この素晴らしいキャンセルに祝福を!   作:三十面相

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今回も駄文ですが、温かい目で見ていただけると、幸いです。


ダクネスのお見合いぶっ壊し計画

「……」

 

 寒い屋敷の中、地べたに頬杖つきながら、横になってアクアとカズマのいざこざを眺めていた。

 何やら高級クリムゾンビアを取り合って喧嘩をしている。やはりひもじいというのは人をイライラさせてしまうのだろう。あ、今『スティール』でアクアの羽衣取った。

 

 今、特に何か問題があった訳ではない、どちらかと言うと、何も音沙汰がない事が問題なのだ。

 それはダクネスの事だ。そう、ダクネスがずっと帰ってきてないのだ。まったくもって、音沙汰が無い。というか、もしかしたら帰ってこないかも――いや、それならそれでいいのか? いやでもこういう形では……。

 

 すると突然、バタンッ!! と勢い良く扉が開いたと思ったら――。

 

「大変だ!! 大変なんだッ!!!」

 

 そこには綺麗な女性の人が立っていた。姿はまさに良家のお嬢様という感じだ。んー……? 知り合いに居たか? 

 こんな女性。居たら俺はきっと夜も眠れなくなるだろう。まあ、もうこの悪ふざけはいいか……良家のお嬢様、金髪、豊満な体。ここまでくれば、誰かわかるだろう? 

 ――ダクネスだ。見た目がここまで違うと、誰もドMクルセイダーとは思わないんじゃないだろうか。

 

「「「誰?」」」

 

 他の連中が本当にわからないという感じでダクネスに対して言う。やめろ!! そういうのはアイツを喜ばせるだけだ! 

 ほら、少しだけ体を震わせちゃっただろうが!! だから俺は即座に答えた。

 

「ダクネスだろ」

 

 俺の言葉に全員が驚いた。ちなみにまた震えるダクネス。

 カズマはあからさまに喜びを示す。すると一番最初に縋り付いたのはアクアだった。

 

「ダクネス!! カズマが、私を脱がして!! それを売りに出そうとしてるの」

 

 間違っちゃいない。間違っちゃいないが、少しだけ語弊があるような気がする。というかわざとだろ。ダクネスもちょっとだけ興味を示したようだし……。

 

「おーい! 言い方ぁぁ!!?」

「ダクネス、お帰りなさい……」

 

 とめぐみんはちょむすけを抱きかかえながら、少しだけ近づいていく。

 

「お、おお。めぐみん、ただいま。その猫……?」

 

 と猫の存在を気にしたダクネスだったが、めぐみんは涙目で顔を片手で覆いながら。

 

「まずはゆっくりとお風呂に入って、心と体を癒してください……」

「な、何を言ってるんだ? そ、それよりもアクアが言っていた事が気になるのだが――」

 

 とやはりそちらに興味津々で、いろんな意味で裏切らない平常ダクネスに対して、アクアがダクネスの着ている服を撫でながら。

 

「間違いないわ……高級品よ……うぅ」

「苦労掛けたなぁ……」

「なんというか、俺がもう少し、情け容赦なく、あの悪徳領主を『フルキャンセル』できたら……」

 

 全員で泣いていた。ダクネスは辛い思いをして帰ってきたのだ……今日は精一杯彼女を癒そう……うぅ。

 

「な、何を勘違いしているんだ!! 領主に弄ばれたとでも思っていたのか!? さすがにあの領主もそんな度胸は無い! それよりもこれを見てくれ」

 

 と差し出してきた紙。そこにはイケメンが映っていた。カズマはそれを受け取り、一も二もなく、ビリッと破いた。

 

「何をする!!?」

 

 さすがにそれはダメだろ――カズマ……。

 

「アクアってこういうの得意だろ? 直せるか?」

 

 と俺は紙を差し出すと、胸を張りながら。

 

「任せなさい!」

 

 と俺は紙を渡して、米粒でせっせと直していく、こういうのに関しては素直に感心する。

 

「それにしても、これがあの領主のねぇ……まったく似てないぞ」

「アイツはカズマの猶予を延ばす事を条件に私に見合いを申し込んでな……私が帰ってこなかったのも、それをどうにか阻止しようとしていたからだ、私の父もアルダープはともかく、息子の事は高く評価しているのだ……一番乗り気なのが、私の父なのだ……頼む! 父を一緒に説得してくれないか!」

 

 でも、息子の出来次第って感じなんだよなぁ……見た目は全然イケてるみたいだし、特に問題は無い気がする。

 それどころか、ダクネスという筋力と生命力は凄まじいが、剣術はダメダメ、ドMですぐにモンスターに突進していく。

 そんな問題が多い、彼女が言ってみれば、寿退社するのだ……だけど、彼女だって、盾役としてはかなり優秀だ。

 それを簡単に手放しても良いものか……仲間は多いに越した事は無いし……うーん。

 

 悩んでいると、直した紙を見ながら、カズマはこう叫んだ。

 

「これだぁぁぁぁぁ!!!」

 

 とアクアが折角、直した、紙を真っ二つに裂いた。発狂なのか、それとも何かを考えたのか、いまいちわからない行動を取ったカズマはきっとロクでもない事を考えているのだろう。

 

 

 

 

―――――

 

 

 

 

 

「見合いを受けろぉぉぉ!?」

「ダクネスがこのまま冒険者を止めても良いんですか!?」

 

 アクアが裂いた紙を見て、泣いてる中、二人がカズマを責め立てる。それもそのはずだ、大事な仲間が困ってる中で、あえてそういう事をしようとしてるのだから。

 

「見合いを断ったところで、あの領主は相当の無理難題を吹っかけてくるに決まってる! だから受けた上で、それをダクネスの家が傷つかない程度にぶち壊す」

 

 ふむ、一理ある。

 

「それだ! それで行こう! だったらお見合いの度に、家に戻って、いちいち父を張り倒さなくても済む!!」

 

 い、いちいち張り倒しに行ってたのか……。よほど嫌なんだな……それにしても、カズマのヤツは何を考えてる? 

 わかってるぞ、コイツが言ってるのは間違いなく、建前だ。こんな事を言うのはカズマらしくない、日頃から自分のパーティに文句をつけいたアイツがここぞという時に限って――いや、ここぞという時に役立つのが、コイツか……だったら、結構真剣に考えてくれてるのか? 

 

 もし、そうだったら、俺の考えが失礼か……。ま、とりあえずはコイツに任せるか。

 

「サトウカズマ!! サトウカズマは居るか!!」

 

 またかよ――。最近、結構見てるんですけど、検察官。

 

「今日はなんだよ?」

 

 俺が言うと。

 

「街に雑魚モンスターが蔓延っている。キサマの仕業ではないのか? 出頭してもらおうか」

 

 はぁ、コイツは何かある度にカズマの所為にするつもりか? 

 

「ダメです。今、私達の仲間が危機に陥ってるのですから、そんな事に構ってられません」

「……確か、雑魚モンスターが蔓延っているんだよな?」

 

 とカズマがセナに聞く。

 

「そうだが?」

「だったら、めぐみん、お前の爆裂魔法の出番じゃないか……! これはお前にしか頼めない事なんだ。最強の魔法使いのお前にしか……」

「私に……しか……。し、仕方ありませんね! ではさっそく行きましょう!!」

 

 お、おぉ……扱いが上手い……。

 

「ついでに、リュウト、お前も行ってきたらどうだ?」

「いいえ! 必要ありません! この最強のアークウィザードの私一人で十分です!!」

「そ、そうか……、た、頼むぞ、めぐみん……」

 

 とカズマが若干、上手く事が運ばずに困惑した感じになっている。やっぱりコイツは何かを企んでるな。

 

 

 

 

―――――

 

 

 

 

 お屋敷は広い……。俺達はダクネスの実家に連れられて、ダクネスの父親と会っていた。どうも、ダンディーなお父さんだな。

 イケメンで、それでいて、なんというか、娘に甘そうなイメージ、というか実際そうだろ。

 

「ほ、本当にいいのか? ララティーナ……」

「はい、お父様。ララティーナは此度の見合いを受けようかと思いますわ」

 

 肩をプルプル震わせている俺、二人も堪えきれず、噴出しそうになっている。だって、キャラが違いすぎるんだもん。さすがにそれは反則でしょう……。クッ……ククク……。

 

「それで、そちらの方は……?」

「あ、わ、私の冒険者仲間です。今回のお見合いに臨時の執事とメイドとして同伴させようかと」

「そうか」

 

 そんな訳で、俺達は着替えている。カズマと俺はスーツ。アクアはメイド服だ。あんまり窮屈な服は好きじゃないんだが……たまにはこういう格好も悪くない。

 

「サイズはどうですか?」

「ん、大丈夫みたいです」

 

 と鏡の前で整えていると。

 

「おぉ、ちゃんと似合ってるじゃないか、一流の使いっ走りに見えるぞ」

「あら、カズマこそ背伸びしてる執事見習いに見えるわよ?」

「おぉ、お前、そういう事言っていいのか? もしも、ここじゃなかったらすんごい事してるぞ? なぁ、ララティーナお嬢様」

「ら、ララティーナお嬢様はやめろぉ!!」

 

 俺は鏡を見たまま。

 

「何、気にする事ないだろ、ララティーナお嬢様」

「だからやめろぉぉぉおおお!!!」

 

 そんなこんなで、お見合い相手を待つ。親父さんからは頼むと言われてしまったが、ラ……ダクネスが嫌なんだから、このお見合いは成功させないようにしないといけねぇだろ。

 

「それにしても、受けて貰って、うれしいよ」

「いやですわ、ララティーナは見合いを前向きに考えると言っただけですわ。そして考えた結果!! やっぱり私には嫁入りは早いという結果に至りました! ぶっ壊してやる……! こんな見合い! ぶっ壊してやるぅぅぅ!!!」

「ら、ララティーナ……」

 

 さすがのお父さんもドン引きだぞ、ララティーナ。

 

「はしたない言葉遣いはやめてください。お嬢様……先方様に嫌われてしまいますよ」

「キサマ、裏切る気か!?」

「今の私は臨時執事。お嬢様の幸せが自分の望みです」

「か、カズマ君……!」

「カズマ、キサマァ!!」

 

 と掴みかかるダクネス。いやぁ、こういう手を取るつもりだったのか、ま、大方の予想はついてたけど、なんというか、酷いなぁ、今回も。

 

 キィィ、と扉が開かれる。そこに居たのは、イケメンな領主の息子。確か、名前はバルターだったっけ? とか思ってた瞬間、ダクネスが走って向かう。

 

「お前がバルターか! 私の名前はダスティネス・フォード・ララティーナ! 私の事はララティーナ様と――」

 

「お嬢様! お足元にご注意を!!」

 

 とスカードの裾を踏んで、転ばせた。

 

 

 

 

―――――

 

 

 

 

「手助けしてくれるのではなかったのか!?」

「お前、名前に傷が付かない程度ってのを忘れてるだろ?」

「まぁ、それは言えてるな……」

「いいではないか! 悪評が立てば、もう嫁の貰い手など無くなる! 冒険者稼業を気兼ねなくできる! 私は親に勘当されるのも覚悟の上だ!! それでも生きようと無茶なクエストを受けて、力及ばず、魔王軍の手先に捕らえられ……いろいろされて、私はそんな人生を送りたい!!!!!」

 

 ……コイツはアレだ。あの……もうあのバルターってヤツに貰われるべきではないだろうか。

 

「おい、アクア……コイツ、やっぱりあのバルターに貰われた方が幸せじゃないか?」

「……ノ、ノーコメントでお願いするわ……」

 

 それはもう、貰った方が良いとか思ってるだろ。お前……。

 

「大体、あの男は私の好みではない……」

 

 なんだ? あの男、超爽やか、好青年だったじゃねぇか? あ、もしかしてあの顔の裏はやっぱり領主の息子らしく、ゲスいとか? そういえば、バルターってヤツは養子だったんだっけ? なんかそんな話してた気がする。

 

「人柄が良く、誰に対しても、怒らず、努力家で、最年少で騎士に叙勲された腕も持つ……」

 

 えぇ? 何それ、絵に描いたような好青年なんですけどぉ……そんな人間が存在するのぉ? 非の打ち所が無いって言葉を俺は始めて目で見た気がするぞぉ……?

 

「あ、あの、それって非の打ち所が無い。まさに最高なんじゃねぇのか……?」

 

 勢い良く、首を縦に振っている二人。だよな? 何か理由でもあるのか?

 

「どこが、最高だ! 貴族ならば、貴族らしく! 常に下卑た目を浮かべていろ! あの曇りも無い真っ直ぐな視線はなんだ! もっとこう……よくカズマがするような、舐め回すような視線で見られないのか!! お前は正直、たまにで微妙だ。」 

 

 とこちらに指を指すダクネス。なんか俺はなじられた気がする。

 

「みみみ、見てねぇし!!」

 

「……ま、まぁ、そこは置いておいてな」

「誰に対しても、怒れない!? バカが!! 失敗したら、お仕置きと称してメイドにあれこれやるのは、貴族の嗜みだ! そもそも、私の好みはあのような出来る男とは正反対!! 外見はパッとせず、ガリでも太っていても良い、私が一途に思っているのに、すぐに他の女に行ってしまうような、意思の弱いヤツが良いな! 年中発情して、スケベそうなのは必須条件だ! それで人生を嘗めていて、それを社会の所為にして、一切働きもせずに、私に言うのだ! 『おい、ダクネス。お前のそのスケベそうな体を使って、金を稼いでこい』。んぅぅぅ!!!!」

 

 ………………コイツはもう手遅れなのかもしれない。アクアとカズマがドン引いてる。もちろん俺もだ。コイツはもう手遅れだ! 終わりだぁ!!! どうする事もできない! どうして、ここまで放っておいてしまったんだ! あと、貴族に対する意見が貴族の癖に偏見すぎやしないか。

 

 

 

 

―――――

 

 

 

 

「では、自己紹介を……僕はアレクセイ・バーネス・バルターです」

「私はダスティネス・フォード・ララティーナ。当家の細かい紹介は省きますわね。成り上がりの領主の息子でも知っていて、当然――――ッ!!?」

 

 カズマが首に『フリーズ』を掛けていた。

 

「ど、どうなされました?」

「い、いいえ、バルター様を見たら、気分がぁぁ――ッ!!」

「お嬢様はバルター様とお会いできて、少々舞い上がっているだけです……」

「そ、そういえば、顔が赤いですね……い、いやぁ、お恥ずかしい」

 

 耳元まで近づいて、カズマが――余計な事を言ったら、どうなるかわかってるな。と言っていたが、望むところだと、返していた。

 当家のお嬢様はどんな時もブレない。

 

「アハハ、私が居ては、お邪魔かな? どうかね、庭の散歩でも?」

 

 そんなダクネスのお父さんの提案で、俺達で庭に来ている。暇なので、アクアの芸を見せて貰っていた。指笛を吹いた後、二回手を鳴らしたら、魚達が集まってきた。

 

「何、これすげぇ!!?」

「ふふん」

 

 得意げだ。アクアはこちらの道で食っていけると思う。水の女神から宴会芸の女神に鞍替えしたらどうだろうか? と本気で考える。

 そして、あの二人はお見合いよろしく、趣味などを聞いていた。ちなみにダクネスがゴブリン狩りを少々なんて、バカみたいな回答をしようとする前に、カズマが止めに入る。でもあんまりそういう風にしてると……。

 

「仲が宜しいんだね?」

 

 なんて、ちょっと苦笑いで言うバルター。あんな姿を見て、やっぱりコイツは根が超良いやつなんだなぁ……。あの領主の息子ってのが、本当に信じられない。

 

「えぇ、こちらの執事とは常に一緒におりますの。食事もお風呂も一緒、も、もちろん……夜寝るときも……んぅ」

 

 コイツって時々、意味わかんないところで恥ずかしがるよな……よくわからん……。

 

「ええい!! もうこんな事をやってられるか! バルター!! 私と勝負しろ!!」

 

 と長い裾のドレスをビリビリに引き裂き、短くして、動きやすくする。本当にああいうのするヤツ居るんだ……というか、もったいねぇ、あれ一つで借金どれぐらい返せるんだろうぉ……。

 

 なんて貧乏臭い事を考える。

 

「今から修練場に付き合って貰う! そこでお前の素質を見定めてやる!」

「お、おい! ダクネス……ゥゥ……」

 

 カズマの視線は完全に下である。まあ仕方ない。これが万有引力というヤツだ。そう視線だって、重力によって下に向いてしまうのだから、一切問題は無い。

 

「ねぇ、カズマ達、何しようとしてるのかしら?」

「ありゃ、まあ……いろいろとだな……」

 

 初めは渋っていたバルターだったが、結局、押し切られ、修練場へと移る事になった。

 結果から言えば、最年少で騎士に叙勲されるほどの腕を持つバルターに攻撃がまったく当たらないただ、硬いだけの女が勝てるはずはないのだが、三十分も一方的にバルターが攻撃していたが、一切、負けを認めず、それで意思の強さによって、降参という形になった。

 

 ちなみに実際は殴られて喜ぶドMだからだが、バルターがそんな事を知る由もない。

 

「……カズマ! 見せてやれ! お前の強さを! 私は一度、お前と戦ってみたかったんだ!!」

 

 とカズマとも戦う事になった。バルターもダクネスが信頼を寄せる、カズマの強さを見てみたいと囃し立てたのだ。

 

「まあ、もう、お見合いは失敗だ。相手してやるよ」

 

 とカズマと勝負をする。まず、カズマは――。

 

「クリエイトウォーター!!」

 

 水をぶっ掛けた。

 

「え!? 木刀の試合で魔法は使わないんじゃ……?」

「そういうもんなの……?」

 

 格好が格好だけにもっと扇情的な格好になったダクネスの姿。それを見て、アクアが。

 

「さすが、セクハラに掛けては並ぶものの居ないカズマ……引くわぁ」

「な! 別にそんなつもりじゃないしぃ!!」

「ま、わかってるさ。それより続きをしないのか?」

 

 俺は努めて冷静に言った。マズイ。あの格好は俺でもちょっと……良いと思ってしまう。くっそ、あんまり女子に免疫がない俺には衝撃的なシーンだぜ!!

 

「あぁ、もう!! 全力で行くぜ!! 『フリーズ』!!!」

「こ、この寒い中、水を掛けるだけでなく、氷結魔法まで……」

「ま、伊達にカスマとかクズマとか呼ばれてる訳じゃないからな……」

「……この、この容赦の無さが……良いぃぃぃぃぃぃぃっっ!!!」

 

 と突撃して、組み合いに入る。組み合いに入れば、カズマは圧倒的に不利だ。冒険者とクルセイダー、この差が圧倒的なのだ。だが、カズマだって伊達にここまで生きてきた訳ではない、卑怯な搦め手ならば、他の追随を許さない程だ。

 

「ドレインタッチ!!!」

「ぐ……! ドレインタッチか!! だが、その前にこの腕へし折ってやる!!!」

「ぐあぁ……お、おい……賭け……でもしないか!?」

「ほう……良いだろう。私が勝ったら、お前に土下座させてやる!!」

「言ったな……? だったら、俺はお前に勝ったら、お前が泣いて謝るような事をしてやるぅ!!!」

「な、泣いて謝る事……!!? あ、あぁ……て、抵抗したいが……ドレインタッチで体力を吸われて抵抗ができない……」

 

 棒読み……。やっぱりお嬢様ってブレない精神力持ってるんだなぁ……。俺はそんな事を思いながら……バタンと扉が開かれる。

 

「お茶でも持ってきたのだが、ちょっと休憩して――」

 

 ガシャンッ! と器が壊れる音がした。

 

「誰がした?」

「「コイツらです」」

 と俺達はバルターとカズマに指を指す。

「よし、処刑だ」

「「ちょっと待ってください!!!」」

 

 

 

 

―――――

 

 

 

 

「娘は元々、人付き合いが苦手で……エリス様に日頃から祈っていたのだ。友達が欲しいと、そしたらある日、盗賊の子が友達になったと、喜んで帰ってきたのを覚えてるよ……。家は家内を早くに亡くなって。自由に伸び伸びと育てていたのだが……多分、それがダメだったんだろうなぁ……」

 

 いいえ、あなたの娘さんは間違い無く、真性です。

 

「ララティーナ様は良い人ですよ、カズマさんが居なかったら、本気で僕の妻に貰いたいぐらいです」

「すみません。ちょっと良くわからない」

「君の方がララティーナ様を幸せにできると思います……」

「おい、領主の息子だが知らんが、表でろ、ぶっ飛ばしてやる!」

「おい、やめろ! カズマ、うわっ!? コイツ結構本気だっ!?」

 

 俺は羽交い絞めをしながら、カズマを止める。

 

「ハッハッハ。カズマ君……これからも娘をよろしく頼む」

「はっ!」

 

 ダクネスが目を覚ます。

 

「こ、ここは?」

「おい! お前が寝てる間にちょっと微妙な空気になってるから空気を読め!」

「ん? ふひ……」

「ふひ?」

 

 ダクネスが立ち上がりながら、お腹を擦りつつ。

 

「実は、この中にはカズマの子がいるんです……」

「お前! ふざけんなぁ!!? 童貞の俺に何言ってやがる!!!?」

「そうか……だったら、僕は貰えないな」

 

 なんて笑いながら言うバルター。俺はそのあからさまな嘘に無反応でいたら、アクアがみんなに広めなきゃなんて、変な事を言いながら、ダクネスのお父さんは孫ができてる事に泣いて喜んでいた……。

 そんな空気の中。

 

「サトウカズマ!! サトウカズマは居るかぁぁぁ――!!!」

 

 と王国検察官であるセナがここに入り込んで来た。またしても、面倒事に巻き込まれてしまうのだろうか……最近、そこそこ平和だった気が……しないでもない。

 だが命に関わるような事はなかった。少なくとも俺は……。一体、今回は何があるんだよぉ!!?

 

 

 

 

 




今回もここまで読んでいただき、ありがとうございます。


感想、批判。大歓迎です。

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