この素晴らしいキャンセルに祝福を!   作:三十面相

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今回も駄文ですが、温かい目で見てください。


晩餐会

 テレポートでカズマが一緒に飛ばされてしまった。

 目の前で起こった出来事といえばそれぐらいだろう。ダクネスが慌てふためいていたが、そんなに慌てていても仕方ないだろう。

 

 

「あ、アイツ一人で、も、もし何かあったら」

 

 

「まあ、大丈夫だろ。王女様ももう少し話したかっただけだろうし、すぐに帰ってくるんじゃないか?」

 

 

「そうですよ。とりあえず帰ってくるまでは、私達は屋敷で待ってましょう」

 

 

「そうね! どうせ、カズマの事ですもの、すぐに帰ってくるに決まってるわ!」

 

 

 まあ、そんなところだろう。

 と、俺達が思っていたのだが――。

 

 

「って訳で、アイツいつまで経っても帰ってこないんだよ。アクアはいつも通りだけど、ダクネスとめぐみんが気が気でないというか、見てて面白いというか……」

 

 

 日本からのアイデア道具をすべて売りさばき、客が居なくなって暇な時間に俺は来ていた。

 

 

「何か、変な事に巻き込まれてなければいいですけどね」

 

 

 ウィズがそんな心配をしてくれたが、俺はどちらかと言えば、城での生活が楽しすぎて、帰ってきてないだけのようにも感じるが……。というか、アイツが変な事に巻き込まれても、なんだかんだなんとかなるだろう。

 

 

「見通す悪魔が、一つだけ忠告しておいてやろうか? 何、代金は必要はない。まだ現金を用意できてないからな。貴様がどうしてもと言うのなら」

 

 

「いらん。チート悪魔が」

 

 

 そんな会話を済ませ、俺が屋敷に戻ると、なぜか全員が揃っていた。どうやら俺を待っていたようだ。

 

 

「何してるんだ?」

 

 

「リュウト。お前どこ行ってたんだ?」

 

 

「ん? ウィズの店に行ってた。ていうか、何かあったのか? 全員揃って」

 

 

「行くぞ、カズマを連れ戻しにな!!」

 

 

 あぁ、いい加減行くのね……。

 

 

 

 

 

 

●●●●●

 

 

 

 

 

 王都に着き、すぐさま城に入り、俺達はカズマのいる部屋に案内されて、コンコンと静かにノックし、入る。

 

 

「おはようメアリー。だがそう簡単に、この俺のシーツを取り替えさせると思うなよ? さあ、手早くシーツを取り替えて他の仕事に取り掛かりたいのなら、こう言うんだ。『ご主人様、どうか……』」

 

 

 その続きは言わずに、固まるカズマにダクネスは真顔で。

 

 

「……ご主人様、どうか……? 何だカズマ、言ってみろ。ほら、この場の全員で聞いてやる。その先を言ってみろ」

 

 

 俺は笑いを堪えつつ、口を抑える。カズマは口を開き。

 

 

「ご、ご主人様、どうかわたくしめに、ご主人様の香りの付いたシーツを……」

 

 

「香りの付いたシーツを? なんだ、セクハラはお手の物だろうが。恥ずかしがってないでとっとと言え! この場の全員で聞いてやる!」

 

 

「ゆ、許してください……っ! てか、なんでダクネスがここにいるんだよ!? この部屋は俺に与えられた聖域だぞっ! 誰の許可得て入ってきてんだ!」

 

 

 誰も何も、そもそもこの城はお前のものではないだろうが。とは口には出さないが、俺は思ってしまう。それにそんな言葉は今のダクネスには通じないだろう。いくら言い訳の上手いカズマでも、この状況は分が悪い。

 

 

 実際、ダクネスの眉間にじわじわと皺が寄っていく。

 

 

「なぜ私がここにいるかだと!? 決まっている! お前を連れ戻しにきたのだ! まったく、いつまで迷惑をかけているつもりだ!? とっとと帰るぞ!」

 

 

「そうだぞカズマ。めぐみんなんてお前が心配で、夜も眠れずに心配してたんだぞ」

 

 

「べ、別にそこまで心配していませんよ!? たまたま夜更かしする日が続いただけです! 変な誤解はしないでください!」

 

 

「変な嘘吐く事ねぇだろ。まあいいけどよ」

 

 

 そんなめぐみんとの会話を少し気にしたカズマだったが、すぐに反論が来る。

 

 

「ふざけんな、俺はアイリスの遊び相手役に就任したんだ! この城で面白おかしく生きていくんだ、安泰な俺の人生を邪魔すんな!」

 

 

「バカ者!! この国にそんな役職はない! いいか、よく聞けカズマ。お前がこの城に留まる理由がないのだ。どこの馬の骨とも分からん男をいつまでも理由なく城に置いておくのはマズイのだ!」

 

 

「じゃあアイリスの教育係とかやるよ! 世間知らずで騙されやすい、お姫様を俺がちゃんと鍛えてやる! ついでにお前もどうだ? 世間知らず度で言えば、お前はアイリスと同レベルだろ!」

 

 

「き、貴様というやつは、本当に……っ! 何が教育係だ、クレア殿から聞いたぞ! 貴様のせいでアイリス様がおかしな影響を受けているらしいな! 軍事や戦闘の授業で、突拍子もない事を仕掛けたり、搦め手を使ってきたり……! 冒険者と違い王族や騎士団とは正々堂々と戦うものなのだ! お前の姑息な戦い方を教え込むな! ほら、アクアもなんとか言ってやれ!」

 

 

「そうよカズマ! 魔王軍幹部を倒せたのは、みんなのおかげなんだから、カズマ一人がお城で面白おかしく暮らすのは不公平よ! みんなで住むべきだわ!」

 

 

「アクアはやっぱり黙ってろ! 話がややこしくなる!」

 

 

「ま、いいからさっさと帰って来いよ。ギルドの皆も心配…………してるヤツもいたぞ?」

 

 

「絶対に帰らないからな! 俺はここで面白おかしく暮らすんだ! 引っ張られたって帰らんがな!!」

 

 

「俺を相手にそう言うのか……」

 

 

 力だけならば、このパーティー最強という俺に対し……。面白い。いくらドレインタッチがあろうが、俺が本気を出せば、引っ張って連れて行くなんて訳ないだろう。その代わり下手したら、腕が引きちぎれるかもしれないが。

 

 

「さてと……」

 

 

 ポキポキと俺が腕を鳴らしながら、近づいてく。さすがのカズマも少しだけ引き気味になる。

 

 

「うらぁぁぁっ!!」

 

 

「うがああああッ!!?」

 

 

 足を引っ張り、ここから引きずりだそうとするが、カズマが必死に抵抗する。手を引っ張れば、ドレインタッチが来るかもしれないからな。

 

 

「放しやがれぇぇぇえええ!」

 

 

「お前が放せぇぇええ!!?」

 

 

 壮絶な引き抜き合いが繰り広げられてる中で、部屋の外から王女様がやってくる。

 

 

「あ、あの、どうか酷いことはしないであげて……?」

 

 

 遊びにでも来たのか、王女様が上目遣いで俺にそう言ってくる。そうなると弱い俺だ。カズマの足を放して、息を整える。

 

 

 ダクネスはそれを見て、王女様に一言。

 

 

「アイリス様、この男を甘やかしてはいけません! こやつは人の皮を被った性獣です。女と見れば、一緒に風呂に入りたがり、スキルを使えば下着を盗む。これはそんな男です。この私が人身御供になります故にアイリス様はどうか外へ」

 

 

「ひでぇ言われようだな。欲望に忠実な故か、それはお前が文句をつけれない事ではあるが……」

 

 

 具体的に言えば、ドMなとことか、めぐみんも爆裂狂だし、アクアはアクアでああだし、あれ、全員じゃね? 

 

 

「ええい! お前は黙っていろ!」

 

 

 王女様が何も言わずに、俯いて黙り込む。

「えっと、王女様? コイツには、アクセルの街でそれなりに名が売れた冒険者で、屋敷もあって、友人もいるんですよ。かくいう俺達も、コイツを心配して、ここにやってきました。だから、コイツを解放してくれませんか?」

 

 

 王女相手にこうした喋り方が良いのか悪いのかいまいちわからんが、とりあえず俺はそう言うと、王女様は悲しげな表情のまま、小さく頷き。

 

 

「そうですね……ワガママ言ってごめんなさい」

 

 

「いえ、こちらこそ、すみません」

 

 

「ねえララティーナ? それならせめて、今晩だけでもお別れの晩餐会を開いてはいけませんか?」

 

 

 申し訳なさそうに、上目遣いでそう言った王女様の頼みだ。聞かないわけにはいかないだろう。

 

 

 

 

 

 

●●●●●

 

 

 

 

 

 貴族や王族の晩餐会。

 それは華やかで豪勢で、俺は今までこんなパーティーに招待されたことなんて一度もなかった。

 

 

 アクアもめぐみんも会場に用意されたご馳走をモリモリとほおばるのを見て、俺達一般人にはきっと場違いな場所なのだろうと理解する。

 一応、全員が着飾ってはいるものの、雰囲気と佇まいで完全に浮いている。

 

 

 こういう時にとめるヤツがいるのだが、それがどうにもそうもできる状況でなく。チラリとそちらを見ると。

 

 

「ダスティネス卿! お父上のイグニス様はお元気ですか? わたくし、若い頃にはイグニス様にお仕えしていた事がございまして……」

 

 

「いいや、噂などあてにならないと思い知りましたよ! あなたの美に比べれば、百年に一度咲くといわれる幻の一夜草、月光華草ですら霞んでしまう! 実は、あなたに似合う良い店があるのです。このパーティーが終わったら、ぜひご一緒にいかがですか?」

 

 

「皆様お上手ですこと。パーティーには不慣れな身なもので、どうかお手柔らかにお願いしますね?」

 

 

 それを見て、カズマが隣に来たので、思わず。

 

 

「あれ、誰だ? 俺達のパーティにあんな美人いたっけ?」

 

 

「俺も気になってたところだ」

 

 

 そういうと、カズマと俺は、ダクネスのところまで行き。

 

 

「こんなところにいたのかララティーナ! お、モテモテだなララティーナ! 今日もドレスが似合ってるじゃないか、ララティーナ」

 

 

 カズマがそんな事を連呼すると、口に含んでいたワインを噴出したダクネス。

 

 

「ゲハッ! ゴホッ! し、失礼!」

 

 

 周りの貴族がギョッとした目を向けてくる中、むせているダクネスはハンカチで口元を拭うと。

 

 

「いきなりどうされたのですか? 冒険者仲間のサトウカズマ様、このような場で名を連呼されるのは困りますわ。相変わらずイタズラ好きですね。私達の関係を誤解されてしまうじゃありませんか」

 

 

「誰だ、コイツ……」

 

 

 どうやら先ほどの一言で貴族達もホッとしたのか、また口説き始める。カズマがまた何か企んだ顔をした瞬間だった。

 

 

「ここ近年、次々と多大なる功績を挙げているダスティネス様には、もっと相応しいお相手がいるだろう。少なくとも、貴公らでは話にならん」

 

 

「あれ? 領主様じゃん。なんでこんなとこいんの?」

 

 

「き、貴様らが! デストロイヤーのコアをワシの屋敷に送りつけたせいで、いまだに屋敷は建て直しをしているのだろうが! 今は王都の別邸に住んでおる。大体、平民の分際で、なんだその口の利き方は! もっと気をつけろ!!」

 

 

「唾飛ばさないでくださいよ。領主様」

 

 

「ところで、アルダープ様。ダスティネス様相応しいお方とはどなたで? まさか……」

 

 

 皮肉まじりな一言をアルダープに向ける貴族様の一人。それに対し、アルダープは第一王子ジャティス様と言う名をだす。どうやら前線で活躍している王子様らしい。というか王子様が前線で戦ってんのかよ。

 そんなお似合い話をしていると、カズマが爆弾話を連発。やれ風呂を一緒に入っただの、やれ背中を流しただの、特殊なプレイをしただのと。まあそれに黙ってるダクネスではなく、腕力にものを言わせ、黙らせてしまった。

 

 

 そんなこんなで隅っこにおいやられた俺達。めぐみん、アクアは貴族の女子達と楽しげに話をしている。俺はワインを片手にチビチビ飲みながら、テーブルに向かい、料理に手をつける。

 

 

「うまっ……」

 

 

 隅っこに居たカズマが王女様と何か話している。あら本当にぼっちになっちまったぜ。何回か貴族のお嬢様にも話しかけられたが、まあ結局すぐに離れていくんだけど。

 

 

 そんな事をしてたら、カズマが叫ぶ。

 

 

「これだぁぁぁああ!!」                                  




ここまで読んでいただき、ありがとうございます。



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