今回は中々早い投稿だったと思います。
前回の最初ような堅苦しい文は、少なめにして、コメディ要素を増やしてみました。
それと、今回でプロローグ終了! 次回からは、第1章です。
プロローグでは、主に主要キャラの紹介と思ってもらえれば。
では、本編どうぞ!
作文を集め終わってしばらくして、朝課外の時間と
「ねぇねぇ小鳥遊さん! 部活どこに入るの!?」
「趣味とか好きなものとかは何!?」
「電話番号とメールアドレス教えてくれ!」
小鳥遊さんは、戸惑いまくっている。ほら、皆何も考えないで、自分優先。相手のことなんて二の次だ。人間の悪いところはそこにも存在する。場をわきまえない、相手の都合を考えない等。これらに至っては、常識ではなくマナーやモラルの
「え、えぇっと……」
困りきった様子で、てんやわんやの被害者に。さすがに俺は加害者にまわる気はない。途轍もないうるささに耳を痛めながらも、廊下に出る。すると、廊下にも人だかり。集団がさらに集まっている。……わーお。規模がでかすぎるな……。
所詮、『集団』なんて言葉はお飾りでしかない。人類は皆ぼっちなのだ。一人になっても喋り続ける、なんて人はいないからだ。そんなぼっちな人間が複数人集まっただけで、人間の本質を変えられると思ったら大間違いなんだ。そんな簡単に人間という一括りの存在の特徴を、変えられる者などいない。
その割に、『お飾り』に騙され、ぼっちがただ数人規模で集まったものを『集団』とかっこつけて呼ぶようになる。ぼっちが何人揃ってもぼっちだろうが。その割に、集団(笑)はぼっちを『下等な種族』、『劣等した存在』として扱うのだ。自分達も、そのお飾りにぼっちの三文字を後ろに隠しているだけなのに。なんて面白い自虐ネタなんだろうか。売れるぞ。
そんなことを考えつつ、廊下の静かな所に退避すると、ドン、と思い切り背中を叩かれた。痛くもないし、むせる程でもないが。
「ねえ、どうだった? 今噂の小鳥遊 音葉さん、どうだったよ?」
俺に話しかけた物好きな奴は、唯一俺と同じクラスで名前を覚えている、
色の中性的な顔立ちは、俺よりもずっと整っていて、笑顔が似合う。
「どうだった、って言われても、ただ『可愛い』に尽きる。中身も良さそうな感じはするが……」
「……するが、どしたの?」
「いや、わからん。ただ一言挨拶を交わしただけだからな。さすがに俺でも、挨拶一つで気持ちは読み取れん」
「そっか。ま、そうだわな。そんな彼女の人だかりから離れる誠も、相変わらずだねぇ……」
吹雪は、俺が捻くれた性格であること、コールドリーディングが得意なこと等も知っている。それらを知った上での友人関係だ。こんな俺に接してくれるだけでも嬉しい。
「いや、小鳥遊さんが可哀想だ。転入していきなりあれだからな」
「へぇ、珍しいね。誠が『さん』を付けて呼ぶのと、ついさっきまで見ず知らずだった人間に、そう思うなんて」
「それほど気の毒なんだよ……っと、もう予鈴か」
次の授業の予鈴が鳴った。数学Ⅰ。数学は全部できない。わけわからん。
「なるほどね♪……じゃ、いこっか」
「そうだな。もう大分静かになってるし」
この飄々とした態度は、時には面白くも感じてしまう。
熱気があった教室は、大体の落ち着きを取り戻し、すっかり授業前の雰囲気ができあがっている。さっきまでの騒ぎようが嘘のようだ。そして、数Ⅰの先生が教室に入ってくる。女の先生。しかし、まだ名前は覚えていない。先生の名前くらいは覚えたいものだが。
「はい、じゃあ授業を始めます」
全員で礼を済ませ、授業に入る。が……
「えっと……小鳥遊さん、だっけ? 貴女が前の高校で使っていた教科書とは、別の教科書を使います。今発注していますが、まだ届いていないので、隣の柊君に見せてもらってください」
「はい、わかりました」
ですよねー、こうなると思ってた。皆の視線の種類は、二分することもなく、俺への厳しい視線に統合され、向けられる。俺の右斜め前の席にいるのは、吹雪だ。……おい、吹雪。何笑ってやがる。そんな面白そうな目で見るんじゃない。
彼女に机を近づけ、中央に教科書を置く。俺は、近すぎず、遠すぎずの位置に座る。けれど、小鳥遊さんはそうもいかないようで。若干こちらに寄った姿勢をとり、周囲の視線がさらに厳しく、吹雪の顔が一層に笑顔になる。おい。
「柊
ばっ……! お、おま、そんな親しそうにしたら――
……あ~あ。ほら出ちゃったじゃない、舌打ち。予想はしていたが、あまりにも予想通りだった。こんなことで予想を当てたくないものだ。当てるなら数学の問題にしてほしいところ。当てたいものに限って当たらないよな、こういうの。
さて、授業が始まったが、全くわけがわからん。二次方程式をしているのだが……かろうじて中学内容は理解できる。けどさぁ、なんでxの2乗の係数が√2なんだよ。解の公式、使おうにも使えないじゃん。使えるけど、どんだけ計算しないといけないんだよ。俺のことだ、途中で計算ミスして終わりだろう。諦めが入るあたり、実に俺らしい。
「はい、じゃあ、この問題、解ける人は?」
うちの学校は、特別に偏差値が高いわけでもないし、まだまだ意識が低めの一年生五月。予習をしている者はいない。吹雪は俺と違って理数系だ。頭も俺より随分といい。解けるはずなのだが……って、こっちをちらちら見るんじゃない。何を期待して――って、なるほどな。その試すような目線、本当に試すつもりのようで。
「……いないか~い?」
先生が半ば諦め気味になり、解き方を教えようと、手に持っているチョークを動かそうとした時。俺の隣から、透き通ったように白く、滑らかな手があがった。同時に、声も。
「……はい、私が解きます」
教室内で、鈴の声が鳴り響く。静寂に包まれていたそこには、十分過ぎる程に。そして、声の主――小鳥遊さんの方へ、皆の視線が向く。そして、どこからか小さく感嘆の声があがる。俺も、素直にすごいとは思う。
――問題を解く、解かないとは
彼女は中々に
普通、慣れない学校で、登校初日。クラスメートの顔さえ見たことがなかったのだ。そんな状況で、
それに、彼女自身の勇気にも。問題の正誤に話は戻る。弾き出した解答が間違えば、イメージダウンになりかねない。『なぁんだ、頭良いと思ってたのに、違ったんだ』、という思いを抱かれる。
人間の厄介なところは、自分の感じたことは、中々変えようとしないことである。勝手に間違った印象を『正しいのだ』、と思い込んで、違ったら違ったで批難する。そちらが勝手に勘違いしているだけなのに。そちらが勝手に期待しただけなのに。そんな勝手な勘違いや期待には、最初から応える義理はないのだ。誤解が甚だしいにも程がある。
吹雪の方を見たが、手をあげる彼女を見て、同じく驚いている。彼が視線を再びこちらに戻し、薄い笑みを浮かべる。普通の純粋な、輝く笑顔じゃない。どうやら、この状況の特異性に気が付いたようだ。
彼女が二度目の歩行を見せる。やはりそれだけで絵になり、周囲の視線を一層に惹きつける。白棒を黒板に打ち付け、動かしながら軌跡を残していく。その軌跡は止まることがない。それが意味することは、この問題を解くことは、彼女にとっては造作もない、ということ。
ものの十秒程で軌跡は終わり、白棒が置かれる。と同時に、絵になる歩行で戻り、俺の隣へ座る。
――俺は、その時に吐かれた、彼女の小さな溜め息を、聞き逃さなかった。
「……はい、正解です。すごいですね、小鳥遊さん」
「……ありがとうございます」
彼女の声が、ほんの少しだが沈んでいることにも気付いた。溜め息と声のトーンには、小鳥遊さんの隣である俺にしか気付かれない。
午前の授業が終わり、今から昼食の時間だ。さてと、昼食を――
「小鳥遊さん、俺と一緒に、二人で昼飯食おうぜ!」
「私達と食べてくれないかしら、小鳥遊さん?」
「小鳥遊さん! 俺は、小鳥遊さんのことが好きだ! 付き合ってくれ!」
うるさいの限度を知らないような大声が、隣の小鳥遊さんを中心に広がる。それより最後。お前はいつもどさくさに紛れて何してんだよ。ネタか? ネタなのか? 漫才でやっていくつもりでもあるのだろうか? ただただ黒歴史を増やしたいだけなのか? 残念ながら、『黒歴史』なんて歴史は、世界史にも日本史にもないので、お前の伝説的な告白は、教科書に載ることはないぞ。
こんなにうるさいんじゃあ、ろくに昼食もとれない。と、いうことで。自分で持ってきた弁当を引っ提げて、教室の外へ行こうとする。もっと詳しくは――屋上の階段の方向へ。
俺はこの一ヶ月で、自分の昼食スペースを確立した。それが屋上。風通しが良い割に、日陰もあり、人もいない。なんというぼっち飯。いいんだよ、それで。俺が
「あ……え、っと……その、話したい人が……」
一人の少女の呟きは、周りの色で塗りつぶされた。俺にも聞こえることはない。が。
その少女の視線が、一瞬こちらに向いたことには気が付いた。気のせいだろうと割り切り、屋上へ。
さて、やはりここは俺のベストプレイス。屋上なのに、鍵がかかっていないあたり、どうかとも思うが。
「やっぱ、ここにいるんだね。誠らしいよ」
突然に声がかかる。俺に声をかけるのは吹雪くらいなので、確認せずともわかる。というか、この独特の声の高さは、誰にも真似できないだろう。
「おう、吹雪。で、どうしたよ?」
一緒に昼食をとりにきたのかと思ったが、手に弁当の類はない。
「小鳥遊さんのこと。……どう思う?」
顔に浮かべてあった、デフォルトの笑顔を引っ込め、至極真面目に問われる。
「……今までかなり強いられた学校生活だったんだろうな」
「そうだね。俺もそう思う――っと、ここらへんにしといた方がいいかな。俺はこのあたりで失礼するよ♪」
彼が再び笑みを浮かべて、屋上から立ち去っていく。何だったのだろうか。わざわざそれを言いに来ただけか……? それに、何をもって『ここらへん』なのだろうか。
そう思考を巡らせて一分もしない内に、再び屋上の扉が開いた。……吹雪が戻ってきたのか?
――扉が開いて中に入った人物は、長く艶やかな黒髪を風で揺らしていた。
……は?
「……いたいた。ここにいたんだね、柊君は」
「……どうした小鳥遊さん、俺なんかのところに。教科書のお礼なら何度も聞いたぞ」
彼女は見た目通りと言うべきか、授業が終わる度に俺にお礼をしたのだ。そして、周りの視線が鋭くなるのだ。鋭くなるまでが一セット。
「違う違う。お話がてら、昼食のお誘いに。それと、君は『さん』なんて付けるような人には見えないよ?」
そう、俺はさん付けは基本しない。のだが、この美少女にはさん付けしてしまう程なのだ。けれどまぁ、彼女の発言からして、名前の呼び捨てでもいい、ということだろうか。
いや、問題はそこじゃない。彼女との昼食に関しては、引く手
「……どうして、って顔してる。面白いね、柊君は」
ふわりと魅力的な黒髪を揺らし、持ち前の笑顔を見せる。あり得ないくらいに可愛い。つい見惚れるのは、仕方のないことなんだ。俺は恋愛経験豊富とは正反対にいるので、普通よりも耐性がない。男心を揺らされやすい。自分で思っていて悲しくなる。
「――あ、いや、いっぱい誘われてただろ? 全部断ったのか?」
「うん。――
優しげな瞳を片方閉じて、ウインク。何という破壊力だろうか。俺は落とされてもおかしくない。が、落とされると見惚れるは、俺は違うと思うのだ。簡単には落とされることはないと思う。例え目の前に、超絶美少女がいようが。それよりも、ここまでくると警戒心すら持ってしまう。
何か裏がないか、とか、真意は何だろうか、とか。こんなこと考えるのが、俺の特性。伊達に捻くれ者とは呼ばれていない。
「物好きだな、俺と話したいなんて。見ていてわかるだろうが、俺は周りには属さない人間だ。そんな俺に、わざわざ話しかけるなんて奴は、吹雪くらいだ」
「あぁ、あの斜め前の。……いや、私に話しかけようとしなかったから、話したかったの。隣、いい?」
話したかけなかったから、話しかけた。あの苦しそうな状況でか? ……少し、探ってみるか。無言の肯定で彼女のお誘いを受け入れ、彼女が隣に座る。これで誰かが扉から見ていたら、俺は皆から叩かれまくるに違いない。少し怖くなって、扉を一瞥。……大丈夫、人はいない。
「ふふっ……誰もいないよ。一人で来たから」
「そ、そうか……で、小鳥遊。本当は何しに来た?」
さっそく本題へ。世間話で入り、途中で素っ気なく聞こうとも考えたが、ぼっちの俺にそんな女の子の聞き入る話題なんぞ、持っていない。悲しきかな。ここで吹雪だったら、
「いや、本当に話したいだけなの。君は面白そうだったしね」
「そうかい。こんな俺に話しかけようとする、小鳥遊の方がよっぽど面白いと思うがな」
「ふふ、ほら、面白い。そんな返しをする人は、滅多にいないからね」
彼女の浮かべた笑いは――周りに浮かべた笑顔とは、柔らかさが一段と違った。
ありがとうございました!
最初から小鳥遊さんの好感度が高そうですが、そんなことはありません。
最近、Twitterの方を始めました。投稿する日は、そちらで伝えていこうかと思います。
大事な話だったり、アンケートだったりは、こちらの活動報告にも書きます。
これは3月4日に書いています。この日はまるちゃんのお誕生日!
おめでとう、まるちゃん! ということで。
早速ですが、アンケートを取ります! お手数ですが、活動報告かTwitterをどうぞ。
魂恋録との投稿ペースのバランスについてです。
ご協力をお願いします。強制ではありません。
ではでは!