「ただいま」
「お帰りなさい。あら?その子は?」
「紹介するわ。友達の橘奨真君。奨真君、私のお母さんよ」
「こ、こんにちは。橘奨真です。楓子ちゃんと仲良くさせてもらってます」
「楓子が友達を連れてくるのは初めてね。どうぞ上がって」
「お、お邪魔します」
俺は楓子ちゃんのお母さんに招かれて中へ入った。楓子ちゃんは車椅子から家の中で使う車椅子に乗り換えようとしていた。
「手伝うよ」
「ありがとう」
「優しいね」
「いえ、俺は当たり前の事をしてるだけですよ」
俺は楓子ちゃんを別の車椅子に乗り換えさせた。ふと、下駄箱の隣を見ると、昨日俺が作った義足があった。
「これ」
「これって奨真君が作ってくれたんだね。楓子のために作ってくれてありがとね」
「お母さん。私早くこの義足を使いこなせるようになりたい!」
「今度練習しましょ」
「うん!あ、奨真君も手伝ってくれる?」
「もちろん!」
「さあ!私の部屋に案内するわ!」
「ゆっくりしていってね」
「はい!」
俺は楓子ちゃんに部屋に案内してもらった。部屋の前には『楓子』と書いていた。早速部屋の中に入るとぬいぐるみなどがあった。テレビの前にはゲーム機があった。
「このゲームよ!」
「RPGか」
「協力プレイでやりましょ!」
「うん!」
ゲーム機をつけて、俺と楓子ちゃんはコントローラーを持った。
メインメニューが出てきて協力プレイモードを始めた。
「楓子ちゃんは魔導師なんだね」
「奨真君はバランスのいい剣士だね」
協力プレイはボスバトルモードを始めたから早速ボスが出てきた。
「グリフォンはそんなに強くないからすぐに倒せるよ。一緒に頑張ろ!」
「うん!」
俺は剣を、楓子ちゃんは杖を装備した。戦闘が始まりグリフォンは攻撃してきた。俺と楓子ちゃんは左右に避け、攻撃を仕掛けた。
「楓子ちゃん!補助魔法をお願い!」
「わかったわ!」
楓子ちゃんは呪文を唱え、俺のステータスを見ると攻撃力と防御力が上がっていた。俺はグリフォンの後ろへ回り込み、楓子ちゃんは風魔法で攻撃をした。10回目の攻撃の時、クリティカルヒットになり体力が大幅に減った。
「このままいけばいけるわ!奨真君!風魔法を唱えるから風の上に乗って!」
「うん!わかったよ!」
俺は楓子ちゃんの風魔法の上に乗り、グリフォンの背中に乗った。俺は背中に剣を思い切り突き刺した。グリフォンのHPがゼロになり、クリアの画面が出てきた。
「「やったあ!!」」
俺と楓子ちゃんはハイタッチをした。
今思えばこんな風に遊んだのは初めてだ。友達と遊ぶってこんなに楽しいんだな。
「どお?連携ができると楽しいでしょ!」
「そうだね。ありがとう」
「ど、どういたしまして」
お礼を言うと楓子ちゃんは顔を赤くしていた。『どうしたの?』と聞いたけど『な、なんでもない!』と言ってゲーム機の電源を消した。
外を見るともう暗くなっていた。ニューロリンカーの時計を見るともう6時になっていた。
「こんな時間だから今日は帰るね」
「うん。ねえ、これから一緒に学校に行かない?」
「いいけど急にどうしたの?」
「奨真君と一緒に登下校するのが楽しいの。他の人はどこか壁があるように接してくるけど、奨真君は気軽に接してくれるから一緒にいると楽しいの。奨真君は楽しい?」
「俺も楓子ちゃんみたいな人は初めてだから一緒にいて楽しいよ」
「ふふ。私達ってなんだか似てるね」
「そうだね。明日土曜日だから義足を使いこなす練習しない?義足もまだ完成してないから完璧に作りたいし」
「うん!明日はよろしくね」
「うん」
俺と楓子ちゃんは部屋を出て玄関まで行った。するとリビングから楓子ちゃんのお母さんが出てきた。
「今日は楓子と遊んでくれてありがとね。またいつでもきてね」
「はい!楓子ちゃん、またね。お邪魔しました」
俺は楓子ちゃんの家を出て家に帰った。
「楓子。友達ができてよかったね」
「うん!」
橘奨真君。歩くのを諦めていた私に希望をくれた男の子。今日一緒に遊んで私は彼の事をもっと知りたくなった。
「あんなに優しい子はそう簡単に出会えないから仲良くしなさいよ」
「もちろんだよ!明日も一緒に遊ぶ約束をしたんだ!あと私が義足を使いこなす練習に付き合ってくれるって言ってくれたんだ!」
「そう。よかったね」
「うん!」
明日が楽しみだなぁ。私とお母さんはリビングに入って今日奨真君と何をしたのかを話した。