この素晴らしいキャンセルに祝福を!   作:三十面相

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今回も駄文ですが、温かい目で見ていただけると、幸いです。


キールダンジョン

「ダンジョンに潜ります」

「嫌です」

 

 そんな口論がずっと続いていた。今日この頃、ちなみに俺はどうでも良いなぁー、って感じで頬杖つきながら、聞いていた。

 ダンジョンに潜ろうが、潜らないだろうが、どちらでも俺は役立てる――立ててるよな……?

 

 そうして、結局、潜る事になった。ちなみにめぐみんは完全に役に立てない。

 いわば一般人になってしまったので、一人でダンジョンの入り口で待ってもらわないといけないのだ。

 

 ちなみにダンジョンはキールダンジョンと言われるらしく、初心者ダンジョンだ。無論、初心者ダンジョンというだけあって、もうほぼ全て探索されていて、正直、潜っても無意味――と思われるだろうが、実は、まだ未探索の場所が見つかったのだ。

 

 そして、今回は特別に斡旋してもらったのだ。これもカズマの行動があってこそなのだが。

 

 

 

 

 

―――――

 

 

 

 

 

 そして、大分、街から離れた場所にあるダンジョンエリアだ。

 

「へぇ、結構、離れてるんですね。これなら爆裂魔法を撃っても大丈夫そうです」

 

 と杖を構えてるアホ。俺は。

 

「絶対に撃つなよ。今から潜るんだから」

「こほん! むかーしむかし、国最高のアークウィザードが造ったダンジョン。いったいこんな所に造って何をしていたのでしょう」

「んじゃ、とりあえず、俺一人で潜って、先に調査してくるわ」

 

 そう言って、カズマが先に進んでいく。それに有無も言わさず、付いていったアクア。カズマは初めは渋っていたが、結局、押されて付いて行ったのだ。

 

「……そんじゃぁ、俺も行きますか」

「え? 私一人にするつもりですか」

 

 ビッと俺の指差した方向にはちょむすけが居た。

 

「……まさか、ちょむすけと二人にするつもりですか」

「……」

 

 勢い良く頷く。当然だ。だって、アイツらだけじゃ正直、不安だもん。

 

「ま、大丈夫だ。どうせ、すぐに帰ってくるだろうし。正直、あの二人だけだと、なんかこう……嫌な予感がするんだよなぁ」

「……それは言えてますね、早く行ったほうがいいですよ」

「悪いな」

 

 俺はそんなこんなで、アクアの後ろに付いて行った。初めに階段があり、俺は下って行くとすぐにカズマを見つけた。

 ちなみに中に入っていくと、もうそれは真っ暗。正直、俺はもう真っ暗で何も見えない、だが気配はわかるので、一応は足を踏み外したりはしない。あと、怪我をしても、基本的にどうとでもなる。魔力が凄まじくて、ヒールが使える、アークプリーストが居るからな。

 

「それにしても、いいな。敵感知と千里眼か。使える使える」

「そうだなぁ、お前は素で化け物な気がするけど」

「いや、これはこっちに来て、身に付いたんだけどな、そういうのは無いけど、なんとなく気配が読めるようになって」

「それにしても、アクア。お前、見えてるのか?」

「私を誰だと思ってるの? アークプリーストとは仮の姿、ほら、言って!

 二人とも、めぐみんとダクネスは頑なに信じようとしないけど、私の正体をほら、言ってみて」

「なんだ、うるせぇぞ、宴会芸もとい借金をこさえてくる神様」

「そうだぞ、借金の神様」

「ちっがうわよ!! 水の神様でしょ!! いくらこっちに来て、力が弱まったとは言え、神様らしい力の一つや二つ、あるわよ!」

 

 と言いながら、近くにあった、宝箱に駆け寄って、それを調べ始めた。なんというか、アレだな。見えてはいるんだな。

 そんな事を思っていると、宝箱を置いて、こちらに近づいてきたときに、何かに躓いたのか、倒れこむ。

 

(大丈夫か……本当に)

 

「ダンジョンにはね、アンデットが居るものなのよ、そして彼らは生者を感知して、近づくものなの、そんなヤツに潜伏スキルなんて使えないわよ?」

「そーんなもんか……?」

 

 そんなこんなで、新たに見つかった部屋に繋がる道をトラップを解いて、先に進む。ここからが本番だ。

 

「ここから先が未知の領域ね。お宝ざっくざくじゃない?」

「でないと困る」

 

 そんな風にカズマが返しながら、俺達は先に進んでいく。階段を下りていく、前からカズマ、アクア、俺だ。

 先ほどから、二人ともビクビクしながら進んで行ってる。まあそうだろうな。かく言う。俺も怖いが、そこまで前に出さないので、怖がって無いように見えてると思う。怖いけど。

 

「わ、私の曇りなき眼には、カズマが怯えてるように見えてるんですけど?」

「こっちだって、お前が物音する度に怯えてるのが、しっかり見えてるんだからなぁ!」

「私はこの中でも走って逃げれるから! 敵が接近したら教えてね。あとこの暗闇に乗じて、おしり触ったりしないでね」

「俺が今、何考えてるか、教えてやろうか? どうやったらお前をダンジョンの奥深くに置いて行けるかだよ」

「……や、やだもう、カズマってば、冗談ばっかり、クスクス」

「おいおい、俺達もう結構長い付き合いなんだから、冗談じゃないぐらい分かるだろ? アハハハハ」

「……はぁ。お前ら……」

 

 と呆れていると、何かが近づいてるのに気付いた。俺はとっさにカズマに目配せする。それにカズマも気付く。俺はジェスチャーでアクアに伝える。だが――。

 

「何、何? 指芸披露? ちょっとリュウト! もっと明るくしないさいよ! 犬とかそんなのじゃなくて、機動要塞デストロイヤーを見せてやるわ!」

「バカ野郎!! 敵が来てるから、下がってろって言う合図だよ!!」 

 

 俺がつい叫んでしまう。それに反応したのか、一気に駆け上ってきた。え? ちょ、早い!!!? ボロボロになりながらも、俺はなんとか倒した。 ちなみにクエストの報酬で一番安い剣を買ったので、戦いは楽になっている。なんというか、悲しいかな。一番安いやつじゃないといけないというこの事実が……。

 

「なんだ……この化物……?」

 

 泣きながら、アクアが。

 

「グ、グレムリンって言う下級悪魔ね。ダンジョンには弱い悪魔がたまに湧くのよ」

 

 ふーん……なんて思っていたら、カズマがふと何かを思い出したかのように、言う。

 

「な、なぁ、アクア。お前ってどこまで暗闇でも見えてるんだ?」

「え? 昼間とほぼ変わらないわよ?」

「あの、前に俺が夜中ゴソゴソしてるの知ってたって言ってたよな?」

 

 ん? そんな事言ってたか? あぁ、俺が居ない時かな?

 

「あぁ、ゴソゴソしだしたら、反対向いて寝るようにしてたわ」

「…………ありがとうございます」

 

 …………カズマは結構、凄いな……いや、仕方ないのか?

 

 それからどんどん先に進み、結構奥まで来たな。途中で何かありそうな物はしっかりと調べていたが、今のところ、ロクな物が無い。そして、先に進むと、そこには亡骸が――。

 

「ふわああああああああッッ!!」

「……ッ!?」

 

 亡骸に驚いたカズマに驚いた俺はつい驚き、肩を震わせる。

 

「な、なんだ。冒険者の亡骸か……この先に何かあるのか?」

 

 そう言って、先に進もうとすると、アクアがストップを掛ける。

 

「ちょっと待って……」

 

 とアクアが何か、女神らしく、その亡骸を成仏させた。

 

「アクア……今日のお前――」

 

 と言おうとしたら――。

 

「ちょっと、カズマ、さっき、ふわああああっ! って……! 一人で行くなんて粋がってたのに、プークスクス!」

「お前、本当にダンジョンの奥に置いていこうか!?」

 

 うわぁ、せっかく女神らしかったのに、今まで女神らしかったのに……。本当に残念だ……。

 そうして、さらに先に進んでいく、とそこは小さな小部屋だった。そこで、俺達はゴソゴソと探っていた。

 

「チッ、ロクなのねぇな」

 

 俺はそんな風にぼやきながら――。

 

「ねぇ、リュウト、あんまりそう言うのやめてくれない? なんか、コソドロの気分になってくるんですけど」

「やめろ、俺も気にしてんだよ」

 

 それにしても、本来なら、きっともっと警戒して進みながら、もっといろんな事があるはずなのに、俺達と来たら……真面目にやってきてる人達にとったら、邪道もいいところなんだろうなぁ……なんて思いつつ、進めていた。

 

「あ! 見て見て! あそこに宝箱があるわ!!」

 

 と嬉々として近づこうとしてるアクアに。

 

「ちょっと待て!!」

 

 カズマが止める。そして、落ちていた石をそちらに転がすと、大きな口が出てきて、その口を動かしていた。もしも、ここでアクアが普通に近づいていたら――想像するに難くない。

 

「ア、アクア……もう少し慎重に動け。俺は嫌だぞ。お前がグチャグチャになってるのを見るのは……」

 

 真っ青な顔になりながら、俺は言う。そういえば、ダンジョンもどきとか言うモンスターが居たなぁ、なんて思い出しながら。

 もっと先に進んでいく、その間、アクアが『ターンアンデット』を使って、ダンジョンに彷徨っている魂を還してあげたり、まるで本物の女神様のような事をしていた。……あ、そういえば本物だったか。

 

「なんというか、アクアが居なかったら、ヤバかったな」

「そうだな。でも気になる事もあるんだが……」

「あ、やっぱり? いくらなんでも、アンデットの数が多すぎる気がしてたんだよ、俺も」

「だよな……」

 

 二人して黙考をしていたが、やはりこれはおかしいという結論に至り、少しだけアクアに聞いてみようとしたら、アンデットがまだアンデット臭がするとか言って、辺りの臭いを嗅ぐ。

 その姿はまるっきり犬である。そして、探している内に、また新たな場所を見つけ出すアクア。こればかりはアクアの手柄だ。

 

 俺達がそれに気付いたら――。

 

「そこにプリーストがいるのか?」

 

 声が響いた。声の主はどうやらこの先に居るようで、俺達は奥へと入っていくと、そこには魔王が座りそうな椅子に座っている男を発見した。

 そいつはフードを被っており、顔はよく見えないが、どう見ても、人間ではなかった。

 

「私はこのダンジョンをつくった者キール。貴族の令嬢を攫った悪い魔法使いさ……」

 

 

 

 

―――――

 

 

 

 

 

 ある所にそれはそれは、民から尊敬された魔法使いが居た。その名はキール。王様はそのキールという者にどんな願いでも一つだけ叶えてやると、そう言ったのだ。

 そして、そのキールという男は言った。自分の愛する人がもう虐げられないようにして欲しいと、彼女はご機嫌取りの為に嫁がされた女性だった。その女性は王にも気にいられず、日々、虐げられていたのだ。

 

 

 キールはその女性を愛していた。

 

 

 いらないのなら、自分が欲しいと、自分にくれと、そう言ったのだ――。

 

「そういって、私はその令嬢を攫ったのだよー」

 

 とかなり軽薄な感じでそのアンデットは言った。なんというか、先程のテンションと今のテンションではまったく違うじゃねぇか、ちょっとだけシリアス期待しちゃったじゃねぇか!!

 

「というか、話を聞く限り、悪ぃってよりは良いって感じだな……」

 

「まあ、そういう事かなー? で、その攫ったお嬢様にプロポーズしたら二つ返事でOK貰っちゃった! お嬢様と愛の逃避行とかしちゃってねぇ、王国とドンパチやったわけだぁ、いやぁ、あれは楽しかった、ちなみにその攫ったお嬢様がそこに眠ってる人だよぉ? どう鎖骨のラインとか美しいだろ?」

 

 そのお嬢様は既に骨と化しており、鎖骨のラインとかモロすぎて困る。ちなみに先程からずっとアクアがこのアンデットを消そうとしているのを俺は止めている。

 まあ、女神だから。アンデットをぶち殺そうとするのは、俺達がゴキブリを殺すのと同じ感じなのかもしれない。

 

「どうと言われても……」

「困るとしか言いようが……」

「この方は安らかに成仏してるわね」

 

 そして、キールが滅茶苦茶テンション高めだったのが、すんなりと落ち着き。

 

「でだ。君達にお願いがあってね、私を浄化して貰えないか。彼女はそれをできる程の力を持ったプリーストだろう?」

 

 その願いを叶える為に、アクアが魔法陣を描いてる。さすがにここまでくれば、やっぱりそういうのも必要になるのか? 

 ちなみにキールという男はお嬢様を守る為に、人間である事をやめて、リッチーになったらしい。

 

 お嬢様を守るため、リッチーになる、なんか、カッコいいな……。

 

「さっ! 準備OKよ」

「いや、助かるよ、アンデットが自殺するなんてシュールな事できなくてね、ここで朽ち果てるのを待とうとしてたら、とてつもない神聖な力を感じてね、思わず、私も永い眠りから覚めてしまったよ」

 

 そんなこんなで、アクアがキールを浄化している。その姿はまさしく女神と言っても過言ではなかった。それはまさしく女神だった。俺はそれを見ながら、カズマに。

 

「アレは誰だ?」

 

 とつい言ってしまった。ちなみにカズマも。

 

「俺達のパーティのアクア……らしい」

 

 とこんな感じに軽く半信半疑になっていた。

 その後、キールから譲り受けた宝を持って、俺達は帰ろうとしていた。カズマがふと、こんな事を質問していた。

 

「なぁ、アクア。あの人、とてつもない神聖な力を感じて、目覚めたって言ってたけど、お前が一緒に居るから、アンデットがこんなに寄って来てるわけじゃないよな……?」

「なななな、何言ってるの……そそそそ、そんな訳ないじゃない」

 

 おっと、この反応は――?

 

「そういえば、アクアってさ、デュラハン戦の時も、なんかアンデットに追い掛け回されてなかったっけ?」

 

 と余計な一言を付け足して、ずいずいと距離を取るカズマと俺。

 

「ね、ねぇ、二人とも……どうして、そんなに距離を取るの? いつモンスターが襲ってきてもいいように、私達もうちょっと近くに居るべきじゃないかしら?」

 

 そう言った瞬間、もっと離れたカズマと俺に。

 

「ねぇ、ちょっと待って! 私が居たから、二人はなんとかなったんじゃない。私をこんな所に置き去りにしたら許さないわよ! ねぇお願い待ってぇ!!」

 

 泣いて縋り付いてくる、いつものアクアにちょっと安心しながらも。

 

「うるせぇ! そのお前が、アンデットを引き寄せてるんじゃねぇか!!」

「ダメよ! 他のモンスターだっているんだから!!」

 

 そんな口論を続けていたら、後ろからとてつもない量のモンスターがこちらに迫ってきていた。カズマは静かに呟いた。

 

「潜伏……」

 

 俺はそんなカズマに捕まりながら、潜伏していた。その間、泣き叫ぶアクア。

 

「ちょっと! 悪い冗談はやめてよね! カズマ!? カズマ様ぁぁ!!」

 

 結局、その後、大量のモンスターを俺が駆逐しながら、戻るのだった。

 

 

 

―――――

 

 

 

「カズマがぁ、カズマがぁぁ」

 

 と泣き叫びながら、ダンジョンの外に出たアクア。そして俺達の方を冷めた目で見るのはめぐみんだ。

 

「ちょ、ちょっと待て。俺だけじゃない、コイツだって!」

 

 と俺の方を指差す。

 

「ん? まあ、結局助けてやったんだから、いいだろ。どうでも」

 

 それにしても、あの量はヤバかった。すっげぇ、本気で逃げた。

 

「しょうがないだろ! コイツがアンデットを引き寄せる体質なんだから!!」

「だって仕方ないじゃない! 私は神聖な魔力を持っているんだから! 何? 私がカズマ並のヒキニートになれって言うの!? そんな事をすれば、敬虔なアクシズ教徒がどれだけ嘆き悲しむか!!」

「このヤロー。全然反省していやがらねぇ!!」

「落ち着けよ、カズマ。どうせコイツは言ってもわからないし、まったくあの二人の純粋さを少しは分けて貰った方が良いと思うがな」

「あー!! リュウトが私にアンデットを見習えとか言った――!!」

 

 そんなこんなで、いろいろあったが、キールダンジョンの調査は終わった。俺達はその調査の報酬として、大分お金を貰った、当然だが、それは借金に当てる。だが久々に酒ぐらいは飲もう! その後、ギルドへ戻り。

 

(ふぅ……ちょっと酔った気がする……)

 

 なんて事を思ったりして、少しだけテンションが高くなっていた。その後、ゆんゆんが来たり、たゆんたゆんしてたり、アクアがカズマに介抱されたりで、今までと変わらねぇな、と悲しさを覚えた。……借金はまだ返済できてない――。

 

 

 

 

 




ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


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