「アンクルさん遅いですね」
「きっと追いかけてきますよ」
「っ!?みんな止まって!!」
フラン(ジャンヌ)は止まり、みんなを止めた。
3人は急なことで驚いて止まり、ジャンヌの元に集まった。
「ど、どうしたんですか?」
「早くルークさんを追いかけないと!」
「少し待ってください」
フランは腰につけた剣を抜き、さらにストレージから鎖を取り出し、剣にくくりつけた。
そしてフランは目の前に剣を投げた。
すると、突然無数のナイフが壁から出てきた。
「やはりそうでしたか」
「い、今のはいったい……」
「壁からナイフが飛んできましたよ!?」
「これはトラップです。仕掛けたのはおそらく加速研究会でしょう」
「でもよくわかりましたね。僕なんか全然わかりませんでした」
「私のアビリティは『看破』と言って、見破る力なんですよ」
フランのアビリティ『看破』はどれだけ凄いトラップでも見破ることができる。
それだけではなく、相手が考えてることや今までしてきたことも見破ることができる。
『面白いアビリティだな。テイカーがいたらすぐに欲しがってただろうな』
「っ!?」
突然声が聞こえて、その瞬間、黒い影がハルユキの背後に高速で近づいた。
けど、フランがそれより早くに回り込んで、旗で攻撃を防いだ。
「能力をわかっていて不意打ちですか?防がれることは考えなかったのですか?」
『わかってるさ。だからこうしたんだよ!』
「っ!?」
「フラン!!」
黒い影は旗と一緒にフランを拘束して、口から煙を出した。
フランは後ろにいたクロウを突き飛ばして、煙の範囲外に出した。
(これは……毒霧!?)
毒霧をまともに食らったフランは状態異常をみると、毒になっており、HPがほんの少しだが減り始めていた。
「3人は先に行ってください!」
「でもフランさんは毒状態に!」
「だからこそだよ!毒状態の私がいても足手まといになるだけ!なら1人で戦えば足手まといにはならない!さあ早く!!」
3人は先に進み、フランは黒い影と対峙した。
(口から毒霧を吐き出すなんて聞いたことがない……。まずはどういう仕組みなのか見破らないと)
フランはアビリティを使って黒い影を見た。
すると、とんでもないことに気づいた。
(っ!?デュエルアバターじゃない!?どういうこと!?)
そう思って何度も黒い影を見続けた。
見続けると、黒い影の正体が人形だということがわかり、人形の手足など至る所に糸が結ばれていた。
糸の先を辿っていくと、うっすらだが、人影が見えた。
「あなたがこの人形を操ってるのですね!」
「ちょっと気づくのが遅かったな!」
人形は後ろからフランを拘束するように飛びついたが、フランはアビリティを使っていて、それを予測していた。
思い切り飛び、バック宙で避けた後、腰の剣で首を刎ねた。
人形はポリゴン状となって消えていき、フランはデュエルアバター本体のところに走った。
「チッ!」
移動を始めたデュエルアバターは広いところに行き、フランと対峙した。
「ちょっとはやるみたいだな。だが、毒が回り続けてるんじゃないか?」
「ええ。少しきついですが、攻撃を予測できる私の方が有利です」
「ならこれも予測してたのか?」
デュエルアバターは指を鳴らすとフランの足元から人形が出てきた。
けど、フランはそれも予測しており、簡単に避けた。
「私に攻撃を当てるなら私が予測するのを予測するしかないですよ」
「へえ。……はは」
「何がおかしいんですか?」
「今の俺じゃ勝てないってわけさ」
「なら今すぐ退いてください」
「……けど。時間を稼ぐことはできる」
デュエルアバターはストレージから新しい人形を出して、糸で結んだ。
そしてデュエルアバターは自分の名前を名乗った。
「せっかくだ。俺の名前を教えてやろう。俺はデスパペット。色は死の色である黒だ」
「アンバーフラッグです。それで、時間を稼ぐ?」
「お前のHPをゼロにするための時間稼ぎだ」
「毒ですか!その前にあなたを倒します!」
人形がフランに突撃するが、フランは旗を回して跳ね返し、少しずつパペットに近づいていった。
パペットは人形を操りながら距離を空けていた。
人形を操るだけだからパペットは簡単に距離を空けることができるが、フランは人形の相手をしているため、距離を縮めることができなかった。
「邪魔な人形ですね!それに剣で斬っても簡単に斬れない!」
「そりゃそうだ!俺の一番の人形だからな!あと、人形が一匹だけじゃないことを忘れるなよ!」
「っ!?しまっ」
フランは一匹の人形の相手に集中しすぎたせいで、背後からの攻撃を予測することができなかった。
人形は手を刀に変形させて、フランの体を貫いた。
「がはっ……」
「チャンス!これで終わりだ!」
「…………油断大敵ですよ!」
ザシュッ!
フランは襲ってきた人形の首を旗で刎ねて、人形に結ばれてる糸を思い切り自分の方に引っ張った。
パペットは咄嗟に糸を切ったが、もう一匹の人形にはまだ糸が結ばれていたので、フランはその糸を引っ張り、パペットを自分の方に寄せて、身動きが取れないように抱きしめた。
「くっ!この!そんなことをしてもお前の毒が回って!」
「毒でHPがゼロになるとは思わないでね!」
フランは剣を取り、空に掲げた。
「主よ。この身を委ねます」
「な、何する気だ!!」
「浄化の炎よ。我が身とともに全てを!」
「は、離せ!!」
「ラ・ピュセル!!」
フランとパペットは周りの紅蓮の炎に包まれた。
『ラ・ピュセル』はフランの最強の必殺技であるが、自分のHPがゼロになる諸刃の剣でもある。
この技を喰らえば、どんなに強いやつでも無事で入られない。
やがて炎は晴れていき、その場所にはHPがゼロになったフランと膝をついているパペットがいた。
「はあ……はあ……。あんたは強い。けど、惜しかったな。もう少しHPを削った後に使えば相打ちにすることが出来たのに……」
パペットはゆっくりと立ち上がり、重い足を引きずってその場を去ろうとした。
途中でフランの方に振り返ってこう言った。
「また戦おうぜ。もちろん全力でな」
フランがいた場所から少し離れたところで、パペットはストレージの中を見ていた。
「あーあ。人形が足らなくなっちまった………」
(あの女…。アンバーフラッグだったか……。面白いやつだったな……)
パペットはウィンドウを消して、空を見上げた。
「…………また、会いてえな」
ジャンヌ・ダルク『アンバーフラッグ』
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