この素晴らしいキャンセルに祝福を!   作:三十面相

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今回も駄文ですが、温かい目で見ていただけると、幸いです。


魔剣持ちのチート、その名をミツルギ

 さてと、そろそろクエストを受けないと、冒険者ってのは、その日暮らしが当たり前だ。そりゃチート持ちならば、もう少し良い暮らしをしているだろう、たまにそうじゃないヤツも居るが……ち、ちなみに俺は宿屋でそこそこな暮らしをしてるからな! べ、別に俺は良い暮らししてるからな!? ふ、普通のチート持ちだ! 決して、カズマみたいなダメチートではない! という事で、今日は久々に男二人だけで、クエストを受けていた。

 

 他の連中には何やら、やる事があったらしい、ちなみにアクアは面倒だからと断っていた。ふざけんなと言ってやりたい所だな。

 

「……男二人ってのは寂しいな」

「いや、むしろ面倒が少なくてラッキーなんだが……」

 

 うむ、それは言えてる。ちなみに今回のクエストはスライムを五体狩るという楽なクエストだ。いや、楽かどうかは別だが、そういえば、俺のチートって今まで、役立たせる見せ方してなかった、初めて見せたのは、落書きを消したぐらいだし、なんつー使い方だ、と俺ですら思ってしまうな。

 

「お、なんか居るぞ!」

「そうみたいだな、さ、行くぜ! リュウト!」

「おうっ!」 

 

 俺はショートソード片手にスライムどもをなぎ倒そう――とはせず、まず、大声で叫んだ。

 

「――フルキャンセル!」

 

 ビタッ! と一匹が止まり、液体生物という事をキャンセルする。俺はソイツを斬り、さらにもう一度、フルキャンセルを使う。計六回使い、全員の行動を不能にした、ちなみにこれでやっと二人で討伐できる。これは一回1匹しかできない、ようは範囲でできないという事で、いちいち使わなければならないのだ、これが面倒な所ではなるが、それでもソイツの何かをキャンセルできるし、逆に俺に掛かった何かをキャンセルする事だってできるし、仲間の誰かが何かされてもキャンセルできる。やはり応用はだいぶきくようだ。そうして、六匹のスライムを二人で倒した。

 

「さすが、チートだな。やっぱり勢い任せにアイツにするんじゃなかった」

「そう言ってやるなよ、俺は案外感謝してるんだぜ? お前がアクアを呼んでくれた事を」

「え? どうしてだよ?」

「ボコボコにするチャンスが増えたからに決まってんだろうがァァ……ま、最近はもう気にしてねぇんだけどな。時間の経過と共に、怒りなんて去っちまうモンなんだな、これが、まあ、これから俺の怒りが増えていかない保障はねぇんだけどさぁ……」

 

 そう、アイツは結構面倒ごとを増やしてくるクソ女神だ。これには変わりは無い。と言う事は、逆にこれから面倒ごとは増え続けるって事だ。まったく、勘弁してほしいもんだぜ、なんであの女神は本当にどうしようもねぇんだろうな……。

 

 そんな文句を募らせても、結果は変わらない訳で、とりあえずギルドへと戻り、今回の報酬を山分けする事にした。

 

 クエスト自体は簡単で、それに結構高額だった為、二人は仲良く、クリムゾンビアを飲んでいた。なんつーか、男友達みたいで、良いなこういうの、元の世界でも、男友達とこうして、遊んだなぁ……っと感傷的になるなんて、俺らしくないな……。

 

「もう一杯頼むか」

「おう、じゃんじゃん飲もうぜー」

 

 結構酔いが回ってるな……俺は強いのか、知らんが、全然酔った事ないんだよな……まぁ、あんまり飲まないようにしてるしな、当たり前か……。

 

 そうやって、楽しい時間を過ごした二人だった。

 

 

 

―――――

 

 

 

「カズマさーん!!! リュウトさーん!!」

 

 そう言いながら、縋りつく女神。め、がみ……? まあとりあえず、なんだ急に……。

 

「借金が返済できないの!! クエストをしましょう!!」

 

 め……がみ……? アクアがそんな事を言ってきた。何なんだ。一体、コイツは本当に、アレなやつだ!! そんなこんなで、今日は仕方なく、アクアがクエストを選んでくる。

 

「おい、カズマ!! 危険だ! 危険信号が発信してる!! アイツ一人で選んじゃ危険だ!」

「おう! わかってる!!!」

 

 カズマがすかさず、反応を示して、なんとか、アクアがしようとしている、超高難易度クエストを取り上げる。

 

「何しようとしてんだ!! お前は!!?」

「だって、早く借金返済したいんだもん!!!!」

「だもんじゃねぇ!!! なんだ今のクエスト! 難易度が洒落になってならなかったぞ!! グリフォン討伐とかふざけんな!!!」

「大丈夫よ!! こっちにはチート持ちのリュウトだって居るのよ!?」

「ふざけんな! 一人しかチート持ちが居ないんだぞ! アイツ一人で、なんとかできると思ってるのか!!?」

「できるわ!! 間違いないわ!!」

「ふざけんなぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 そうして結局、別のクエストを受けることにしたアクア。ちなみに受けたクエストはタルラン湖を浄化する事だ。どうやらそこの湖は濁り、淀んでいるようで、そこを浄化してもらわないと、ブルータルアリゲーターが出てくるらしい。

 

「ね、ねぇ、リュウト、カズマ……浄化するのは言いんだけどね……その守って欲しいんだけど……浄化したら、ブルータルアリゲーターだって逃げるんだし、その間だけ……」

「ちなみに、湖の浄化ってどれぐらい掛かるんだ?」

「うーん? 半日ぐらい?」

「「できるか!!!」」

 

 さすがに誰かを守りながらの戦闘なんて俺ができる訳ねぇだろうがぁ!!!! チートはそこまで万能じゃねぇから!! い、いや……できるか? いや、できないだろう……そもそも水辺の戦いなんてした事ないし……。

 

 そんな風に考え込んでいたら、カズマが名案を思いついたように、ポンッと拳で手のひらを叩いた。

 

「古いな」

「うるさい」

 

 

 

 

―――――

 

 

 

 

 今、アクアはオリの中に閉じ込められている。いや、正確にはオリで守っていると言った方が良いか。ちなみにカズマの作戦はこうなのだ、まず、アクアをオリに入れて、ブルータルアリゲーターからの攻撃を守る為だ、アクアは嫌がっていたが、これ以上の作戦は見当たらないし、そもそもアクアの知能じゃ絶対に無理だろうし、だから渋々ながら、従っていた。ちなみにこのオリは結構重たかったので馬車で運んで貰ったのだ。そしてこのオリはギルドから貸して貰った、そうしながら、進んでいくと、そろそろタルラン湖が見えてきたので、俺達はアクアを入れたオリを湖に沈める。

 

「あの、これ……紅茶のティーバッグの気分なんですけど……」

 

 そんなふうにぶつくさ文句を言っている水の女神アクア。ちなみにこれは鎖で繋がれており、それを大きな石にくくり付けている。なんつか、結構凄い事考えるよな、カズマも……。

 

 そんな風に考え、ひとまず、俺は木陰で休憩を取る事にした。これは大分時間が掛かるみたいだし、正直に言えば、ここに居る事自体がもう面倒臭い、帰りたい。

 

 それからしばらく時間が経ち、俺達全員が木陰に居た。

 

「それにしても、全然出てきませんね。ブルータルアリゲーター」

 

そんな言葉を発しためぐみん。バカやろ、それはフラグっちゅーやつでな!! と思った瞬間だった。

 

「ぎゃあああああああああ!!!!」

 

 そんな時、叫び声が聞こえた。声の主は当然――。

 

「ぎゃあああああ!! 来た! なんか来た!!! ぎゃあああああああああ!!! 『ピュリフィケーション』! 『ピュリフィケーション』!! 『ピュリフィケーション』!!!」

 

 うるっせぇ女神なんですけど……。もっと可愛らしく悲鳴をあげられないものかね。いや、もし実在してたら、俺は本当に叫びたくなるような状況なのか、と問い詰めたくなるがな……。アクアはめっちゃ、怖がっていた。ブルータルアリゲーターってワニみてぇなヤツだな。まぁ名前からして、そうだろうとは思ったが、それにしたって、群れで移動するワニなんて厄介な事この上ねぇな……あれ結構居るよなぁ……5匹近く居るんですが……さ、さすがにあれは可哀想だな……というか悲惨だ……。この世界は女神にまで厳しいんだな。

 

「いいな。あのオリの中……」

「行くんじゃねえぞ……」

 

 俺が半ば呆れながら言う。

 

「おーい! アクアぁ! トイレに行きたくなったら言えよ!」

「ア、アークプリーストはトイレになんか行かないわよ!!」

「ちなみに、紅魔族もトイレには行きませんよ」

 

 なんだ、その一昔前のアイドルみたいなのは、だったらお前らが毎日バクバク食ってるモノはどうやって排出されてんだって話になるだろうが、いや、あんまり深く考えるのはよそう。

 

「ク、クルセイダーも、ト、トイレには……うぅ」

 

「良いんだよ、ダクネス。本当かどうか確かめる為に、コイツらには一日じゃ終わらねぇクエストを受けさせてもらう」

「いいな!! それ!!」

 

 カズマが一番反応した。おいおい……。

 

「や、やめてください! こ、紅魔族はトイレには行きませんが、謝るのでやめてください……」

 

 なんだろう、ホンワカしてるなぁ、うちのパーティ。あっちでは必死に頑張ってる女神様も居るのに……。と俺は他人事のようにしていたのだった。

 

 それからしばらく経ち、どうやら浄化は済んだようだ、湖の方も澄んでいる、この水なら飲めそうだな。飲まねぇけど。

 

「……さてと、帰りますか、おいアクア、もうオリから出てもいいぞ」

「いや、外の世界は怖いもの……このまま連れてって……」

 

 どうやら女神様に強烈なトラウマを植えつけたようだった。なんつか、本当に可哀想になったんだけど……。そこで俺はこう提案したのだ。

 

「なぁ、今回の報酬はアクア一人にあげても良いんじゃねぇか? 三十万エリス全部さ」

「あぁ、さすがにな」

「私も問題ないと思うぞ」

「私もです」

 

 

 

―――――

 

 

 

 

 

 そんなこんなでアクセルの街まで来たのだが、まだオリから出ようとしないアクア。なんていうか、そろそろ周囲の目線が気になるので、出てくれませんかね……。

 

 そんな風に馬車でゆっくり引かれていると、向こうから突然、声が聞こえてきた。

 

「女神様!!? 女神様ではありませんか!!!!」

「あぁ?」

 

 俺がそっちに顔を向けると、そこにはゴツイ鎧とゴツイ剣を身にまとった、顔が整った男が居た。なんつーか、コイツを女神様って言ってる事はコイツもチート持ち、つまり俺達と一緒って訳か。いやカズマはどうだろうか……。

 

「どうして、女神様がここへ? というかどうしてオリの中に!?」

 

 と突然、こちらに走り出し、オリを曲げた。うお!? すげぇ、コイツ、俺より筋力あるんじゃねぇの!!? すっげぇ!! なんて事を思ってると、アクアが女神という言葉に反応したんか。

 

「そ、そうよ!! 私は女神! 女神なのよ!!!」

 

 と元気を取り戻した。圧倒的、慰め甲斐のなさ! というかコイツ、さては忘れてやがったな!? 自分が女神である事!! コイツの頭は本当に大丈夫なのだろうか……最近、本気で心配になってきたんだけど……。

 

「で、あんた誰?」

 

「え!? あ、いや……御剣ですよ! 御剣響夜!! あなたにこの魔剣グラムを頂いた!」

「…………?」

 

 小首を傾げている、というか気付いてやれよ、ちょっと不憫になったぞ、この男を。

 

「あぁ、居たわね、そういえば! いやぁ、いろんな人を送ってたんだから、わからなかったのも無理ないわよね? ハハハ!」

 

 そんな感じで良い感じに誤魔化すアクア。それに若干顔を歪ませたミツルギ。うん、やっぱり不憫な野郎だな。

 

「えっと、久々です、アクア様。あなたに選ばれた勇者として、順調に頑張っていますよ。クラスはソードマスター。レベルは37まで上がりました。……ところで、アクア様はなぜここに? というか、なぜオリの中に……?」

 

 そんな事を言いながら、カズマと俺の方をチラチラ見てくる。まぁ、状況から考えて、俺達がやったと見てるのだろう。酷いが仕方ないな、そうも見える。というか俺が同じ状況でもコイツ何考えてんだって思うし。だが、いけ好かないな。というかこの女神、そんな適当な事言って、送り出したのか。コイツもコイツでそれを鵜呑みにしてるようだし、まあいいや。

 

 そんなこんなで、アクアが今までの事をこのミツルギってやつに説明する。

 

「な、なんですって!!? し、信じられない!! あなたは一体何を考えているんですか!!? 女神様をこの世界に引きずり込み、今回のクエストでオリに閉じ込めて湖に浸けたぁぁぁ!!!?」

 

 と言いながら、カズマの胸ぐらを掴んでいた、コイツ、ちょっとやりすぎだな。

 

「ちょちょ、ちょっと!!? いや別に私としては結構楽しい毎日送ってるし、一緒に連れてこられたばかりの頃は気にもしてたけどもね!!? ていうか今日のクエスト報酬なんて、30万よ30万! それを全部くれるって言ってくれてるし!!」

 

 とアクアが珍しく、カズマを庇っている。なんというか、案外好かれてるもんなんだな、カズマは。

 

 だが、それをミツルギは憐憫の眼差しで見る。それに少しばかり嫌なモノを感じる俺。なんだ、コイツはさっきから。

 

「……アクア様、どう丸め込まれたのかは知りませんが、今のあなたは不当ですよ。そんな目に遭って、たったの30万……? ちなみに今はどこで寝泊りしてるのですか?」

 

 となんというか、今にもキレそうな感じだ。というかコイツ、まともにカズマの意見を聞こうとしねぇな。ふてぇ野郎だ。こっちの意見を取り入れて、しっかりと考えて、それでもカズマが悪いと思うのなら、良いんだけど、こいつ、一方の意見しか聞いてねぇじゃねぇか。バカか。もっとしっかりしろよ勇者様?

 

 そうして、アクアがおずおずとミツルギの言葉に返答する。

 

「えっと……一緒に馬小屋……だけど」

「馬小屋ッッ!!!!?」

 

 それを聞いた瞬間、さらに強く胸ぐらを掴む。ちょ、おい!! 

 

「おい、いい加減にしないか、先程から失礼ではないか、カズマとは初対面のようだし」

 

 お、クルセイダーっぽい事をしてる。珍しい、っとここは俺も便乗してっと。

 

「あぁ、お前さっきから、アクアの意見しか聞いてねぇだろうが、カズマも意見も聞けよ」

 

 ミツルギが手をパッと放す。なんだ、言えば聞くのか。

 

「……クルセイダーにアークウィザード? それに随分と綺麗な人達だ。フンッ、パーティメンバーには恵まれてるようだね。だったら尚の事、こんなメンバーに恵まれて、馬小屋なんかに寝泊りなんて、恥ずかしくないのかい? それに君は初期クラスの冒険者のようだし」

 は? 何言ってんだ? 馬小屋で寝泊りなんて結構普通だって聞いたぞ? コイツ、何言ってんだ? いや、俺は宿屋で寝泊りしてるが、俺だってチート持ちだからな、まぁ、あんまりクエストなんて受けて無いから、結構宿屋暮らしも厳しくなってきたけど。まあ、そこは一人でクエスト受けた時の報酬でなんとかしてる。だから逆にチート持ちのお前がそう偉そうに語るなよ……。アイツ凄ぇ、頑張ってると思うぜ。まあ、お前は知らないのか。

 

「君達、今まで苦労したみたいだね。これからは僕と一緒に来ると良い、勿論、馬小屋なんかでは寝かさないし、高級な装備品も買い揃えよう。というか、パーティ編成的にもバランスが取れてていいじゃないか。ソードマスターの僕に、ランサーとクルセイダー。そして盗賊とアークウィザードにアクア様。まるであつらえたみたいにピッタリなパーティ編成じゃないか!」

 

 おっと、俺とカズマは入ってませんが? いや、別に別嬪さんでパーティを揃えたいなら、構わないが、絶対に後悔するぞ。重荷にしかならないからな。

 

 それにしても本当に身勝手なヤツだなコイツ。まあでも、悪くない提案だ。コイツらなら、特にアクアなら、呑みそう――。

 

「ねぇ、ちょっとヤバイんですけど、あの人、本気で引くぐらいヤバイんですけど! ちょっとナルシも入ってるみたいなんですけど!」

「攻めるより守る方が好きな私だが、アイツだけは何だか、無性に殴りたい……!」

「撃っていいですか? 唱えちゃって良いですか?」

 

 唱えるのはやめなさい。俺がガッとめぐみんを抑え付ける。さて、どうやら大不評のようだ。まあ、確かにごめんだな。

 

「ねえカズマ、そろそろギルドに戻りましょう?」

 

 ま、ここはそろそろ退散すべきだな、俺もカズマになんとなくジェスチャーで伝える。カズマはハァ、とため息を立ち去ろうとしたする。

 

「えっと、俺の連れが満場一致であんたのパーティに入りたくないみたいなので、俺達はクエスト完了の報告があるので、これで」

 

 そう言って、立ち去ろうとしたら、ミツルギが退路を塞ぐ。コイツ……本当にいい加減にしろよ、俺は結構温厚なんだぜ? それをここまでキレさせたのは、アクアに続いてお前が二番目だ、こっちの世界に来て。

 

「すみません、退いてくれます?」

 

 カズマもさすがにイライラしてるようだった。

 

「悪いが、魔剣という選ばれた力を与えてくれたアクア様を、こんな境遇には置いてはおけない。どうだ? 勝負をしないか? アクア様を『物』として選択したんだろう? 僕が勝ったら、アクア様を譲ってくれ。君が勝ったら、何でも一つ、言う事を聞こうじゃないか」

 

「よし分かった」

 

 と先手を打とうとした、カズマを俺が止める。

 

「ぐぇ!? 何しやがる! 先手でも打たないと勝てないだろうが!!」

「待て、待て。こっちには俺という一応チート持ちが居るじゃねぇか、おい! お前、こっちの方がレベルが低いんだ。二人で掛かっていっても問題ねぇよな?」

「良いよ? お好きにどうぞ」

 

 と、魔剣を構えて言うミツルギ。はぁ、失敗したな、ミツルギ。お前は重大な選択ミスをしたぞ?

 

「おい、ゴニョゴニョ」

「あぁ、なるほど……さすが!」

 

 そう言って、カズマがさっそくショートソードを構え、突撃する。当然、ミツルギだってレベルが37もある上に魔剣持ちだ。カズマが先手でも取らない限り、勝つのは難しいだろう。というか、先手を打ったとしても負ける危険性があった――だが……俺が居れば話は別だ。

 

「フルキャンセル」

 

 俺は無情にもミツルギの体を動けなくした。俺のチートスキル。フッフッフ! 別に俺だって苛立ってなかった訳じゃねぇ。さすがに仲間をあそこまで言われちゃ、苛立ちもするし、ソイツに当たりたくもなるぜ? 

 

「ぐっ!!?」

 

 直後、動けなくなったミツルギはなんとか動こうとしたが、まったく動けず、カズマが――。

 

「スティール!!」

 

 スティールを使い、魔剣を奪った。

 

「ッ!!!?」

 

 そして、そのまま魔剣を平らにして振り下ろし、ミツルギは気を失った。ちなみに動けないまま気を失っているので、立ったまま気絶している。10レベル以上の開きがある相手にここまで圧倒されるとは……。ちょっと可哀想な気がもするが……いや、全然可哀想じゃないな。

 

「ひ、卑怯者!!!」

「そうよ! そうよ!!」

 

 あ? なんだと?

 

「アンタら二人掛りで卑怯じゃない!!」

「その魔剣、返しなさいよ!!」

 

 そんな風に言ってくる女二人組。俺はそんな事を無視し、ミツルギの装備品を外していた。

 

「な、何してんのよ!?」

「ちょ、やめなさいよ!!」

「え? いや、だって俺達二人が勝ったんだから、なんでも一つ、お願い聞いてくれるらしいから、コイツの身ぐるみを剥ごうかと」

 

 俺が全然、悪くないよ、という感じで普通に答えた。そして、俺はミツルギの装備品を全部取った。ちなみに財布も一応、貰っておいたのだ。

 

「……ふぅ、一仕事した!」

「おい、それ全部売ったら、どれぐらいになるんだろうな!」

 

 二人でニヤニヤしていたら、二人組の女がもっと、責め立ててくる。

 

「やめなさいよ!! 酷いわ! 鬼!! 悪魔!!」

「そうよそうよ!!!」

「うるせぇな。ぶっ飛ばされてぇかァ!!?」

「それで、スティールでお前らの身ぐるみも剥いでやろうかぁ? そーれぇ、それそれそーれぇ」

 

 と嫌らしい手つきをするカズマ。さすがにそれは可哀想じゃないか? いや可哀想じゃないな。それに怯えたのか、ぱんつ一枚のミツルギを引っ張ってどこかへと去ってしまった。

 後ろや周りからの視線はそれもう、痛かった。

 

 

 

 

 

 

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございます。


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