TOWRM3 〜ThePlain's Walker〜   作:赤辻康太郎

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第七話です。コンフェイト大森林の星晶採掘跡地探索です。


第七話

第七話

 

 

「それじゃあ行きますか」

「おう」

「はい」

「はい!」

 

樹の号令にリッド、フィリア、エステルの三人が答え、四人はコンフェイト大森林へと足を踏み入れた。今回はエステルの依頼によりコンフェイト大森林の星晶採掘跡地の調査が目的だ。もしエステルの聞いた噂通りに生態変化が起きている様ならサンプルを持ち帰る事になっていた。

 

「しかし生態変化か。一体どんな感じなんだ?」

「詳しくは……。ただ、噂ではまるでこの世の物とは思えなかった、としか……」

「ふ〜ん。まあ何にせよ、行って見れば分かるだろ」

「はい。そのための調査ですから」

 

樹の疑問に、エステルは噂程度の情報しか持ち合わせてなかった。それに対してリッドは行けば分かる、とエステルをフォローしフィリアも頷いて肯定した。

 

「だな。取り敢えず詮索は目的地に着いてからにするか」

 

樹がそう締め括ると、その後暫くはたわいもない会話が続いていった。勿論歩みは止めていない。

 

「……そういえば、最近この辺も獲物が減ったなあ」「そうなのか?」

 

不意にリッドがしみじみと話し出した。

 

「ああ。前はでっかい猪とか結構捕れてたんだけどな。星晶の採掘が始まった頃から段々と減りだしたんだ。今じゃ滅多に捕れなくなったな」

「ふーん」

「……ごめんなさい」

 

リッドの話しに黙って耳を傾けていたエステルが突然謝りだした。

 

「ごめんなさい。私が……私が王女としてもっとしっかりとしていれば」

「エステル……」

「エステルさん……」

 

エステルの言葉に、リッドとフィリアは何も言えなくなってしまった。

 

「それはお前がしっかりとしていればどうにかなったのか?」

 

だが樹はエステルの眼を真っ直ぐに見つめながら問い掛けた。

 

「え?」

「お前がいち早く星晶の危険性に気づいていたとして、それで本当にどうにかなったのか?」

「樹!お前、何が言いたいんだ!?」

「いくら何でもその言い方は……」

 

樹の責める様な言い方に、リッドは声を荒げた。フィリアも樹を咎める様に注意した。

 

「で、どうなんだ?」

 

だが樹はそれすら無視してエステルに問い続けた。

 

「……たぶん無理だったと思います。」

「エステル!?」

「エステルさん!?」

 

エステルの発した言葉に、リッドとフィリアは驚きを隠せなかった。

 

「星晶の利便性はかなり前から国中に広まっていました。国も、人々の生活も星晶の齎すエネルギーに支えられていたといっても過言ではありません」

「なら、例えお前が星晶の危険性を国民に説いたとしても、すぐに手放すわけにはいかないな」

「はい。代替品を考えるにしても、星晶を超える物は恐らく直ぐには見つからないでしょうし……」

「作るとしても時間も労力もかかる。それこそ星晶を使った方がマシだと思える程」

「……はい」

 

星晶は最早人々の生活の基盤であり簡単に手放せる物ではない。更に星晶の量は国力の尺度にもなるので、星晶の開発を停止すれば忽ち他国に侵略されてしまう。また、代替品を模索するにしても、星晶を超える物が得られるとは限らない。よしんば得られたとしても、実用化に到るまでどれ程の時間と労力、費用を要するだろう。

 

「更に言えば、これはガルバンゾだけの問題じゃあない。世界の問題だ」

「……」

 

更に畳み掛ける様に、樹はエステルにとって残酷な言葉を紡いだ。エステルは樹の言うことが十分に理解できた。できた故に、何も言えなかった。

 

「だから、だからエステルは一生懸命何とかしようと努力してるんだろっ!」

 

樹の言葉に耐え切れなくなったのか、リッドが大声を上げて猛抗議した。樹は激昂に染まるリッドの眼を、涼やかとも言える表情でしっかりと受け止めた。

 

「一人で思い詰めて、他人に謝る事が努力?一体それが何の解決になる?」

「お前っ!」

「っ!リッドさん止めてください!」

 

−−ガッ−−

 

リッドは怒りを抑え切れなくなり、フィリアの制止も聞かずに樹を殴りつけた。樹は防御をしなかった。いやする気がなかったと言った方が正しいだろう。リッドの拳を真っ正面から受けて仰向けに倒れた。

 

「リッドさん!いくら樹の言い方があんまりだとはいえ、暴力は……」

「けど、樹は……」

「何、気にする事はない」

 

フィリアはリッドが樹を殴った事を咎めたが、リッドは納得がいかなかった。対して、殴られた樹はゆっくりと起き上がると、服に付いた草や埃を軽く払い、エステルに歩み寄った。

 

「さっきも言ったが、星晶の問題は世界の問題だ。お前一人が悩み、考え、謝った所で世界が認めなければ意味がない」

「お前まだ−−」

「だから、だからこそ、俺達がいる」

「……え?」

 

エステルは樹の言葉の意味が分からず、訝しげに樹を見た。

 

「俺達アドリビドムは人助けをするギルドだ。誰かが困っていたら手を差し延べる。そんなギルドだ。だから、悩んだら俺達を頼ればいい」

「樹……」

「……そうだな。一人で考えてもどうしようもない事もあるしな」

「はい。一人で考えて分からない時は、皆で考えればいいんです。そうすれば、見えてくるものもあります」

「リッド……フィリア」

 

樹は一人で悩まずに自分達を頼ればいい、と言い、樹の言葉に続ける様に、リッドもフィリアも皆で考えればいい、と言った。エステルは三人の言葉に、口を両手で覆う様にし、眼に涙を浮かべて歓喜した。

 

「それに、エステルはもうアドリビドムの仲間だろ?仲間を頼るのに遠慮はいらねぇよ」

「そうだな」

「はい」

「皆……ありがとうございます!」

 

樹がニッと笑い、エステルは仲間だと言うと、リッドとフィリアも笑顔で肯定した。エステルは感極まって涙を浮かべたまま、お辞儀をしてお礼を言った。

 

「うっし。ならとっとと採掘跡地に行って調査するか。今後の方針はそれから考えればいいさ」

「だな。そうと決まれば行くか」

「はい」

「はいっ!」

 

樹達は星晶採掘跡地に向け、再び歩みを進めようとした。

 

「あの……樹」

「ん?」

 

と、ちょうど樹が歩こうとした時、エステルが樹を呼び止めた。

 

「さっきは、ありがとうございました」

「いや。こっちこそ悪かったな。きつい言い方しちまって」

「いいえ。私、今まで『これは私が解決しなきゃ』って思ってたんです。けどさっきの樹の言葉で気付いたんです。これは『自分一人の問題じゃない』って。だから、ありがとう、です」

「そっか。なら、どう致しまして」

 

樹はそういうとエステルに微笑んだ。つられてエステルも微笑み、互いに笑い合った。

 

「ふふ。何だか『あの二人』が樹を好きになる理由が分かった気がします」

「ん?何か言った?」

「いえ。何でもありません」

「?」

 

エステルは疑問符を浮かべる樹を置いてさっさと歩いて行った。樹も「考えてもしょうがない」と結論づけエステル達に続いた。

 

「あれ?道がないぞ」

 

暫く進むと、周りが茂みに覆われた一画に着いた。リッドの言う通り、近くに道らしきものは見当たらず、行き止まりであった。

 

「少し待っていて下さい」

 

エステルはそう言うと、茂みの一つに近づいた。

 

「サレに追われていた時に、ユーリが道を隠したんです」

 

エステルがその茂みを横にずらす様に動かすと、先へ続く道が現れた。

 

「へえ。そんな所に道があったのか」

「全然気づきませんでした」

「俺もまだまだだな」

 

樹達は口々に感想を述べた。

 

「さあ、先を急ぎましょう」

 

エステルの号令で更に進んで行った。

 

また暫くすると、今度はオタオタを何倍も大きくした魔物、デカオタが道に居座り、道を塞いでしまっていた。

 

「あっちゃ〜。デカオタだ。あいつ中々通してくれないんだよな」

「にしてもでかいな。突然変異か?」

「いえ。魔物でも餌や環境しだいで魚や爬虫類の様に巨大化する個体があるという報告があります」

「へ〜」

「いいから構えろ、来るぞ!」

 

樹がエステルの博識ぶりに感心していると、デカオタが樹達の存在に気づき襲ってきた。

 

「まあどうせこうなる予定だったからある意味好都合か?」

「そうだな」

「二人とも気をつけて下さい!」

「援護します!」

 

樹とリッドが無駄口を叩きながらも、四人は陣形を整え、デカオタに応戦した。

 

「先ずは牽制ってな、魔神拳っ!」

 

樹は地面をえぐる様に左拳を振り地を這う衝撃波を放つ技、『魔神拳』を繰り出した。だがデカオタはその巨体故に大したダメージを受けておらず怯みもしなかった。

 

「お、使える様になったのか。けど、何で『拳』の方なんだ?」

 

リッドは樹が魔神拳を使える様になった事に感心し、同時に剣でないことに疑問を持った。

 

「『剣』の方も使えるよ。拳にしたのは何となくさ」

「ふーん。まあいいや。魔神剣!」

 

リッドは樹の台詞に一応頷くと剣を振り地を這う衝撃波、魔神剣を放った。だがこれでもデカオタは怯むことはなかった。

 

「しゃあない。一気に畳み掛けるぞ!」

「OK!」

 

樹とリッドは追撃を仕掛ける為にデカオタに突撃して行った。

 

「虎牙破斬!秋沙雨!」

 

リッドは斬り上げから斬り払いに繋ぐ特技、虎牙破斬と、高速の連続突きから斬り上げに繋ぐ秘技、秋沙雨の連続攻撃を仕掛けた。

 

「崩襲きゃ−−」

「キュアアアッ!」

 

しかしデカオタはリッドの攻撃をガードしていた。そして樹に狙いを定めると尻尾を振り攻撃してきた。

 

「樹、危ない!バリアー!」

 

間一髪でエステルの詠唱が完了し、対象者の防御力を上げる魔術、バリアーが発動した。

 

「ぐっ!」

 

樹は尻尾の直撃を受け吹っ飛んだが空中で体制を整え何とか着地した。バリアーのお陰かダメージは余り受けていない様だった。

 

「ふう。悪ぃエステル。助かった」

「どう致しまして、です」

「さて、反撃といきますかぁ!」

 

樹は叫ぶ様に言うとデカオタに向かって突進していった。デカオタはリッドと抗戦していたが、樹が向かって来たのに気づくと、樹に向かって回転体当たりを仕掛けてきた。

 

「しまった!樹、気をつけろ!」

 

リッドが慌てて注意したが、樹とデカオタはもうすぐ衝突する所まで近づいていた。

 

「おおお!裂砕脚っ!」

 

樹はデカオタとぶつかる直前、身体を反転させて強烈な後ろ蹴り、裂砕脚を繰り出した。

 

−−ドシンッ−−

 

大きな衝突音と共にデカオタは停止した。丁度樹が足で受け止める形だ。だが止まってはいるがデカオタの身体は小刻みに揺れていて樹を押し潰そうとしていた。

 

「潰されて、堪るかよ!双旋牙!」

 

樹は瞬時に抜刀すると、同時に鞘も引き抜いた。そしてデカオタを押さえていた足を振り子の様に勢いよく前に蹴りだし、身体を捻りデカオタの体に渾身の一撃を叩きこんだ。

 

「キュアアアッ!」

 

流石に防御仕切れなかったのか、デカオタは悲鳴を上げながら後方に吹き飛んだ。その巨大さ故に飛距離は出なかったが、体制を崩すには十分だった。

 

「ナイスだ樹!喰らえ、裂空斬!虎牙連斬!」

 

これを好機とみて、リッドは空中で縦方向の回転斬りを繰り出す特技『裂空斬』から、虎牙破斬の派生技で飛び上がりながらの斬り上げから空中での連続斬りに繋げる秘技『虎牙連斬』への連続攻撃をデカオタへと繰り出した。

 

「リッドさん、一度引いて下さい。サンダーブレード!」

 

フィリアの声でリッドがデカオタから一旦距離をとると、デカオタの頭上から稲妻でできた大剣が突き刺さり、更に追い撃ちをかける様に剣を中心に衝撃波が起きた。これはフィリアの唱えた雷属性の中級術『サンダーブレード』によるものだ。

 

「まだです!フォトン!」

 

続いて、エステルの唱えた光属性の魔術『フォトン』による光球がデカオタに炸裂した。

 

「とどめだ!尖牙!崩襲脚・斬!」

「キュアアアアアアッ!!!」

 

最後に、樹が尖牙から崩襲脚・斬への連続攻撃をデカオタに叩き込み、デカオタは断末魔の叫びを上げて絶命した。

 

「ふぃ〜。何とかなったな」

「そうだな。吹き飛ばされた時はどうなるかと思ったぜ」

 

樹が納刀し、額の汗を拭いながら呟くと、同じく剣を納めたリッドが樹に近寄りなが、樹をからかった。

 

「しょうがねぇだろ。まさかあんなタイミングで攻撃が来るとは思わなかったんだよ」

「ま、油断大敵ってやつだな」

「……うるせえ」

 

リッドの指摘が図星だったのか、樹は拗ねた様にそっぽを向いた。

 

「お二人共、その辺にっ、た、樹さん!その足!」

 

フィリアは二人を宥め様とした時、樹の足を見て叫んだ。

 

「足?……あちゃあ」

 

樹が自分の足を見てみると、ズボンの裾から血が滴り落ちていて小さな血溜まりができていた。

 

「多分さっきデカオタ蹴った時だな。血管でも切れたか?」

「流石に血管が切れていたらもっと出血しているはずですから、切れたのは皮膚と筋繊維でしょう」

「ちょっと見せて下さい」

「ん」

 

エステルが傷口が見たいと申し出たので、樹はズボンの裾を捲り傷口をあらわにした。

 

「うわ、こりゃひでえな」

 

リッドの言う通り、樹の足は数箇所に裂傷ができていてそこから血が流れ出ていた。

 

「今直します。……ファーストエイド!」

 

エステルが治癒術の初級術である『ファーストエイド』を唱えると、樹の傷口は見る見る内に塞がっていき、出血も止まった。

 

「一応傷口は塞がった様ですが、念のため消毒して包帯を巻いておきますね」

「ああ。頼む」

 

治癒術の効果で傷口はほとんど塞がっていたが、これ以降魔物との戦いがないとは言い切れない。また此処は森の中。万が一傷口が開いてそこから感染症にでも罹ったら一たまりもない。だから樹はエステルの厚意に甘える事にした。エステルは腰のポーチからガーゼを出すと消毒液を染み込ませて樹の足に塗っていった。

 

「……それにしても、樹の足って意外と細いですよね。普段何食べてるんです?」

 

樹の応急処置をしていて、エステルは樹の足が見た目より細い事が気になった。

 

「何って、皆と同じだよ。朝昼晩三食とおやつ」

「同じ食事でこの細さ。羨ましいです」

「俺、男なんだけど」

「それでも、です。はい終わりました」

「ん。サンキュー」

 

などと雑談している間も、エステルはテキパキと包帯を巻き処置を施した。樹は処置が終わると爪先で地面を軽く叩いてみたり、その場で足踏みしたりして感触を確かめた。

 

「どうです?」

「問題ない。もう一度デカオタを蹴飛ばせそうだ」

「いやそれは無理だろ」

 

珍しく樹がボケ、リッドがツッコミを入れた。

 

「んじゃ急いで行くか。結構時間取られたからな」

 

樹の提案に三人が頷き、一行は星晶採掘跡地へと急いだ。

 

−−星晶採掘跡地−−

 

「これは……」

「酷いです……」

「ああ、想像以上だ」

「……」

 

星晶採掘跡地にたどり着いた四人は、その惨状を見て開いた口が塞がらなかった。特に樹は終始無言で、跡地を睨みつける様に見ていた。

 

「……此処はウリズン帝国が星晶の採掘を終えた後封鎖されている場所です」

「にしても酷い有様だな。見ろよ、あんな植物見たことないぜ。これじゃあまるで−−」

「……別世界」

 

リッドが言おうとした言葉をエステルが引き継いだ。そしてエステルが言う様に、星晶採掘跡地の様相はまるでそこだけ別世界に迷い込んだ様だった。地面も植物も白骨の様に白く変色していた。更に、地面は一面に渡って無数の大きな皹が走り、植物は枯れ果てた上に一部無機物の様な輝きを発していた。

 

「……」

 

樹は地面に片膝をつけると撫でる様に表面を触ってみた。

 

「どうだ?」

「……少なくとも俺の知っている地面の感触ではないな」

 

リッドの質問に樹は簡潔に答えた。樹が感じた地面の感触は彼が知っている土や砂のものではなく、ガラスや貝殻の粉末に近いものだった。

 

「しかもこの砂、手につく感じがしない」

 

樹は砂(?)を一握り取り、直ぐに開いて落とした。樹がリッド達に掌を見せると、彼の掌には何もついていなかった。

 

「ということは……」

「ああ。此処の土は『そういう物』に変質したって事だ」

 

エステルの考えを樹は肯定した。通常、粉末は鉄粉であれ小麦粉であれ、手の汗や皮脂により手にくっつく。だが変質した砂はくっつく所か皺の隙間に引っ掛かる事もなかった。まるで手に残る事を拒絶するかの様に。

 

「取り敢えず、生態変化が起きた事に間違いないな」

「そうですね。いくつかサンプルを採取してリタさん達に分析して貰いましょう」

 

フィリアは近くにあった草を採取しようとした時、

 

「お前達、アドリビドムだな?」

 

後ろから野太い声がかかった。

 

「誰だっ!?」

 

樹はゆっくりと立ち上がると声のした方を見て驚いた。目の前には二人の男。片方は胸当てに緑色の服を着た緑髪に金の額当ての青年。問題はもう一人。白い鎧に身を包んだ鞭髪の男は『ヒト』ではなく『獣人』と呼べた。全身が黒い毛で覆われ紫色の袋で飾られた尻尾を持つ出で立ちはまさに『二足歩行の黒豹』であった。

 

「あんた、確かヘーゼル村の……」

「ユージーン・ガラルドだ。アドリビドムにはヴェイグ達の事を含め世話になっている」

「俺はティトレイ・クロウ。ヴェイグの奴がまたサレとやり合ったんだってな」

 

黒豹の男はユージーンと名乗り緑色の青年はティトレイと名乗った。二人共ヘーゼル村の住人らしくリッドとも面識があるようだった。

 

「む?そちらの君らはガジュマを見るのは初めてか?」

 

樹はユージーンの言葉で我に帰ると辺りを見回してみた。すると樹だけでなく、エステルもユージーンを見て驚いていた。

 

「はい。文献の挿絵等で拝見したことはあるのですが、この眼で実際に見るのは初めてです」

「俺もだ。カイウスからそんな種族がいることは知っていたけど」

 

エステルと樹はユージーンの問いに、ガジュマを初めて見たと素直に答えた。

 

「そうか。そんな事より、アドリビドムが何故此処に?」

「ここにいるエステルの依頼で調査に来たんだ」

 

ユージーンが樹達がいる理由を尋ねるとリッドがそれに答えた。

 

「成る程。それは丁度良かった。実は俺達も生態変化についてアドリビドムに相談しに行こうと村で話し合ってた所なんだ」

「で、どうせならこの辺の土とか草とかを持って行ってついでに調べて貰おうと思って此処に来たってわけだ」

 

ユージーンの後に続く様にティトレイが此処に来た理由を話した。どうやらヘーゼル村でも生態変化は深刻な問題になっているようだ。

 

「分かった。なら手分けしてサンプルを採取して船に戻ろう。それでいいか?」

「元よりそのつもりだ」

「チャッチャと済ましちまおうぜ」

 

樹の提案をユージーンとティトレイは承諾し、幾つかのサンプルを採取した後、ヘーゼル村の二人を加えた一行は船へと戻った。

 




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