「はあ……」
俺は今、病院のベッドで横になっていた。
なんで病院にいるかというと……。
「奨真君も災難だね。まさか疲労で倒れるなんて」
「まさかこんなことになるなんて思いませんでしたよ」
「日頃無理しすぎなんじゃない。楓子ちゃんから聞いてるよ。最近遅くまで学校の備品の修理をしてたんでしょ」
「紺野先生って結構楓子も連絡をとってるんですね」
「そうだよー!一緒に買い物に行ったりもするしねー!」
そんなに連絡をとってたんだな。
それよりも疲労で倒れるなんて……無理しすぎたかもな。
「紺野先生!次はこちらですー!」
「はーい!じゃあ奨真君またね!」
「あ、はい」
紺野先生は一週間の入院って言ってたよな。
一週間暇だな……。
ベッドでゆっくりしてるとなんかドタドタと騒がしい音が近づいてきた。
病室のドアが勢いよく開かれてクラスの女子たちが押し寄せてきた。
「「「「橘君!!倒れたって聞いたけど大丈夫!!」」」」
俺はびっくりして頭が混乱していた。
「え、ええっと」
「私お見舞いの品を持ってきたの!」
「そんなの私だって持ってきたよ!」
「私が先に渡すの!」
一応個室だけどこんだけ騒がれたら他の人たちに迷惑をかけてしまうな。
早く騒ぎを沈めよう。
「お、落ち着いて!他の人に」
「他の人に迷惑になるでしょ。静かにしなさい」
ドアの方を見ると手にフルーツの盛り合わせを持ってニッコリと笑った楓子が立っていた。
楓子の笑顔を見た女子たちは一斉に黙った。
やっぱりあの絶対零度スマイルは恐い……。
「あ、あー!私急用思い出しちゃった!じゃあね橘君!」
「わ、私もだったー!」
1人が帰り出した途端、他の女子たちも帰り始めた。
そして俺と楓子の2人だけになった。
「まったく奨真君は甘いんだから。注意しなきゃダメな時はちゃん注意しなきゃダメじゃない」
「ご、ごめん」
「最近の奨真君はみんなにチヤホヤされちゃって……。私なんだか心配だわ」
「心配?」
「……もう鈍いんだから。奨真君が他の誰かに取られるんじゃないかってこと」
ああ、そういうことか。
楓子はそんなことを心配してたのか。
「楓子」
俺は楓子を椅子に座らせて向き合った。
「俺たちは恋人同士だよな」
「ええ」
「じゃあさ、俺が今から彼女にして欲しいことが何かわかるか?」
俺は楓子に微笑みながら言った。
楓子も何かわかったみたいでゆっくりと近づいてきて唇を重ねてキスをした。
いつもは楓子が積極的にしてくるが今回は俺が積極的に深いキスをした。
互いの唇は離れ、もう一度向き合った。
「心配しなくても俺は楓子以外の人とは付き合ったりしない」
「本当に?」
「本当だ。まだ疑うんだったらもう一回キスをするか?」
「ええ!」
俺と楓子はもう一回キスをしようとしたが、病室に入ってきた紺野先生に止められた。
「あのー2人とも。イチャイチャはまた今度でいいかな」
「「わあああ!!」」
「確かにベッドもあるからいい感じになってるけど、いくらなんでも病室では……」
「「しししませんよ!!」」
「まあとりあえず楓子ちゃん。持ってきたフルーツを食べさせてあげなよ」
「は、はい!」
楓子は持ってきたフルーツの盛り合わせの中からリンゴを取り出して、ナイフで皮むきを始めた。
皮を剥き終わるとリンゴを食べやすいサイズに切ってくれて、爪楊枝を刺した。
楓子は爪楊枝の刺さったリンゴを取り、俺に食べさせようとしてくれた。
「はい!あーん!」
「あ、あーん」
「それと、いい加減出てきたら?」
ん?他に誰かいるのか?
紺野先生はそう言うと、ドアの陰から白雪と綸が出てきた。
「あんな場面を見た後だと入りづらいのはわかるけど、せっかくお見舞いに来たんだからさ」
「白雪、もしかして最初から最後まで見たのか?」
「綸、そうなの?」
「「はい…」」
は、恥ずかしすぎる……。
サッチたちに見られたばかりなのに白雪と綸まで……。
俺と楓子は恥ずかしくてお互い顔を合わせられなかった。
「綸さん。奨真さんと楓子さんっていつもあんな感じのキスをしてるのですか?」
「わ、私も……見たことないので……わかりませんが……たぶん…やってないと思う……」
綸と白雪が何か話してる時、紺野先生が俺のところにやってきて、小声で話しかけてきた。
「奨真君ったら楓子ちゃんだけじゃなくてこんな美少女2人まで……隅に置けないなー、うりうりー」
紺野先生は肘で俺の腕をグリグリしながらそう言ってきた。
地味に痛い……。
「さてと、僕は仕事に戻るから。3人とも暗くならないうちに帰るんだよ」
「「「はい!」」」
紺野先生は病室を出て行った。
「奨真君、ちゃんと休憩は取らなきゃダメよ!倒れたら元も子もないんだから!」
「そうですよ!心配する人だっているんですから!」
「無理は……ダメ……ですよ」
「ああ。気をつけるよ」
「じゃあ私はそろそろ帰るね。しばらくここで寝ることになるけど、帰ってきたらまた一緒に寝ようね。おやすみなさい」
「ああ。おやすみ」
まだ夕方だけどな……。
「わ、私もそろそろ失礼しますね!おやすみなさい!」
「わ……私もそろそろ……失礼します」
「あ、ああ。おやすみ」
だからまだ夕方だけどな…。
楓子と白雪と綸が病室を出て行ったから一気に暇になった。
晩御飯の時間まで寝るか。
「そういえば2人はなんで奨真君が倒れたことを知ってるの?」
私は奨真君の病室から出て、帰ってる時に白雪と綸に聞いた。
「私は学校で噂してるのを聞きまして」
「私は……今日白雪さんとあって……どこに行くのかを聞いたら……奨真さんのお見舞いに行くと……聞いたので」
そういうことなのね。
私はその後、私と奨真君がキスをしてるところを見てどう思ったのか聞いた。
「2人はは私と奨真君がキスをしてるところを見てどう思った?」
「えっと……なんか凄いなって思いました」
「凄かったです……これが大人なんだあ……って思いました」
「そう……」
でもやっぱり恥ずかしいな……。
「楓子さん!」
「っ!?ど、どうしたの?」
「わ、私!負けませんから!!」
私って白雪にライバルと思われてるのね。
「受けて立つわ」
「はい!」
「………わ、私も」
私達は話しながらゆっくりと、帰っていった