捻くれた俺の彼女は超絶美少女   作:狼々

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どうも、狼々です!

久々の捻くれ要素です。

少し前に、諍いを起こそう云々とか書いてましたね。
あれが、なくなるかもしれません。
やっぱり私の未来の言葉は当たりません。申し訳ないです。

では、本編どうぞ!


第14話 ぼっちはこの上なく平穏至上主義者だ

 皆よりも早めに寝た俺は、この部屋の誰よりも早くに朝日を見ることになった。一足先にこの後の準備を始めて、終わったら吹雪を起こす。

 

「おい、吹雪。起きてくれ」

「う~い……はいはい、何かな?」

 

 おぉ、意外に寝起きがいいのか。呼びかけてすぐに目を覚ました。意識もはっきりとしている。俺が何故吹雪を起こしたかというと、そろそろ起床時間になる他に、もう一つある。

 

「なぁ、少し前に使ったようなボイスレコーダー。あれ持ってるか?」

「ん? あぁ、あれね。三つは常備してるよ。持ってくる。いくつ要る?」

「できれば二つがいい」

 

 俺がそう言って、吹雪が自分の持ち物を漁り始める。完全に不要物であり、三つ常備というのも思うところがあるが、この際どうでもいい。差し出された二つの棒状の機械――そう、ボイスレコーダーを受け取る。あの時、吹雪が俺と小鳥遊を盗聴したものと同じもの。

 

 二つを制服にしまい、ボイスレコーダーを隠す。ここには他生徒もいるのだから、不要物持ち込みを報告されたらどうしようもない。眠っているとはいえ、もうすぐ起床時間。いつ起きてもおかしくない。この二つのボイスレコーダーを使う前に見られるのは、どうしても避けたい。怒られるし。

 

「サンキュ。ありがたく使わせてもらうよ」

「うん。ただし、ちゃんと有効に使ってよね?」

「おう、有効にな」

 

 そこまで会話して、最初に黒宮が起きて、ドミノが崩れるようにして皆が起き始める。もう少し遅かったら、ボイスレコーダーは没収だっただろう。あ、危なかった……罪悪感や不安などはない。あるのは緊張感だけ。最悪、これは吹雪から没収したもので、先生に渡そうとしてた、とか言えばいい。最低だな。

 

 準備が既に終わっている俺は、悠々と本を読みながら、皆が準備を終えるのを待っていた。この後は朝食なので、それほど時間はかからなかった。黒宮が全員が部屋を出たのを確認して、施錠。昨日と同じように食堂へ向かう。

 

 朝の陽光が反射するホテルは、夜の時と随分イメージが違った。どこか心が清々しくなりながら、歩を進める。

 

 

 

 昨日の夕食と同じように朝食を取った。睨まれて、内心ビクビクして、吹雪が食器を鳴らして。俺も味が消えかけてた。美味しかったのはかろうじてわかった。今は部屋に戻って、自分の荷物をとって観光の用意をしている。準備といっても、運ぶだけなので、すぐに終わる。再び鍵を閉めて、一旦バスに乗り込む。

 

 全員が乗り込んだかどうかの点呼と体調確認を終え、バスが揺れる。集合場所に着いたら、そこから各班で目的地まで向かうことになっていて、集合時間までに集合場所に戻る、ということになっている。つまりは、少しは歩かないといけないわけだ。この暑さで。昨日の昼間と同じくらいの暑さで。まぁいいのだけれど。

 

 

 

 

 集合場所に着いて、先生から注意事項等の話があった後、各々の班が移動を始める。黒宮率いる俺のいる班も、同じく移動を開始。交通機関は一切使わず、歩きだけで向かう。距離もそんなにないしね。この班が向かうのは、ハウステンボスになっている。動物園にも行けるけれど、三日目にバイオパークに行けるので、殆どの班は選んでいない。

 

 徒歩を始めてすぐ、俺は異様な光景を見ることになる。

 

「ねぇ、小鳥遊は何か好きなドラマとかあるの?」

「えっ? えっと……」

 

 気が強い愛沢が、小鳥遊に話しかけた……だと……!? 思い切り目を見開いてしまった。吹雪を見るが、俺と同じように驚きを前面に出している。問いかけられた小鳥遊も、若干戸惑っている。ってか、愛沢がドラマの話題って、意外なんだが。そんな話題はあげなさそうだと思っていたが。

 

 これは……報復自体が、間違っている可能性もあるのか……? 少し、探ってみるか。

 

 

 

 

 

 

 ハウステンボスに着いた。何故一箇所なのかと言うと、一箇所で十分だからだ。ハウステンボスは、美術館・博物館もある。それを一緒に見たら、丁度いい時間になるのだ。夜にキャンプファイヤーがあるので、思いの外時間が限られている。短いくらいが適切なのだ。片岡先生が言ってた。

 

 周りに花畑のある風車の中に入って構造を見たり、『大ゆり展』なるもので、アート作品を見て回ったりした――ハウステンボスは広いので、班でまとまるよう事前に指導を受けていた――。特に、大ゆり展では大きく驚いたこともあった。

 

「ねぇ、小鳥遊。このゆり、すっごい綺麗じゃない!?」

「そうだね! 可愛いし!」

 

 なん……だと……!? 小鳥遊と愛沢が、笑い合っている? おかしい、絶対に何かがおかしい。

 

「ね、ねえ誠。俺達、この暑さにやられたのかな……?」

「い、いやわからん。ありえそうで困る」

「仕返しするんじゃなかったのかい? どうにも仲よさげだけど」

「お、俺も混乱してんだよ。ホントに小鳥遊を泣かせたのか?」

「うん。俺も目の前で見てたし」

 

 ますます不思議でならない。あの愛沢の笑顔を見るのが初めてということも相まって、衝撃がさらに強くなる。意外と可愛い笑い方するのな。普段の様子からでは考えられない。俺としては、小鳥遊の笑顔が最高だと思う。小鳥遊より笑顔が似合う女の子とか、いないんじゃねぇの?

 

 後ろで見ていた俺が、この状況について黒宮にこっそり聞こうとしてた時、茜と降旗が二人に混ざっていった。それはもう、この世の終わりかと思った。笑顔が逆に怖い。一触即発というか、笑顔に狂気すらあるんじゃないかと思ってしまう。狂気の一端が垣間見えた気がしながらも、黒宮にこの状況を尋ねる。

 

「お、おい黒宮。これってど、どうなってんだ? 小鳥遊と愛沢・降旗は仲がギクシャクしてんじゃないのか?」

「まぁ、ね? 俺が説得したんだよ。『せっかくの合宿なんだから、皆で楽しんだ方がいいだろ?』ってさ」

 

 黒宮が、太陽と同じくらい眩しい爽やかスマイルで応える。そういえば、俺から黒宮に話しかけたのは、これが最初なんじゃないか? そんなことを頭の片隅で思いながらも、黒宮の高スペックぶりに絶句していた。

 

 え、そんな難しいことできたの? 俺が説得しようとしても、睨まれて終わりだけど。人望ってやっぱり重要なんだな。あの気の強い愛沢を説得なんて、可能なのは黒宮くらいだろう。にしても、気も回るのか。さすが平穏至上主義者だな。

 

 

 

 ぼっちも、この上なく平穏至上主義者なのだ。俺から言わせると、黒宮のようなリア充は、逆に喧騒(けんそう)至上主義者が多い傾向にある。他人と接触することに一切の抵抗がないリア充は、嫌悪感を抱くどころか好意的に接触を図ろうとする。他人との共通点を発掘し、その話題でボルテージを上げようとする。

 

 しかし、それに比べてぼっちはどうだろうか? 接触自体を拒む傾向にあるぼっちは、他人との接触そのものが少なく、関係も薄い。そんな関係で、ボルテージが上がるような、ハイテンションになるような話題で語り合えるだろうか? 答えは否だ。一目瞭然だろう。なんなら、もう目で見なくとも即答できるくらいだ。

 

 いがみ合うことを嫌っているリア充が、関係の崩落を阻止すべく、仲介役となってわだかまりを無くそうとする者もいる。それこそ、黒宮がこれに当てはまる。

 

 だが、考えてみてほしい。そんな気配りまでして、その程度で崩壊するような脆い見て()れだけの関係を保つ必要があるのか? そんな価値はあるのだろうか? これも、答えは否。

 

 確かに、そんな関係ではないけれど、崩壊の可能性が少しでもある以上、止めないわけにもいかない。周りの雰囲気も悪くなるから、止めざるを得ない。反論の理由はいくらでもあるだろう。だが、どれもこれもブーメランの発言なのだ。

 

 本当に深い関係なら、そんなことを心配に思う必要さえない。さらに言うと、諍いなど最初から起きやしないのだ。怒りのボルテージが許すデッドラインを、お互いが認知していないわけがない。逆に言うと、それさえも認知できていないならば、結局はその程度であるのだ。

 

 その点、ぼっちは無関係を理想像としているので、そんなことを心配する必要がない。そんな束縛された関係も、(しがらみ)の意識も、保つ必要は全くもってない。

 

 深い関係を持たないとは、いがみ合い(無駄な争い)を未然に防ぐ、ということである。なので、ぼっちの特徴である周囲の乖離(かいり)を否定するということは、逆説的には、()()()()()()()()()()()()、ということになる。どれだけ喧嘩上等な精神をしているのだろうか。

 

 そんな精神は露ほどもないぼっちは、この上なく平穏至上主義者であると言えるだろう。いや、ぼっち()()()真の意味で平穏至上主義者であると言えるだろう。それに関しては、ぼっちの右に出る者も、足元に及ぶ者もいない。職人なのだ。平穏を創造する職人なのだ。

 

 なので、ぼっちを馬鹿にするということは、平穏を唱える者全てを敵に回すと言っても過言ではないだろう。世界平和を唱える者からしてみれば、とんでもない反逆者である。堪ったものではない。

 

 話が飛躍しすぎている、と思う者もいるだろう。けれども、飛躍させればそうなるのだ。それだけのことがされているのだ。

 

 

 

 っと、やはり出てきてしまった、俺の捻くれた思考。合宿中はないとは思っていたが、さすが俺。いつまでもブレることはないらしい。

 

 

 

 

 降旗と愛原が、小鳥遊と楽しそうに笑っている姿にただならぬ違和感を感じながら、歩いて集合場所に戻る。今は夕方で早すぎる集合であるが、キャンプファイヤーの準備や直前の確認等で、時間が取られる。よって、この時間から移動を始めないと間に合わないのだ。

 

 

 

 全員が集合場所に到着し、バスに乗り込んだ直後に、席も遠いのにそれぞれの回った場所の感想が、クーラーから流れる冷気と一緒に垂れ流される。俺は当然、垂れ流すような思い出もなければ、垂れ流す相手もいない。吹雪は同じ班だしね。

 

 あれだよね。自分の席が仲いい二人組の間だったら、横で俺を挟んだまま話し始めるのさ。気まずいったらありゃしない。こっちの身にもなってほしいものだ。空気読んで席を外さないといけないんだよ。そういう雰囲気が形成されてしまっているんだよ。もういっその事、はっきり邪魔って言ってくれないかな。言わないあたり、(たち)が悪い。

 

 

 

 ホテルに戻ると、すぐに夕食になった。夕食でも愛沢と降旗は、小鳥遊と話していた。俺が睨まれることも少なくなった。なくならないのかよ。突然の変化に、昨日とは別の意味で内心ビクビクしながら食事を進めていた。

 

 食事が終わって、部屋に帰る途中、吹雪に耳打ちされた。

 

「本当にやるの? ボイスレコーダーとかも使う?」

「いやぁ~……俺も混乱してる。わけも わからず じぶんを こうげきした! ってなりそうだ」

「なんでポケモンなのさ。ふざけとかじゃなくて、真剣に考えた方がいいと思うよ?」

 

 それもそうだ。正直、俺のしようとする行いは、決して善い行いではない。それだけに、軽はずみに決めていいことじゃない。

 

「……様子を見るよ。対応は変えるかもな」

「そうした方がいいよ。今日の時点でも変更できるんだしさ」

 

 そこまで言って、部屋に着いた。俺は筆記用具等を持って、すぐに会議に行かなければならない。その後、すぐにキャンプファイヤーなのだ。

 

「じゃ、行ってくるよ」

「どんなキャンプファイヤーになるだろうね。楽しみだよ、個人的には」

「俺はそうでもないけどな」

 

 やる気のない返事を返して、少し早歩きで会議に向かう。昨日と同じく、小鳥遊が待っている。そして、駆けてくる。だから、そういった行動が、どれだけの男子を冥界に葬ったのでしょうと何回言えば……。

 

 そう言いたくなるくらいに、彼女はいつもの可愛い、白ゆりの笑顔を浮かべていた。




ありがとうございます!

キャンプファイヤーは次回に回そうかと思います。

ではでは!

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