捻くれた俺の彼女は超絶美少女   作:狼々

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どうも、狼々です!

遅くなってしまい! 申し訳ありませんでしたぁぁぁあ!
実に一週間ぶりですねはい。本当に申し訳ありません。

クーカノ投稿したり、短編投稿したり、一日休んだりと……
反省しています。

昨日は熊本に行って、殆ど時間がありませんでした。
これを予約投稿するのは、投稿の二時間半前というなんというギリギリ。
誤字脱字等が多いと思われます。重ね重ねすみません。

では、本編どうぞ!


第27話 私の大好きすぎる彼

 薄暗のどこか暖かくもある空気を掻い潜りながら、自分の部屋へと戻った。部屋に帰った今は、もう辺り一面闇に包まれてしまっている。

 

「ただいま~」

 

 気だるげに、抑揚とはほど遠い平坦な、のっぺりとした声を出しながら、解錠した玄関の扉を開く。目に飛び込んできたのは、オレンジ色の暖色系の光と、それに照らされている、床に膝を抱えて座り込んだ小鳥遊だった。

 

「……どうした?」

「ん、おかえりなさい……待ってたよ」

 

 そう微笑みかけられて、ドキッとした。暖色の光がまた、一種の甘美さを纏わせて俺の視線を釘付けにする。妖しい魅力を孕んでいて、自分の中で様々な邪な考えが横行して止まない。彼女には、今まで俺の感情をどれだけ揺らされただろうか。掻き回され、バラバラにされ、考えの収集はつかなくなっていく。

 

 彼女の笑顔に惚れ、彼女の笑顔にドキドキとしてしまう。それが妙に心地よく感じる割には、自分の息も感情もかき乱される。けれど、もっと見たいと思って彼女の気を引こうとして上手くいかず、不意の笑みに嬉しくなりながらも心臓は暴れて静まらない。そんな心臓に悪い状態を繰り返してきたというのに。

 

 小鳥遊は立ち上がって、俺の顔をじっと見つめる。急に見つめられたことに心臓は心拍数を加速させながらも、頭で不思議に思う理性はなんとか残っていた。

 

「ど、どうしたんだ……?」

「口、血が……」

 

 あ~……そういえば、切ったんだったか。全く、自分で思うが情けない。たった一回殴られただけでこうなるとは、ひ弱すぎて泣いてしまいそうだ。勿論、草薙に会ったなどとは言えるはずもない。それに、男とは好きな女の子の前ではカッコつけたい生き物なのである。だから俺は、こう応えることにしようか。

 

「あぁ、これか。……いや、あれだ。人と強めにぶつかったんだよ」

「……ふぅん、わかった。気を付けてね?」

「お、おう」

 

 正直、こんな見え透いた嘘で騙せるとも思っていなかったので、嘘を吐いた張本人である俺が言葉を詰まらせる。普通の人間に対してならば平気で嘘を吐けるのだが、小鳥遊相手となるとどうも調子を狂わされる。

 

「あぁ、そうそう。晩御飯、簡単にだけど作るよ。食べていくか?」

「え? あ……うん。ありがとう。じゃあ私も――」

「いやダメだ。そう言ってこの前、全部一人で作ったじゃないか」

 

 そう投げかけて、玄関に通ずる廊下からリビングに出ようとする。その扉に手をかけた時に――背後に、小さな暖かくもある重みがかかった。決して重いわけではない、むしろ軽いだろうか。柔らかいものは二つ背中に当たり、形を大きく変えている。それだけで、俺の心臓はさっきとは比べ物にならないほどバクバクと鼓動するように。

 

 忙しなく広がっていく緊張の波紋は、俺の先から先まで固まらせた。頭はもう既に飛んでいて、思考などという薄っぺらいものは破れて、燃えてしまった。灰になって消えた。灰の山に残っているものは、彼女への膨れ上がって大きくなりすぎた好意だけだ。

 

「……ありがとう、柊君」

「は、はあぁ? ひ、ひやいや、いい、一体何のことですか!?」

 

 声がうわずったり、詰まったり、噛んだり、敬語になったりと、ひどいものだった。確実に俺の黒歴史と化しただろう。けれど、今はそんなことを考えている余裕はなかった。どうして? 何故? 何が何を以て『ありがとう』なんだ? そんな疑問符の付いたあやふやな文ばかりが脳内で羅列されていく。

 

「わからなくても、いい。それでも……ありがとう」

「…………」

 

 振り向こうとして、思い留まった。後ろが気になった。彼女がどんな顔をして、こんなに優しそうな声で言っているのか見たかった。けれども、振り向かなかった。いや――()()()()()()()()。振り向くのが、躊躇われた。理由や根拠はまったくもってない。雰囲気が、そうだった。

 

 煙たがることも、煙たがることもなしに、灰の山は大きく高く積もり積もり、積もっていく。灰は煙を濛々と立ち上げて、どこまでも高く昇っていく。揺るぐことのないそれは、ただ唯一(そら)に佇んだ。

 

「……ごめんね、本当に」

「……いいんだよ。あと――」

「あと、なに?」

「――ごめんじゃなくて、ありがとうを一言でいいんだよ」

 

 俺が上げた狼煙(のろし)は、そこまで立派なものじゃない。今にも天に消えかかった灰色の煙をかき集めて、全く何がしたいのだろうか。そう、問いたい。問うて、応えた。

 

 ――立派じゃなくてもよかったんだ、と。

 

 それだけ解れば、俺は十分に満足できた。どれだけ小さくて弱々しい狼煙でも、上がればよいのだと解った。そのこと自体に、俺は喜びを響かせた。自己満足かもしれない。けれど、そうじゃないと確信できた。

 

 今背中に寄り添ってくれている彼女が、俺を支えてくれていたから。俺が支えようとして、本当は支えてくれていたのだ。驚くほど情けない。助ける側が助けられてどうするんだ。呆れを通り越してしまいそうだ。通り越してしまわないのは、それもまた彼女のお陰だ。俺は彼女がいないとダメなんだろうか。

 

 ……そんな弱い人間、好かれるはずがない。少なくとも、彼女を一回は救わないといけない。それで、お返し。ハーフハーフだ。そうなると、これからやるべきことは一つ。アイツを……草薙を、徹底的に倒すだけだ。まだ、終わっていない。

 

 矛はある。盾は要らない。盾に頼るのは、アイツだけだ。脆い盾に身を隠すのは、視界を狭める邪魔物でしかない。俺が一方的に攻撃することは、相場が決まっている。勝ち負けは、もう決まっているも同然だ。あとは、対戦を仕掛けるだけ。その準備も、もう整っているはずだ。

 

 ギャンブルなどではない。勝敗が事前に決定しているギャンブルなど、賭けやら綱渡りやらなんていう生温いものではない。俺は、それを理解している。そして、俺は思った。

 

 ――なんて打ち出の小槌な戦いなんだろう、と。

 

 ―*―*―*―*―*―*―

 

 彼に寄り添った後、今は彼に言われた通り、ソファで彼の料理のできあがりを待っている。待っている今の間、ずっともやもやとしていた。

 

 彼の唇の血は……十中八九、草薙君と殴り合ったのだろう。そのことに、嬉しくも悲しかった。彼が殴られたことに悲しく、殴られて、傷付けられて、血まで出して私のために行動してくれたことに、嬉しかった。正直、少しだけ泣いてしまったのは内緒だ。背中にもたれかかった時、彼が後ろを振り返っていたら、涙を流す情けない私が視界に入っていただろう。

 

 それなのに……それなのに、彼は自分のことを話さない。あんなに嘘ってすぐにわかる嘘を吐く必要はあるのだろうか。それなのに、隠した。どうしてだろうか。それをずっと考えている。けれども……どれだけ深く深く考えても、まったくもって答えが出る気配すらない。

 

 でも、嬉しかった。私は、彼がいないとダメなのかもしれない。小さい頃も、あぁやって助けてもらったなぁ……あんまり友達がいなかったあの時、最初に声をかけてくれたのは、彼だった。今の彼からは正直、想像もつかないけれど。思い出していて、笑ってしまいそうになる。

 

 それにしても、帰ってきたときのあの驚いた顔は、面白かった。予想外を体現したような表情だった。それで――私が見えて、安心したというような、喜んだような顔を見せてくれたことに、ドキッとしてしまったのも事実。私がいて嬉しいとか、そういうことを考えていると思ったらもう……あぁ、ダメだ。また心臓がドキドキしている。

 

 いつもそうだ。彼と距離を縮めようとしたら、声をかけるタイミングが重なって気まずくなったり、どんな話題を出していいかわからずに沈黙が流れたり、話さなきゃ、って思って話そうとしてまた重なって。

 

 重ならなかったと思ったら、すぐに会話が終わって寂しくなって、また沈黙。家にすぐに着いてしまって、彼との話す時間は終わり。そして、帰った後にベッドに飛び込んで、ぬいぐるみを抱きながらいつも後悔するんだ。

 

 あぁ、なんで話せないんだろう、とか。もっと話したかったなぁ、とか。話だけでなく、手を繋ぐ勇気を出したいなぁ、だとか。……もう一度、抱き合えないかなぁ、とか。恥ずかしいけれど、いつも彼のことで頭がいっぱいになる。そして……胸が苦しくなる。

 

 恋をすれば女は幸せになる、なんて言うけれど、本当にそうなのか疑ってしまう。だって、叶わない恋をずっとし続けるのは、とっても悲しくて辛いことだから。そして、自分もその一人であることを考えると、涙も出そうになる。

 

 そんな時に、いつも電話をする。電話をして、早く出てくれると嬉しくなって、遅くても今か今かとドキドキしながら待つ。時々、彼からも電話をかけてくれる。スマホの画面を見ずに、着信音が鳴ってまずドキッとする。画面を見て、彼の名前が浮かんでいるとさらにドキドキするし、彼じゃないと少しがっかりする。

 

 電話をかける前だって、相当にドキドキしている。深呼吸を繰り返していると、電話をかけるのは五分や十分後、なんてのはざらだ。繋がると、声がうわずってしまいそうになったり、事前に話そうと思っていた話題や、電話をかける理由(こうじつ)が、頭が真っ白になって飛んでしまったり、色々と大変だ。

 

 電話が終わっても、今日はいつもより会話できたときにはベッドを飛び跳ねたくなるし、短かったときは眠かったのを邪魔したんじゃないかと不安になる。寝ようとしても、興奮で寝られない。電話が終わって五分は心臓がドキドキしっぱなしだ。

 

 朝起きて、着替えながら話題を考える。時々時計を見忘れて、彼を外で待たせてしまうこともある。その度に、彼は笑って流してくれる。……その笑顔に、ドキッとしてしまうことも知らない彼は、平気で笑う。その笑いで、どれだけ私のこころが揺れ動くかを知らないんだ。

 

 学校は学校で、授業中にちらちらと隣を見たり、席替えの話が出たりして泣きたくなる。そして、待ちに待った昼休みは笑顔がつい溢れてしまう。一番楽に話せるのは、この時間だ。ドキドキするけれど、一番話題が弾む。

 

 帰りになって、休み時間に考えた話題でまた話す。一緒に、今日こそは勇気を出して手を繋ぐんだ! という決意を実現させようとする。が、それが簡単に崩れてしまうのが私の毎日。手を繋ごうとして、やっぱり手を引っ込めてしまう。

 

 そんな毎日を送っていたのだ。……今振り返ってみると、私の行動理由が彼になってしまっている。やっぱり、私は彼がいないと生きていけないようだ。そう思うと、私が本当に彼が好きなんだって自覚して、心のなかで笑ってしまう。……えへへ。

 

「――お~い、小鳥遊、できたぞ~!」

 

 今日はなんと! 彼の家でご飯なのです! ……ふへへぇ。

 

「――お~い、き~てんのか~?」

 

 今日はいつもより寝られない気がするなぁ……幸せなようで、結構辛いのである。

 

「――お~い、食べちゃうぞ~?」

「私でよければ――えぇぇ!? い、いやいや違う違う!」

「お、気付いた。ご飯、できたぞ」

 

 気付けば彼は目の前にいて、こちらを覗き込んでいた。距離も近い上に、さらには彼の笑顔。思考が一瞬でショートして、淫らな返事をするところだった。……私は、どこか彼になるとそういう傾向になってしまう時がたまにある。エッチだと思われると嫌われそうだから、できればなくしていきたいところ。いつもはそんなことは全くないのになぁ……

 

「う、うん、わかった。ありがとう」

「……おう」

 

 目を逸らしながら、恥ずかしそうに喜んだ顔をする彼に、また虜になって。いつも連鎖が起きているんだ。惚れて、惚れて、惚れて……それって、ただループしているだけだよね? 結局わかることは、彼のことが大大大好きなことだけだ。

 

 ――それさえ解れば、十分か。




ありがとうございました!

今回、音葉ちゃん爆発。やったぜ。

最近、クーカノの勢いがすごいです。
なんか、すごいです。語彙力のなさもすごいです。
すいません、何か疲れてますね。

ではでは!

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