雪で覆われた大地。俺は今そこに立っていた。周りには誰もいない。どうやらこの世界に入った時点でみんなとバラバラになったみたいだ。
「まずは情報の入手だな」
黒雪姫side
私はあるNPCに頼まれて、黒いコートを着た人物を探していた。数分歩いて、少し休息をとる。
「アルヴヘイムオンライン……か」
聞いたことのない世界に疑問を持つ。本当にブレインバーストではないのか。
「ん?」
休息を取っていると、目当ての黒いコートを着た妖精を見つけた。よし、早速倒すまでだ!!
「はあああ!!!」
「っ!?な、なんだこいつ!?」
ほぉ……私の攻撃を受けきるとは……。なかなかの実力の持ち主か。
「キリトくん!!」
「アスナ!先に行け!こいつは俺がなんとかする!!」
「聞いた通りだな。やはり貴様たちが標的のエネミーというわけか」
「なんのことかサッパリだが、邪魔するなら容赦しないぞ!!」
そう言って彼は二つの剣を構える。なるほど、私と同じ二刀流か。これは面白くなりそうだ。
「いくぞ!我が名は黒の王!『ブラックロータス』!!」
お互い接近して、武器を交える。私の攻撃は彼に封じられるが、彼の攻撃も私には通らない。互角の戦いということだ。
「くっ!!なんなんだよお前!」
「なかなかやるな。そのほうが私も楽しめる!」
何度も何度も刃を交える。それを繰り返してると、お互いの体力も限界が近づいてきた。
「恐ろしいほどの実力の持ち主だな。剣の腕なら『ブルーナイト』や『グラファイトエッジ』くらい……いや、それ以上か」
「お前との勝負に現を抜かしてる暇はないんだ!!」
「しまっ!?」
油断して、彼の攻撃を軽く受けてしまう。その隙に彼は私を追い抜いていく。
「くっ!待て!」
黒雪姫side out
「お前ならここに来ると思っていた」
「あなたは……一体……」
魔女のような紫の服を身に纏う少女と白いワンピースを着た少女が向かい合う。その時、水色の髪の妖精がその場に現れる。
「っ!?あなた誰!?その子から離れなさい!!」
「ママ!危険です!この人に関わってはいけません!!」
「…………アスナ」
魔女のような少女はそう呟く。
「この電脳世界に様々な軌跡を呼び起こした輝きの一対……」
「あなたは何者なの!さっきの黒いアバターの仲間なの!」
「……妾は」
アスナが問いかけると、少女は名乗る。
「ペルソナ……。黄昏の魔女、ペルソナヴァベルとでも覚えておけ」
「ペルソナ……ヴァベル……」
ヴァベルはそれだけ言うと、彼女の能力か何かで、白いワンピースを着た少女、ユイを捕まえる。そしてそのままヴァベルの後ろにある塔に引きずり込まれてしまう。
「ユイちゃん!ユイちゃーん!!」
「これで邪魔な小妖精は封印できた。第1段階はクリアということだ」
「あなた、ユイちゃんをどうしたの!!」
「心配するな。あの小妖精はまだ無事だ」
「アスナ!!」
二人の元へ、キリトが駆けつける。それに続き、ロータスも辿り着く。
「キリトくん!ユイちゃんが……ユイちゃんが!」
「どういうことか説明してもらおうか、ペルソナヴァベル」
「ブラックロータス。貴様は十分役に立ってくれた」
「ほう、今までとは態度も全く変えたようだな。そして今のセリフ、己の悪行を認めるというわけだな」
ヴァベルはロータスが言ったことを素直に認める。その態度を見たロータスは、ヴァベルは自分の敵だと認識する。
「好きなだけ言え、黒き王。では、私はこれより、神々の黄昏の準備に移る」
ヴァベルはそれだけ言うと、3人の前から姿を消す。残された3人はリポップした敵mobに囲まれた。
「アスナ!まずはこいつらを片付けるぞ!」
「う、うん……」
「妖精たち。すまない、話は後でさせてもらうとして、ここは加勢させてくれ!」
「ブラックロータスだったか、信じていいのか?」
「ああ、どうか今だけは私を信じてほしい!」
「なら今はあんたを信じる!頼むぜ!」
アスナside
私とキリトくん、ブラックロータスの3人でエネミーを倒していく。それにしても、ブラックロータスの戦闘スタイル、どこかキリトくんと似ている。同じ二刀流だから?ううん、そんなことは後ね、まずはエネミーを倒さないと!
「やあ!」
「エンドリボルバー!」
「デスバイピアーシング!」
「おいあんた!大丈夫か!」
「ふん、私の心配よりも自分の心配をしたほうが良いのでは?」
「言ってくれるじゃねえか!」
エネミーを倒すのに張り合ってる……。張り合ってるうちにエネミーも全滅しちゃった。エネミーが全滅した直後、ユイちゃんが吸い込まれた塔の前に巨大なエネミーが出現した。
「何……これ?」
「こんなバカデカイエネミーなんてありかよ……」
「二人とも!まずは逃げるぞ!」
ロータスの声を聞き、私たちは今いるところから脱出する。草原エリアに転移すると、そこには今まで見たことのない草原エリアに変化していた。
「ここ……本当に草原エリアなの?」
「赤いビルのようなものはあるが、草原エリアなのは間違いないと思う」
「スヴァルトエリアの景色が……」
「風化ステージに似ている……」
「風化ステージ?あんたの言葉は聞いたことのないものばかり聞くが……」
キリトくんの言うことはわかる気がする。このALOで風化ステージとか聞いたことがない。
「ロータス、あなたは何者なの?」
「そのことなんだが、どこか落ち着けるところで話したい」
それなら空都ラインが一番いいわね。まずはそこに移動しなきゃ。私たちは転移ポータルを目指すと、誰かが私とキリトくんの名前を呼ぶ。この声は……
「「リズ!」」
「よかった!まだログアウトしてなかったのね!ってそのメカメカしい人何っ!?」
あー……初対面のリズからしたら不思議に思うよね……。
「ちょっと待ってくれ、この姿だと色々と都合が悪そうだ」
ロータスはメインメニューを操作すると、黒いアバターから蝶のようなアバターに変わる。
「うおあ!?」
「へっ!?」
「人型アバターに!?」
「どうやらこの世界では、デュエルアバターが鎧扱いのようだな」
デュエルアバター?これも聞いたことないわ。それにこの世界ではって……どういうこと?
「ん?ちょっと待って。そういえば街でこんな感じの人がいたような……」
「何っ!?それは本当か!?」
「ええ。3人とも、街へ戻りましょう。この草原だけじゃなくて、街も変わってるのよ」
街も変わってるなんて……ALOに一体何が起こったの……。私たちは一息つくために、街へ戻ることにした。