「そろそろ始めようぜ」
「…………ああ」
背中のガンブレードを手に取り、構える。ジルバは強化外装を持っていなく、素手で戦うみたいだ。でも、もしかしたら必殺技が飛び道具の可能性もあるかもしれない。警戒しておかなきゃな。
「…………ゆくぞ」
「っ!?速い!?」
咄嗟に剣をクロスさせ、拳を防ぐ。そのまま押し返して、俺は蹴り上げる。ジルバは後ろに飛んで後退し、俺の蹴りを避ける。
「速いみたいだが、そこまで重くはないんだな」
「………………」
「今度はこっちからだ!!」
俺は急接近して、両手の剣を振りかざす。だが、ジルバも対抗して、攻撃を仕掛ける。俺の剣とジルバの拳が激しくぶつかり合い、周りのオブジェクトは吹き飛んでいった。その時、俺の剣から嫌な音がした。
(バキン!
「なっ!?」
「…………もらった」
「があ!」
俺の剣が二つも真っ二つに割れ、ジルバに腹を殴り飛ばされた。地面を転がり、勢いが収まって殴られた腹を見ると、少し凍っていた。
「なんだ……これ」
「俺の強化外装、アイスグローブ」
「まさか……あの時に俺の剣を凍らせていたのか」
「強化外装はなくなった。さて、どうする」
武器の強化外装はないけど、俺にはまだ心意が残ってる。
「
俺はエミヤが普段使っている武器を投影した。ギルガメッシュとの戦い以降使ってなかったが、やっぱりしっくりくる。
「まだ持っていたか……なら……それも壊すまで」
「同じ手が通じると思うなよ!」
俺とジルバは互いに接近して、攻撃を仕掛けた。さっきと同じように、ジルバの拳と俺の剣がぶつかり合う。だが、俺はさっきと全く同じことをしていない。俺は一度しゃがみこみ、足を引っ掛けた。
「っ!?」
ジルバは驚き、そのまま倒れて、俺は剣を振りかざしたが、間一髪のところで避けられた。
「なぜだ……なぜお前の剣は壊れない」
「気づいてると思ってたけど、その様子だと、気づいてないみたいだな」
「なに……?」
「剣でお前の拳を防いでたと思ってただろ、正確にいえば、軌道をずらしていたんだよ」
「だから剣は凍らない……か」
「そういうことだ!!」
俺は距離を縮め、至近距離から攻撃する。流石にジルバも防げなかったのか、俺の剣が直撃する。クリティカルヒットは出ただろう。
「くそ…………なら、軌道がずらせないようにするだけだ」
すると、ジルバは自分の拳を上に上げると、その周りに氷が集まっていき、巨大な手となった。まさか、あれで攻撃する気か!?
「潰れろ」
ジルバの拳が目の前に迫る。俺は投影した剣で防ぐが、そのまま押される。もしこのまま建物と激突すれば、俺のHPはかなり消えるだろう。その前に踏ん張らなきゃ。
「こんのおおおおお!!!!」
足を地面に思い切り力を入れ、俺は踏ん張る。けど、勢いは止まらない。地面が削れる度に俺の必殺ゲージは溜まっていき、やがて満タンになる。
「
固有結界を発動して、無数の剣で拳を防ぐ。やがて勢いは死んでいき、止まった。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
「しぶとい……」
「これでケリをつける!!」
俺は走り出し、接近する。もちろんジルバは構えるが、俺は滑り込み、下を取る。剣を振り、ジルバの両足を斬りつける。バランスを崩したジルバは膝から崩れ落ちそうになったが、地面に手をついて体を回し、体勢を立て直した。だが、俺にとってそれは予想済み。剣を自由自在に操り、ジルバの背後から剣を刺し、俺はトドメを刺しにいく。
「まだだ!!」
ジルバは拳を地面に勢いよく当てると、地面から氷でできた岩が飛び出してきた。けど、そんなものは俺には通用しない。飛び出してきた岩を両手の剣で全て斬り、ジルバとの距離はゼロ距離になる。
「…………無念」
「もらったああああ!!!!」
ザシュッ
首を刎ねると、ジルバの体は倒れこみ、HPがゼロになってダウンした。それと同時に固有結界が解けて、元の世界に戻る。
「エイト!!」
「うおっ!?」
レイカーは猛スピードで俺に抱きついてきて、倒れそうになったが、なんとか耐える。その後ろからブラッドも近づいてきた。
「いい戦いだったぜ。見てるこっちも興奮したよ」
「なかなかの強敵だったよ。さて、ジルバが復活するまで待つとするか」
それから1時間が経ち、ジルバは復活する。
「………………」
「立てるか?」
俺はそっと手を差し伸べると、ジルバはそれを掴んで立ち上がる。
「お前は…………俺の想像上の強さを……持っている」
「お前も強かったぜ。次戦ったら、今度は負けるかもしれない」
「フッ…………あと気づいたが」
「ん?」
「お前には…………もう一つの力が隠れている。邪悪な力が…………」
「「「っ!?」」」
どういうことだ……。邪悪な力って……まさか……災禍の鎧の……。
「でも、エイトの邪悪な力って災禍の鎧のことよね?それならもう取り除いたはずよ!!」
「自分の身から取り除いても…………心からは簡単には取り除けないとしたら……どうする……」
そう言われても……俺にはまだわからない。
「俺なら克服するな」
「ブラッド?」
「だってそうだろ?取り除けないものなら、それをコントロールできるように克服するしかないだろ」
それも一理ある。けど、コントロールなんて……災禍の鎧をコントロールするなんてできるのか?
「今は……災禍の鎧が……覚醒してなくても…………いつか必ず……どこかで出てくる…それまでに…………どうにかすれば……いい」
「…………」
「エイト……」
「ま、そういうのは仲間にでも相談すればいいだろ?お前には黒のレギオンの奴らがいるじゃねえか」
ブラッドの言う通りかもしれないな。一人で抱え込むよりも、仲間に相談した方がいいもんな。
「そうだな」
「俺は帰る……楽しめたからな」
「ジルバ、お前はレギオンに参加してるのか?」
「…………レオニーズ」
レオニーズ……青のレギオンか。
「なら、いつか領土戦をする日が来たら、また戦おう」
「…………望むところだ」
ジルバはそう囁くと、その場から去っていった。俺たちも帰るために帰還ポータルに向かう。その途中、ある人物と出会う。
「あれ?式さん?」
「おい……ここでリアルネームは禁止だ。藤乃」
「あなたも言ってますよ?」
「ブラッド。この人は?」
「アメジストマインと申します。リアルネーム浅上藤乃です」
「いやいやいや!!リアルネーム言ったらダメだろ!?」
この人って天然なのか!?
ん?浅上藤乃?どこかで聞いたような……。
「あ、空の境界の登場人物の人!?」
「ご存知なんですね。なら、リアルネームを言っても問題ありません。あなたたちのことは式から聞いてます」
「どういうことだ?」
「ちょくちょく連絡を取っててな。その時にお前たちのことを教えた」
「近々会いに行きますので、その時はよろしくお願いしますね」
「お、おう」
「あ、その前に……盗み聞きとは感心しませんね」
マインは横を向くと、何か呟いた。
「凶れ……」
「ひっ!?」
マインが凶れというと、近くの電柱がへし折れて、地面に落ちる。すると、その後ろから小さな悲鳴をあげて誰かが出て来た。
「ぬ、盗み聞きしてたわけじゃありません!!えっと!たまたまエイトさんと先生を見つけたのでおどろかそうかなーと思ってただけなんで!!」
「あ、アンクル?」
「お前何してんだ?」
「な、何もしてません!!今言った通りのことなんで!!」
「なるほど、エイトさんのご友人でしたか」
「そ、それより!!なんで電柱がへし折れたんですか!?」
たしかに気になるな……。凶れって言っただけであんなことができるなんて……。
「ねえマイン。もしかして、あなたのアビリティって歪曲の魔眼?」
「ええ、よくわかりましたね」
「映画と一緒だからね。それに、ブラッドも直死の魔眼を持ってるから、もしかしたらと思っていたわ」
さすがレイカーの観察眼だ。そんなすぐには気づかないはずなのに、レイカーはすぐに気づいた。
「というかお前今鮮花と一緒にいるって聞いたけど」
「彼女なら少し出かけてるので、暇でしたから加速しました」
「なるほどな」
その人も空の境界に出て来た人だな。
「さて、そろそろ帰ろう。今日の目的だった三銃士も倒したし、当分何も起こらないだろう」
「ふふっ、そうね」
「ええ!?三銃士を倒したんですか!?」
「でも弱かったわよ?アンクルでも余裕で倒せたわね」
「そ、そうでしょうか?」
そんな感じで話しながら、俺たちは現実世界に帰った。
数日後……
俺たちネガ・ネビュラスやいつものメンバーで集まっていると、式が藤乃を連れてきた。藤乃は軽く自己紹介を済ませたが、俺たちはどうしても聞かなきゃダメなことがあった。
「初めまして、浅上藤乃と申します。あの……どうしてそんな目で見るんですか?」
「いや……だって……」
「うん……この人のおっぱいもいい!!」
「なんで寿也に胸揉まれて平然としてられるんだよ!?」
「「「「うんうん!!」」」」
これは全員が思ってることだった。だからこそ、言いたくなった。
「えっ?あ、そういえばそうでした」
藤乃はそう言うけど、剥がそうとはしなかった。あとは……。
「白雪さん……落ち着いて……ください!」
「藤乃さんだ!!藤乃さんだ!!」
「あんたねぇ!いいから落ち着きなさいっての!!」
綸とオルタが必死に白雪を抑えていた。あの二人も大変だな……
「ひゃうん!!」
少し目を離しただけなのに、いつのまにか寿也はマシュの胸を揉んでいた。
「ねぇ奨真君」
「ん?」
「寿也君のあれってある意味才能なのかな?」
「……だろうな」
将来役に立たない才能だと思うけどな。そんなことを思いながら、その日はみんなと楽しく過ごした。