『緊急! 緊急!! 冒険者の皆様は至急! ただちに武装し、正門まで来てください!!!』
あぁ、またか? 最近呼び出し多いな……ま、今回は行かなくても良くないか? なんて事を心の中で呟き、まったくやる気を示さなかった俺だが、次の言葉で行かざる得なくなる。
『特に冒険者サトウカズマさんご一行は大至急、来てください!!』
「カズマァ、何をしでかしたぁぁ!!!」
「俺は何もしてねぇよ!?」
「まぁ、良い……とりあえず、行くかぁ」
俺はとりあえず、急ぐ。大至急と言われてるのだ。行かざる得ないだろう。ったく、面倒臭い。一体、何があるってんだ。もし、これで超どうでも良い事だったら、カズマを宙吊りにする他無い。
俺は小走りで向かいつつ、ハァ、とため息を吐いていた。
そうして、俺よりも先にみんながもう既に集まっていた。俺は門で人並みを掻き分けながら、先に進んでいくと、声が聞こえてきた。
「……なんだ、アイツ……なんでまた来たんだ? まさかァ?」
と俺はギロリとめぐみんの方を向く。めぐみんは俺の視線に気付いていないのか、ずっとデュラハンの方に集中している。
「どうして、城に来ないのだァァァァ!!!!! この人でなし共がぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
(……どういう事だ?)
俺が本当に意味がわからないという感じだ。ちなみに俺は門の一番最前列に居る。
「おい、どうしたんだよ? 爆裂魔法も撃ち込んでないのに、一体何が気に入らないって言うんだ? というか人でなしってなんだ?」
「キサマはァァァ!!! 白々しいぞォォ!!! そこの紅魔の娘はまだ私の城に爆裂魔法を撃ってきているぞォォォ!!!!!」
なんだと!!? 待てよ? アイツ一人じゃ、爆裂魔法を撃てにはいけない、という事は共犯が居るはずだ。俺がギロリとアクアの方に目線をやる。この状況でカズマ以外だとしたら、コイツしか考えられない。カズマもアクアを見て、それにアクアが気付き。
「だ、だってしょうがないじゃない!! アイツの所為でロクなクエストが受けられないから! そりゃ、こういう事もしたくなるわよ!!」
もうコイツには何を言っても無駄なんじゃないのかと、思う時があるのだ。なんというか、もう諦めよう。
「そんな事よりも!! キサマら!! なぜ城に来ないのだ!!! あの仲間を庇った男を助けようと思うやつは一人も居ないのかァ!!! 俺が言うのもなんだが、不当な理由で処刑され、モンスター化する前は、これでも真っ当な騎士のつもりだった。その俺から言わせれば、貴様を庇って、代わりにのろいを受けた仲間を見捨てるというのは、信じられんのだが……!!」
デュラハンの言葉に、めぐみんとカズマが顔を合わせる。そして、その後、俺が前に出てくる。どうやら俺の姿は隠れてて、見えて無かったようだ。
「いやぁ、もしかして、俺の為に怒ってくれてる? そりゃ、どうも」
と俺は頭を描きながら、近づいていく。それを見て、デュラハンは。
「あれ――――――――ッッッ!!!!?」
「あはははは!!! もしかして、何!? あのデュラハン、私達が呪いを解く為に城に来るはずだって思って、ずっと城で私達を待ち続けていたの!!? 超うけるんですけどー!! プークスクス!!!」
相も変わらず、アクアは煽りスキルは高い……。プルプルと肩を震わせるデュラハンはきっと激怒しているだろう。俺は軽く、アクアを止めに入る。
「おい、やめろよ、アイツはアレでも俺を心配してくれた人だぞ」
「まぁ、やった張本人なんだが……」
「そう言われりゃそうか……! だったら、アクア、もっと煽ってやれ、あの顔なしを」
そんな会話をしていたら、デュラハンが。
「おい、貴様。俺だって、駆け出しの雑魚共相手とはいえ、頭に来たなら、見逃してやる理由もないんだぞ? その気になれば、この街の冒険者を一人残らず、切り捨てて、街の住人を皆殺しにする事だって、できるのだ。疲れを知らぬこの俺の不死の体。お前達、ひよっ子どもには傷も付けられぬと知れ!!」
ふむ、挑発にここまで乗ると、逆に清々しいな。
だが、デュラハンが何かするよりも先に、アクアが右手を突き出して、叫んでいた。
「見逃してあげる理由が無いのは、こっちよ! 今回は逃がさないわ。アンデットのクセに、こんなに注目を集めて生意気よ! 消えてなくなりなさい!! 『ターンアンデット』!!!」
白い光が放たれる。だが、デュラハンはそれを避けようとせず、悠々としている。
「こないだの街にアークプリーストが居ると知って、こちらが何も対策を取らないとでも思っていたのか? 残念だったな――ぎゃぁぁぁぁああああああああああああああああ!!!?」
魔法を受けたデュラハンの足元に白い光の魔法陣が現れている。それを受けて、デュラハンは普通にダメージを受けていた。なんというか、滅茶苦茶ダメージを受けている。ふらつきながらも、デュラハンは負けじと巨大な剣を引き抜く。
「お、おかしいわ!! 私の魔法が効いてない!?」
「いや、効いてるだろ。間違いなく」
「あぁ、絶対に効いてる。だってぎゃーとか言ってたし」
「ぐ……まあ良いわざわざ、俺が相手をする事もない!! アンデットナイト! この連中に地獄を見せてやるが良い!!」
うげぇ、雑魚モンスターか……。
「あぁ!! アイツ、アクアの魔法が効いて、案外ビビってるんだぜ!」
それにアクアも不安そうな顔をしつつも頷いている。まあ、そうかもな。
「ち、違う!! いきなりボスが戦うなど――」
その言葉は最後まで言えずに。
「『セイクリッド・ターンアンデット』!!!」
真っ白な聖なる光がデュラハンを襲う。
「ぐぎゃああああああああああああああああああああッッッ!!!!!」
アクアがビビりながら。
「ど、どうしましょう!! 全然効いてないわ!!?」
「いやぁ、ぐぎゃぁああ、とか言ってるし。効いてるぞ」
デュラハンがしびれを切らしたのか。
「も、もういい!!! この街の住人を皆殺しにしてやるッ!!! 俺は魔王軍幹部のベルディアだ!! 覚悟しろ!!」
さてと、そろそろ本気で戦う時が来たようだな……。あと名乗らなきゃならなかったのか、今の……?
―――――
ベルディアがやる気を出したようだなのだが、アンデットナイトが一番最初に全員で狙ったのが、アクアだった。
「ぎゃ――ッ!! どうして!!? どうして!? 私は女神なのに! 普段の行いも良いはずなのに!!」
それはない。
「ど、どうしてアクアばかり!! 私だって本当に普段の行いは良いはずなのに」
だからだろ。それにしても、アクアに本能的にアンデットナイトは救いを求めてるのか? え……ちょっと待てよ、おい!!? どうしてこっちに来てやがるゥゥゥゥ!!! 俺は必死に逃げ出す。さすがにあの量を一度に倒すのは、無理だ!! 俺は攻撃力が高いただのソードマスターだぞ!! 一対一ならともかく、あの連中には、チッ、とりあえず!!
「『風斬り』!!」
バッ! と風が巻き起こり、少ないが、アンデットを切り裂いた。だが、圧倒的に相手が多すぎて、まったく意味を成さない。カズマも逃げながら、何かを考えてるようで、突然叫びだす。
「めぐみん!! 魔法を唱えて、準備してろ!!」
「わ、わかりました!」
とめぐみんは撃ちやすいよう、高台へと行く。そしてアクアを引き連れ、カズマはベルディアに一直線に突き進む。それに当然ついてくるアンデットナイト。そして、アクアと連れて、ベルディアの前に来た瞬間、横へと一気に移動する。そしてその瞬間、だ。
「な、なんという、絶好のチャンス。カズマ! 感謝しますよ。深く、感謝します!!」
そして、めぐみんは詠唱を唱え、叫んだ。
「『エクスプロージョン』ッッ!!!」
ベルディアの周り一帯が吹っ飛んだ。さすが、俺達のパーティの火力。やっぱりこういう場面だったら、凄く使えるな。いや、カズマが居てこそなんだがな……。さてと、これで終了か? 最高だな。カズマもめぐみんを背負いながら、歩いていく。
だが――。
ズボッ! とベルディアが地面から飛び出す。ありゃりゃ、やっぱり死んでなかったか……さすが魔王幹部って所か、さてと一体だけなら、俺は負けないぞ? と俺が前に出ようとしたら、先に冒険者達が飛び出る。やはり、ヤツは魔王軍幹部、アイツを倒せば、かなりの額が貰える。それを狙ってか、一気に飛び出て。
「一斉に出れば、死角ができる!!!」
と何人かで、一気に飛び出したが、突然、ベルディアは頭を上に投げる。つまり、死角を無くした……。
「まずい!! おい!! やめろッ!!!」
俺が叫んだが、もう既に遅く。ベルディアは飛び出てきた連中すべてを殺した――。
「なっ……」
う、嘘だろ。死んだのか……あんなに、あっさり……? 俺はそれで、動けなくなっていた。だが、先に動いた人物が居た。ダクネス。俺達のパーティのクルセイダーだ。
「うおおおおおッッ!!!」
「むっ!?」
ダクネスとベルディアが剣を合わせる。
「む……」
ベルディアが興味深そうにダクネスを見る。というか、耐えた……!? 俺は驚いていた。そしてダクネスが先手を打つ。先に二撃。剣を振るう。
その姿はまさしくクルセイダー。素晴らしい姿だ……。俺がそう褒め称えていた。だが……。斬れたのは、岩のみだった。
「……おいおい」
俺はかなり呆れていた。ダメだ。あのクルセイダー。そんな事を思っていたら、ダクネスが凄まじい力で振るわれた剣でぶっ飛ばされる。俺の方へと飛ばされた。
「ぐえ!!?」
「あ、す、すまない!!」
「な、何……気にするな。だが早く退け……」
俺はダクネスが退くと、肩を回して、軽く準備運動。そして腰に携えていた剣を掴み。スキルを発動させる。
「『瞬斬』」
素早い速度の一斬がベルディアに喰らわせる。場所は腕、そこを切り裂いた。ベルディアは片手に頭を持って戦う。
つまり、ここに攻撃をすれば――と簡単な事を考えていたのだが。
「その剣で俺を傷つけられるとでも?」
ガギンッ! と鎧で遮られた。
「はっ……!!?」
「ハッ、意味など無い。さぁ、どうする?」
「ぐっ……」
俺は剣を押し込めようとしても、一向に斬れもしないし、何も意味が無い。
「リュウトォ!!! お前の切り札があるじゃねぇか!!!」
「あ、そうだ!!」
俺は思い出したように言い、叫ぶ。
「『フルキャンセル』ッ!!!」
「……?」
何も起こらない。見た目にはわからないだけだ、俺は剣で再び、切り裂こうと振り下ろす。
「な、貴様!!? まさか何か――!?」
もう遅いんだよ!! 俺は勢い良く、振り下ろし! ガギンッ!! という音と共に、鎧によって防がれた……あれっ!? 俺は困惑しながらも、今日一日を思い出していた。
「……しまった。街でフルキャンセルで遊びすぎた……」
よく考えたら、街でキャンセルしたり、何かして、遊んでたな……俺。こんな事になると思って無かったから……。あ、どうしよう。これ、つんだわ。
「……ッ!!? バ、バッカやろうォォォォおおおおおおお!!!! お前が頼みの綱だったんだぞォォォォ!!? ちっくしょー!!」
半ばやけくそ気味に魔法を放ったカズマ。
「『クリエイトウォーター』!!」
「ぐおッ!?」
なんだ? 随分と大げさに飛びのいたな……? まさか……!!
「カズマぁぁぁああああああああ!!! もっとだぁぁぁあああああああああ!!!」
俺が全力で叫び、一斉に。
「「「「『クリエイトウォーター』!!」」」」
大勢の冒険者がクリエイトウォーターを放つ。それを避け続けるベルディア。よしっ! 何度も何度もクリエイトウォーターを放つ冒険者達。
それと同時に俺も剣を構えながら、なんとか、相手の足を止めようとする。正直、この剣で鎧を斬れないのなら、俺に攻撃を与える術は存在しない。だから。
「せめてもの足止めだぁぁぁああああああ!!!」
「私もやるぞ! リュウト!!」
俺とダクネスが渾身の攻撃を、ベルディアはそれを剣で弾きながら、クリエイトウォーターも避ける。クソ!! ただでさえ、強いってのに!!! なんだ、この野郎は!!
「ねぇ、どうしてカズマ達は水遊びしてるの? バカなの?」
そんなアホみたいな事を言ってるヤツが居た、アクアだ。もう、やっ!
何なの、どうしてあんなにアホなの、あの子ッ! そう思ったのは俺だけでなく、カズマもだ。
「あーもう、このなんちゃって女神がぁ!! アイツは水が弱点なんだよ!!
お前も水の女神なら、水ぐらい出せよ!」
「あー!!! カズマがなんちゃって女神とか言ったぁ!! 私は水の女神よ!! 洪水クラスの水だって出せるわよ!!」
俺はその言葉にすかさず反応した。
「そうなのか!? だったら早くしてくれッ!!」
「謝って! カズマ、謝って! 私をなんちゃって女神とか言った事!」
「いいから早くしろ!! このクソ女神がァァァ!!!! たまには役に立ちやがれェェ!!!」
「私はいつだって役に立ってるわよ!! 見てなさい!!」
「な、マズイ!!」
とっさに逃げようとするベルディアを俺は掴みながら、逃がさない。
「ぐっ!! 放せェ!!」
「な、なめんじゃねぇぞ。お前程度、取り押さえるのなんて、訳ねぇんだからな……」
「わ、私もだぁぁぁ!!!」
二人掛かりで押さえ込む、さすがにソードマスターとクルセイダーの二人に取り押さえられたら、ベルディアも簡単には逃げられないだろう。
「ぐっ!! この野郎ォ……なかなか力あるじゃねぇかァ!!」
俺が叫びながらも、なんとか耐える。そしてついにアクアが魔法を放つ。
「『セイクリッド・クリエイトウォーター』ッ!」
凄まじく、膨大な量の水がベルディアの頭上から降り注ぐ。まるで巨大なバケツをそのままひっくり返したみたいに。その威力も凄まじく、かなり体が痛い。こ、これは超……やばい。あまりの威力に正門すらぶち壊す。
「バカやろう!! もうやめろぉ!!」
カズマの言葉も虚しく、それはしばらく続いた。
その後、膨大な水でやられたかと思いきや、再び立ち上がるベルディア。その姿はまさしく、騎士。どんな逆境からでも必ず勝ってみせるというやる気が見られた。だが、正直、お前は敵側、そんな主人公みたいな事はして欲しくない。
「まだ、やるってのか……」
俺も先程の水の所為で体力も残り僅かだ。もう戦うのは厳しい。
「き、キサマはバカなのか!! 大バカなのかッ!!!」
そんな事を言うベルディア。確かに、言えてる。だがベルディアはまだまだ戦うつもりのらしい、これ以上は勘弁願いたい……どうする? あ、そうだ……カズマのアレを喰らわしてやろう。もう大分弱っているんだ。さすがにレベルに差があっても大丈夫だろう。さぁ、佐藤和真!! お前の『運』を見させてやれ!!
「カズマァァ!!! いまだ!! アイツに『スティール』を喰らわせてやれェ!!」
「ッ!! そうか! 武器を奪ってやるぜ、デュラハン!!!」
「フッ、駆け出し冒険者如きが、私にスティールを喰らわせられると思うな!!」
「『スティール』ッ!!!」
カズマのスティールが炸裂する。そして、カズマの腕の中を見てみると……そこには綺麗にベルディアの頭がすっぽりと入っていた。
「え、あの……その……」
さすがのベルディアもたじろいでいる。そこでカズマはあくどい笑みを浮かべた。
「おーい! みんなぁ!! サッカーやろうぜぇ!! サッカーって言うのはな! 手を使わずに、足だけでボールを蹴るスポーツだぁ!」
そう言って、ベルディアの頭をボール代わりにして、蹴りだす。それに他の冒険者達もノリ、ベルディアの頭は無情にも、遊び道具と成り下がってしまったのだ。
「おーい、カズマ。俺にもパスくれ」
「おう! それ、パスッ!」
「っと、サッカーは結構、得意だったからな……それ、それっ! と」
リフティングをして、何度か上げたあと。
「もう良いだろう、そろそろ楽にしてやれ」
とダクネスが。
「そうだな。おい! アクア!」
「任されたわ!」
どうやらアクアが魔法で倒すみたいだな。さてと、この頭もそっちにやるか。そうして俺はベルディアボールをベルディアの体の方へと蹴り上げて、アクアが魔法を唱えた。
「『セイクリッド・ターンアンデット』ッ!!」
そうして、ベルディアが浄化され、ベルディア討伐は幕を閉じた。
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