TOWRM3 〜ThePlain's Walker〜   作:赤辻康太郎

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第二話です。アドリビドム初期メンバーの一部が登場します。


第二話

第二話

 

 

樹はカノンノの案内でバンエルティア号の中を散策することにした。これはアンジュが

 

「正式なメンバーじゃないけどアドリビドムの一員になったんだから他のメンバーに挨拶して来てね」

 

と言ったのと樹自身が船内の設備を理解するためだ。ロックスは夕飯の支度があるからと先に出ていた。

二人が医務室の通路からホールにでた所で茶髪にピンク色の服にクリーム色のズボン、(樹曰くアラビアの踊り子っぽい衣装)を着た少女が入口から入って来た所だった。

 

「あ、アニー。おかえりなさい」

「ただいま戻りました。あら、そちらの方は?」

「今日からアドリビドムのメンバーになった樹だよ」「津浦樹だ。まだ正式に入隊したわけじゃないが、よろしく頼む」

「アニー・バースです。医務室を任されています。こちらこそよろしくお願いします」

 

樹とアニーは握手を交わした。依頼完了の報告と取って来た野草を整理するためにアニーは二人と別れ医務室に行き、二人は再び挨拶巡りに戻った。

二人は次に医務室とは反対側の通路にある部屋に入った。そこには赤いバンダナをした黒い全身タイツに鎧を身につけた金髪で男性の剣士と、金色の長髪にアンジュのと型が違う修道服を着た女性が居た。

 

「やあ僕はクレス・アルベイン。君が新しい仲間だね。ロックスから聞いているよ。これからよろしく」

「ミント・アドネードです。よろしくお願いします」「津浦樹。こちらこそよろしく」

 

各々挨拶と握手を交わした。

 

「私とアンジュさんは元々教会で共に修行した仲間でした。アドリビドムを発足させる折りに力を貸して欲しいといわれてこちらに来ました」

「僕とミントは故郷が同じなんだ。それで故郷にギルドを作りたくてミントについてきたんだ。今はその勉強中だよ」

「成る程。高い授業料になりそうだな」

「ふふふ。そうかもしれませんね」

 

樹とカノンノはクレスとミントと別れ次の部屋に向かった。クレス達の居た部屋の通路の突き当たりの扉を開くとそこはどうやら食堂の様でロックスと少しウェーブのかかった金髪に赤紫色の服を着た女性が夕餉の支度をしていた。

 

「あ、樹様。いらっしゃいませ」

「あら、貴方が新しく入った人?」

「ああ。津浦樹だ。よろしく」

「初めまして。私はクレア・ベネット。こちらこそよろしくね」

 

樹とクレアは握手を交わした。

 

「今日は樹様が来られたので腕に縒りをかけてご夕食を用意しますね」

「そんなに気をかけなくていいのに」

「でもせっかくアドリビドムに入ってもらったんだから。歓迎会も兼ねて、ね?」

 

樹がロックスの対応に戸惑っているとクレアがお茶目にウィンクして微笑んだ。

 

「……まぁアリガトな。じゃ俺は他のメンバーに挨拶しに行くから。行くぞ、カノンノ」

「あ、待ってよ!ロックス、クレアまた後でね」

「はい」

「ええ」

 

樹はぶっきらぼうに返すとそそくさと食堂を後にし、カノンノも慌ててついて行った。

次に二人が訪れたのは医務室側の廊下の入り口に面する部屋で研究室として使われていた。そこには黒髪短髪で眼鏡をかけオレンジ色の服を着た筋骨隆々の男性が書物に眼を通していた。

 

「ん?お前が例の新人か?俺はウィル・レイナード。よろしく頼む」

「津浦樹だ。よろしく」

 

樹とウィルは握手を交わした。

 

「俺は故郷でもギルドをしていたんだ。本職は生物学者だ」

「生物学者?」

 

樹はウィルの本職に疑問を抱いた様だ。

 

「どうかしたのか?」

「いや、そうは見えんなと」

 

樹の余りにもハッキリとした物言いにウィルもカノンノも唖然とした。

 

「……ハッキリとものを言うんだな」

「まあそれが取り柄と言えば取り柄だし」

「まぁいい。俺はサンプルを自分で採取しに行くからな。自然とこうなったんだ」

 

ウィルが筋肉質である理由に樹は納得がいったのか頷いた。

 

「成る程。ギルドに入ったのも人助けとサンプル採取のためか」

「その通りだ」

 

その後少し雑談(主に筋トレの話)した後、樹達はウィルと別れ次の部屋に向かった。

 

「あ、二人とも丁度よかった」

「アンジュにクラトスさん?」

 

樹とカノンノが研究室から出たらホールにある受付にアンジュが立っていた。彼女の隣にはクラトスと呼ばれた、鳶色の髪と眼に薄紫色の服と同色の燕尾の様な外套、腰に剣を携えた30代くらいの男性が立っていた。

 

「何か用ですか?」

「と言っても用があるのは樹の方だけどね」

「俺?」

 

樹は首を傾げた。まだ正式に入隊していない樹にこんなにも早く依頼が来るとは思えなかった。

 

「ええ。貴方には彼と模擬戦をしてほしいの」

 

と言ってアンジュは隣に立つクラトスを示した。

 

「私の名はクラトス・アウリオン。傭兵だ。今はアンジュの依頼でアドリビドムに身を寄せている」

「津浦樹。しがない学生だ。此処へ来たいきさつは、ってアンジュから聞いているか」

「ああ。俄かには信じられる話ではないな。だが私が依頼を終えて戻っている時、世界樹が微かだが光ったのが見えた。」

「クラトスさんも?」

 

クラトスが世界樹が光ったのを見たと言うとカノンノが自分も見たと言った。

 

「カノンノもか?」

「うん。甲板でスケッチしてたら。その後直ぐに彼が落ちてきたの」

「どうやら世界樹が光ったのと樹が来たのは何か関係があるみたいね」

 

アンジュは世界樹の輝きと樹の襲来に関連があると言ったが、その理由は結局分からなかった。

 

「で、俺に何の用があるんだ?」

「お前の実力を試したい」

 

樹の質問にクラトスは簡潔に答えた。

 

「俺の実力?」

「うむ。お前は魔物相手に戦った事はないのだろう?」

「まあ確かに。人間相手に喧嘩したくらいかな。戦闘経験は」

 

クラトスの問いに樹は顎に手を当て少し思案するように答えた。現代の地球で魔物が出ることは先ずないし、高校生で喧嘩や格闘技以外で戦闘経験と言えば紛争地で傭兵をやるしかないだろう。

 

「それで構わん。その喧嘩がどれ程出来るか見たいのだ」

「見てどうすんだ」

「無論。今後お前を鍛えるための参考にする」

 

クラトスの答えを聞いて樹はふむ、と言うとまた少し考え込んだ。が直ぐに顔を上げると

 

「OK。寧ろ『今の』俺がどのくらい通用するか知りたいしな」

「分かった。今から甲板でやりたいのだが?」

「あ、ちょっと待ってくれ」

「武器なら心配はいらない。私が持っていく」

「武器じゃなくてグローブが欲しいんだ」

「それならショップに行くといい。ショップには武具や道具を売っている」

「私が案内するね」

「じゃ私とクラトスさんは甲板でまってるから」

 

アンジュとクラトスは一足先に甲板へ、樹とカノンノはショップのある部屋へ行った。

 

「あ、カノンノ!いらっしゃいだキュー!」

「初めてのお客さんもいるんだキュー!」

「見かけない顔なんだな、しかし」

 

扉を開けると赤い頭巾を被って背中に胴着の様な物を背負ったラッコの様な生き物と、青い帽子に詩人の様な格好をした、これまたラッコの様な生き物と、耳が大きく赤いオーバーオールを履いた猿の様な生き物の3人(匹?)が二人を出迎えた。

 

「おわっ!?何だ、コイツら?」

「この子たちの事?この子たちはショップを切り盛りしてるの」

「初めてましてだキュ!武器屋担当のピッポだキュ!ここでは、アドリビドムの皆が使う武器を取り扱っているんだキュ!」

「防具担当のキュッポだキュ。キュッポは防具を取り扱っているんだキュ!よろしくキュー!」

「新入りなんだな、しかし。コーダは道具を売っているんだな、しかし。お前何か買っていくといいんだな、しかし」

「お、おう。俺は津浦樹。よろしく」

 

樹は恐る恐るだが3人(匹?)と握手をした。

 

「ところでどんな用なんだだキュ?」

「グローブが欲しいんだ」

「グローブ?武器のナックルかキュ?それとも防具かキュ?」

「どっちかと言えば防具かな?」

「ならキュッポの出番だキュ!どんなのが欲しいキュ?」

「オープンフィンガータイプのが欲しいんだ」

「ちょっと待ってるキュ!今在庫を見てみるキュ!」

キュッポは防具屋の敷居内の床の蓋を開けると開いた空間に入った。どうやら床下に倉庫があるようだ。しばらくするとキュッポはいくつかの包みを持って出てきた。

 

「今あるのはこれくらいだキュ!」

「思ったよりあるな。……んじゃこれにしよう」

 

樹は包みの中から、黒い革製で手の甲と掌、指に鉄板がついたタイプのものを選んだ。

 

「毎度ありだキュ!」

「あ!でも正式なメンバーじゃねえし。なにより金がねえ」

「お代は別にいいっキュ!入隊の前祝いだキュ!」

「なら正式に入隊したらピッポから武器をプレゼントするキュ!」

「マジか!なら俄然試験頑張らねえとな」

「ふふ。そうだね」

 

樹はピッポたちにお礼を言うと試験前の模擬戦に挑むため甲板に赴いた。

 

樹が甲板に出ると、甲板の中央でクラトスが眼を閉じて静かに待ち構えていた。その手には二振りの木刀を携えていた。その傍らにはクレス。どうやら審判を受け持ったようだ。甲板にはクラトスとクレス以外に見学だろうかアンジュやウィルたちの姿もあった。その他にも、初めてみる顔ぶれもある。どうやらまだ挨拶していないメンバーも見学に来たようだ。

クラトスは樹の気配に気付いてたのか樹が甲板の中央に来ると同時に眼を開けた。

 

「それがお前の探していたグローブか?」

「ああ。喧嘩する時はいつも付けてたんだ。こっちに来た時は外していたからな。代わりがあってよかったよ」

 

樹は感触を確かめる様に二、三度手を握った。

 

「そうか。武器はこれ(木刀)でいいか?」

「おう」

 

樹ははクラトスが放った木刀を受け取ると軽く降ったり腰のホルダーに抜き差ししたりすると右手一本で構えた。右肩を前にして体を横に向けるような型だ。開いた左腕は体の横で軽く開く様な感じにしている。

 

「ではこれより、クラトスさん対樹の模擬戦を開始します!ルールは時間無制限。どちらかが降参するか先頭不能と見なされた時点で決着とします!二人とも準備はいい?」

 

「ああ」

「OK」

 

クラトスも木刀を構え、樹は腰を落として返事をした。

 

「それでは……はじめ!」

 




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