TOWRM3 〜ThePlain's Walker〜   作:赤辻康太郎

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第四話です。ようやくディセンダーが登場します。


第四話

第四話

 

 

樹が正式にアドリビドムに入隊してから数ヶ月が経った。

 

「キュウウウッ!」

 

水色のお玉杓子の様な形をした魔物『オタオタ』は樹の一太刀を浴び悲鳴を上げて絶命した。

 

「ふう。終了っと。カノンノ、そっちはって聞くまでもなかったか」

「うん。こっちも大丈夫」

 

樹とカノンノはルバーブ連山にいた。今回はペカン村の人達が移住するということでその護衛の依頼を受けていた。今はその帰路の途中だった。

 

「樹も魔物との戦いに慣れてきたね」

「ん。まあな。コイツの扱いにも慣れたしな」

 

樹の手には一振りの刀が握られていた。刃渡り65はセンチ程。鞘は黒塗りの金属製で柄は白い縄で覆われている。

 

「キュッポ達からのお祝いだね」

「ああ。最初は刀なんて振ったことなかったからな。これもクラトス達のおかげだな」

 

あれから樹は依頼の合間にクラトスやクレス達から特訓を受けていた。樹のトリッキーな戦闘スタイルは道場で基礎から叩き込まれたクレスからしたら未知の相手だったらしく最初は苦戦していたが「勉強になる」と一番多く相手をしていたので、今ではかなり対処できるようになっていた。尤も、樹はクレスから一本も取れてはいなかったが。

 

「やっぱり皆強いな。あのひ弱そうなルカでさえあんな大剣ぶん回すしな」

「そりゃあ皆鍛えているからね」

 

アドリビドムに入って一番樹を驚愕させたのはエミル、カイウスそしてルカの3人だ。エミルは普段大人しすぎるくらいなのに、いざ戦闘となると人が変わった様に荒々しく戦う。樹はマルタに

 

「クラトスと戦っていたアンタもあんな感じだったよ」

 

と言われて少なからずショックを受けた。

 

カイウスはレイモーンの民と呼ばれる種族の一人らしく時々キレると獣化することがあった。樹は本の中でしか人が変身する人間を見たことがなかったので実際に目の当たりにして少し引いていた。今は慣れたのでそんなことはないが。

 

そしてルカ。最初はひ弱そうで本当に戦えるのかと樹は疑問に思っていたが、直ぐに考えを改めることになった。ルカその雰囲気からは想像できないほど豪快に大剣を奮った。最初はそのギャップに樹は中々対処ができなかった。結果は最終的にルカが樹の剣幕に圧されて樹の勝ちになったが、樹は以来人を見かけで判断するのは止めようと心に誓った。

 

「ペカン村の人達無事に移住できてよかったね」

「ああ。けど移住を余儀なくされるほど星晶の枯渇は深刻なんだな」

 

ペカン村ではウリズン帝国による星晶の採取のため、土地が痩せ作物が採れなくなり近くの森からは動物がいなくなり獲物が捕れなくなった。そのため今の土地では生きることすらままならなくなったので移住を決意したのだった。生まれ育った土地を離れるのは辛かっただろうが、生きていくための苦渋の決断だった。

 

「星晶は高純度のマナの固まりだからね。全ての生命はマナの恩恵がないと生きていけないから」

「だから星晶が無くなれば大地は枯れる、か。全く何でドイツモコイツもその皺寄せが何時か自分の身に降り懸かるかもって考えねえんだ?」

「分からない。クラトスさんやウィルさんが言うにはどの国も星晶を使って自国を発展させるのに躍起になっているからだろうって」

「その代償が手前ぇらの首じゃあ世話ねえな」

「……皆で協力し合えれば世界はもっと良くなるはずなのに」

 

樹が苛立たしそうに吐き捨てると、カノンノは寂しそうにポツリと零した。それを見て樹はバツが悪そうに頭を掻くと

 

「悪ィ。何か辛気臭くなっちまったな。早く戻ってアンジュに報告しようぜ」

「うん。そうだね……ね、ちょっと待って、アレ!」

「ん?どし……た?」

 

先に進もうと歩き出した二人だが、突如カノンノが空を指差して叫んだので樹もカノンノが指し示す方を向くと、白く淡い光の球が虚空を走っていた。光の球は二人の頭上を通り過ぎて行った。

 

「何だ、アレ?」

「ねえ行ってみようよ!」

「あ、おい。待てよ、カノンノ!」

 

カノンノが返事も待たずに光球の向かった方角に走りだしたので樹も慌てて追いかけた。

 

光球はルバーブ連山の中でルバーブ峠と呼ばれる峠の上空にフワフワと浮遊していた。まるで二人を待ち構えているかのようだ。二人が光球の下に行くと、光球はユックリと落ちてきた。

 

「……人だ。樹、空から人が降りて来るよ!」

「おいおいマジかよ」

 

ユックリと落ちてきた光球は段々と輪郭が鮮明になっていき、最後には人だと認識できるようになった。樹は降りてきた人を両手で支える様に抱き抱えた。歳の頃はカノンノと同じくくらいか、大海原の様な紺碧の長髪。顔や白銀と翠緑を基調とし緻密な細工が施された騎士鎧から見える手足は白雪を思い浮かばせる程透き通っていた。鎧の右腰には剣が鞘に納められ、左腕には楯が装備されていた。

 

「女の子?」

「みたいだな。これで男だったら俺は泣く」

 

こんな時にでも人の揚げ足を取るのは樹らしいと言うべきか。

 

「大丈夫かな?」

「見た目怪我とかはしてないし呼吸も安定しているから大丈夫だろ」

 

樹は少女を適当な所に寝かせて容態を診た。二人が少女の安否を気にかけていると

 

「……う、う〜ん……」

「あ、気がついた」

「大丈夫か?」

 

少女は少しうめき声をあげながらウッスラと瞼を開けた。二人が声をかけると意識がハッキリしてきたのか二、三度瞬きをすると今度は瞼を完全に開いた。その双眸は朝陽に輝く若葉の様な翠色だった。

 

「驚いたよ。空から降りて来たんだもん。あれは何かの魔術なの?」

「……魔、術……?」

「魔術じゃないのか?」

「……分からない」

 

少女は魔術と言う言葉を聞いたことがないのかキョトンと首を傾げ樹の質問にも首を横に振った。その顔はどこか悲しげだった。

 

「あ、そうだ。名前まだ言ってなかったね。私はカノンノ。カノンノ・グラスバレー。よろしくね!」

「俺は津浦樹だ」

「私はレイン。レイン・リヒト。よろしく」

 

カノンノがその場を取り繕うように自己紹介を始め、手を顎に当て考え事をしていた樹もそれに倣った。少女も戸惑いながらも『レイン・リヒト』と名乗り、二人と握手を交わした。最初は暗かったレインの表情も幾分か明るくなったようだ。

 

「さて、自己紹介もすんだことだしそろそろ帰るとするか」

「そうだね。レインも行こう。この辺りは魔物も出てくるから一人だと危ないし」

「魔物?」

 

樹が帰ろうと提案するとカノンノも賛成しレインにも共に行こうと誘った。だがレインはカノンノが言った『魔物』の単語にまた首を傾げた。

 

「魔物もわからないの?」

「……ごめんなさい」

「あ、ごめん!そんなつもりじゃなかったんだ」

 

カノンノは魔物もしらないと言うレインに驚きの声を上げた。レインはそれに対して怒られた子供の様に俯いて謝った。怒っていたつもりなど毛頭なかったカノンノは慌てて謝った。それを見ていた樹ははぁと溜め息をつくと

 

「で、他に分かる事は?」

「……ごめんなさい。自分の名前以外は何も」

「何で謝るんだ?」

「え?」

 

レインは申し訳なさそうに自分の名前以外分からないと言うと樹からは思っても見なかった返答が来たので驚いて顔を上げた。

 

「お前、多分記憶喪失なんだろ。だったら分からなくて当然だ。だから謝る必要はないよ。ま、悪い事をしたら別だがな」

「……ありがとう」

「どういたしまして」

 

諭す様にレインは謝らなくていいと告げる樹にレインはお礼を言うと樹は柔らかい笑みで返した。

 

「ねぇ。アンジュさんにレインの事相談してみようよ」

「そうだな。なら早く帰るか」

 

今後の方針も決まり下山を始めた樹一行。しかしすぐに魔物、オタオタに行く手を阻まれてしまった。

 

「あちゃ〜。通してくれそうにもないね」

「ならチャッチャと済ませるだけだ」

「待って」

 

樹はオタオタを倒すため刀を抜こうとしたがそれをレインが止めた。

 

「どうした?」

「ここは私にやらせて」

「え?レイン戦えるの?」

「多分」

 

カノンノは迷っていた。いくら本人が戦えると言っていても記憶喪失の人間を戦わせる訳にはいかない。

 

「んじゃお手並み拝見と行くか」

 

だが樹はカノンノの心配を余所にアッサリとレインが戦う事を承諾し刀を納めた。了承をえたレインは短くありがとうと言うと腰から剣を抜いた。銀閃に煌めく刀身は両刃で中央に文字の様なものが彫ってあった。

 

「ちょっ!樹いいの?」

「いいんじゃないか。本人がやるっつってんだから。まあ危なくなったら助太刀するがな」

 

カノンノは樹も止めてくれるだろうと思ってもいたので樹に問い掛けるが樹は事のほか軽く受け答えた。

 

「でも記憶喪失だし」

「記憶喪失だからって、記憶の全部が全部を忘れている訳もないだろ。少なくとも武器を持っているってことはどんな形であれ戦闘経験はあるってことだ。ならその記憶を身体が覚えている可能性がある」

「昔取った杵柄ってこと?でも危険すぎない」

「だからフォローはするって言ってるだろ。それに戦いを通じて何か思い出すかもしれないし」

「でも……」

「それにもう遅いみたいだし」

「え!?」

 

樹は自分がレインを戦わせる理由を述べたがそれでもカノンノは心配だった。端から見ればカノンノの方が正しく、樹の考えは楽観的過ぎている。カノンノはまだなにか言おうとしたが樹の声に促されレインの方を見るとすでに戦闘体勢に入っていた。

 

「やあああっ!」

 

気合い一閃とばかりにレインはオタオタに斬り掛かった。が、オタオタは身体を丸めてそれをガードした。

 

「くっ!」

 

レインは攻撃をガードされるとバックステップで一度距離をとり詠唱体勢に入った。オタオタはそれを見ると回転しながらレインに体当たりを仕掛けてきた。

 

「ファイアーボールッ!」

 

オタオタの体当たりが当たる直前にレインの術が完成しオタオタに3つの火の玉が浴びせられた。

 

「キュウウッ!」

 

ファイアーボールを受けたオタオタは怯んで動きを止めた。

 

「魔神剣っ!」

 

レインはその隙を逃さず空かさずに次の攻撃に移った。怯んでいたオタオタは魔神剣をまともに受けて更に動けなくなった。この攻撃でレインの戦闘スタイルが『魔法剣士』だと分かった。

 

「はあああっ!」

 

−−ザンッ−−

 

最後に、レインがオタオタを頭から一刀両断しオタオタは絶命した。

 

「終わったよ」

「すごい!すごいよ、レイン!」

「上出来だな」

「ん」

 

固唾を飲んで見守っていたカノンノはレインの戦闘が終わると両手を上げて勝利を讃えた。樹も満足げだがどこかホッとしたように頷き、レインの頭を撫でた。どうやら心配していたのは彼も同じようだ。レインは頭を撫でられて気持ち良さそうに笑った。

 

「ありがとう。樹、カノンノ」

「何が?」

「え?えっと、その……」

「もうっ!意地悪しないの!」

 

レインの謝礼の言葉に樹は惚けたように聞き返すがレインはそれを真に受けて返答に困ってしまった。慌てるレインを見てカノンノは樹を叱った。

 

「へいへい。分かってるよ。ま、送り出したのは俺だからな。信じて当たり前だろ」

「とか言って何度も刀を抜こうとしたクセに」

「ばっ、言うなよ、カノンノ!」

「フフ。それも含めてありがとう。二人とも」

 

レインが改めて二人にお礼を言うとカノンノはどういたしましてと笑い、樹はおうとぶっきらぼうに返した。

 

その後も何度か戦闘を繰り返したが、三人の連携により難無く進んで行き、船との集合場所まで無事に到着した。

 

「あれ?まだ来てないみたい」

「ならここで暫く待つか」

 

船はまだ来ていない様なので樹達は各々適当に座り雑談をしていた。主に話題はアドリビドムについてだった。

 

「−−それじゃあ樹は地球っていう異世界から来たの?」

「ああ。といってもレイン見たいに光に包まれてじゃなくて海に落ちたんだけどな」

「あの時は本当にビックリしたよ」

「……怖くなかったの?」

「ん?」

「いきなり知らない場所に来て怖くなかったの」

「そりゃ怖くて不安だったさ。今でも、な」

 

樹が初めて来た時の事を笑いながら話す二人を見て、レインは樹に怖くなかったのかと聞くと樹はアッサリと今でも怖いと言った。

 

「だって文字通り右も左も分からない世界に放り出された訳だから不安だし怖いに決まってるよ。でもな……」

「でも?」

「一人じゃないからな」

「一人じゃ、ない?」

「ああ。一人だったら不安や恐怖に押し潰されてたかも知れない。けどカノンノが、仲間達がいる。そう思うと怖くても頑張れるんだ」

 

樹は「な」とカノンノに微笑むとカノンノは抱えた膝に顔を埋めて「うん」と頷いた。カノンノの行動に樹はキョトンと首を傾げた。当然、彼女の頬がほんのりと赤くなっているのにも気づいていない。

 

「……私も……」

「あ、船が来たみたい」

「……」

 

レインが何か言おうとした時、アドリビドムの拠点であるバンエルティア号が集合場所に接近してきた。

 

「……どうかしたか?」

「何でもない。早く乗ろう」

「……ああ」

 

樹はレインの様子に、何があったか問うたがレインは何でもないとそっけなく答えカノンノ共に乗船していった。樹は腑に落ちなかったが二人について乗船した。

 

「二人ともお帰りなさい。あら?そちらの方は?」

「ただいまアンジュ。実は−−」

 

カノンノはアンジュに依頼完了とレインに出会った事の顛末を報告した。

 

「記憶喪失ねえ」

「何とかならないかな?」

「そうねえ」

「あの、お願いがあります」

 

アンジュはレインの今後について悩んでいるようだった。そんなアンジュを見て、レインは意を決したように一歩前にでた。

 

「何かしら?」

「私もここで働かせて下さい。お願いします!」

 

レインはアドリビドムで働きたいとアンジュに頭を下げてお願いした。これにはアンジュやカノンノ、樹までもが驚いた。

 

「それは、私たちとしては大歓迎だけど……」

「本当にいいの?」

「うん」

 

アンジュとカノンノは心配そうにレインに問い掛けるがレインは大きく頷いた。

 

「……分かったわ。貴女をアドリビドムの一員として歓迎します」

「ありがとうございます!」

 

アンジュの了承を得てレインはアドリビドムの一員となった。

 

「よかったな……と言いたいとこだが、どうせ試験やるんだろ?」

「そうね。話を聞く限り戦闘は問題ないようだけど一応ね」

「試験?」

「ギルドでの仕事の基本的な部分を覚える事だよ。」

「樹もやったの?」

「もちろん。まあ簡単だから大丈夫だろ。頑張れよ」

「ん。頑張る」

 

レインは鼻からフンスと息をだして気合い十分なようだ。

 

「フフフ。でもまぁ今日はもういいから詳しく説明は明日からね」

「分かった」

 

−−数日後−−

 

樹、カノンノそしてレインの三人は再びルバープ連山を歩いていた。今日はレインのアドリビドム入隊試験の最終課題のためだ。そして三人の前にはガルーダがいた。

 

「じゃあもう一度説明するね。あのガルーダを倒せば今回の試験は終了だよ。サポートとして樹がつくから」

「あくまでサポートだからな。うまく指示をだしてくれよ」

「分かった」

 

カノンノの説明に頷くとレインは剣を抜き、樹も刀を構えた。

 

「それでは、始め!」

 

カノンノの合図と同時にレインは駆け出し樹もそれに続いた。

 

「まずは私が攻撃するから」

「了解」

 

最初はレインがガルーダに斬り掛かった。

 

「虎牙破斬っ!」

「ギャアアッ!」

「くっ?」

 

レインは飛び上がりながらの斬り上げと斬り払いの連続攻撃を繰り出すが、ガルーダは上昇してかわし、逆に急降下しながら攻撃を仕掛けてきた。レインは何とか攻撃をガードし、鍔迫り合いの様な状態になった。

 

「樹っ!」

「あいよ。尖牙っ!」

 

樹はレインの合図で飛び上がりながらの突き上げをガルーダに放った。

 

「ギャアアアッ!」

 

レインと鍔迫り合いをしていたガルーダは樹の攻撃をまともに受けて奇声を上げたが致命傷にはなっておらず再び上昇して二人から距離をとった。

 

「ちっ。やっぱ飛ばれると厄介だな」

「……」

 

ガルーダの対応に樹はぼやくがレインは黙ってガルーダを睨みつけていた。

 

「ねぇ樹」

「ん?」

「さっきの技もう一度できる?」

「……直ぐにやっても?」

「うん!」

 

レインが大きく頷くと樹はガルーダの下に素早く駆けて行った。ガルーダはそれを攻撃と判断し迎撃に掛かった。

 

「さあてガルーダよ。力比べといこうか……尖牙っ!」

「ギャアアッ!」

 

−−ガキッ−−

 

樹はありったけの力を篭め尖牙を放ち、ガルーダは嘴でそれを受け止めた。

 

「……悪いな、ガルーダ。俺達の勝ちだ!」

 

−−ダンッ−−

 

樹が言った瞬間ガルーダの上に影ができた。レインが樹とガルーダが衝突した瞬間にレインが樹の肩を踏み台にしてガルーダよりも高く跳んだからだ。

 

「やあああっ!」

 

レインは剣を下に向けガルーダの背に突き刺した。

 

−−ドシンッ−−

 

大きな音と土煙を立てガルーダはその背にレインを乗せたまま落下した。

 

「レイン!樹!」

 

カノンノは慌ててガルーダが落下した所に駆け出した。

 

「二人とも大丈夫?」

「お〜」

「大丈夫」

「ホッ……よかった」

 

カノンノが心配そうに声をかけると、場違いな程間延びした樹の声としっかりとしたレインの声が聞こえたのでカノンノはホッと胸を撫で下ろした。

 

「ガルーダは?」

「ん。このとおり」

 

樹が指差す方をみると、そこには絶命したガルーダの姿があった。

 

「はい。見届けました。最終試験、合格です!」

「っ!ありがとう、カノンノ!」

「ううん。レインの実力だよ」

 

レインはうれしさの余りカノンノに抱き着きカノンノもレインをしっかりと抱きしめた。

 

「おめでとう。レイン」

「ん。ありがとう」

 

樹もレインの頭を撫でながらレインを労った。

 

「……それと」

「ん?」

「信頼してくれて、ありがとう」

 

レインは頬を桃色に染めながら樹がレインの指示に直ぐに対応してくれたことに感謝した。

 

「ああそれか。仲間なんだから当たり前だろ?」

「仲間?」

「そ」

 

樹はレインを撫でていた手を下ろし、レインの前に差し出した。

 

「これからよろしくな。レイン」

「……うんっ!」

 

レインは差し出された手をしっかりと握り返した。頬を更に赤く染めながら。樹は気づいてはいかなったが。

 

「……じゃあ試験も終わったし早く帰ろ」

「ん?カノンノ、急にどうした?」

「別に。ほら、早く行こ」

「?」

 

カノンノは不機嫌そうに言うと足早に歩いて行った。彼女が不機嫌になった理由も樹には分からなかった。

 




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