捻くれた俺の彼女は超絶美少女   作:狼々

2 / 43
どうも、狼々です!

今回は中々早い投稿だったと思います。
前回の最初ような堅苦しい文は、少なめにして、コメディ要素を増やしてみました。

それと、今回でプロローグ終了! 次回からは、第1章です。
プロローグでは、主に主要キャラの紹介と思ってもらえれば。

では、本編どうぞ!


第2話 裏や真意を考えるのは、当然の流れだと思うのだ

 作文を集め終わってしばらくして、朝課外の時間とHR(ホームルーム)までが終わった。休み時間開始のチャイムが鳴ったその瞬間、俺の横の席の転入生、小鳥遊さんのもとに人だかりが形成されていた。ちょっと、俺が過ごしにくいんですがそれは。

 

「ねぇねぇ小鳥遊さん! 部活どこに入るの!?」

「趣味とか好きなものとかは何!?」

「電話番号とメールアドレス教えてくれ!」

 

 小鳥遊さんは、戸惑いまくっている。ほら、皆何も考えないで、自分優先。相手のことなんて二の次だ。人間の悪いところはそこにも存在する。場をわきまえない、相手の都合を考えない等。これらに至っては、常識ではなくマナーやモラルの範疇(はんちゅう)なのだ。守らなければいけない最終ライン。それを踏み越してはならない、という警告サインを誰も出さないのも問題ではある。というか最後。何どさくさに紛れて連絡先知ろうとしてんだ。

 

「え、えぇっと……」

 

 困りきった様子で、てんやわんやの被害者に。さすがに俺は加害者にまわる気はない。途轍もないうるささに耳を痛めながらも、廊下に出る。すると、廊下にも人だかり。集団がさらに集まっている。……わーお。規模がでかすぎるな……。

 

 所詮、『集団』なんて言葉はお飾りでしかない。人類は皆ぼっちなのだ。一人になっても喋り続ける、なんて人はいないからだ。そんなぼっちな人間が複数人集まっただけで、人間の本質を変えられると思ったら大間違いなんだ。そんな簡単に人間という一括りの存在の特徴を、変えられる者などいない。

 

 その割に、『お飾り』に騙され、ぼっちがただ数人規模で集まったものを『集団』とかっこつけて呼ぶようになる。ぼっちが何人揃ってもぼっちだろうが。その割に、集団(笑)はぼっちを『下等な種族』、『劣等した存在』として扱うのだ。自分達も、そのお飾りにぼっちの三文字を後ろに隠しているだけなのに。なんて面白い自虐ネタなんだろうか。売れるぞ。

 

 そんなことを考えつつ、廊下の静かな所に退避すると、ドン、と思い切り背中を叩かれた。痛くもないし、むせる程でもないが。

 

「ねえ、どうだった? 今噂の小鳥遊 音葉さん、どうだったよ?」

 

 俺に話しかけた物好きな奴は、唯一俺と同じクラスで名前を覚えている、浅宮(あさみや) 吹雪(ふぶき)だ。もう既にお互いを名前で呼び合うくらいの仲だ。ちなみに、吹雪で産まれたから、吹雪なんだとか。まんまかよ。

 

 色の中性的な顔立ちは、俺よりもずっと整っていて、笑顔が似合う。飄々(ひょうひょう)とした態度と口調が特徴的。肌は白い方だ。目も大きく、女子との交流の機会が普通よりも多い奴だ。この態度や見た目は、話しやすいのだろうか。

 

「どうだった、って言われても、ただ『可愛い』に尽きる。中身も良さそうな感じはするが……」

「……するが、どしたの?」

「いや、わからん。ただ一言挨拶を交わしただけだからな。さすがに俺でも、挨拶一つで気持ちは読み取れん」

「そっか。ま、そうだわな。そんな彼女の人だかりから離れる誠も、相変わらずだねぇ……」

 

 吹雪は、俺が捻くれた性格であること、コールドリーディングが得意なこと等も知っている。それらを知った上での友人関係だ。こんな俺に接してくれるだけでも嬉しい。

 

「いや、小鳥遊さんが可哀想だ。転入していきなりあれだからな」

「へぇ、珍しいね。誠が『さん』を付けて呼ぶのと、ついさっきまで見ず知らずだった人間に、そう思うなんて」

「それほど気の毒なんだよ……っと、もう予鈴か」

 

 次の授業の予鈴が鳴った。数学Ⅰ。数学は全部できない。わけわからん。

 

「なるほどね♪……じゃ、いこっか」

「そうだな。もう大分静かになってるし」

 

 この飄々とした態度は、時には面白くも感じてしまう。

 

 熱気があった教室は、大体の落ち着きを取り戻し、すっかり授業前の雰囲気ができあがっている。さっきまでの騒ぎようが嘘のようだ。そして、数Ⅰの先生が教室に入ってくる。女の先生。しかし、まだ名前は覚えていない。先生の名前くらいは覚えたいものだが。

 

「はい、じゃあ授業を始めます」

 

 全員で礼を済ませ、授業に入る。が……

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっと……小鳥遊さん、だっけ? 貴女が前の高校で使っていた教科書とは、別の教科書を使います。今発注していますが、まだ届いていないので、隣の柊君に見せてもらってください」

「はい、わかりました」

 

 ですよねー、こうなると思ってた。皆の視線の種類は、二分することもなく、俺への厳しい視線に統合され、向けられる。俺の右斜め前の席にいるのは、吹雪だ。……おい、吹雪。何笑ってやがる。そんな面白そうな目で見るんじゃない。

 

 彼女に机を近づけ、中央に教科書を置く。俺は、近すぎず、遠すぎずの位置に座る。けれど、小鳥遊さんはそうもいかないようで。若干こちらに寄った姿勢をとり、周囲の視線がさらに厳しく、吹雪の顔が一層に笑顔になる。おい。

 

「柊()()()()()()♪」

 

 ばっ……! お、おま、そんな親しそうにしたら――

 

(「……ちっ」)

 

 ……あ~あ。ほら出ちゃったじゃない、舌打ち。予想はしていたが、あまりにも予想通りだった。こんなことで予想を当てたくないものだ。当てるなら数学の問題にしてほしいところ。当てたいものに限って当たらないよな、こういうの。

 

 

 さて、授業が始まったが、全くわけがわからん。二次方程式をしているのだが……かろうじて中学内容は理解できる。けどさぁ、なんでxの2乗の係数が√2なんだよ。解の公式、使おうにも使えないじゃん。使えるけど、どんだけ計算しないといけないんだよ。俺のことだ、途中で計算ミスして終わりだろう。諦めが入るあたり、実に俺らしい。

 

「はい、じゃあ、この問題、解ける人は?」

 

 うちの学校は、特別に偏差値が高いわけでもないし、まだまだ意識が低めの一年生五月。予習をしている者はいない。吹雪は俺と違って理数系だ。頭も俺より随分といい。解けるはずなのだが……って、こっちをちらちら見るんじゃない。何を期待して――って、なるほどな。その試すような目線、本当に試すつもりのようで。

 

「……いないか~い?」

 

 先生が半ば諦め気味になり、解き方を教えようと、手に持っているチョークを動かそうとした時。俺の隣から、透き通ったように白く、滑らかな手があがった。同時に、声も。

 

「……はい、私が解きます」

 

 教室内で、鈴の声が鳴り響く。静寂に包まれていたそこには、十分過ぎる程に。そして、声の主――小鳥遊さんの方へ、皆の視線が向く。そして、どこからか小さく感嘆の声があがる。俺も、素直にすごいとは思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――問題を解く、解かないとは()()()()()

 

 彼女は中々に()()()()()人間のようだ。何故俺がそう思ったか。それは、彼女の行動そのものにある。問題を解けるか解けないかは、まずはどうでもいいのだ。

 

 普通、慣れない学校で、登校初日。クラスメートの顔さえ見たことがなかったのだ。そんな状況で、()()()()()()()()()()()()凄みがある。周りのイメージがまだ不確定、不鮮明な中で、この行動の凄さがある。容姿端麗で、勉強もできる。それが第一印象となった場合、あまり良く思わない人間もいる。その人間が複数集まり、徒党を組んで彼女を悪い方向へもっていこうとする可能性は、十分にある。先の、『出る杭は打たれる』の典型的な例の一つにも挙げられるだろう。

 

 それに、彼女自身の勇気にも。問題の正誤に話は戻る。弾き出した解答が間違えば、イメージダウンになりかねない。『なぁんだ、頭良いと思ってたのに、違ったんだ』、という思いを抱かれる。

 

 人間の厄介なところは、自分の感じたことは、中々変えようとしないことである。勝手に間違った印象を『正しいのだ』、と思い込んで、違ったら違ったで批難する。そちらが勝手に勘違いしているだけなのに。そちらが勝手に期待しただけなのに。そんな勝手な勘違いや期待には、最初から応える義理はないのだ。誤解が甚だしいにも程がある。

 

 吹雪の方を見たが、手をあげる彼女を見て、同じく驚いている。彼が視線を再びこちらに戻し、薄い笑みを浮かべる。普通の純粋な、輝く笑顔じゃない。どうやら、この状況の特異性に気が付いたようだ。

 

 彼女が二度目の歩行を見せる。やはりそれだけで絵になり、周囲の視線を一層に惹きつける。白棒を黒板に打ち付け、動かしながら軌跡を残していく。その軌跡は止まることがない。それが意味することは、この問題を解くことは、彼女にとっては造作もない、ということ。

 

 ものの十秒程で軌跡は終わり、白棒が置かれる。と同時に、絵になる歩行で戻り、俺の隣へ座る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(「……はぁっ」)

 

 

 ――俺は、その時に吐かれた、彼女の小さな溜め息を、聞き逃さなかった。

 

「……はい、正解です。すごいですね、小鳥遊さん」

「……ありがとうございます」

 

 彼女の声が、ほんの少しだが沈んでいることにも気付いた。溜め息と声のトーンには、小鳥遊さんの隣である俺にしか気付かれない。

 

 

 

 

 午前の授業が終わり、今から昼食の時間だ。さてと、昼食を――

 

「小鳥遊さん、俺と一緒に、二人で昼飯食おうぜ!」

「私達と食べてくれないかしら、小鳥遊さん?」

「小鳥遊さん! 俺は、小鳥遊さんのことが好きだ! 付き合ってくれ!」

 

 うるさいの限度を知らないような大声が、隣の小鳥遊さんを中心に広がる。それより最後。お前はいつもどさくさに紛れて何してんだよ。ネタか? ネタなのか? 漫才でやっていくつもりでもあるのだろうか? ただただ黒歴史を増やしたいだけなのか? 残念ながら、『黒歴史』なんて歴史は、世界史にも日本史にもないので、お前の伝説的な告白は、教科書に載ることはないぞ。

 

 こんなにうるさいんじゃあ、ろくに昼食もとれない。と、いうことで。自分で持ってきた弁当を引っ提げて、教室の外へ行こうとする。もっと詳しくは――屋上の階段の方向へ。

 

 俺はこの一ヶ月で、自分の昼食スペースを確立した。それが屋上。風通しが良い割に、日陰もあり、人もいない。なんというぼっち飯。いいんだよ、それで。俺が(おもむろ)に席を立った後。

 

「あ……え、っと……その、話したい人が……」

 

 一人の少女の呟きは、周りの色で塗りつぶされた。俺にも聞こえることはない。が。

 

 その少女の視線が、一瞬こちらに向いたことには気が付いた。気のせいだろうと割り切り、屋上へ。

 

 

 

 さて、やはりここは俺のベストプレイス。屋上なのに、鍵がかかっていないあたり、どうかとも思うが。

 

「やっぱ、ここにいるんだね。誠らしいよ」

 

 突然に声がかかる。俺に声をかけるのは吹雪くらいなので、確認せずともわかる。というか、この独特の声の高さは、誰にも真似できないだろう。

 

「おう、吹雪。で、どうしたよ?」

 

 一緒に昼食をとりにきたのかと思ったが、手に弁当の類はない。

 

「小鳥遊さんのこと。……どう思う?」

 

 顔に浮かべてあった、デフォルトの笑顔を引っ込め、至極真面目に問われる。

 

「……今までかなり強いられた学校生活だったんだろうな」

「そうだね。俺もそう思う――っと、ここらへんにしといた方がいいかな。俺はこのあたりで失礼するよ♪」

 

 彼が再び笑みを浮かべて、屋上から立ち去っていく。何だったのだろうか。わざわざそれを言いに来ただけか……? それに、何をもって『ここらへん』なのだろうか。

 

 そう思考を巡らせて一分もしない内に、再び屋上の扉が開いた。……吹雪が戻ってきたのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――扉が開いて中に入った人物は、長く艶やかな黒髪を風で揺らしていた。

 

 ……は?

 

「……いたいた。ここにいたんだね、柊君は」

「……どうした小鳥遊さん、俺なんかのところに。教科書のお礼なら何度も聞いたぞ」

 

 彼女は見た目通りと言うべきか、授業が終わる度に俺にお礼をしたのだ。そして、周りの視線が鋭くなるのだ。鋭くなるまでが一セット。

 

「違う違う。お話がてら、昼食のお誘いに。それと、君は『さん』なんて付けるような人には見えないよ?」

 

 そう、俺はさん付けは基本しない。のだが、この美少女にはさん付けしてしまう程なのだ。けれどまぁ、彼女の発言からして、名前の呼び捨てでもいい、ということだろうか。

 

 

 いや、問題はそこじゃない。彼女との昼食に関しては、引く手数多(あまた)だったはずだ。どうして。

 

「……どうして、って顔してる。面白いね、柊君は」

 

 ふわりと魅力的な黒髪を揺らし、持ち前の笑顔を見せる。あり得ないくらいに可愛い。つい見惚れるのは、仕方のないことなんだ。俺は恋愛経験豊富とは正反対にいるので、普通よりも耐性がない。男心を揺らされやすい。自分で思っていて悲しくなる。

 

「――あ、いや、いっぱい誘われてただろ? 全部断ったのか?」

「うん。――()()()()()()()()()()、ね♪」

 

 優しげな瞳を片方閉じて、ウインク。何という破壊力だろうか。俺は落とされてもおかしくない。が、落とされると見惚れるは、俺は違うと思うのだ。簡単には落とされることはないと思う。例え目の前に、超絶美少女がいようが。それよりも、ここまでくると警戒心すら持ってしまう。

 

 何か裏がないか、とか、真意は何だろうか、とか。こんなこと考えるのが、俺の特性。伊達に捻くれ者とは呼ばれていない。

 

「物好きだな、俺と話したいなんて。見ていてわかるだろうが、俺は周りには属さない人間だ。そんな俺に、わざわざ話しかけるなんて奴は、吹雪くらいだ」

「あぁ、あの斜め前の。……いや、私に話しかけようとしなかったから、話したかったの。隣、いい?」

 

 話したかけなかったから、話しかけた。あの苦しそうな状況でか? ……少し、探ってみるか。無言の肯定で彼女のお誘いを受け入れ、彼女が隣に座る。これで誰かが扉から見ていたら、俺は皆から叩かれまくるに違いない。少し怖くなって、扉を一瞥。……大丈夫、人はいない。

 

「ふふっ……誰もいないよ。一人で来たから」

「そ、そうか……で、小鳥遊。本当は何しに来た?」

 

 さっそく本題へ。世間話で入り、途中で素っ気なく聞こうとも考えたが、ぼっちの俺にそんな女の子の聞き入る話題なんぞ、持っていない。悲しきかな。ここで吹雪だったら、颯爽(さっそう)と世間話に移るだろう。これがぼっちとの差。泣けてくる。いや、嘘。泣けてこない。

 

「いや、本当に話したいだけなの。君は面白そうだったしね」

「そうかい。こんな俺に話しかけようとする、小鳥遊の方がよっぽど面白いと思うがな」

「ふふ、ほら、面白い。そんな返しをする人は、滅多にいないからね」

 

 彼女の浮かべた笑いは――周りに浮かべた笑顔とは、柔らかさが一段と違った。




ありがとうございました!

最初から小鳥遊さんの好感度が高そうですが、そんなことはありません。

最近、Twitterの方を始めました。投稿する日は、そちらで伝えていこうかと思います。
大事な話だったり、アンケートだったりは、こちらの活動報告にも書きます。

これは3月4日に書いています。この日はまるちゃんのお誕生日!
おめでとう、まるちゃん! ということで。

早速ですが、アンケートを取ります! お手数ですが、活動報告かTwitterをどうぞ。
魂恋録との投稿ペースのバランスについてです。
ご協力をお願いします。強制ではありません。

ではでは!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。