またまたお ま た せ。
夢見村の推敲も終わったので、これからは一ヶ月空くことはないと思われます。
忙しくならない限り。
忘れていたか? この作品の舞台が、福岡だということを……ッ!
と、本編の前に。
お気に入り1000……というか1300、日間ランキング2位、ありがとうございました!
いやぁ、前回書く予定だったのに、綺麗に忘れてました。
さらに間もあいているので、めちゃめちゃ前のことなんですがね(´・ω・`)
では、本編どうぞ!
――客観的、という観点が存在しないことに、最近気が付いた。
自分の思考が、もう既に手遅れであることはわかっている。
しかしながら、性格は変わらないから性格であり、個人の色を映し出す。
客観的、という言葉について、公平であるだとか、一番正解に近いだとか、そんな想像をする人間はいないだろうか。
いるのだから、これがまた困ったものだ。
何が客観だ。何が第三者の目だ。何が普遍的妥当性だ。
まるっきり大嘘ではないか。
客観の対義語が、主観という言葉自体、半分不正解みたいなものだ。
結局、客観は主観の
大きな集合である客観Aに、小さな集合である主観Bが含まれているのだ。
となると、客観的な目線から見たところで、それは主観の集まりだ。
客観も大きな主観であり、やっていることは何ら変わりない。
つまりは、客観という意味の『普遍的妥当性』は、普遍的であっても妥当性である部分は間違いだ。
普遍的であったとしても、主観の集まりなど妥当なはずがない。
頭の悪い馬鹿が大勢集まって出した結論は、妥当だと言えないだろう。なにせ、それは馬鹿の主観にすぎないのだから。
「……というわけなんだが、どう思うよ、小鳥遊君」
「うん、とってもどうでもいい上に、柊君らしいね」
らしいとは何だ、らしいとは。
その発言だと、まるで俺の存在自体がどうでもいいと解釈されかねないぞ。
吐息が白く彩られる、冬の季節。
温水プールにでも飛び込みたくなるような寒さに身を震わせ、下校中。
まだまだ生徒が多いので、手を繋ぐことはできていないが。
「仰る通りで、小鳥遊様」
「お姫様じゃないんだから……でも、主観の集まりっていうのは最もだと思うな」
「とか何とか言いつつ、ちゃんと聞いてくれるところがまた嬉しいところで」
「まぁ、話を聞かないで感想は言わないし。それに、柊君の話だし」
「それはまたまた、嬉しいことで」
自分でも心底どうでもいい考えを巡らせながら、人の目が少なくなってきた。
彼女もそれを察したのか、妙に隣でそわそわし始めた。
こういうのは、やはり俺から言った方がいいのか。
「手、繋ぐぞ」
「う、うん」
仄かな柔らかみと暖かさが、手から染み渡る。
緊張がまだまだ初々しさを自分自身に感じさせるが、大分慣れただろうか。
手を繋ぎたいのなら、彼氏彼女なのだから、はっきりと言ってしまえばいいのだ。恥ずかしいけれども。
「あ~、その、だな。今度のクリスマスなんだが――」
「わ、私もできれば一緒にクリスマス、過ごしたいなって……」
どうも、できたてホヤホヤとはいえ、恋人であることに変わりはないらしい。
むしろ、ホヤホヤだからこそ、こうして一緒に過ごしたがるのだろうか。
「ん、じゃあ遊園地行こうか。この間、行けなかった分ってことで」
「うん! やったやった~、柊君と遊園地~」
「子供っぽいぞ。可愛いけども」
なるべく子供っぽくいてくれた方が、庇護欲をそそられるというか何というか。
氷の息吹が冬服の間から入り込んで、この上なく冷たい。
けれども、何だか心は暖まっていて、不思議と全身もつられるように暖かい気がした。
「……とは言ったものの、どうしようか」
場所は遊園地。日はクリスマス。最低限決めなければいけないものは既に確定済み。
後は時間だが、最悪一週間きってから決定しても大丈夫だろうか。
今までで一番準備は万端、しかし、何か不安な要素が胸の欠片を下へと沈めていく。
気分次第で何とでも言えてしまうが、そうとしか形容できなかった。
もうクリスマスまで――
いやあ、時というものは残酷なものだ。
待ってはくれないし、痛みは霞む一方で困ってしまう。
終業式の今日は、二十二日。
明日から冬休みであり、クラスの雰囲気は早くも休みへとシフトしていた。
クリスマスどうしようか、と周りにひけらかすように、わざとらしく会話をするクラス内カップル。
何も予定がない、と周りにアピールするように、声を大にする奴。
電話番号だけでも、と小鳥遊に懇願する男子。おいお前久しぶりだな。最近大人しいと思ったら……八つ裂きにしてくれよう。
そんな殺伐とした教室の中で一人、最高の彼女と予定を既に作っている喜びを噛み締めた。
一人。一人で。結局、一年間ずっとぼっちだった気がするが、別に痛くもなんともありませんでしたっと。
「……ねえねえ、茜ちゃん達に、めちゃくちゃ冷やかされたんだけど」
「同じくだ。吹雪も茜も許さん」
それはもう茶化された。
教室で静かなところが恋人いるっぽいだとか、どうせナニをするんでしょ? だとか。
後者は色々と進みすぎだとして、前者に至ってはいつもの俺と何ら変わりない。
つまり、ぼっちこそ崇高なるリア充ということに。
今日も、この下校の至福が訪れる。
何かと一日の中で、一番楽しく幸せな時間が、この手を繋ぐ時間だ。
「そうそう。二人とも色々言っとったけんね~」
「あ……」
「え、えっと、どうしたの?」
「方言……可愛いな」
呟いて、彼女はすぐに手を離して、横に振る。
そこまで赤くなって否定しなくとも。もっと可愛いけど。
思えば今まで、小鳥遊が福岡の方言を使ったところは見たことがない。
恥ずかしいからなのだろうか。
「わ、忘れて! 今のナシ!」
「いいじゃん、可愛いんだから。何か他の言葉で言ってみてよ」
自分でも、見慣れない彼女の言葉遣いに魅力を感じていた。
中でも、博多方面の方言は特に可愛いと思うのは俺だけじゃないはず。
こう、ふとした瞬間にポロッと出てしまう、例えるなら今この瞬間のような状況が、一番可愛いと感じるのだ。
「え、えぇ~……」
少し困惑しつつ、恥ずかしがりつつ、口を開いたり閉じたり。
それでも言おうとしているところが、健気で可愛いというかなんというか。
「その、えっと……ばり、好いとうよ?」
「ごめんもう一回いや五回くらい言ってくれ」
確かまだカバンの中に、ボイスレコーダーが入っていたはずだ。
先生に提出するために入れたきり、取り出した覚えもない。
吹雪のように立ち回るのも、案外悪くないのかもしれない。
「い、いや! 恥ずかしいから!」
「では、恥ずかしいのに何で『好き』の博多弁をチョイスしたのか理由をどうぞ」
「う、うぅ……」
言い方に限りはあれども、言葉のパターンはそれこそ無限大にある。
その中で、どうして『好き』を選んで、言ったのだろうか。
いや可愛いからいいけども。役得というか、良いものが聞けたわけだし。
「だ、だって、好きだから」
「何か、不思議と心がくすぐったくなってくるな」
「私はもっとくすぐったいよ!?」
彼女の赤面具合からして、相当に恥ずかしい模様。
くすぐったいどころの話ではないのかもしれない。
「じゃあ、柊君も言ってよ、ほら!」
「まぁ、別に恥ずかしくないからいいけども。好いとうよ、小鳥遊」
「か、可愛い……意外と可愛い」
「男が言われることでもないだろ」
冬の寒さが吹き飛んだようなやり取りをしていると、気が付いたら家の前まで着いてしまった。
少し寂しくなるが、クリスマスまでの辛抱と考えれば、何とかなりそうだ。
クリスマスの時間も、早々に決まった。軽い提案が、そのまま通ったような形で。
部屋の前で別れの挨拶をしてから、自分の部屋へと戻る。
と、そうしようとしたその時。
俺の制服の袖が控え目に引かれた。
この動作ですら、もう可愛い。全てが可愛い。
振り向くと、未だに赤くなった彼女が俯いていた。
目が合った瞬間に、何を思ったのか、今度は悪戯な笑みを浮かべた後に、純粋な輝く笑顔を見せて、両手を広げる。
「ばり好いとうけん、ぎゅ~ってしてほしかとよ!」
自分の中で、糸が切れたような、か細い音が聞こえた気がした。
半ば強引になって、彼女を引き寄せて強く抱きしめる。
当然、こんなに弾けるような笑顔で言われると、耐えられるはずもなかった。
「お、思ったよりも反応がいいなぁ」
「うっせ。可愛いのが悪いんだ」
「心臓、すっごくドキドキしていて速いね」
「……うっせ」
彼女との身長差を考えると、頭がちょうど俺の胸の辺りに来る。
抱きしめたときに、心音が丸聞こえなのだ。
気恥ずかしさを紛らわすために、もっと自分へと引き寄せる。
「この間みたいに優しく抱き締められるのもいいけど、強くされるのもすごくいい。癖になりそう」
「う、あ、いや……これ以上は止めとく。歯止めがかからなくなりそうだ」
自分の中で制限をかけて、手を離す。
このまま続けると、自分自身がどうなるかわかったものではない。
癖になりそう、なんて言われると尚更なのだ。
「うん、ありがとう。やっぱり、離れる時が一番切ないよ、私」
「いやホント、これ以上は止めてくれ。何するかわからん」
「そ、そうなの?」
「そうなんだ。じゃ、またな。クリスマス、楽しみにしているよ」
「ありがとう。私も、待ちきれないよ」
互いに名残惜しいながらも、自分の部屋へと入室。
手に触れるノブの冷たさが、冬であることを再認識させる。
二人でいたときの熱で、意識の外から寒さが弾き出されていた。
取り敢えず今日わかったことは、可愛い女の子は博多弁がポロッと出ると一層可愛いこと。
それと、名残惜しいくらいの恋が丁度良いということだった。
ありがとうございました!
長らく思っていたのですが、今までの書き方では読みにくいのでは?
と、いうことで、今回から他作品と同じように書いていきます。
投稿済みのやつは、ちょっとずつこの形に直していきます。
気が向いたらで、ちょっとずつ。許して(´・ω・`)
私の持論ですが、博多弁はポロッと一瞬垣間見えるのが一番可愛いと思います。
例えば、今回のように。
「ぎゅ~ってしてほしかとよ!」とか言われたら死ねる。
こうやって小説で書けるのが、福岡住まいであることに感謝しないとね。
ではでは!