「ふわぁ……眠い……」
俺はいつも通り、ギルドに居た。ちなみに昨日はなんか、興奮で眠れなかったから、結構長い時間まで起きてた所為か、超眠い。ふわぁ。ともう一度あくびをすると、隣に居たカズマもあくびをする。
「欠伸は移るというが、本当だったんだな」
「違う。俺も眠れなかっただけだ。ふわぁ……」
口を片手で押さえながら、眠そうなそぶりをしていたら、キースが来る。
「なぁ、お前ら昨日のお礼に俺のスキルを教えてやるよ。有用なヤツをな」
そう言って、カズマにスキルを教えてくれた。それは『狙撃』と『千里眼』。カズマはどちらも覚え、『千里眼』は結構使えるように見える。ふむ遠距離攻撃か……俺のスキルにも無いかな、それ……。
ギルドカードで探ってみると――。
「『風斬り』。風を巻き起こして攻撃。筋力に依存する……これ、すっげぇいいじゃん」
俺はそのスキルを手に入れた。
そんなこんなで、キースとの会話が終わり、俺達は三人の所に向かう。
もちろん、キース、リーン、テイラーが居た三人の方――――ではなく、アクア、めぐみん、ダクネスの三人だ。
「……? どうしたんだ? 三人とも」
俺がそう言うと。
「別にー? 二人が他のパーティに言っちゃうんじゃないかって心配してる訳じゃないしー?」
「むう……随分と親しそうですね、二人とも……親しそうですね、二人とも……!」
「こ、これが……寝取られというヤツか!! 新感覚だ」
な、何を言ってるんだ? コイツら、とうとうここまで来てしまったのか。壊れ具合が!!
「何、お前ら昨日のレンタル、まだ気にしてるのか? あれは別にな……」
頭を掻きながら、そんな事を言うカズマ。そしてカズマが。
「まあそれより、今は生活の方が重要だ。特にする事もない! クエストが無いからな!! だから、暇なので、俺はとある提案をする」
なんだ? そのとある提案って? 俺はそんな事を考えながら、カズマに付いていく。
―――――
「……なあ、提案ってこれなのか?」
そこには屋敷がある。ちなみにこの屋敷には幽霊が蔓延っているらしく、それをうちのアークプリーストで祓えば、そこに住んでもいいらしい。格安で。それはとても有難い条件だ。
ちなみにその屋敷はかなり大きい。これはとある貴族の別荘だったって話しだ。だが、悪霊が住み付いて、すぐに手放したらしい。
「さてと、やってやるわ!!!」
そんな感じで結構やる気を出しているアクア。ちなみにその間に俺達は部屋の割り振りをする。カズマが最も良い部屋を、他はまあそこそこって感じだな。
「……まさか屋敷に住めるようになるとは思わなかったぜ。正直、冒険者稼業ってのは、その場しのぎが普通だったからな、これでやっとお前らも寒さが凌げるな。そろそろ寒くなりそうだったし」
「あぁ、まったくだぜ。さ、ここで今日はゆっくりしようぜ」
「それが正解だぜ。俺もゆっくりしてぇし」
そんなこんなで、俺達は中へと入ってく、カズマはジャージ姿だ。俺はTシャツとジーンズのみだ。ふぅ、やっぱりこういう拠点って最高だな……。
そんな感じで時間は過ぎていき、もうみんなが寝る時間になった。そうして、ベッドで俺が横たわり、眠る。それからしばらく経ち、ふと、目が覚める。俺は視線を感じて、ベッドから動こうと――すると、ガヂッと体がまるで動かない。どうやら金縛りにあったようだ。
(……ぎゃああああああああああああああああああああああああああああっっっ!!!!!)
俺の心の中はこれまでに無いぐらいに、発狂していた。だって、仕方ない。だってしょうがない。だって、こんな怖い目に遭ってるんだから!!!
助けてくれぇぇぇぇ!!! こんな時こそ!! アクア様だろうがァァァ!!!
女神様、アクア様助けてください!! 俺を!!! 迷える俺をぉぉぉぉ!!!
ダメだ、声が出ないよォォ!!! 金縛りだよぉ!! 必死に俺は体を動かそうとしたら、なんとかなったようだ。
「やった!!」
と勢い良く起き上がり、ふと隣に視線を感じたので、隣を見る、すると……。人形があった。
「ありきたりって言葉がお似合いですね……」
そんな一言を発した瞬間。俺の体は今までにない程のスピードを発揮していた。おそらく、こういうのをリミッターを外した――とそういうのだろう。俺の体はまるで羽のように軽やかで、素早く、アクアの部屋へと到達していた。
「アクア!! 出た……ぞ……?」
そこには何か、喧嘩している二人組の影が見えた。それはカズマとめぐみん。
「な、何してんだ?」
俺が呆れながら言うと、二人して俺にしがみついて来る。
「さぁ!! さっそくトイレに行きましょう!!!」
「そうだ!! 今こそ、チートスキルが発揮する時だろうが!!」
「……お前ら」
俺は半ば呆れながら、仕方なく、コイツらのトイレに付いていかなくてはならなくなった。はぁ……トイレぐらい一人で行けろよ……な、ブルッ! と俺もなんだかトイレに行きたくなった気がした。そんなこんなで三人で移動する事になった。
―――――
「さてと、ゆっくり行こうぜ? どうせ、二人ともトイレに行きたいんだ。途中で人形にあっても、さすがにスキルが効くか、わからねぇしな。つか、効かなかったら、それこそ積みだ」
「あ、あんまり怖がらせるなよ!!」
「そ、そうですよ!! 頼りにしてますからね!! リュウト!!」
「……ったく」
なんだろう。取り乱してる人が近くに居ると、冷静になる。あれってやっぱり本当なんだな。なんというか、確かに落ち着くわ。さっきまでの怖さが嘘みたいに飛んでる。
いや、また人形が来てたら怖いけど、それ以上にコイツらが取り乱しそうだから、なんとか耐えれるな……。さてと、ちょっとはコイツらを安心させる為に頑張りますか。
そんなこんなで先に進んでいく。モジモジしているめぐみん。
「どうした? そろそろヤバイか? 漏れそうか?」
「な、何聞いてるんですか!!」
「え? いや普通に心配してるだけなんだけど……」
「デ、デリカシーが無さ過ぎます……」
「え? ……そなの?」
「さすがに俺もどうかと思うぞ」
「お前には言われたくないわ!!」
そんなこんなで、会話で気を紛らわせつつ、やっとの事トイレに辿り着く。そして、めぐみんが一番初めに入る。
「あ、あの、ちょっと聞かれると恥ずかしいので、歌でも歌ってくれませんかね?」
「何が悲しくて、歌なんて歌わなきゃならねぇんだ!!!」
「それはカズマの言う通りだな」
そんなこんなで扉の前で待っている俺達。
「あの、居ますよね! どこかに行ってませんよね!!?」
「大丈夫だから。心配すんな」
「あぁ、二人とも居るから――ッ!!?」
突然、顔を真っ青にしたカズマ。俺は後ろを振り向くと、大量の人形がこちらに迫っていた。俺は夢中で。
「フルキャンセル! フルキャンセル! フルキャンセル! フルキャンセルゥゥゥ!!!!!」
俺は延々とフルキャンセルと言い続けていた。ちなみに一体につき、これでどうにか、消し去っている。そろそろ尽きかける、力と共に、ただただ叫んでいた。フルキャンセルと。
それから、しばらく経ち、俺の方が底を尽きた。あとは夢中だった。めぐみんとカズマはトイレを済ましたようで、俺達は必死に逃げて、隠れた。そこでしばらく待っていると、めぐみんが。
「黒より黒く……」
詠唱を始めた。
「やめろッ!!!!」
俺が叫びながら、口を押さえる。それから、しばらく経ち、カズマが限界になったのか、立ち向う気になったのか、扉を勢い良く開け放った。
その瞬間。ドスッ! と扉で何かをぶつけた音が聞こえた。そして、扉をゆっくりと開けてみると、額に大きなタンコブができたアクアがそこで気絶していた。
「お、おいアクア! 大丈夫か!?」
ふむ、どうやら悪霊事件はこれで幕を閉じたようだ。
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