この素晴らしいキャンセルに祝福を!   作:三十面相

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今回も駄文ですが、温かい目で見ていただけると幸いです。


冬将軍到来

 俺達は報酬を貰った、ベルディア討伐のMVPとして、三億エリスも貰ったのだ! これで、俺達は金持ちになった!! なんて思ってた時期が俺にもありました。

 えぇ、結果としては、三億エリスは貰いました。ですが、正門の修繕費として、三億と四千万エリスを支払って欲しいとの事で、実質俺達は四千万エリスを借金する事になりました。

 

 ふざけんじゃねェェェェェ!! マジでなんだそれ!? どう考えたってこの街の危機だったろうが!! 全員死ぬかもしれない、あの状況でなんとかして、頑張った俺達にどうして、借金なんてものを背負わされにゃあかんのだァ!! 

 なんだよ、この街! マジふざけんじゃねぇ!! あーっ! フルキャンセルでなかった事にしてぇ!!! くそ! なんでも消せるこのスキルでも、借金は消せないのかよォォォ!!

 

 

 しかし、どんなにキレたとしても、仕方ない。ちなみに今は冬、寒いのだ。屋敷があるから、まだ寒さは凌げるが、暖房がつけられないので、正直、ギルドに居る方がまだ暖かい。

 

「この駄女神がぁぁぁ!!!」

 

 ここにも約一名。ブチ切れてるヤツは居るが……というか、結構引きずるよな……こればかりは……。

 

「何よ! 私が居なかったら! この街は滅んでたかもしれないのよ!!? 私が居なかったら! だからもっと褒めてよ! 讃えてよ!!」

 

 そんな感じで反抗していたアクアだったが、そこでカズマがこう返した。

 

「そうか、だったら、報酬も名誉も借金も全部お前の物な、借金、頑張って返せよ」

 

 そう言って、立ち去ろうとするカズマに必死に縋り付くアクア。

 

「ごめんなさーい!! 調子乗ったの謝るから、見捨てないでぇ!!」

 

 なんだろう……涙が……。そんな事をしていたら、残りの二人もやってきて、カズマが宣言する。

 

「もう報酬が良いヤツだったら、なんでも良い! やるぞ!!!」

 

 カズマがやる気を出している。さすがにこんな状況だしな。そんな訳で、俺達はギルドの張り紙を見てくる。季節はもう冬に差し掛かっている。つまり、寒いのだ。そしてこんな時期、クエストもロクなモノが無く。

 

「えっと、白狼の群れ討伐、一撃熊討伐……グリフォンとマンティコアの討伐。おいおい、正直、全部無理だぞ……」

 

 他には……。

 

「あぁ? 機動要塞デストロイヤーの偵察? なんだ機動要塞デストロイヤーって?」

「なんか、凄い強そうだな?」

 

 めぐみんが驚きながら。

 

「知らないんですか? 機動要塞デストロイヤーを」

「「知らん」」

 

 二人で同時に答えると。

 

「機動要塞デストロイヤーというのはわしゃわしゃ高速移動する機動要塞で、すべてを蹂躙する子どもに妙な人気があるやつです」

「ほう、よくわからねぇが」

 

 そんな真似でもしてるのか、めぐみんがわしゃわしゃと、やりながら言う。子どもねぇ……。

 

「おい、なんだその目は言いたい事があるなら、はっきりと聞こうじゃないか」

 

「ま、いいや。お、よさそうなの発見したぞ!」

 

 俺はその張り紙をみんなに伝える。雪精の討伐だそうだ。

 

「一匹十万エリス!! これだ! これしかない!!」

 

 そんな訳で、俺達は雪精討伐にしに行く。ちなみに一匹狩るごとに春になるのが、半日早くなるだとか。

 なんか、本当に意味わからん世界だな。そういえば、めぐみんが爆裂魔法を撃つ程の相手でもないのに、文句つけなかったり、今、ダクネスが興奮してたりと、何かありそうで、怖いんだよなぁ……まあ、でも大丈夫だろう。俺の勘なんて信じない。

 

「……ほう……このそこら中に飛び交ってるのが、雪精か?」

 

 俺は雪精を見ながら、呟くと、アクアが。

 

「そうよ、この辺り一帯に居るのが、雪精。さ、ちゃちゃっと討伐しちゃいましょう」

 

 とアクアはなぜか、虫取り網を所持していた。まさか、討伐じゃなくて、捕らえる気か? 意味わかんねぇな。

 

「なんじゃ、そりゃ……」

 

 俺がつい呟いてしまった。

 そんなこんなで、討伐開始だ。ちなみにアクアはなぜか、雪精を捕らえていた。俺はそれを流し目で見ながら、雪精をぶっ殺して回っていた。見た目はシンプルだ。

 真っ白い団子みたいな感じでそれに目をつけたやつ。そして、俺はそいつらを『閃光斬り』でスパッスパッと華麗に討伐していた。

 

 ちなみにベルディア戦から、俺の弱点として、剣の脆さがあるので、俺は金が溜まったら、オーダーメイドで何か剣を作って貰おうと思っている。ちなみに今は借金があるので、作れない。まったく最悪だな、おい。

 

「……ふぅ」

 

 いい汗掻いた。寒いけど汗は掻くからな……まずい寒気が。

 

「おい、めぐみん。爆裂魔法で辺り一面、ぶっ飛ばしちまえよ」

「お、それは良いアイデアですね! いきますよ! 『エクスプロージョン』ッッ!!!」

 

 爆音が轟く、爆焔がすべてを包み込み、雪精を一気に討伐した。バタリといつものように倒れこむめぐみん、本当にこれさえなければ最高なのになぁー。

 

「……カズマ、おぶってやれよ。慣れてるだろ」

「さすがに今は、あとでおぶってやるから、ちょっと待ってろ。それにしても、これでめぐみんは合計何匹討伐したんだ?」

「9匹です。レベルも一つ上がりましたよ」

「おぉ、それにしても、雪精討伐、美味しすぎるだろっ!」

「そーだな」

 

 俺も合計十匹近く倒している。こりゃ、良い選択をしたかもしれねぇな。

 

「出たな!」

 

 ダクネスが叫ぶ。俺はダクネスが向いた方を見ると、そこには、真っ白い鎧を身にまとった。将軍みたいなヤツが居た。

 え? 何あれ? 何なの、あれ? めぐみんも死んだフリしてるし、ダクネスはワクワクしてるし! なんじゃこりゃぁぁ!! くっそ、嫌な予感ってのばかり、当てはまるもんだよなぁ……。

 

「カズマ、リュウト。なんで冒険者達が雪精討伐を受けないのか、その理由を教えてあげるわ。あなた達も日本に居たんだし、天気予報とかニュースとかで聞いた事はあるでしょ? 雪精達の主にして、冬の風物詩とも言われる。冬将軍の到来よ」

「えぇ!!?」

「なんじゃ、そりゃァ!!」

 

 俺達二人で反応したら、ダクネスが。

 

「冬将軍。国から高額賞金を掛けられている。特別指定モンスター!!」

「えぇ!!?」

「マジかよぉ……」

 

 なんつーか……絶対に勝てない相手じゃねぇか。なんだよ、あの強そうな見た目。俺は正直相手にしたくないぞ!!

 

「あ、あの冬将軍は自分の地位を利用して、おそらく私を手篭めにしようとするだろう、私も必死に抵抗するが、おそらく力及ばず、辱められ、はぁはぁはぁ……」

「くっそ、この世界はみんな揃って大バカなのかよォォォおおおお!!!」

 

 

 

―――――

 

 

 

 冬将軍はこちらに向かってくる。その速度は俺を遥か早く、迫ってきた。俺はとっさに逃げようとしたが、ダクネスが向かっていく。

 ダクネスは興奮していた。なんというか、アホなの! もう超アホッ! 俺はそんな事を思いながら、ダクネスを止めようと、逃げずに向かっていく。

 

「バッカやろうがァァァ!!!」

 

 俺は叫びながら、向かう。だが、その前に冬将軍がダクネスに斬りかかる。間に合わないッ! だが、ダクネスが斬られたのは、剣のみだった。ちなみにその剣は綺麗にスパッと斬られている。

 

「……なんじゃ、そりゃぁぁぁ!!」

 

 軽く発狂しちゃいそうなるとアクアが説明をくれる。

 

「精霊は出会って人が無意識に思い描く、思念を受けてその姿に実体化するの! ちなみにこんな時期に出歩くのはチート持ちの日本人ぐらいだから」

「つまるところ! アイツは冬なら冬将軍とか言うバカみたいな想像でできた産物ってのかァ!!!?」

「言ってみれば、そうね!」

 

 このバカチート持ちがぁ……!! なんでそんなアホの為に俺達がこんな目に遭わにゃならんのじゃァァああ!!

 

「二人とも、冬将軍は寛大よ! 誠意を見せてくれたら、きっと見逃してくれるわ!」

 

 と雪精達を放して、アクアは今まで見た事がないぐらいの綺麗な土下座をした。

 

「ほら! みんなも謝って! 土下座をすれば、許してくれるわ! 早く! 武器を捨てて謝って!!」

 

 と言っている。なんというか、プライドとか、女神とかそこら辺はもう良いのだろう……め、がみ……? めがみってなんだっけ? なんか尊いものだと思ってたのに、多分、違うんだろうな。

 

 俺はそんな事を思い、土下座の体勢に入ろうとしたら、ダクネスがなぜか、折れた剣を構えていた。

 

「何してんだァァ!! あのクルセイダーはァァァァああああああ!!」

 

 俺はつい叫んでしまった。

 

「私は、クルセイダーだ。たとえ誰にも見られていなくとも、モンスターに頭を下げるなど」

 

 カズマが飛び上がって、ダクネスの頭を押さえつけた。ダクネスの顔は雪に埋もれ、ダクネスは叫ぶ。

 

「や、やめろぉ!! 下げたくもない頭を無理やり下げさせられ、地に顔をつけられる……はぁ、はぁ、どんなご褒美だ!」

 

 俺はもう、ダメなんだ、ってそう思った。

 

「雪がちべたい……」

 

 もういいや、あの変態クルセイダーは死んでも治らないんだろうな……。そう俺は呆れていた。アクアも早くカズマに武器を捨てろと言っている。俺も既に武器は置いている。早くしろ! カズマッ! 

 

 そんな事を思っていたら、スパッ! とカズマの首が綺麗に飛ばされた。

 

「……ッ!」

 

 俺はとっさに動いていた。武器を持ち、アクアの制止すら聞かずに、夢中に飛び出していた。こんな風になるのは、初めてだ。だが俺の思考はほぼ、停止している。ただ、ただ、目の前の敵を殺す事だけを考える。

 

「『風斬り』!!」

 

 ブワッ! と疾風が巻き起こる。それに一瞬、止まる冬将軍、そして、俺は一度、剣を鞘へ納め――。

 

「『瞬斬』ッッ!!!!」

 

 凄まじい速度の太刀が冬将軍を襲う――ガギンッ!! と俺の剣が折れて、だが、俺はとっさに距離を取る。マズイ、コイツ、本当に強い。俺は剣を投げ捨て、そのまま突撃する。

 

「やってやらァァァああああああ!!」

 

 だが、そんな攻撃が当たるはずもなく、俺は斜めに体を斬られた。

 

 

 

―――――

 

 

 

「……死んだのか、俺」

 

 隣にはカズマ、そして向かいには女神様が居た。そして場所は俺が初めて来た場所、真っ白な空間に簡素な椅子と机、凄く久々に見たな。この光景。

 

「……なんつーか……死んだのか」

「あれ? お前も来たのか?」

 

 隣に居るカズマが俺に聞いてくる。ふむ。

 

「お前を殺されて、感情的になっちゃった、テヘペロ」

「お、おう……そうか、つかやめろ、お前のキャラじゃねぇだろうが」

「そうだな……」

 

 は、恥ずかしいから誤魔化しただけなんだからね! 勘違いしてよね! さてと、落ち着け。いくらいきなり死んだからって、それにしても、死ぬ経験がこれで二回目か、残念だ。これで、もう異世界生活も終わりを告げるって訳か……。

 

「……あれ?」

 

 ん? カ、カズマ……? 泣いてる……。そうか、なんだかんだ言って、あの生活は楽しかったんだな……。確かに、俺にとっても、楽しい日常だった……。

 

「あ、あの……」

「え? あぁ、えっと?」

「あ、私はエリスと言います。えっと、死んでしまわれて、残念でしたね。今度はもっと安全な世界で、できる事なら裕福な所へと、転生させますよ」

 

 なるほど、あっちのハードモードよりは楽かもな……。そんな事を冗談交じりで思っていたら――。

 

「ちょっと、カズマ! リュウト! もう生き返れるわよ!」

「ファッ!?」

 

 俺が変な声をあげてしまった。

 

「え!? こ、この声、アクア先輩!? なんでアクア先輩が!?」

「え、えっと……?」

「ダ、ダメですよ! 天界の規定により、生き返りはできません!!」

「おーい! アクアぁ!! なんか、天界規定で生き返れないみたいなんだけど――ッ!」

 

 とカズマが言う。アクアがすかさず言い放つ。

 

「はぁ!? ちょっと誰よ! そんな事言ってる頭の硬いヤツは!」

「えっと! エリス様って言うらしいけど!!」

「はぁ!? ちょっと信仰されてるからって、お金の単位になった上げ底エリス!? ちょっと! それ以上、何か言うんなら、その胸のパットの事――」

「わー!!」

「「パットなの!?」」

「わかりました、わかりました!! もうアクア先輩ったら……」

「「パットなんですね!!?」」

「さて、ではあなた達に門を開きます、本当はダメなんですが……内緒、ですよ?」

 

 悪戯っぽく笑うその笑みに少しばかりキュンッとしてしまったのは、これが本当の女神だからだろう。なんだろう、凄く心が熱くなってくるわぁ。

 

 

 

 

―――――

 

 

 

「うー……?」

 

 俺が目を覚ました、途端にめぐみんに抱きつかれた。グェッ!!? な、何しやがる。どうやら、それはカズマも同じようだ。

 ちなみにカズマはアクアに膝枕されていた。俺はダクネスだ。うん……良いね!! 思ったより硬くないんだな。コイツの膝。

 そんな軽くゲスい事を考えていた俺だった。

 

「ねぇ、もっと私を褒めてよ、私がやったのよ? 私がアンタ達を生き返らせてあげたんだから……」 

 

 ドヤ顔でそんな事を言ってくる。なんというのだろう……この感じ、うん。

 

「「チェンジで」」

「上等よ!! このクズニート共!!」

「なんだと!? カズマはともかく、俺は普通の高校一年生してたぞ!!?」

「な、ニ、ニートじゃねぇし!! というか、この野郎! 俺はともかくってどういう意味だぁ!!」

「そういう意味ですが?」

「て、てめぇ! その鼻っぱしらへし折ってやる!」

 

 と俺に掴み掛かってくるカズマ。

 

「おぉ!? 上等じゃねぇか。やってやるぜ!!」

 

 なんというか、やっぱりこっちの世界ってのは、いいな。

 

 そんなこんなで、俺達はギルドへと戻るのだった。ちなみに戻ったあと、あのアクアが雪精を一匹だけ、逃がさずに隠してたらしい。

 ふむ、あの状況でそんな事できたのかよ、と軽く感心した。

 

「よし、貸せ。アクア。そいつを討伐してやる」

「いやよ!! この子にはもう名前だってつけてるのよ!! 絶対に殺させてやるもんですかぁぁ!!」

「コイツ、予想外の反抗を……」

「なんというか、すんげぇ、愛着湧いてんのな……まあ、今回はアクアの活躍があったんだし、やめとこうぜ」

「はぁ……」

 

 そんな感じで、諦めたら、アクアが。

 

「この子は冷蔵庫にして、夏になったら、いっぱい氷を作ってもらって、かき氷屋さんを作るのよ、それに、寝苦しい夜には、一緒に寝るのよ! この子って何食べるのかしら?」

「というか、そもそも雪精って何か食べるんですか?」

「というかフワフワしてて、むしろ、そいつに砂糖をかけて食べれば、おいしそうじゃないか?」

 

 たまに、コイツもバカっぽい事言うよな……。それにしても、やっぱりさっさと、冬は過ぎて欲しいものだよな。 こういうクエストしか無い以上、洒落にならない事件ばかりに遭遇するからな。もしかして、ここに疫病神でも居るんじゃねぇのか? いや、居たな。はぁ……。

 

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございました。



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