捻くれた俺の彼女は超絶美少女   作:狼々

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どうも、狼々です!
またまたお ま た せ。
夢見村の推敲も終わったので、これからは一ヶ月空くことはないと思われます。
忙しくならない限り。

忘れていたか? この作品の舞台が、福岡だということを……ッ!

と、本編の前に。
お気に入り1000……というか1300、日間ランキング2位、ありがとうございました!
いやぁ、前回書く予定だったのに、綺麗に忘れてました。
さらに間もあいているので、めちゃめちゃ前のことなんですがね(´・ω・`)

では、本編どうぞ!


第35話 博多弁

 ――客観的、という観点が存在しないことに、最近気が付いた。

 自分の思考が、もう既に手遅れであることはわかっている。

 しかしながら、性格は変わらないから性格であり、個人の色を映し出す。

 

 客観的、という言葉について、公平であるだとか、一番正解に近いだとか、そんな想像をする人間はいないだろうか。

 いるのだから、これがまた困ったものだ。

 何が客観だ。何が第三者の目だ。何が普遍的妥当性だ。

 まるっきり大嘘ではないか。

 

 客観の対義語が、主観という言葉自体、半分不正解みたいなものだ。

 結局、客観は主観の()()()でしかない。

 大きな集合である客観Aに、小さな集合である主観Bが含まれているのだ。

 

 となると、客観的な目線から見たところで、それは主観の集まりだ。 

 客観も大きな主観であり、やっていることは何ら変わりない。

 つまりは、客観という意味の『普遍的妥当性』は、普遍的であっても妥当性である部分は間違いだ。

 普遍的であったとしても、主観の集まりなど妥当なはずがない。

 頭の悪い馬鹿が大勢集まって出した結論は、妥当だと言えないだろう。なにせ、それは馬鹿の主観にすぎないのだから。

 

「……というわけなんだが、どう思うよ、小鳥遊君」

「うん、とってもどうでもいい上に、柊君らしいね」

 

 らしいとは何だ、らしいとは。

 その発言だと、まるで俺の存在自体がどうでもいいと解釈されかねないぞ。

 

 吐息が白く彩られる、冬の季節。

 温水プールにでも飛び込みたくなるような寒さに身を震わせ、下校中。

 まだまだ生徒が多いので、手を繋ぐことはできていないが。

 

「仰る通りで、小鳥遊様」

「お姫様じゃないんだから……でも、主観の集まりっていうのは最もだと思うな」

「とか何とか言いつつ、ちゃんと聞いてくれるところがまた嬉しいところで」

「まぁ、話を聞かないで感想は言わないし。それに、柊君の話だし」

「それはまたまた、嬉しいことで」

 

 自分でも心底どうでもいい考えを巡らせながら、人の目が少なくなってきた。

 彼女もそれを察したのか、妙に隣でそわそわし始めた。

 こういうのは、やはり俺から言った方がいいのか。

 

「手、繋ぐぞ」

「う、うん」

 

 仄かな柔らかみと暖かさが、手から染み渡る。

 緊張がまだまだ初々しさを自分自身に感じさせるが、大分慣れただろうか。

 手を繋ぎたいのなら、彼氏彼女なのだから、はっきりと言ってしまえばいいのだ。恥ずかしいけれども。

 

「あ~、その、だな。今度のクリスマスなんだが――」

「わ、私もできれば一緒にクリスマス、過ごしたいなって……」

 

 どうも、できたてホヤホヤとはいえ、恋人であることに変わりはないらしい。

 むしろ、ホヤホヤだからこそ、こうして一緒に過ごしたがるのだろうか。

 

「ん、じゃあ遊園地行こうか。この間、行けなかった分ってことで」

「うん! やったやった~、柊君と遊園地~」

「子供っぽいぞ。可愛いけども」

 

 なるべく子供っぽくいてくれた方が、庇護欲をそそられるというか何というか。

 氷の息吹が冬服の間から入り込んで、この上なく冷たい。

 けれども、何だか心は暖まっていて、不思議と全身もつられるように暖かい気がした。

 

 

 

「……とは言ったものの、どうしようか」

 

 場所は遊園地。日はクリスマス。最低限決めなければいけないものは既に確定済み。

 後は時間だが、最悪一週間きってから決定しても大丈夫だろうか。

 

 今までで一番準備は万端、しかし、何か不安な要素が胸の欠片を下へと沈めていく。

 気分次第で何とでも言えてしまうが、そうとしか形容できなかった。

 もうクリスマスまで――()()()()

 

 いやあ、時というものは残酷なものだ。

 待ってはくれないし、痛みは霞む一方で困ってしまう。

 終業式の今日は、二十二日。

 明日から冬休みであり、クラスの雰囲気は早くも休みへとシフトしていた。

 

 クリスマスどうしようか、と周りにひけらかすように、わざとらしく会話をするクラス内カップル。

 何も予定がない、と周りにアピールするように、声を大にする奴。

 電話番号だけでも、と小鳥遊に懇願する男子。おいお前久しぶりだな。最近大人しいと思ったら……八つ裂きにしてくれよう。

 

 そんな殺伐とした教室の中で一人、最高の彼女と予定を既に作っている喜びを噛み締めた。

 一人。一人で。結局、一年間ずっとぼっちだった気がするが、別に痛くもなんともありませんでしたっと。

 

 

 

 

 

「……ねえねえ、茜ちゃん達に、めちゃくちゃ冷やかされたんだけど」

「同じくだ。吹雪も茜も許さん」

 

 それはもう茶化された。

 教室で静かなところが恋人いるっぽいだとか、どうせナニをするんでしょ? だとか。

 後者は色々と進みすぎだとして、前者に至ってはいつもの俺と何ら変わりない。

 つまり、ぼっちこそ崇高なるリア充ということに。

 

 今日も、この下校の至福が訪れる。

 何かと一日の中で、一番楽しく幸せな時間が、この手を繋ぐ時間だ。

 

「そうそう。二人とも色々言っとったけんね~」

「あ……」

「え、えっと、どうしたの?」

「方言……可愛いな」

 

 呟いて、彼女はすぐに手を離して、横に振る。

 そこまで赤くなって否定しなくとも。もっと可愛いけど。

 思えば今まで、小鳥遊が福岡の方言を使ったところは見たことがない。

 恥ずかしいからなのだろうか。

 

「わ、忘れて! 今のナシ!」

「いいじゃん、可愛いんだから。何か他の言葉で言ってみてよ」

 

 自分でも、見慣れない彼女の言葉遣いに魅力を感じていた。

 中でも、博多方面の方言は特に可愛いと思うのは俺だけじゃないはず。

 こう、ふとした瞬間にポロッと出てしまう、例えるなら今この瞬間のような状況が、一番可愛いと感じるのだ。

 

「え、えぇ~……」

 

 少し困惑しつつ、恥ずかしがりつつ、口を開いたり閉じたり。

 それでも言おうとしているところが、健気で可愛いというかなんというか。

 

「その、えっと……ばり、好いとうよ?」

「ごめんもう一回いや五回くらい言ってくれ」

 

 確かまだカバンの中に、ボイスレコーダーが入っていたはずだ。

 先生に提出するために入れたきり、取り出した覚えもない。

 吹雪のように立ち回るのも、案外悪くないのかもしれない。

 

「い、いや! 恥ずかしいから!」

「では、恥ずかしいのに何で『好き』の博多弁をチョイスしたのか理由をどうぞ」

「う、うぅ……」

 

 言い方に限りはあれども、言葉のパターンはそれこそ無限大にある。

 その中で、どうして『好き』を選んで、言ったのだろうか。

 いや可愛いからいいけども。役得というか、良いものが聞けたわけだし。

 

「だ、だって、好きだから」

「何か、不思議と心がくすぐったくなってくるな」

「私はもっとくすぐったいよ!?」

 

 彼女の赤面具合からして、相当に恥ずかしい模様。

 くすぐったいどころの話ではないのかもしれない。

 

「じゃあ、柊君も言ってよ、ほら!」

「まぁ、別に恥ずかしくないからいいけども。好いとうよ、小鳥遊」

「か、可愛い……意外と可愛い」

「男が言われることでもないだろ」

 

 冬の寒さが吹き飛んだようなやり取りをしていると、気が付いたら家の前まで着いてしまった。

 少し寂しくなるが、クリスマスまでの辛抱と考えれば、何とかなりそうだ。

 クリスマスの時間も、早々に決まった。軽い提案が、そのまま通ったような形で。

 

 部屋の前で別れの挨拶をしてから、自分の部屋へと戻る。

 と、そうしようとしたその時。

 俺の制服の袖が控え目に引かれた。

 この動作ですら、もう可愛い。全てが可愛い。

 

 振り向くと、未だに赤くなった彼女が俯いていた。

 目が合った瞬間に、何を思ったのか、今度は悪戯な笑みを浮かべた後に、純粋な輝く笑顔を見せて、両手を広げる。

 

「ばり好いとうけん、ぎゅ~ってしてほしかとよ!」

 

 自分の中で、糸が切れたような、か細い音が聞こえた気がした。

 半ば強引になって、彼女を引き寄せて強く抱きしめる。

 当然、こんなに弾けるような笑顔で言われると、耐えられるはずもなかった。

 

「お、思ったよりも反応がいいなぁ」

「うっせ。可愛いのが悪いんだ」

「心臓、すっごくドキドキしていて速いね」

「……うっせ」

 

 彼女との身長差を考えると、頭がちょうど俺の胸の辺りに来る。

 抱きしめたときに、心音が丸聞こえなのだ。

 気恥ずかしさを紛らわすために、もっと自分へと引き寄せる。

 

「この間みたいに優しく抱き締められるのもいいけど、強くされるのもすごくいい。癖になりそう」

「う、あ、いや……これ以上は止めとく。歯止めがかからなくなりそうだ」

 

 自分の中で制限をかけて、手を離す。

 このまま続けると、自分自身がどうなるかわかったものではない。

 癖になりそう、なんて言われると尚更なのだ。

 

「うん、ありがとう。やっぱり、離れる時が一番切ないよ、私」

「いやホント、これ以上は止めてくれ。何するかわからん」

「そ、そうなの?」

「そうなんだ。じゃ、またな。クリスマス、楽しみにしているよ」

「ありがとう。私も、待ちきれないよ」

 

 互いに名残惜しいながらも、自分の部屋へと入室。

 手に触れるノブの冷たさが、冬であることを再認識させる。

 二人でいたときの熱で、意識の外から寒さが弾き出されていた。

 

 取り敢えず今日わかったことは、可愛い女の子は博多弁がポロッと出ると一層可愛いこと。

 それと、名残惜しいくらいの恋が丁度良いということだった。




ありがとうございました!

長らく思っていたのですが、今までの書き方では読みにくいのでは?
と、いうことで、今回から他作品と同じように書いていきます。

投稿済みのやつは、ちょっとずつこの形に直していきます。
気が向いたらで、ちょっとずつ。許して(´・ω・`)

私の持論ですが、博多弁はポロッと一瞬垣間見えるのが一番可愛いと思います。
例えば、今回のように。
「ぎゅ~ってしてほしかとよ!」とか言われたら死ねる。
こうやって小説で書けるのが、福岡住まいであることに感謝しないとね。

ではでは!

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