反応だって、普段は若干受け身寄りだが、今日は全くの逆。
反転した姿に、慣れなかったのだろう。
「そ、そうかな? そんなことはないと思うけど」
「さあ、正直にどうぞ。意識して変わっているよな?」
「……はい」
案外、あっさりと口を割った彼女。
ともあれ、何を理由にそんなことをしていたのだろうか。
「で、どうしてなんだ?」
「い、いや、特に大きい理由はないの。ただ……クリスマスくらい、余裕がある感じを見せたかった、というか……」
余裕、ねぇ。
ただこの日に限った余裕、ねぇ。
「いつも通りでいいだろ。見栄張ると、こうやってバレる」
「そ、そうなの?」
「そうだろ」
人と違う偶像というものは、他と
それが相当な馴染みの相手ともなれば、尚更だ。
「いつも通り、好き勝手やればいいさ」
「その言い方だと、いつも好き勝手しているみたいだね」
「いや、そうじゃなくて」
「ふふっ、わかっているよ。じゃあ、リードよろしくね」
それだけ投げかけて、「いつも通り」の笑顔で腕に抱きつく。
結局、こうなってしまうらしい。
俺からも微笑んで、駅を去る。
吹き付ける風が陽の下に顔を出すが、冷徹な刺激は留まることを知らない。
――厚手のコートを隔てても、寒さを十分感じる今日この日。
デートの日が。恋人との関係では、初めてのデートの日が、訪れた。
ありがとうございました!
最近、この小説が書きにくくなってきました。
あと数話、長くても十話いかないくらいで、この作品の投稿を終えると思われます。
で、それにあたって、書きたい展開がありまして。
先に言うと、クラスマッチと夏祭り、この二つをやりたいと思います。
クラスマッチは怪しいところですが、夏祭りはあるかと。
恐らく、夏祭りを最終話にすることになります。
もう暫くの間、よろしくお願いします。
前書きに重なりますが、この話が短くなってしまい、申し訳ありません。
ではでは!