「なんとか食堂に来れたな。ん?」
食堂の奥の席に黒髪ロングで見覚えのある女子生徒がいた。
俺はそいつに近づいていった。
「よう、久しぶりだな。黒雪姫」
会うのも久しぶりだが『黒雪姫』と呼ぶのも久しぶりだな。
けどここではこう呼んだ方がいいかもな。
「む、奨真君?なんでここに?」
「派遣だ。今日1日だけだがな」
「あの……姫?こちらのイケメンさんは?」
イケメン?どこにいるんだ?
俺は周りを見たがサッチに話しかけているイケメンなんてどこにもいなかった。サッチを見ると、何故か呆れた顔をしていた。
(全く。自覚はないのか)
「えっと……あなたですよ」
「ん?俺か?」
「は、はい」
「こちらは私の友人の橘奨真君だ」
「橘奨真だ。黒雪姫と仲良くしてやってくれ」
「も、もしかして彼氏とかですか!?」
「ああいや俺にはもう彼女がいるから」
「そうだぞ。私たちはただの友人だ」
「そ、そうですか……」
「ああそうだ。黒雪、大事な話があるから少し直結しようか」
「うむ。構わないぞ」
俺はそう言うと、サッチはポケットから直結用ケーブルを取り出し片方を自分のニューロリンカーに付け、もう片方は俺に渡して来た。ケーブルを受け取り、自分のニューロリンカーに付けた。
『それで話とは?』
『お前まだデュエルアバターを封印してるのか?』
『あ、ああ……』
楓子の足の件とあの時の帝城のことをまだ気にしてるのか。
『はあ……まったく。いつまで逃げ続けるんだ。いい加減向き合えよ』
『それは……その…』
『まあ俺らはお前のことを待ち続けるから』
『……すまない』
また顔が暗くなったな。まったく……。
『その、話は変わるが私はある人物に加速世界を紹介しようと思ってるんだ』
『ん?ってことは?』
『その人物を子にしようと思ってな。彼なら加速世界を変えてくれる気がするんだ』
『へえ。それは楽しみだな』
『そろそろ昼休みが終わるから教室に戻るよ』
『わかった』
俺は直結用ケーブルをニューロリンカーから外し、ケーブルをサッチに返した。
さて、仕事を再開するか。
放課後になり、俺の仕事も終わって駐車場に向かった。俺は自分のバイクに乗り、梅郷中の門を出て帰って行った。
家について、俺はバイクを停めて家に入った。
「ただいま」
「おかえりなさい」
リビングから楓子が出てきた。その後ろから誰かが出てきた。
「お、お邪魔してます…」
「綸か。今日は特訓だったのか?」
「は、はい……」
「今日は頑張って勝ち続けていたわ。この調子ならすぐにレベル2になるわ」
「へえ、いつか対戦して見たいな」
「が、頑張って強くなります!」
日下部綸。それが彼女の名前だ。綸は楓子の子であり弟子でもある。彼女は兄のニューロリンカーでブレインバーストを遊んでいるから彼女のアバター、『アッシュローラー』でいるときは兄の意識に変わるらしい。
「それにしてもアッシュローラーのときはバイクを乗り回すのに、リアルでは自転車もまともに扱えないなんてな」
「そ、それは言わないでください!」
「
「し、師匠……」
「さて、外も暗くなってきたし、送って行くよ」
「あ、お願いします……」
「気をつけてね」
「ああ」
「お、お邪魔しました」
俺と綸は外に出て、俺はヘルメットを綸に渡し、ヘルメット被ってバイクに乗って綸を家に送って行った。しばらくバイクを走らせ、綸の家の前にたどり着いた。
「ありがとうございました……」
「ああ、じゃあな」
綸を家に送り終え、俺は家に帰って行った。
「ただいま」
「おかえりなさい。あ、そうそう。今日梅郷中に派遣されたんだよね。どうだった?」
「雑用ばっかりだったよ。あとはあいつに会ったな」
「サッちゃんね……」
「なんか自分も子を持つらしいぞ」
「へえ。いつか綸とも対戦するのかしら?」
「インストール出来たらだけどな」
「ふふっ、そうね。さ、そろそろご飯が出来るわよ」
「そうか、父さんと母さんが帰ってくるのって明日だよな?」
「ええ。なんだか新婚さん気分ね」
「あ、ああ。さ、飯にしよう!」
新婚か……あと5年か。
俺はそんなことを考えながら飯を食べた。
飯を食べ終わって風呂に入ったが、今日も楓子が入ってきた。
なんかもう慣れてしまった。そんな自分が怖いんだが……。
風呂から出て、寝間着に着替えて自分の部屋に入ってベッドに寝転んだらまた楓子が入ってきた。
「ふふっ。今日も一緒に寝よ」
「ああ、おやすみ楓子」
「おやすみなさい奨真君」