捻くれた俺の彼女は超絶美少女   作:狼々

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どうも、はじめましての方ははじめまして。
東方魂恋録を見てくださった方は、今作もありがとうございます。狼々です!

初のオリジナル作品ということで、若干緊張気味です。

今回、主人公が捻くれ者です。ネタが限定的なので、上手く書けるかどうか……頑張ります!

では、本編どうぞ!


プロローグ
第1話 人間は恐ろしい生き物だと、心底思う


 朝。部屋の中で甲高い音を鳴らす目覚し時計。少々乱暴にそれを鳴り止ませ、ベッドから這い出る。歯磨き、朝食等を済ませ、着替えを始める。

 

 まだまだ真新しい制服に袖を入れ、身を包ませる。しばらくして着替えが終わり、登校の準備ができた。同じく真新しい通学用カバンを持って。忘れ物は無いはずだ。

 

「……いってきます」

 

 俺以外にこの部屋には誰もいないので、返事は返ってこない。 それに関しては、寂しいところではある。長年の習慣のようなものなので、簡単には無くならない。

玄関を施錠したことを確認して、高校へと歩を進める。

 

 今は五月の中旬。先月に俺の通う高校、栄巻(さかまき)高校の入学式があった。その入学式に出席した俺も、栄巻高校の新入生の一人。多少気だるげながらも、着実に高校との距離は短くなっていく。

 

 高校の校門付近になると、俺と同じ柄の制服が溢れる程に視界に入り込む。男子は黒のブレザーとズボン、白のカッターシャツに赤、青、緑のネクタイ。女子はズボンがスカートに、ネクタイがリボンとなっていて、他は同じように見受けられる。ネクタイ、リボンは学年毎に異なっていて、俺を含む一年生は赤色だ。

 

 校門をくぐり、下駄箱で下靴を室内用シューズに履き替え、一年生の教室が並ぶ四階へ階段を上っていく。二階、三階と上がっていくにつれて、赤の生徒が目立っていく。

四階にたどり着いた俺は、教室のドアを開け、くぐる。

 

 一瞬、こちらに視線が向けられるも、すぐに逸らされる。俺はこの行為が大嫌いだと言ってもいい。すぐに視線を逸らすことが、無意識的な拒絶に等しいからだ。『私はこの人とは縁がありませんよ』、と声を大にして言っているも同然なのだ。それを平然とやってのける人間は、本当に恐ろしい生き物だ。つくづくそう感じてしまう。

 

 中途半端に自分のテリトリーの中での常識を作り上げる。それがどれだけ恐ろしいことか、皆は知らない。知っているのは少数派だ。何故か。それは、それが『当たり前』だから。当たり前と常識の本質的な意味を履き違える人間は多い。当たり前と常識は、常に一致するとは限らないのだ。

 

 そんな非道徳的とも思える思考を巡らせながら、自分の席に静かに向かう。俺の席は、左窓側の一番後ろだ。何と過ごしやすい位置だろう。

 

 そして、俺の席の隣に新しく席ができていることに気付く。

俺の隣の席は、つい先日まではなかった席だ。

少々疑問に思うが、それほど重要なことじゃないだろう。俺のすることは変わらん。

 

 しばらくして、朝課外の始まりの予鈴が鳴った。教室内で群れを形成していた者達は、慌てて自分の席に戻りだす。やがて、一人の先生が教室に入ってきた。担任で現国の先生、片岡(かたおか) 秀忠(ひでただ)先生だ。

 

「よ~し、皆、席に着け――って、もう着いてるか。今から出席を取る。名前を呼ばれた者は返事しろ〜」

 

 そう声がかかって、五十音順に名前が呼ばれていく。ちなみに、俺はその中で一人しか名前を覚えていない。俺は入学早々から、ぼっちに酷似した存在となった。さらにこの性格故に、俺はよく『捻くれ者』と言われがちだ。俺からしたら、俺の周りの人間のほうがよっぽど捻くれ者のように思える。こんなことを考えてるから捻くれ者、って言われるんだろうが。

 

 後のほうになって、俺の名前が呼ばれる。

 

(ひいらぎ) (まこと)

「……はい」

 

 元気がなさそうな返事だが、これが俺のデフォルト。できるぼっちは、あまりでしゃばることはないのだ。『出る杭は打たれる』、とはよく言ったものだ。これが人間社会の生きにくい理由の一つではある。

 

 下位の者がわざわざ余計なことをして、上位の者から制裁を与えられる。これの繰り返しが、今までどれだけあっただろうか。しかし、それでも学ばない人間はいるものだ。どれだけそれを体感しようとも。どれだけそのことを見聞きして知っていようとも。杭は減っていくことはないのだ。

 

 しかし、『出すぎた杭は打たれない』、という言葉を並べた人間もいる。俺はこの言葉に異を唱えることも、肯定もしない。実にいいフレーズだ。皆が頑張ろうとする要因の言葉にもなるだろう。

 

 だが、ちょっと待ってほしい。このフレーズは、本当にいいものなのだろうか? ――答えは否だ。この言葉を言うのは、『()()()()()()』者の特権であるからだ。都合のいいようにこの言葉を並べて、失敗のみを繰り返してきた者が言っても仕方がない。むしろ、この言葉はその人の言い訳や逃げそのものとなり、成長を止めることとなりかねない。

 

 薄っぺらい言葉に騙され、自分のやり方を曲げたり、変えたりすることは、意味が根本的に違うんじゃないだろうか。

 

 ――こんなことばっか考えてるから、『捻くれ者』と言われるんだろうなぁ……

 

 出席が終わり、片岡先生が俺達に告げる。

 

「じゃあ、俺は下で手続きが色々あるから、皆は作文を書いてくれ。テーマは何でも良い。今から原稿用紙を配る」

 

 瞬間、教室にざわめきが生じる。誰しも、作文を書くとなったら嫌になるだろう。実際、作文が苦手な人も多い。けれど、ある意味では、作文は『チャンス』なのだ。

 

 作文は、自分の考えを伝える、一種の伝達手段だ。自分の考えを口で並べることがかなわない人間も、考えを述べられる。俺のように。出る杭として打たれることもない。なんという安心感だろうか。しかも、テーマは自由ときた。

 

 俺は根っからの文系だ。理数系がほぼ死んでいるが、中学の定期テストで、文系である国語・社会・英語は、ほぼ満点に近い数字をたたき出していた。総合的には、この学校内では、中の上くらいじゃないだろうか。そんな俺に、作文を書くことなど、造作もない。

 

 なのだが、『手続き』とは何なのだろうか。退職? やべ、本気で怒られる。真っ先に思いつくのが退職のことなあたり、実に捻くれている。俺にとっては褒め言葉の部類だが。

 

 

 

 

 さらさらと特に詰まることなく、自分の捻くれた考えを書き連ねて。数十分程経った後、教室に片岡先生が戻ってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――()()()()()()()()()()()()()()()

 

 あまりに美しすぎる少女。艶やかな黒髪ロングのストレート。美人系というよりも、可愛い系のほうが強いだろうか。瞳は鮮やかな翡翠(ひすい)色。華奢な体つきが、ブレザーのある春服の上からでもわかる。胸の大きさは……わからない。ブレザーの上から見るんだし。標準よりもあるだろうか? 断言はできない。何故胸を見たし。

 

 美少女という類の人物はごくわずか、ほんの一握りの存在だ。だが、その中でも頭一つどころではない程抜きん出る美麗さは、クラスの男子は勿論、同性の女子さえも魅了した。かくいう俺も、その一人。格が違う、次元が違う、とはまさにこのことだ。この少女のためだけに作られたようなものである。

 

「はい、皆さん、聞いて。……今日から栄巻高校のこのクラスに転入した、小鳥遊(たかなし) 音葉(おとは)さんだ。……じゃあ小鳥遊さん、皆に自己紹介を」

「はい、わかりました」

 

 彼女の爽やかな笑顔は、涼しげで可愛らしさのある印象を受ける。一歩前に出て、彼女が自己紹介に入る。

 

「小鳥遊 音葉です。これから、よろしくお願いしますね♪」

 

 より一層の笑顔を浮かべ、澄んだ声でそう言った少女は、この世のものとは思えない程の可愛らしさを持っていた。『まるで天使のようだ』、と人の美しさや可愛いらしさを形容する言葉があるが、それを述べることさえも、おこがましく感じてしまうような気がする程だ。

 

「じゃあ、空いてる席は……あの窓側の席の子の隣に座ってくれ」

「わかりました」

 

 片岡先生がこちらを指差す。……なるほど、そういうことか。俺の隣の空いた席は、この転入生の席なのか。となると、色々と問題が発生する。この少女が、学校一の美少女であることは間違いないだろう。その隣が、俺のようなぼっちの、勿体無い、つりあわない人間だったら、皆はどうするだろうか。

 

 当然、俺を見る目は厳しくなるだろう。矢面に立たされることは自明の理だ。俺にとって、ただでさえ過ごしにくいぼっちスクールライフが、さらに過ごしにくくなる。

 

 そう考えていると、こちらの方にその少女が、歩いて向かってくる。歩き方一つにしても、絵になる程だ。普通の歩き方とはあまり変わらないのに、そう錯覚させる。その少女に視線が集まるのは自然であり、視線が彼女と共に動くのも自然。そうして俺の隣に来た彼女。

 

 俺と彼女の視線が交わる。周りは、彼女を麗しく思うような視線を向ける者と、俺を妬ましく見る視線を向ける者に二分される。

 

「これからよろしくお願いしますね。えっと……柊さん」

 

 ちなみに、この学校のブレザーとカッターシャツの胸部分には、それぞれの名前の名字が刺繍(ししゅう)されている。彼女は、俺の名前の刺繍を一瞥(いちべつ)して言った。この名字の読み方を知っているのは、結構珍しい方なんじゃないのか? 本当はどうかわからないが。

 

 俺は個人的に挨拶をされたことに少し驚きつつも、(つたな)く返事をする。

 

「え……あ、ああ。こちらこそ、よろしく……」

 

 その瞬間、俺への嫉妬の視線が強くなる。ああ、人間一人の行動で、ここまで対応が変わるものなのか。我ながら自分に哀れんでしまう。生類憐れみの令を出した、かの徳川綱吉もビックリなくらいだ。まあ、『哀れみ』はかわいそうに思う、『憐れみ』は可愛がる、と、意味に相違があるのだが。てか、俺を可愛がるとか、どんだけ物好きなんだよ。

 

 俺は、少々癖のある黒髪で、校則に引っかからない程度の長さの、ごく一般的な髪型。容姿は……整ってる方だとは思う。何回か言われたことがあるし。まぁ、その真偽も怪しいところだが。

 

 顔はともかく、目がダメなのだ。細いつり目に、メガネをかけている。何とも攻撃的な印象を与えやすい。これが、俺をぼっちにさせた原因の一つだと考えている。この捻くれた性格と、この攻撃的な目。『最悪の組み合わせ』、と言っても過言ではない。可愛がられることはないだろう。

 

 俺が返事をした後、周りから声が上がった。

 

「羨ましい~! アイツ、小鳥遊さんと面と向かって挨拶してるぞ!」

「可愛すぎだろ……声も容姿も超俺好み」

「ホント、何で柊なんかがあの子と会話してるのよ……」

 

 ちょっと最後、聞き捨てならない言葉が聞こえた気がするよ?『なんか』とはなんだ。最初の奴も。俺の名前知らないのかよ。もう一ヶ月経つんだぞ。クラスメートの名前くらい覚えろ。……何というブーメラン発言。戻りすぎてアボリジニもビックリなレベル。おー、こわこわ。

 

「じゃあ、後ろから原稿用紙集めて~、回収するぞ~」

 

 さってと、集めますかね。一番後ろなので、集めなければいけない。それで、俺の隣の小鳥遊さんも、一番後ろなわけで。俺と同じように、小鳥遊さんが席を立ち、原稿用紙を集めていく。

 

「はい、ありがとう」

「あ、い、いや、こちらこそ!」

 

 小鳥遊さんは、何とも丁寧かつ眩しい笑顔で集めていた。彼女の列の皆は、逆にお礼を言うほど。ってか、『こちらこそ』って何だよ。わかりやすいにも程があんだろ。

 

 そんな中、小声が聞こえてきた。

 

「お、おい! さっき小鳥遊さんの手が俺の手に触れたんだぜ!」

「なに!? 裏切り者め! 羨ましいぞ、この!」

 

 なんてレベルの低い争いだろうか。とも思ったが、彼女の容姿を見た今では、そうとも思えない。今では、そいつらの気持ちがわからないでもない。

 

 で、対する俺の列はというと、俺への視線がひどい。もうどれくらい『ひどい』かと言うと、目線を合わせなくても睨まれているとわかるくらい。俺超エスパー。目線も合わせずに、相手の気持ちを読み取れるとはな。ここ一ヶ月ちょっとのぼっちライフで、エスパーになれたらしい。胸元に第三の目ができそう。

 

 俺は、案外相手の心理が読める。『コールドリーディング』という話術のテクニックを、自然に覚えていたらしい。まぁ今では、話す機会自体が少ないのだが。

 

 そんなくだらないことを考えていた時。

 

(「……ちっ」)

 

 おっと、小さくだけど聞こえましたよ? 舌打ちしたよね?……解せない。勝手にそっちが悪く思っているだけだろうに。俺、何もしてないよね? 

 

 ……人間は恐ろしい生き物だと、心底思う。

 

 ……これからが大変そうだ。




ありがとうございました!

いかがだったでしょうか? 捻くれた感じというのも、中々難しいものでした。

前書きにも記した通り、ネタが限定的なので、不定期の更新になると思います。ネタができ次第、書いていきます。

私は基本、平日は午前6時、週末は正午に投稿しています。

プロローグはあと1、2話で終わらせて、さっさとメインストーリーに入ろうと思います。入ったら、コメディも増やしつつ。

これから、私とこの作品を宜しくお願い致します!

ではでは!

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