この素晴らしいキャンセルに祝福を!   作:三十面相

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今回も駄文ですが、温かい目で見ていただけると、幸いです。


容疑者サトウカズマ

 デストロイヤー戦から、素晴らしい功績を残した、俺達のパーティ。これできっと、借金も返済できるだろう、なんて楽観しながら、ギルドの扉を開けると――。

 

「私は王国検察官のセナと言う、サトウカズマ、貴様には今、国家転覆罪の容疑が掛けられている」

 

 ……ホワイ? 国家転覆罪? なんだそれ、つかそんな罪があるのか、それに王国検察官って随分と大仰な肩書きだな。

 スーツ姿のメガネ美人、セナさんが俺達もとい、カズマに向けて告げていた。

 

「何した、カズマ」

「何もしてねぇよ!!?」

「謝って! カズマさん。ほら謝って! 私も一緒に謝るから!!」

 

 とアクアがカズマの頭を無理やり下げさせながら、言っている。というか、本当に何をしたんだ? 

 最近のやった事と言えば、デストロイヤーを撃退したぐらいなのに、だったらカズマは犯罪者じゃなくて、むしろ英雄だろうに……ま、とりま、事情を聞こう。

 

「えっと、セナさんでしたね、その、俺のパーティのこのカズマが何かしでかしたんでしょうか?」

 

 俺がなるべく、冷静な感じで言うと、メガネを一度、クイッとした後に、セナが。

 

「貴様の指示でコロナタイトを転送した結果、領主様の屋敷を爆破したのだ」

 

 うぇ!? あれか、あれなのかぁ!! で、でもあれは不可抗力ってヤツじゃない……?

 

「幸い、死人は出なかったが、貴様にはテロリストもとい、魔王軍の手先ではないかと疑われている」

 

 マジですかー……。

 

「ちょ、ちょっと待ってください、デストロイヤー戦において、カズマの機転が無かったら、被害はもっと大きくなっていたかもしれません!」

「めぐみん……」

 

 おぉ、やっぱりちゃんとカズマの事が心配して――。

 

「せいぜい、カズマはセクハラとかの小さい犯罪をやらかす程度です」

 

 ……うん、まあな。否定はできない。カズマの顔も微妙なものになっている。そこで次に。

 

「検察官殿、何かの間違いだ」

「ダクネス!」

 

 おおっと、次こそ、まともな――。

 

「この男にそんな度胸はない。屋敷で薄着の私をあんな獣のような目で見ていながら、夜這いの一つも掛けられないヘタレだぞ、コイツは」

 

 うん、まぁ……ダクネスは体だけは良い。うん、だけはね。おおっと、二人の視線が厳しくなりましたぞ! やめろぉ! そんな目でカズマを見てやるなぁ! あれ? 俺も見られてる? あ、ごめんなさい。

 

「べべべ、べつに見てないし! つか、お前! ちょっとエロい体してるからって図に乗るなよ! こっちにだって選ぶ権利があるんだからな!!」

「なんだと! 貴様! 風呂場ではあんな事をしたくせに!!」

 

 ん? あんな事? やっぱりしてるじゃねぇか。もうそういう関係になっちゃえよ。

 

「あの時はサキュバスに魅了されて、操られてたんだ! というか、お前だってあんな風に簡単に流されて、どんだけチョロいんだよ!」

「お前、やっぱり、あの時の事を覚えてるじゃないか! それに私は敬虔なエリス教徒で、まだ清い体だ。それをチョロいだと……! ぶっ殺してやるぅ!!」

 

 そーだ! そーだ! とみんなもカズマを擁護し始めた、さてと、俺も便乗をしよう。

 

「そうだぞ、検察官だかなんだか、知らんが、カズマは別に好きでやった訳じゃねぇ、あの状況だったら、やらざる得なかったんだよ、感謝されこそすれ、捕まるなんて、あり得ないぞ」

 

 なんて言ってたら――。

 

「国家転覆罪は主犯以外にも適用される事がある。この男と一緒に牢獄に入りたければ、止めはしないが……」

 

 とメガネの位置を直す。その一言で全員がスイーと離れていく、アクアとめぐみんもだ。俺もできる事なら、前科持ちにはなりたくないが、カズマがこのままってのも、癪だし、仕方ない。捕まらない程度にフォローを。

 

「おい、セナさん。いくらなんでもおかしいだろ。あのなぁ――」

 

と言おうとしたら、アクアとめぐみんに止められる。

 

「やめなさい! リュウト! 犠牲は一人で良いの! カズマがお勤めを終えたら、私達でしっかりと労ってあげるから!」

「そうですよ! ここはつらいですが、我慢です!」

「あぁ? お前らだっておかしいと思うだろ、牢獄に入れられるんだぞ? 何も悪い事をしてねぇのに!」

 

 と言ってたら、向こうからウィズが顔を出して、自分がテレポートをしたと、言ってきたが、それをアクアが遮る。おい、意地でもカズマだけにするつもりか! 

 

 そこでダクネスが。

 

「わ、私だ! 私が指示したのだ! だから、その牢獄プレイ――じゃない、私を牢獄に!」

「は? 何を言っているのですか? あなたは肉の壁になったらしいじゃないですか」

「んぅ!!! 肉の壁……!」

 

 ダメだ。コイツ。

 

「やめろ、恥ずかしい!!」

 

 俺が叫ぶと、セナは若干呆れながら、話を変えて。

 

「と、とにかく、牢獄へ連れていかせてもらいます。サトウカズマ!! 一緒に来ていただこう!」 

 

 とそのまま連れてかれてしまいました……。俺が止めても、意味が無い。だったら、公の場でなんとかするしかねぇんじゃねぇの。

 その後、連れて行かれたカズマを助ける為に、アクアが作戦を立てた。

 

「めぐみんが爆裂魔法を放って、倒れてるめぐみんはダクネスが、それで追いつけられそうになったら、リュウトが追っ払って。守衛が驚いてるスキに私がカズマになんとか脱出の手立てを教えて、脱出させるのよ、そうすればいいわ!」

 

 頬杖しながら、俺はその話を聞いたが。

 

「バカか、爆裂魔法を使えるバカなんて、この街に一人しかいねぇんだ。すぐにバレるだろ」

「バカとは私の事ですか! それより一体どうしたら良いのですか……? このままではカズマは最悪、死刑になってしまいますよ」

「そんなの簡単だ。やる事っつったら一つしかねぇだろ。俺の力だよ!」

「「なるほど」」

「え? 何? どうするの?」

 

 まあ、理解してないやつはどうでもいい。

 

「とりあえずは、夜になるまで、待たないとな」

 

 

 

 

―――――

 

 

 

 

 夜になり、俺が一人でカズマの捕らえられている場所まで行く。

 俺は静かに慎重に進みながら、出会った守衛には、気絶させると共に相手の記憶を抹消させながら、進む。

 

 そして小さな鉄格子を見つけ、俺はそこら辺にある箱を足場にしながら、覗くと、そこには体育座りしながら、顔を下にしてるカズマを見つける。

 

「おい、カズマ!」

「ん? あぁ、リュウト!」

「助けに来たぞ!」

 

 そうして、俺はまず、小さな鉄格子を消す。

 

「よし、えっと……ここに昇ってこれるか?」

「無理だ」

「……鍵をどうにか、できないか?」

「できない、ダイヤル式だ」

「……」

「……」

「お前の事は忘れねぇぞ」

「おい!! まさか、諦める気か!? 嘘だろぉ!?」

 

 そんな声が聞こえたが、俺にはどうする事もできなかった。ただ、一つ言える事があるとすれば、それは……。

 

「骨は拾ってやる」

「薄情者ぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおお!!!!」

 

 

 

 

―――――

 

 

 

 

「どうでした?」

「無理だ。どうする事もできない。まず脱出ができないようになってる。多分、どうする事もできない」

「……なんだ。全然使えないわね! やっぱり私の作戦の方が良かったんじゃないの?」

「……面目ない」

 

 今回ばかりは、俺に落ち度があった。どうにかできるかと思ったけど、鉄格子は高い場所に取り付けてあって、カズマは届かないし、箱は中に入れれないし、どうしたらいいんだ? クソ……。このままじゃ、本当に死刑になっちまうのか……。

 

「それにしても、本当どうしたらいいんだ。さすがに相手が国だと、手の施しようがねぇぜ……頭が痛くなってきたぜ」

 

 と頭を掻きながら、考える。

 

「これはもう、裁判を待つしかないな」

 

 とダクネスが言ってきた。裁判……裁判なぁ。裁判か……この中世の時代の裁判なんて、どうする事もできそうだな……嫌だなぁ、でっちあげとか普通にありそうで。

 

 くそ、仕方ないか……なんとか、裁判で無罪に持ち込んでやる。

 

 

 

 

―――――

 

 

 

 

 そうして、数日が経ち、いよいよ裁判の日。俺は心臓をバクバク言わせながら、席についていた。

 この心構えでなんとかできるのか? だ、大丈夫だよね……。スーハー……。見物人も多いし、緊張するなぁ、もう。

 

「えぇ、これより、被告人サトウカズマの裁判を執り行う」

 

 きたぁぁぁぁ!!! お、お、お、落ち着け……。つか、カズマの顔やべぇ、まあそうだよな。

 

「うえええぇぇぇ……!」

「うおおおお!! 大丈夫か! カズマぁぁ!!?」

「だ、だ、だ、大丈夫じゃねぇ……助けて欲しい」

「大丈夫ですよ、私があの検察官が涙目になるぐらいに論破してあげますから」

 

 めぐみんは爆裂狂でおかしな名前だが、頭は良いからな、一応。

 

「安心しろ、カズマ。今回の件に関して、お前は何も悪くない」

 

 おぉ、なんか頼もしいぞ、まあ一部除いて。

 

「まぁ、この私にドンッと任せれば良いと思うの」

「お前は喋るな! いいか、絶対だ! カズマの首が掛かってるからな!」

 

 念には念をさす。

 

「な、何よ、それ。まるで私が役立たずみたいじゃない!!」

「みたいじゃねぇ、そう言ってんだよ。わかるか!?」

 

 そんな会話をしていると、咳払いが聞こえてきた。そちらを向くと、何やら変な目でこちらを見て、髭を弄ってるヤツが居た。

 なんというか、悪徳領主ってあんなのをイメージするよね、ってぐらい典型的な悪徳領主だな。

 

「あれ、誰だよ?」

「あれが領主のアルダープだ」

「そうなのかよ? ありゃ、典型的な悪徳領主顔だぜ? あんなの領主で良いの? なんかいろいろ裏で狡賢く何かしてそうだよな」

 

 なんて会話をしていたら、裁判が始まった。はじめに検察官が前に出る。

 

「領主という地位の人間の命を脅かしたのは、国家を揺るぎかねない事態です。よって被告人サトウカズマには国家転覆罪の適用を求めます。証人をここへ」

 

 とはじめにやってきたのは、クリスだった。

 

「あはは、なんか呼びだされちゃった……」

 

 と頬を掻きながら言う。というか、アレだよな、多分アレだ。

 

「ということで、クリスさんは公衆の面前でスティールで下着を剥がれた。間違いないですね」

「えぇっと、間違いではないですけど、でもあれはそもそも――」

 

 と続けて言おうとしたら、突然、見物人の方から声が響く。

 

「私見たんです!! 路地でぱんつを振り回してる男を!!」

「その振り回していた男とは……?」

 

 と言って、見物人はカズマの方を指差す。クッソォ、反論できねぇぜェ……。こればかりはカズマが全面的に悪いとは言わないが、それでも下着を剥いだってのは事実だァ。

 

「事実確認が取れたようですね。それではありがとうございます」

 

 もう聞かんのかい。最後まで話はきかんかい。アンタ、絶対に検察官向いてねぇぞ。

 次に来たのは、ミカガミだった。うわぁ、懐かしい。久々に顔を見たよ。

 

「ミツルギキョウヤさんあなたは被告人に魔剣を奪われ、売り払われたと」

「ま、まぁ、その通りです。でも、あれはそもそも僕から挑んだ事でして――」

「ありがとうございます!」

 

 ひでぇ……。つか、ミツルギだったか、んーでもしっくりこない。やっぱりミカガミでいいや。

 そして次にミカガミの取り巻きの女二人が。

 

「そして、そちらの二人は魔剣を取り戻そうとしたのですが、脅されたのですね」

「そうです! あの人に、スティールで身ぐるみを剥いでやろうか! って脅されました!」

「そうですそうです!!」

 

 ふむ……。

 

「ちょっといいですか? あの、これで証明された訳ですよね?」

「そうですね。これで、証明された訳です、やはりこの被告人が――」

 

 最後まで言わせず、食い気味に俺は言った。

 

「いやいや、そうではなく、やはりこの被告人にそんな度胸が無い事が」

「は?」

 

 呆けた顔をするセナに俺は言う。

 

「一つ言いますが、いままでこのカズマがやってきた事は全部、不可抗力が入ってます。たとえば、スティールというスキルはランダムで何か一つ、物を奪う。

という事はたまたまぱんつが手に入った訳です、そしてミカガミキョウヤの場合も同じです。

先に勝負を仕掛けてきたのはミカガミなんですよ? それで報酬を得ただけです。

ほら、何も悪い事はしてない、むしろそれに文句をつけた彼女達の方が頭がおかしいと言わざる得ないでしょう。

もしも、そうして、得た物に文句をつけるのなら、彼女達はカズマにではなく、むしろミカガミに文句をつけるべきですよね。

ここまでくれば簡単です。今までの証人の中で一つとして、カズマが悪かった事など、無いのですよ」

 

 ハァハァ、ハァハァ……疲れた。噛まずに言えて良かった……。さすがに全部悪くなかったなんてのは言いすぎかもしんねぇが……いや、ここはこれぐらい言わねぇとな。

 

「そうですよ!! 今までの証言でカズマが悪いと言える事は何一つ無い!」

「そ、そうだ! それに俺は本当にあの時は俺はみんなを助ける為にやったんだよ!! テロリストでもなんでも無いんだ!!」

 

 と言う。そうだよな、あの場でこれを使って領主様を爆破させて、どうにかしてやろうぜ、なんて事を考えれる余裕なんてなかった。だから、これは不可抗力だ。仕方ない損失だったんだよ。

 

「何を嘘を! この魔道具で嘘は感知できるんですよ!!」

 

 となんだ、あの鈴みたいな道具、なんであるんだろうって思ってたら、そんな効果がある魔道具なのか……こわっ! そして、その鈴の方を見ると、何も鳴らなかった。これが最大の証拠だな。

 

「…………やはり、あまりに証拠が少なすぎますね……今回、被告人サトウカズマには無罪を――」

「おい、ちょっと待て。いいのか? そんな事をして、良いのか?」

 

 と領主は裁判長の方をジロリと睨みつける。

 

「う……被告人サトウカズマには有罪を……よって、判決は」

「はぁ!!? ちょ、ちょっと待てよ! さっきは無罪って!!? おかしいだろうがァァ!!!」

 

 なんだ? あの悪徳領主。何かしたのか!? クッソ、悪徳領主めぇ……その鼻っ柱をへし折ってやりてぇ!! クソ、どうしたらいい! さすがに俺は、権力までは消せないぞ……! 

 ちっくしょーめぇ……。とどうしようも無いと思った矢先だった。

 

 

「ちょっと良いだろうか、私の話を聞いて貰えないだろうか」

 

 

 とダクネスが口を開いた。なんだ、この状況で一体何をするつもりだ……? そうすると懐から何やら出てきた。なんだ? 紋章? そうしたら、全員がアッと驚く。

 

「それは、ダスティネス家の紋章……」

 

 ダスティネス? なんだ? 何なんだ? そうしていると、見物人の方から声が聞こえてくる。

 

「国王の懐刀と言われる、名家ですよ!!」

 

 や、やっぱりお嬢様だったのか。でも、思ったより大きい……。なんだよ、権力やべぇじゃねぇか。

 

「この裁判、私に預からせて貰えないだろうか」

 

 領主もさすがに格上の相手には何も言えねぇか。ハッ、ざまぁみろ。それにしても、ダクネスが初めてカッコよく見えた。

 なんというか、うん。あれだ。クルセイダーっぽい、まさに英雄だな。

 

「なかった事にしてくれと言ってる訳ではない、時間を貰えれば、この男の潔白を証明してみせる」

「いくら、ダスティネス家だろうが!」

 

 と机を叩くと、ダクネスが続けて。

 

「これは私からあなたへの借りにできる。だから私にできる事なら、なんでもしよう」

「……ッ! ほう、なんでも」

 

 うっわぁ、悪徳領主特有のいやったらしい目ですよ、死ねよ、マジで。あ、でもダクネスにはご褒美か? いや、さすがにあれはねぇだろ……セコイ感じがすっげぇ、うぜぇ。

 そんなこんなで――。

 

「被告人サトウカズマの判決を保留とする!」

 

 今回の裁判はダクネスの活躍でなんとかなりました。俺ってば、なんの活躍もできてないわ!

 

 

 

 

 




ここまで読んでいただき、ありがとうございます。



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